Fate/black flash   作:なんか変な色の翼

28 / 43

【追記】

前書きと後書きを書き忘れてました。

宿儺のフラグは別所です。残念でした。


ライオンの怒号

 

 

 

白昼夢の中を往く。

 

とろんとした瞼。どろりと溶けた右腕。魔力の圧力に耐えられなかったのだろう。だが大丈夫だ、じきに再生する。直勘で分かる。

 

この身体になってから、死ぬのが随分と難しくなった。再生は基本は手動(マニュアル)だが、命に関わるような怪我だと身体が自動(オートマ)で再生して、俺を生かそうとする。

 

動物で言うと、生存本能とかいうやつだろうか。当たり前だが、俺自身のでは無い。俺の中のナニカが、俺を生かそうとしているらしい。

 

 

「───腹、減ったな」

 

 

やけに空腹を感じる。満たされぬ、足りぬ、と身体が叫ぶ。きっと、あの閃光で身体中の魔術回路が飛び起きて、その反動で魔力を求めているのだ。現在値を据え置きで、最大値だけを書き換えたから起きた一時的な現象、放っておけば収まるだろうが、どうも我慢しがたい。

 

ふと視線を上げると、頭蓋より血を流して倒れたライダーが見えた。ダメだ、これでは腹は満たされない。この性質のモノは、食えはするが腹を下しかねないのだ。そうこうしている内に活動限界に達したのか、ライダーの身体は魔力の粒子となって消えて行った。

 

 

「.....んだよ。何なんだよ、お前は!なんでマスターなのにライダーを殺せるんだよ!アイツ、とんだハズレを寄越しやがって!僕に恥を────」

「......ァァ?」

 

 

目の前の肉と視線が合う。あれはダメだ、魔力が無い。あんなのを食ったところで、碌な魔力補給は出来やしまい。だが、生きている限り魂は有るだろう。それを取り込めば、少しは回復できるかもしれない。

 

 

「おい、何する気だ。やめろ。止まれ、止まれって!来るんじゃない!クソッ、起きろって言ってんだろ、ライダー!マスターが殺されそうに────」

「─────寄越せ」

 

 

肉が魔導書を取り出し、ライダーに命令を下そうとする。ああ、コレだよコレ。こういうので良いんだよ。

 

魔導書を取り上げ、表紙を噛み砕いてバリバリと口の中に押し込んでいく。滲み出る魔力が疲れ果てた身体に染み渡る。羊皮紙のような固い紙を食い千切る度に、肉体が再生されて行くのを感じる。

 

この魔力は......令呪?体内に魔術回路が無いから、外付けした回路に令呪を押し付けたのだろうか。よく考えられたものだ、それにしても美味いな、コレ。やけに魔力の吸収率が良い。みるみる右腕が治癒されて行く。

 

さて、残りは余った肉を────

 

 

「─────悠仁!」

「ん、んん......ああ、士郎か」

 

 

パチリと泡が弾けるような音と共に覚醒する。

 

最後の一片をゴクリと飲み込み、瓦礫の向こうから走ってきた士郎を見据える。周りへの影響を考えずにぶっ放したせいで、壁も天井も崩落しまくっていた。

 

殴った方向へと投射角120度の範囲は、正しく更地と形容するに相応しい。残りは魔力の爆風による余波だろうが、立派だった屋敷は百年放置された廃墟のようになっている。

 

成る程、これが令呪によるドーピングの結果か。俺でもサーヴァントに一矢報いる事が出来る程度になるのは凄いが、いかんせん身体への負担がデカい。次使う時は、用心して使う事にしよう。

 

 

そして.....慎二は、いつの間には逃げていた。しかし、拠点を荒らされた上に令呪を失い、サーヴァントは風前の灯火だ。マトモな思考回路をしていれば、直ぐに教会へと逃げ込むだろう。

 

 

「無事で良かった!それと、今のライダーは.....」

「ああ、見た通り消えたよ。あんだけ殴ったんだ、暫くは実体化は無理だと思う。慎二の令呪も食ったし、魔力補給も断たれたんだから自然消滅するんじゃないか?」

「成程な。それで令呪を......食った!?」

「あー.....まあ、説明は家に帰ってからだ。でも、士郎も士郎だからな?どうせ説教は免れないんだ、二人で遠坂に怒られようぜ」

 

 

