Fate/black flash   作:なんか変な色の翼

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アンケの協力にサンクスやで。
高評価してくれた人にもサンクスやで。
モチベが上がるわぁ〜



【分岐】後悔と生き様

 

 

───そうだ。アーチャーとも顔を合わせねば。

 

一回俺をスパッとやってしまったセイバーでさえ、向こうから歩み寄ろうとしてくれているのだ。なら、一度俺を助けてくれたアーチャーには俺が歩み寄るのが筋だろう。

 

 

居間へと戻り、冷蔵庫の中に保存していた握り飯をレンジでチン。今日は大飯喰らいの虎がいないので、割と在庫には余裕が有る。二つくらいなら持って行っても、明日の弁当に支障は出ないだろう。

 

 

「.....サーヴァントにアレルギー、なんてないよな?」

 

 

手に取ったのは卵焼きと、スパムの握り飯。これらを紙皿に移し、ホカホカと湯気の出ている内に急いで運んでいく。外は二月上旬らしい寒さで、外気に晒された耳たぶが一瞬で赤くなるのを感じた。

 

さて、確か屋根の上で見張りをしているのだったか。ピョンと一足で屋根上へと飛び、辺りを見渡してみる。しかし霊体になっているのか、人影は無い。

 

 

「仕方ない.....えー、アーチャー?握り飯作ったんだけど、食べない?」

「..........」

「あ、えーと.....セイバーは食べてたんだよ。だからアーチャーも腹減らないかなって」

「..........」

 

 

返事は帰ってこない。聞こえてくるのは沈黙の静けさに合の手を入れるように、冬の風がカタカタと屋根瓦を揺らす音だけである。まさか、サボってるわけじゃないよな?

 

 

「皿、置いとくから。紙皿だから、食べ終わったら土蔵のゴミ箱に入れといてくれ」

 

 

これ以上やっていても仕方ないので、皿を屋根に置き逃げする事にする。食われなかった時はその時で考えるとしよう。それに、あの遠坂のサーヴァントなのだ。主のように、どこかで俺を目の敵にしてるのかもしれん。

 

 

「.....本当。俺、なんかやらかしたのかねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お」

「むっ」

 

 

外で冷えた身体を擦りながら温めつつ寝床へと戻っていると、なにやら気を張り詰めたセイバーと出くわした。周囲をやけにキョロキョロとしていて、鎧は付けていないが臨戦態勢といった様子。どうしたのだろう。

 

 

「セイバー.....だよな。どうした?」

「先ほど、屋根上から話し声がしましたので。この家には侵入者を伝える警報が有りますが、念には念を入れて警戒を取っています」

「あー、すまん。そりゃ俺だ」

 

 

淡々と業務報告でもするように、俺へと返答するセイバー。どうも、サーヴァントの聴覚というのは人間より断然優れているらしい。まさかアレが聞かれていたとは。

 

 

「アーチャーに差し入れをしたんだよ。今日の握り飯、アイツにも食ってもらいたくて」

「.....そうでしたか。アレは、確かに美味でした」

「おっ、良かった。怪我してたんだし、今日はしっかり寝ようぜ」

 

 

じゃ、と手を振って自室へと向かう。心のモヤは晴れていないが、布団の上で寝転がっているだけでも多少は疲れが取れるだろう。そう思っていた矢先に、

 

 

「.....ユウジ、貴方にも聞きたい事が有ります」

「ん────俺の名前呼んだ?」

「はい、士郎から聞きました。上の名前の方が良いですか」

「いや、別に構わんけどさ」

 

 

急に下の名前で呼ばれたものだからビックリした。急に話しかけられた驚きも有るが、今まで見たこともない美少女から名前を呼ばれるという衝撃というのも隠せなかったりする。凄いな、士郎は。こんなのに耐えてるのか。

 

 

「嫌がられるかもしれませんが、貴方という人間を知る為に訊いておくべきことだと思います。ユウジ、貴方はなぜバーサーカーへと向かったのですか。まさか、人間の貴方が勝てる存在だと思ったのですか?」

「いや、そんなんじゃないけど────」

 

 

流石に、あんな筋肉ダルマを相手にして勝機を見出したわけじゃない。その勝機というのは、きっとバーサーカーを殺しきる事だろう。だから俺は、勝利の条件を変えたのだ。

 

 

「せめて、逃げ切れる時間を稼ぎたかった。最悪、教会に士郎と遠坂が逃げ込めたらいいなって。アレを殺すのは無理でも、玉砕覚悟なら時間は稼げるって思ったんだ」

「それは、士郎が家族だからですか?」

「それも有るけど、面倒くせぇ遺言を託されてんだよ。だから、より多くが生きれる方を取った」

「.....それで、本当に良いのですか?」

 

 

