Fate/black flash   作:なんか変な色の翼

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そろそろルートも確定。
あ、月姫のシナリオも完成しました。
次はこっちで遊びます。



【分岐】スニーク・ストーク・スケアリー

 

 

────やはり、慎二を信用する事は出来ない。

 

 

アイツは、美綴が入院している事を知っていた。質実剛健を体現した彼女が、まさか慎二宛てに見舞いの催促なんか寄こす筈がない。部活動の中で欠席したという事は知っているかもしれないが、なぜ入院しているかなどは知らないはずだ。

 

.....だが、それを説明しても士郎が止まるとは思えない。

むしろ、マスターかどうか確かめるチャンスだと意気込んでしまうだろう。

 

 

「────分かった、行ってこい」

「ああ。心配しなくても、ちゃんと帰って来るさ」

 

 

朗らかに笑う士郎。

大手を振って通学路を引き返していく様子は、まるで戦地に向かう少年兵のようだと感じた。

 

そして彼が曲がり角を通り過ぎ、両方の視界からお互いが消えたところで、

 

 

 

「.....よし、フォーメーションBで行くか」

 

 

フォーメーションB。こっそり追いかけて監視作戦、始動。

 

ちなみに作戦名は、我らが藤村先生の語録の一つより抜粋されたものである。

 

 

 

 


 

-interlude-

 

 

昼休みになった。

 

授業から解放された生徒たちは、昼食を求めて学食へと行進を始める。弁当という選択肢も有るのだが、ウチのクラスは弁当派の人間はごく少数なのだ。

 

こうして教室に残って昼食を取ってる人間は、男子だと俺と一成くらい。女子は話したことのない人ばかりだから、特に会話をする事もなかったり。

 

 

「一成には、悪いことしたかなぁ」

 

 

今朝の登校風景は、ちょっとしたニュースになっていた。一年の中でも美人だと噂されている桜に、学年一のマドンナである遠坂。そこに、誰もが知っている愛すべき馬鹿枠の悠仁まで加わったのだ。

この話題は、下世話な話が好きなやつから恋愛脳、はたまた不良っぽい人たちにまで伝わっていったわけで。

 

そんな話を生徒会長が聞き逃す筈も無く。朝一番に俺と悠仁が、遠坂と親密にしているという話を聞いた彼は大層驚いた。腹の調子がひっくり返るレベルで驚いた。

その結果、食うものも喉を通らずに昼休みで早退してしまったようだ。今学期も残り一か月。皆勤賞を狙っていたらしいのに、これは申し訳ない事をした。

 

 

「やあ、衛宮。今度は二人きりだな」

「.....なんだよ、慎二。朝の続きならやらないぞ」

「違う違う、僕はそんなにしつこい男じゃないさ。煩い取り巻きが帰ってくれて助かるって言ったわけ」

 

 

それは一成の事か、はたまた悠仁や遠坂の事なのか。どの道、友人をけなされて腹が立たないわけがない。ムッとした視線を送りつつも、話は聞いてやることにする。

 

 

「それで、何の用だと聞いたね。僕の中で結論が出たから、それの答え合わせをしようと思ってさ」

「結論.....?」

「ああ。いくら遠坂が物好きだと言っても、アイツは自分のイメージを大事にしてるわけだろ。だから、そう安々と君や虎杖みたいな木っ端に関わるわけないじゃない?」

 

 

随分な言い草だが、確かに遠坂はスクールカーストがあれば上位に立っているような人間だろう。悠仁も結構上位にはいそうだけど、中学の時の逸話が.....うん。

 

 

「だからさ、思ったわけさ。二人には共通点が有るって」

「────共通点?」

「ああ、そうさ。自覚してないわけ?それともすっとぼけてんの?」

 

 

ははーん、と訳知り顔でこちらを眺めてくる。普段はこんなに余裕たっぷりな態度を取ってるくせに、やけにキレやすいのはどうしてだろうか。もしかして、精神的な余裕を普段から前借りしまくってるとかかもしれぬ。難儀な体質だな。

 

 

「話変わるけど、ウチの家の近くで住宅倒壊の事件が有ったんだよね。数軒が薙ぎ倒されるようにして全壊、しかも原因不明。怖いと思わない?」

「......ああ、そりゃ災難だな」

「それで、衛宮。お前心当たり有るだろ。最近この辺りが物騒な理由にさ」

 