ぐぬぬ、と納得行かなそうな士郎の肩を叩き、二人で屋敷を脱出する。何はともあれ、これで残りのサーヴァントは六体。俺、セイバー、アーチャーを除外すれば、打ち倒すべき敵は三体だ。もし残りのが徒党を組んで衛宮邸を襲撃してきたとしても、各個撃破に持ち込めば十二分に勝ち目はある。

 

 

「でもさ、これ案外褒められんじゃねーか、士郎」

「なんでさ。絶対セイバーは怒るだろ」

「いや、サーヴァントをマスター二人が倒したんだぞ?セイバーの負担も減るし、アーチャーもゆっくり休めるし、被害は俺の令呪一画だけだ。これ大戦果だよな?」

 

 

それは確かに、と頷く士郎。

 

そうだ、何を恐れる必要が有る。終わり良ければ総て良し。敵将に誘き寄せられたかと思われた士郎将軍と悠仁軍師は、その奸計を打破して縦横無尽の大活躍。

見事敵将を討ち取り、悠々と玄関の凱旋門を潜って帰還。これにはセイバーも万歳三唱、遠坂なんかは自費でステーキを焼いてくれるに違いない。

 

 

屋敷に戻るころには、日は沈みかけていた。玄関の鍵はかけられたまま。どうやら、桜も遠坂も帰ってきていないらしい。セイバーだけにでも報告をしたいのだが、もうそろそろ藤ねえが来る頃だろう。聖杯戦争の話題は避けるべきだ。

 

この話をするのは、二人が帰ってからにしよう。

 

 

 

 

 


 

 

というわけで、夕食の時間になったのだが。

 

 

 

「────ですから、私が言ってるのはそういう事じゃないんです。その、藤村先生曰く、今までで一番良い仕上がりだったんでしょう?でしたら、皆で喜びを共有するのが人間として正しい行動だと思うんです」

「ふーんだ!そんな説得で引いてあげるほど私は甘くないんだから!なによ、遠坂さんのおバカ!いじめっこ!平成教育委員会に訴えてやる!」

「.....藤ねえ」

 

 

炊飯ジャーを我が子のように抱えた藤ねえを、俺と士郎に遠坂の包囲網で囲い込む。朝食を作り逃した士郎が、せめて夕食はと立候補して炊き込みご飯を作り上げたのだが....この始末、どう付ければ良いのやら。

 

 

「それに、悠仁と士郎が作った料理は食べたくないって言ってたじゃない!それなら、私が責任もって食べてあげますー!」

「それは朝だけの話です。ロボットじゃないんですから、ちゃんと昼食と夕食は摂りますよ。そもそも藤村先生、教職が生徒のご飯を取り上げるという行動の方が、教育委員会に持ちかけられたら困る話題ではないのでしょうか?」

「うっ、的確に急所をついてくる。高校にも道徳の授業が有ればいいのに」

 

 

泣く泣く炊飯ジャーを食卓に返還する藤ねえ。良かった、俺たちだけでは炊き込みご飯が冷める頃まで返還は不可能だったろう。よくやった遠坂。フォーエバー遠坂。

 

 

「.....あのなぁ、藤ねえ。今日は多めに飯を作ったんだから、別にがっつかなくても無くならないんだぞ?そりゃ、余り物は握り飯になって朝飯と被るんだけどさ」

「いいのっ!士郎のご飯は私が食べるんだから!昨日今日やってきた人には、分けてやるつもりは無いんだから!」

 

 

しかし、今日の藤ねえは機嫌が悪い事この上ない。士郎の飯にもなびかず、正論を押し付けられるのには兎も角、話し合いが通じる気配が一切ないのである。まあ、気分屋の藤ねえのことだ。明日の朝にでも話せば良いだろう。

 

それにしても、今日のご飯も美味そうだ。ほかほかと湧き立つ湯気からは米独特の匂いが立ち上り、日本人に眠る大和魂が掘り起こされる。周りと同じく、自分もそれを口の中に入れ───

 

 

「..........あれっ」

 

 

違和感。

 

食感は感じる。柔らかな米が熱を帯び、滑らかなデンプンがモチモチと顎を刺激しているのは分かる。しかし、どうしてだか米特有の甘さを感じない。それどころか、他の具材を口に運んでもの何も感じない。

 

 

「どうした、悠仁。油物の代わりに柚子を入れたついでと思って柚子胡椒も足してみたんだけど、流石にキツかったか?」

「ああいや、そんな事ない。凄く美味いぞ」

 

