Fate/black flash   作:なんか変な色の翼

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日常回も挟みつつ。
.....このSSのヒロイン、士郎が最有力では?




執行任務 ~下準備~

 

 

縁側に腰を掛け、ぼんやりと空を眺める。

 

そういえば、昨日から碌な休息を取れていない。士郎から聞いたところ、セイバーは魔力の節約の為に昼間っから寝ているようだ。俺も少し休んでおかなければ、流石に身体がダメになる。

 

 

「ん、悠仁。麦茶でいいよな?」

「助かる.....」

 

 

同じく疲れた様子の士郎が隣に座りに来る。ウチではお茶パックを使って茶を自作常備しているのだが、どこぞのバカ虎が駄々をこね、二本のボトルのうち片方は常に麦茶なのである。おかげで裏で消費しなければ、麦茶が発酵してビールになるってわけだ。ならないけど。

 

 

「.....いい天気だなぁ」

「本当になぁ」

 

 

二人で一服しつつ、視線を空から庭に移す。

 

やるべき事は分かっているが、俺には聖杯戦争の他に執行任務という使命が有る。聖杯戦争の存続を脅かす怪異である、真人とかいうのを祓わなければならない.....のだが、外見の特徴くらいしか聞かされていない。"ツギハギ顔の人型で、受肉している"事しか分からないのだ。

 

まあ、見れば分かる程度に奇抜な見た目をしてくれているだけマシか。

 

 

「ねぇ、二人とも。魔術を教わった時の指南書とか残ってない?」

「いや、俺は爺さんから口で教わっただけだし」

「俺も見様見真似だからなぁ」

「......ちぇ、けちんぼ」

 

 

土蔵の中を捜索していた遠坂が顔を出したかと思えば、またどこかに行ってしまった。こんな感じで、協力者はウチの家具の物色に余念がない。相伝の魔術とかの存在を探ろうとしていたのか、なにやら勘違いしているようだ。

 

遠坂がウチに泊まるのは確定事項らしく、別棟の客室に行ったら一番いい部屋に

"ただいま改装中につき、立ち入り禁止"だなんて札が掛けられていた。

 

もしかしたら、アイツも藤ねえに近い何かを持ってるのかもしれない。

 

 

「いや、すまん。セイバーも説得しようとしたんだけど。悠仁じゃ戦闘能力に不安が有るって」

「.....だから本宅の方で寝てたのか、アイツ」

「そうだな。遠坂と一緒に別棟で、男子と女子に分けたかったんだけど」

「そもそも、俺もアッチ(別棟)の方だからなぁ。後で部屋移さなきゃ」

 

 

別棟と本宅は数十メートルあるとはいえ、廊下で繋がってるから隣の家みたいなものだ。というか、俺は道場に近いからという理由で別棟の客室を自室にしている。間違いが有るはずもないし起こすつもりもないが、夜までに本宅の余った部屋に引っ越しすべきだろう。

 

 

「なあ、士郎。爺さんが見たらどう思うかな、この状況」

「甲斐性がどうたらって肯定すると思う」

「ああ.....あの人、そういう所にはルーズだったよな」

 

 

ぼんやりと士郎と何気ない会話をしながら、身体を日常の中で癒していく。変わりゆく衛宮邸の中で、彼だけが昔を思い出せる固定具(アンカー)となりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....よいしょっと。これで最後か」

 

 

数分で引っ越しを完遂し、仕上がった部屋を眺める。特に収集品とかを集める趣味も無いし、ゲームをするためにプレステとかを買うような人間でもないので、自然と持ち物は少なくなるのである。おかげで、あまり使わない勉強道具にテーブル、寝床用の布団の三往復で作業は終わった。

 

 

「遠坂のと比べたら全然だけど.....まあ、比較してもな」

 

 

それにしても、我ながら殺風景な部屋である。前は和室だから畳の温かさが有ったが、今回は畳のない洋室もどきの部屋なのだ。ここまで物が少ないと、夜逃げ前だと言われても何も言い返せないかもしれない。

事実、昼から部屋の改装を続けている遠坂は未だ作業中なのである。魔術の道具とかも色々有るのだろうが、ご苦労な事だ。

 

 

「さて、六時半か。そろそろ晩飯時だけど、どうするか.....」

 

 

飯なんて食ってる場合じゃねぇ!と怒られるかもしれないが、ここらで腹を満たさなければ色々と大変だろう。

セイバーは食うかどうかは分からんが、一応彼女の分も考えて四人前。遠坂は作業中かもしれないから、差し入れ程度で渡せるようなモノ。冷蔵庫には確か、下準備を終えた鶏肉が入っていたはずだ。となると.....