 

遠回しに、ぼかしながら俺に伝えようとしてくる慎二。まさかコイツ、聖杯戦争について何か知ってるのか?いや、半端に知っているのなら教会に逃げ込むだけでいい。もしかして、慎二は────

 

 

「ああ、こんな所で話す内容じゃなかったね。また後にしよう」

「後って、お前────」

「今日の放課後、僕の家ね。虎杖や遠坂には秘密だからな。もし連れて来たら、桜は向こう一ヵ月は家から出してやらないからね。その辺覚悟しとけよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────相変わらずだな」

 

 

聖杯戦争が始まる前に、ここに一度足を運んだ事が有る。

夕日も傾き、もうじき夜にならんとする頃。悠仁を置いてけぼりにして、間桐家の様子を見に行った。

 

 

その時に邂逅したのは、荘厳な翁"間桐臓硯"。

お手伝いさんを除けば桜と慎二の二人暮らしと思ったが、まだまだ理解が浅かったようだ。

 

 

「呼び鈴は────んん、開いてる?」

 

 

これ見よがしに、門の鍵が開け放しになっている。呼び鈴を試しに鳴らしてみるも、中からの返答はない。勝手に入れ、という意思表示なのだろうか。

 

お邪魔しますと挨拶を口にしつつ、屋敷の敷地へと入っていく。まだ太陽が昇っているというのに、敷地の中に一歩踏み入れた途端に景色が薄暗く見えた。それに、乾燥した冬場だというのに辺り一面が湿っぽい。草を踏んだと思えば、まるで海藻のようなヌルリとした感触が足へと伝わった。

 

 

「.....不用心だな」

 

 

玄関の扉まで開いている。当然、屋敷の中は更に薄暗い。

 

この家は日差しが入らない作りの上、やけに電灯が少ないのだ。省エネだとは思うが、目を凝らして進まなければ壁に肩をぶつけそうになる。昔に来訪した時の記憶を思い出し、感覚で間桐邸の居間へと進んでいく。きっと、慎二はそこだ。

 

 

「────ああ、漸く来たのかい」

「家主より先に部屋に入ってたらマズいだろ」

「ははっ、言えてる」

 

 

中から呼び声が聞こえたので、軽く返してやった。どうやら機嫌が良いらしい。

 

ここの居間にも明かりらしきものはない。窓は付いているが、厚手のカーテンが閉められているので日光は入ってこない。当然のように電灯はなく、テーブルの上のキャンドルが唯一の光源なのだろうが、それすらも鎮火されていた。

 

 

「おい慎二、流石に蠟燭くらい付けろ。前が見えないだろ」

「そろそろ目が慣れて来るだろ。こっちを見なよ」

 

 

見当違いな方角を向いていたことに気が付き、声がした方向へと視線を投げる。

 

そこには椅子に座った慎二に、そして────

 

 

「─────慎二、ソイツは」

「紹介するよ。僕のサーヴァント、ライダーだ」

 

 

漆黒の衣装に身を包んだ、長身の女性の姿が有った。

 

先ず印象に残ったのは、頭部に装着されたアイマスク型の目隠し。目線を隠されているというのに、その中の双眼が俺を睨んでいるという事が分かる。その次は、全身から湧き立つドス黒い存在感。セイバーともランサーとも異質なソレからは、身の毛がよだつ悪寒がする。

 

 

「人を連れてきておいてそれか。用心深いにもほどが有るんじゃないのか、慎二。一人で来いって言ったくせに」

「用心のためさ。いくら衛宮でも、殺し合いの場となれば何するか分からないからね」

 

 

やはり、慎二は俺がマスターだと断定している。というか、さっきの返答は思いっきり間違えた。ここで怯えたフリでもしておけば、聖杯戦争とは無関係の人間を装えたかもしれないのに。

 

 

「それと、今さらシラを切るのは無しだからね。もし今さら衛宮が一般人だなんてなったら、僕は君を目撃者として消さなければならなくなる。無駄な手間は取らせないでくれよ?」

「まさか。認めるよ、俺も慎二と同じくマスターだ」

「ああよかった、僕の予想は正解(ビンゴ)ってわけだね。遠坂が参戦してるのは知ってたから予想を立てたんだけど、上手くいって良かったよ」

 

 

手を伸ばして、黒いサーヴァントの横腹を撫でる慎二。よくそんな事が出来るものだ。マスターで令呪が有るからなのかは知らないが、俺なら死んでもできやしない。コイツが何なのか、分かっていないのか?