 

士郎に心配そうな顔をされ、慌てて箸を取り直す。それでも味覚は戻らない。風邪を引いて味覚がおかしくなった、とかとは訳が違う。まるで、誰かが噛んだ後のガムを延々と飲み込み続けているようだ。

 

高圧の魔力に身体が適応しようとして味覚が吹っ飛んでしまったのか。お茶で口の中を洗い流しても、熱い味噌汁を啜ってみても、全く味覚は戻る事がない。

 

だが、身体の方の異常であれば修復は可能だ。この程度の事であれば、士郎や遠坂に相談する必要なんて無いだろう。

 

 

皆と同じような笑みを作りながら、俺は夕食の席をやり過ごした。

 

 

 


 

 

 

桜と藤ねえが帰宅したのを見送り、居間へと戻る。

 

夕食の後に大事な話が有る、と言っていたおかげか、そこでは既に遠坂が神妙な面持ちで待っていた。それと同時に、士郎が奥の部屋からセイバーを連れて来る。こうなれば、いくら鈍感な人間だろうと何の話題かは察するだろう。

 

 

「お疲れ様。分かってるけど、確認させて。聖杯戦争の話よね?」

「ああ、他のマスターの話だ。耳に入れておいて欲しい」

 

 

セイバーの眉が上がり、話し始めた士郎の方へと向き直る。その瞳の奥の熱量は、バーサーカー戦後から今までで見た事の無いくらいだ。やはりサーヴァントである以上、聖杯戦争の事が最優先事項なのだろう。

 

 

「それで、シロウ。話の続きを」

「あ────ああ。色々言い訳するのもアレだから、単刀直入に言うぞ。今日、ライダーとそのマスターと会ってきたんだ」

「な、ライダーのマスターに!?それ、いつの話!?」

「そりゃ放課後だけど.....うおっ!?」

「シロウ、貴方は何を考えているのです!?単独で敵のマスターと会うなど危険すぎる!どのような状況にせよ、どうして私を呼ばなかったのですか!?」

 

 

物凄い勢いで詰め寄られる士郎。まあ、普通はこういう反応をされるに違いない。俺だって最初は止めてたし、止めるのが逆効果な士郎相手じゃ無ければ根気よく説得を試みただろう。今回は結果オーライだったが、これに懲りたら少しは命を大切にしてほしいものだ。

 

 

「言っておきますが、私は怒っているのではありません。貴方の行動に呆れているだけです!私がそんなに信用できませんか、シロウ!」

「い、いや待て!セイバーが信用できないってわけじゃないんだ!というか途中で悠仁も合流したし、別に単独ってわけじゃない!」

「ユウジはサーヴァントでは有りません!!!」

 

 

どっかーん、と火山が噴火したように吠えるセイバー。口では怒っていないと言うが、客観的に見ると物凄く怒っている。見ろよ、文句言いたげにしながらも迫力負けして黙ってる遠坂を。藤ねえ相手にも大立ち回りできるコイツがドン引きしてるのは相当だぞ。

 

 

「いいですか、シロウとユウジは人間なんです!そこまで命で博打じみた事をして楽しいですか!英霊である私を心配させて楽しいんですか!?」

「悪かった!俺が悪かったから、この通り!!」

「ええい、正座!そこに直りなさい────ユウジも!!」

「お、俺ェ!?」

 

 

あらぬ所から飛び火してきやがった。というか、絶対コイツは嫉妬してんだろ。俺が一緒にいたからセイバーを呼ばなくても大丈夫、なんて士郎が考えてたんだと勘違いしてんだろ。違うからな、呼べるもんなら呼びたかったからな!?

 

 

「ふぅ、続きを。それでどうなったのですか」

「.....会ったのは、今日の放課後の話だ。向こうから話し合いをしたいって言われて、それで付いて行った」

「アンタ、本当.....それで、ライダーのマスターは誰だったの?」

「誰って、慎二だったよ。遠坂がいきなり馴れ馴れしくするなんて、って推測して声をかけてきたっぽい。それで、間桐の家まで行ってたわけ」

「ねえ、それ本気で言ってる?」

 

 

どこか訝しむような目で見てくる遠坂。そりゃそうだ、俺だって何も知らない状態だったら怪しむ。美綴の一件を知らなければ、俺だって慎二の事を怪しまなかっただろうし。まさか同じ学校の中に四人もマスターがいるなんて、驚き桃の木山椒の木って感じだ。