金髪碧眼という言葉が有るが、現実は少し違うらしい。ぼやけた月光に反射するセイバーの瞳は、深い緑色。その両眼が俺を見定めるように、訴えるような視線を飛ばしてくる。

 

 

「つまり、貴方は他人の指図で死ねるのですか」

「他人じゃねぇよ、家族(じいちゃん)の遺言なんだって」

「家族も他人の内でしょう。誰かの言葉に導かれるまま生きて、貴方は満足なのですか」

 

 

その言葉には、どこか迷いが含まれているように見えた。英霊は、その生涯を終えた後に記憶を引き継ぎ、全盛期の状態で召喚されると聞く。彼女は、どこか迷いを残したまま死んだ英霊なのかもしれない。そして、それを俺に重ね合わせているのか。

 

 

「聖杯戦争に参加する以上、貴方はマスターで在り続ける。死は常に、貴方の背を狙っている」

「そうだよ。そんなの、覚悟の上だ」

「では貴方は殺された時、そうやって祖父のせいにするのですか」

 

 

.....本当に嫌なことを言う。確かに、これは俺の本心ではない。空っぽになった心の中に、誰かの思いが入り続けた結果だ。俺自身の意志は別の所にある。でもそれは、あの()の中に置いてけぼりになっているという意味なんだろう。

 

 

「.....しねぇよ。選択したのは自分だ」

「では、貴方は祖父の言葉を守るために聖杯戦争に残るのですね?」

「いや、そっちの理由は少し違う」

 

 

運動も喧嘩も、昔から人並み以上に出来てきた。でも、それを一度だって、"俺にしかできない"と思った事は無い。事実、昨日だけで何回も負けた。何度も地面に叩きつけられて、現実ってのを教え込まされた。

 

 

「俺が聖杯戦争から逃げられたとしてさ、士郎と遠坂は逃げられないだろ?」

「.....サーヴァントと契約している限りは」

「だろ。それで、もし二人が帰ってこなかったら、きっと俺は泣くと思う」

 

 

どれだけ時が経とうとも、きっとその傷は癒えることはない。暖かい日常の中に身を置いていたとしても、ふと気持ちが途切れた時に、この時の自分の選択を悔やみつくしてしまうのだろう。自分がそういう人間だというのは、自分が一番理解している。

 

 

「その時に自分の中で"俺には関係ねぇ"だなんて言い訳が出てきたら、きっと俺は自分が嫌になっちまう。そんなのゴメンだね」

「.....では、貴方は自分の為に戦っていると?」

「ああ。生き様で後悔はしたくない」

 

 

セイバーの顔は、ひどく寂しそうなものだった。まるで、自分にとっての最悪の答えだとでも抗議するような、俺の選択に共感しながらも、それは違うとでも言いたそうな。複雑な感情が混ざりに混ざった、悲しげな瞳をしていた。

 

 

「.....素晴らしい信念ですね。自らの命を無視して他人を助けようとする人間などいない。それは英雄と呼ばれた者たちでさえ、例外ではないでしょう」

「そ、そっか」

「ですから────そんな人間がいるとすれば、その人物の内面はどこか欠落しています。その欠落を抱えたまま進んでは、待っているのは悲劇だけです」

 

 

自分自身に言い聞かせるような、懺悔にも独白にも似た言葉。俺の心を少しだけ揺らした言葉の余韻は、冷たい夜風の中に吸い込まれるように消えていった。

 

 

「初めて会った時、貴方を斬りつけた事を間違いだとは思いません。ですが、貴方には悪いことをした」

「いいよ。士郎を守ろうとしてくれたんだろ?全然許すって」

「......これ以上はやめておきます。私の方がもたない」

 

 

はあ、と深いため息を吐いて、士郎の部屋の方角へと戻っていくセイバー。そうか、護衛のために隣の部屋を使ってたんだっけな。それなら、眠っていても敏感に察知できたのにも納得だ。

 

 

「おやすみ、セイバー。ゆっくり休めよ」

「ええ、お休みなさい」

 

 

セイバーの背を見送る。心の靄は晴れることは無い。

 

無限に湧き出るかのような迷いの霧を振り払い、俺も自室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

カーテンの隙間から漏れる日差しを感じた。

 

 

深山町は九州地方というだけあり冬でも暖かいが、山に近い衛宮邸の方は自然由来の寒さを保っている。窓枠から抜け出る冷気と、日差しの温かみの二重衝撃。腹を出して寝ていれば風邪をひいていたかもしれないな。

 

 

「よいしょ....っと。起きろ、俺」

 

 

寝覚めは良い方だが、気合を入れるためにブンブンと頭を振って完全にスイッチを入れる。よし、取り敢えず朝飯だな。昨日の握り飯と唐揚げの余りで弁当を作り、それとサラダと汁物を作り直してエコに作ろう。電力やガスだけでなく、労力も減らしていかねば。

 

 