 

 

「そう怯えるなよ。そんなに怖いなら、衛宮もサーヴァントを出せばいい」

「........」

「これで、お互いに拮抗状態ってわけだ。僕も衛宮のサーヴァントを見たいからね」

 

 

向こうは、俺がセイバーを連れてきていると勘違いしているようだ。こっちからすれば好都合。セイバーを呼べると言っても、令呪を使わないに越したことはない。

 

 

「サーヴァントの見せ合いに来たわけじゃない。俺は慎二からの話を聞きに来ただけだ。それが用事だってんなら、ここで帰らせてもらう」

「.....チッ。随分と生意気じゃないか。それじゃあ、お望みどおりに本題に入ってやるよ」

「ああ、そうしてくれ。俺も無駄な時間はかけたくない」

 

 

慎二は大丈夫だ。しかし向こうのサーヴァントが、俺のサーヴァントがいないという事を勘づく可能性は十分にある。注意しながら話を進め、早めに切り上げよう。

 

 

「衛宮。君には少し聞きたいことが有るんだ」

「それは─────いや、質問によるな」

「ああ。単刀直入に聞くけど、虎杖のヤツはマスターなの?」

 

 

.....心臓が止まるかと思った。落ち着け。こうやって聞いているという事は、まだアイツは半信半疑の状態なんだ。マスターであるという事にアテが付いていたとしても、サーヴァントを持っていないマスターだという予想は付いていないはずだ。

 

一番最悪なのはマスターじゃないと答える事。そうしたら、さっき言ったように目撃者として始末する口実を与えることになる。ならばマスターだと答えるしかないが、サーヴァントがいると勘違いさえしていれば迂闊には飛び込んでこないと思う。

 

 

「....ああ。悠仁は聖杯戦争の参加者で、マスターだ」

「ふーん、やっぱりね。そうじゃなきゃ、遠坂から気に入られるわけがない」

「そうかもな。それで慎二、俺も聞きたい事が有る」

 

 

向こうのペースに飲まれないように強引に話を打ち切り、先ほど浮かんだ疑問をぶつける。一刻も早くここから離脱すべきだと本能が言っていたが、これだけは確認しておきたかった。

 

 

「....慎二。なんで、遠坂が参加するって知ってたんだ」

「アイツが魔術師だって知ってたからさ。僕は使えないけど、知識は有るからさ」

「知識は.....つまり、間桐家は」

「ああ、遠坂のとこに負けず劣らずの魔術家さ。て言っても、年季だけだけどね」

 

 

ゴクリと唾を飲み込む。それこそ、俺が恐れていた事態だ。間桐の家は魔術家で、慎二はこうして聖杯戦争に参加している。

 

なら、桜は────

 

 

「────ああ。言いたいことは分かった。桜の事だろ?」

「え.....ああ、そうだ。桜は、この戦争には無関係なんだろ?」

「まあ、概ねその通りかな。回路は有るっぽいけど、マスター権が僕の時点で察してほしいよね。魔術家ってのは長男が教えを一身に受け継ぐって決まってんの。桜は何も知らないし、僕の苦労も知らずにお前の家に行ってたわけ。この意味分からない?」

 

 

.....よかった。桜は無関係だった。

 

それに、多少だが慎二の態度にも納得がいく。桜が衛宮家に来るという事は、自分の敵の陣地の中にホイホイと無防備に足を踏み入れてるのと同じだ。もしコレが他のマスターだとしたら、都合の良い人質として何をされるか分かったものではないだろう。

 

 

「それで、質問は終わり?」

「ああ、手間取らせたな。用は終わりだろうし、俺はもう──────」

 

 

 

ヒュン、と空を切る音がした。

人間では視認できない速さで飛来したソレは、俺の肩の薄皮を切って居間の壁へと着弾する。鋭く尖った、金属製の何か。闇に慣れた目で暗器を見ると、それは鎖に括りつけられた巨大な釘であった。

 

当然、攻撃したのが誰かなど言うまでもない。

目隠し越しに俺を淡々と補足している、ライダーだ。

 