 

 

「.....握り飯に、唐揚げでいいか。」

 

 

士郎と比較するのはやめて頂きたい。あんなミシュラン帰りみたいな一流シェフと虎杖君は違うのだ。大量生産、大量消費の時代にマッチした現代っ子なのである。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「頂きます」

「いただきまーす」

「......頂き、ます?」

 

 

そんなわけで、産業的な大量生産メシが完成した。ラインナップは唐揚げ、四種の握り飯、胡麻ドレッシングをかけた葉物のサラダ、豆腐の味噌汁。デザートには期限間際の缶詰を再利用した、ミカンを乗せた甘めのヨーグルトである。一成にでも見せれば、帰省先の祖母の味とでも言われそうな品々だ。

 

ちなみに"頂きます"が一人分足りないが、別に遠坂がいないってわけではない。現在時刻は七時、ちょうどアイツも引っ越し作業を終えたのだが。

 

 

「.....律儀ねぇ、アンタらは。虎杖君はもう少し不良かと思ってたんだけど」

「律儀も何もあるか。習慣だよ、習慣」

「そーだそーだ。それに、俺は健康優良児....おっ、結構イケるな」

 

 

もっもっ、と握り飯を頬張ると、口いっぱいに中の卵焼きの甘みが広がる。やはり握り飯はこうでなくては。他の昆布やスパムも楽しみだ。スタンダードな蜂蜜漬けの梅干しは、最後のお楽しみにしておこう。

 

さて、他の皆の反応は.....

 

 

「.....藤村組の食堂の婆さん、こんな味だったなぁ」

「それ誉め言葉?」

故郷(さと)を思い出す味だったよ」

「旅人かよ」

 

 

士郎には好評のようだった。ちょっと何言ってるのかは分からないが、美味しいというのは伝わってくる。朝のカツ丼テロリズムの汚名は、ここで返上させて貰ったと考えても良いだろう。

 

 

「.....ふむ。ふむ、ふむ」

「............?」

 

 

セイバーは黙々と食事を進めている。食事をするとき、あまり会話をするタイプではないのだろうか。手を付けていない握り飯を口にする度に頷いていたりして、納得にも似た相槌を打っている。まるで、ライオンをモチーフにした赤べこだ。

 

 

それで。こういうのに五月蠅そうな遠坂は────

 

 

「違う、ベクトルがまるで違う.....!」

「と、遠坂。どした?」

「い、いや何でも?ところで、食事は当番制?」

「ああ、そうだけど。もしかして、遠坂も作りたいのか?」

 

 

首を縦に振る遠坂。どうやら、彼女も料理が出来るらしい。そりゃそうか、一人暮らしだもんな。こっちと環境は大差ないに決まっている。嫌でも自炊を覚えなければならなかったんだろう。

 

だがしかし。どうして箸は進めてるのに、そんな苦虫を嚙み潰したような顔をしているのか。

 

 

「まあいいわ、明日は見てなさいよ二人とも.....!」

 

 

フルフル、と箸を握った拳を震わせて、ニィ、と笑う遠坂。

こないだ読んだ少年漫画の悪役そっくりだと、心の中で密かに思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が更けていく。

 

士郎と二人で後片付けをしている間に、遠坂は勝手に風呂を沸かして入っているようだ。セイバーは就寝。非常時とはいえ、他人の家にいるんだから少しは落ち着いてほしいものである。

 

 

「....今後の為にも、早めに主導権を握るべきだと俺は思う」

「分かった。洗濯物は任せろ、士郎は────」

「誤解を生むから遠坂の前で言うなよ、それ」

 

 