「そろそろ六時になるし、さっさと着替えてやる事はやらなきゃな。遠坂は朝飯は要らないって言ってたけど、ヨーグルトくらいだったら食べられるだろうし。パイナップルの缶詰とかで盛り付けすれば、食欲も湧くかも」

 

 

制服に着替え、藤ねえから譲ってもらった虎柄のエプロンを付ける。藤ねえ自身が使っていたわけではない。どうも手芸部に所属している生徒からの貰い物らしく、付けたくはないが無下にできないので俺が使え、という経緯である。

 

しかし台所に到着するも、誰もいない。朝飯の当番は桜、俺、士郎の順番で回しており、手伝える人が手伝うという緩い感じなのだが、今日の当番の士郎は寝坊しているようである。まあ、こんな状況だし仕方がない。俺が代わりにやるとしよう。

 

時刻は五時五十五分。ゾロ目でラッキー、なんて思いながら包丁を握ろうとして。

 

 

「────おはよ。朝早いわね、アンタ」

「.....誰だお前」

 

 

見たこともないくらい機嫌の悪そうな顔で、遠坂がやってきた。

 

 

もう凄い。マドンナの欠片が一ミリもない。制服に着替えてはいるものの、第一と第二ボタンはオープンで首元が見えている。髪はリボンで結ばれていても、幾つかの束が散乱していて虫の触角のよう。

 

そして、一番ヤバいのは顔だ。死んだ魚のような目に、全く力の入っていない表情筋。ゾンビ映画のオーディションに出れば、エキストラの振り付け指導役に抜擢される事は間違いないだろう。

 

 

「と、遠坂か。いや、遠坂だよな?どうした、徹夜でもしたのか?」

「別に。朝はいつもこんなんだから気にしないで.....いてっ」

 

 

フラフラと居間を横切ろうとして、カーンと壁に頭を打ち付けた。結構良い音がしたぞ。なんというか、飲み切った後の空き缶を蹴り上げたような軽い音が。

 

 

「はらほろひりへ......」

「何言ってるか分かんないって。マジで大丈夫か?」

「んにゃ.....顔洗えば、多少はスッキリするかも。洗面所ってどっち?」

「玄関側の廊下を通ったら直ぐだけど.....見てられねーわ。ちょっと動かすぞ」

 

 

横に並ぶと、素直に右腕を肩に回された。そのまま座り込んで腰元を持ち、抱っこをするように遠坂を持ち上げる。身長差は一回りくらいしか違わないが、対格差は有るので持ち上げるのは簡単だ。このまま洗面所に不法投棄してやれば、勝手に目覚めてくれるだろう。

 

 

「んん.....ん、呼び鈴?」

「落ちるから動くなって。それに、この時間帯なら身内しか────」

 

 

ん、身内.....んんんんん???

 

 

「すまん、遠坂。降りてくれ。俺は逃げる」

「ちょっと、最後まで運び切ってよ.....立つ気力が失せてるんだけど」

「まだ寝ぼけてんのか!分かったよ、洗面所で大人しくしててくれよな!」

 

 

二度目の呼び鈴が鳴ったと思いきや、今度は鍵穴からガチャガチャという音が聞こえる。畜生、せめて新聞の押し売りであってほしかった。合い鍵を持ってるのといえば、桜と藤ねえくらいしかいない。どっちに見つかってもマズいし、下手をすれば俺が衛宮邸からつまみ出される羽目になる。

 

急いで廊下を走り抜け、遠坂を洗面所に放り投げる。ドサッと荷物を投げ下ろすような扱いになったが許してほしい。今回ばかりは、虎杖悠仁の男としての尊厳の危機なのである。

 

 

「んぁ....ちょっと、もう少し丁寧に扱って」

「すまん、謝罪は後で。今は取り敢えず、桜と藤ねえに説明を────」

はい。納得のいく説明をお願いします

 

 

背後から、凄まじい殺気と共に声をかけられた。

 

服装を乱しながら転がっている遠坂。

遠坂を下ろしたばかりで、覆い被さっているような状態の俺。

何がとは言わんが、洗面所という状況。

 

その手の知識が有れば、有罪(ギルティ)が役満でブラックジャックな状態だと分かるだろう。

 

 

 

「────お邪魔してます、虎杖先輩」

 

 

いつも通りの挨拶を口にしながら、凄く怖い笑顔で睨んでくる桜。

 

落ち着け、俺。選択を誤れば俺は死ぬ。社会的かつ精神的に即死だ。

 

 

ここは────────

 

 

 

 

 

 

 






前半と後半の寒暖差が凄い(小並感)。
モチベの励みになるので、アンケと登録と高評価の三連を忘れずに!


次回、「虎の咆哮」

ここは────

  • とにかく言い訳をする
  • むしろ爽やかに挨拶をする
  • 無言で土下座する
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