 

「.....なんだ、慎二。悪ふざけにしては度が過ぎてるぞ」

「ふざけてんのはソッチだろ。やけに焦ってると思ったら、そういう事か。お前、サーヴァントを連れてきてないのかよ」

 

 

.....やはり長居すべきでは無かった。今すぐにでも令呪を使ってセイバーを呼び出したいところだが、今の一撃は半端じゃない。単純な速度だけで言えば、セイバーを上回ってる。

マズったな。これじゃ令呪を使おうとする挙動を見せれば、即死は確実だ。命令を下し終わる前に三回は死ねる。

 

 

「僕はサーヴァント同士の戦いを見たかったんだけどね。衛宮を確実に叩き潰せるってんなら、次の楽しみにしておこうかな?」

「────慎二、本気なのか」

「強がるなよ、別に殺さないから。令呪を毟り取って、あの二人への取引道具にするだけさ。それでも、腕の二本や三本は覚悟してもらおうじゃないか!」

 

 

腕の一振りで釘を手元に手繰り寄せたライダーが、俺を見据えて構える。

動かなければ、いや、動いたところでどうする?

 

今座っている椅子を盾にすれば────あの威力じゃ一撃で貫通だ。

背を見せて逃げて────居間の出口までは遠い。それに、玄関までは直線だ。

 

ならば、一か八か慎二を倒すしか────クソッ、出来るのか、俺に!?

 

 

ライダーが地を蹴る。俺が一歩踏んだ瞬間に懐に忍び込み、その釘で俺の首を狙う。

 

ダメだ、早すぎる。攻撃の為に両腕はノーガードだ。

 

 

防ぐ手も手段もない。殺され────────

 

 

 

-interlude out-

 

 


 

 

 

「何やってんだ、テメェ───!!!」

 

 

カーテンを巻き込みながら窓ガラスを突き破り、タックルをかますようにライダーと呼ばれたサーヴァントを跳ね退ける。いや、跳ね退けようとした。俺の身体が当たる直前でライダーは跳躍し、その直線上にいた士郎を巻き込みながら居間の壁を突き破る。

 

 

「あれ、死んでな....悠仁!?」

「説教は後!怪我は無いな。何か呪いとかも貰って────グッ!」

 

 

次の瞬間、背中に何かが突き刺さり、痛みで身体が跳ね上がりそうになる。強引に引き抜くと....釘みたいな短剣だ。しかも、鎖鎌みたいに遠隔でも操れるタイプ。あの敏捷性で射程(リーチ)を得てるのかよ、この上なく厄介極まりないぞ。

 

 

「こんの────」

「..........!!」

 

 

そこらの陶器を手に取って、握り潰して石ころ程度の破片にする。魔力を込めて破片を強化し、肩と体幹の身体能力も極限まで上昇。ピッチャー投げの構えで鎖を投げられた方角へと、全力で投擲する。

 

その初速は、目測で凡そマッハ2。ライフル弾にすら届き得る勢いで飛ばされた破片は、居間の壁に更なる穴を次々に空けてハチの巣にしていく。しかし、肝心のライダーに命中した気配はない。

 

 

「悠仁、当たったか!?」

「ダメだ、向こうが早すぎて当たる気がしねぇ!令呪を────うおっ!?」

 

 

"令呪"という言葉を口にした瞬間、天井を突き破って鎖が士郎を狙う。急いで魔力を込めた拳で打ち返すも、まだ本体は見えない。

セイバーを呼び出されたら困るが、安全策を取るのは変わらないってか。こんなんじゃ、孤立無援も同然だ。じわじわと嬲り殺しにされている。

 

 

逃げ場は無し。背には護衛対象。

暴れるには狭い、というか確実に士郎を巻き込む。

状況は最悪一歩手前。令呪は封じられてる。

 

 

このままじゃ埒があかない。

このままだと士郎が殺される。

このままだと───ああ、クソッ!!

 

 

俺は─────!!

 

 

 

 





今回の分岐はクソ多いです。
そして、ルート確定となるのもあります。
アンケにご協力ください(登録もしてくれると嬉しい)

決断しろ、俺は───

  • 士郎だけでも───
  • 俺の令呪を使えば───
  • アーチャーに信号を───
  • ツーマンセルで───
  • マスターを叩けば───
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