キュッキュッと皿を磨きつつ、士郎と駄弁りながら水を流してシンク内を浄化する。今晩は主菜とご飯の皿をワンプレートの取り皿としているため、洗い物の手間が省けそうだ。人数が多いから実質帳消しだけども。

 

 

「なあ、士郎。セイバーってどんなヤツ?」

「うーん.....悪いヤツじゃないと思うよ。最初は驚いたけど」

「まあな。ああ、別にアレを気にしてるわけじゃないから」

 

 

最初のアレは交通事故のようなものだ。お互いに殺意は有れど悪意は無かったし、その証拠にこうやって食卓を囲めている。別に俺は、セイバーを恨んではいない。士郎を守ろうとした結果なのだ、それを責めれば向こうも辛いだろう。

 

 

「ああ。そういや、悠仁の名前を聞いてたな。どうやって呼べばいいかって」

「.....おお。アイツ、俺に興味とか有ったんだ」

「俺と同じで、下の名前でも上の名前でも呼べばいいって返したけど。今日は話さず終いだったな」

 

 

.....向こうも、人知れず歩み寄ろうとしているのだろうか。

そうだ。これから一緒に戦っていく協力者なんだから、ギスギスしても仕方ないしな。

 

ほい、と渡した皿を阿吽の呼吸で士郎が食器棚へとしまっていく。

もはや手慣れたものだ。これも、十年の共同作業の為せる匠の技である。

 

 

「明日からは学校か。まあ、こんな中でも行かなくちゃな」

「遠坂も言ってたろ。セイバーは連れていけないけど、俺もアーチャーもいるんだって。この布陣をひっくり返す方法が知りたいくらいだぜ」

「....A組、大丈夫かな。修羅になってるじゃないか」

 

 

セイバーとは違い、遠坂のアーチャーは霊体.....つまり、実体のない透明人間のような状態になって遠坂を護衛できる。今は負傷しているが、マスターを守護するには十分だとか。ちなみに彼は現在、屋根の上で一晩中監視の任に就いているらしい。ご苦労様である。

 

 

「弁当はどうする?遠坂の分もいるだろ」

「ああ、俺が作っておくよ.....にしても悠仁。朝は食わないって人、本当にいるんだな。一日に二食しか食わないって事だろ?そんなの、成長の阻害にしかならないっていうのに」

「おっ、そうだな」

「全く。朝飯くらい食べないと大きくなれないって、爺さんも────」

「.....誤解を生むから遠坂の前で言うなよ、それ」

 

 

まるで意味が分からん、とばかりの顔をする士郎。言うなよ、絶対言うなよ。

 

さもなくば、汝の頬から軽やかなる音が鳴り響かん。アーメン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「────さて、と」

 

 

深夜というには少し早い、午後十一時。

 

セイバーと話すこともなく、遠坂から話しかけられるでもなく、一日が終わった。自分の時間というのは大事なものだ。プライベートを他人に割くほど、関係は構築されていないという事だろう。

 

そもそも、俺は死にゆく者だ。関係を作った所で何になる。

 

 

 

「.....暗いことを考えるのはよそう。にしても、眠れない」

 

 

部屋が変わったせいか、どうも寝つきが悪い。昨日は睡眠を取っておらず、日課の鍛錬もこなして身体は程よく疲れているというのに、瞼を閉じれど眠気は一切感じない。これもサーヴァント化の影響か、とも考えたが、セイバーが眠れている以上は関係ない話だろう。

 

 

「マスターにして、サーヴァントね」

 

 

右肩から手首へと、三つの赤い線が長く引かれている。これが、俺の令呪。遠坂に聞いたところ、ここまで大きな令呪が発現しているのは前代未聞らしい。風呂場で洗っても薄れるわけがなく、紋章というよりバーコードを刻まれたような気分だ。

 

 

.....ああ、ダメだ。余計に眠れなくなる。

 

 

気分を変えるためにも、一回外に出るとしよう。

布団からコッソリと抜け出し、暗い廊下を通って玄関に着く。

 

 

さて、何をするか────

 

 

 

 

 

 






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さて、何をするか────

  • 夜の街を巡回しよう
  • アーチャーに差し入れを持っていこう
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