 

 

「あのね、間桐の家系は確かに魔術師の一族でもある。でも慎二の世代には魔術回路が備わってないはずよ。回路が無ければ令呪は持てない、だからアイツは────」

「いや、アイツは本に令呪を宿してたっぽいんだ。それと何か関係はないか?」

 

 

遠坂の推論に口を挟む。外から盗み聞きしていた限り、慎二は教えを一身に受け継いだと言う。回路が無ければ魔術は行使できないが、それを誰かに代行させる事は出来たのかもしれない。真に恐ろしいのは才能ではなく、執念により何百年に渡り積み重なった知恵と技術なのだ。

 

 

「ああ....成程ね。サーヴァントを召喚する儀式自体は難しくはない。召喚術を刻んだ魔導書が残ってたらマスターにはなれるし、外付けの回路に令呪を刻めばコントロールも可能ってわけね」

「.....遠坂。そういうパターンは予想してなかったのか?」

「出来るわけ無いじゃない!そもそも、そんな半端なマスターが参加するなんて自殺行為も同然なの!魔術援護もできない素人が出たところで、サーヴァント任せのお祈りになるのは分かり切った話でしょ!?」

「グボォ!?」

「士郎が死んだ!?」

 

 

凄い、無自覚で士郎のメンタルにクリティカルヒットを決めやがったぞ。その癖、コイツ自身も結構ポカをしているというのが笑い種だ。ほぼほぼ完璧だというのに、どこか致命的な所が抜けてるんだもん、この人。

 

 

「私のミスね。そうと分かっていれば、間桐の家にアーチャーを偵察に行かせてたのに。そうしたら真名の手掛かりとか、そういうのが少しは分かったってのに.....」

「あー、いや。そういうのは必要ないと思うぞ」

「え?」

「だって、俺と士郎でライダーは脱落させたから」

 

 

どんなもんだ、と胸を張る俺。士郎も涙目ながらメンタルが回復したのか、なんとか顔を上げられるラインまでには立ち直った。どうだ遠坂、俺たちだってやれるんだぞ。

 

 

「.....士郎、その話も本当?」

「ん────ああ。俺も、ライダーは消える瞬間は見たぞ」

「そうか、令呪を魔導書に刻むという事は、弱点を自ら晒しているも同然。隙を突いて破壊してしまえば、ライダー諸共の脱落を狙える.....それに関してはお見事です」

 

 

未だ訝しんでいる遠坂に、何か勘違いしつつも一人納得しているセイバー。俺がライダーを殴ったという事も暴露したいが、さっきの空気を考えると勘違いしたままの方が良いのかもしれない。このまま話題をすり替えて────

 

 

「いや、悠仁がライダーを殴って叩きのめしたんだ」

「「は?」」

「令呪を刻んだ本も食っちまったし.....遠坂、これって大丈夫なのか?」

「「は?」」

 

 

言っちまったよ、この正直者(おバカ)は。

 

遠坂とセイバーの視線が、ギギギと首から音を立てながら俺へと移る。その顔の恐ろしいこと。怨念系のホラーゲームとかで出てきそうなボスキャラみたいな面構えをしていらっしゃる。元の顔面偏差値が高いだけに、不気味の谷を見た時みたいな恐怖を感じたぞ。

 

 

 

「土下座」

「.....正座じゃなくて?」

「「いいから」」

「アッ、ハイ」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「あんなに怒らなくてもいいじゃん.....」

 

 

肩を落としてしょげつつ、風呂へと向かう廊下を歩く。

 

あの後、「いのちだいじに」の意味を教える授業が遠坂先生とセイバー教授の手によって強行された。勿論、生徒は俺と士郎だ。大戦果よりも自分の犯した愚行について考える事、同盟相手に報告も無しに危険な行動を取らない事、俺よりもセイバーの方が戦闘に向いている百の理由。滝のような勢いで情報が流し込まれ、途中から一周回って叫びたくなるのをずっと我慢してたレベルの苦行だった。

 

そして解放されたのは夜の十時。

急いで風呂に入らねば、後始末が面倒になる頃合いだ。

 

 

「ババンババンバン.....んん、電話?」

 

 

洗面所近くの電話が鳴っているのに気付く。この家は"邸"と語尾に付くだけあり、旅館のように広い。電話のコール音は最大になるように設定しているのだが、部屋によっては全く聞こえなかったりする。なので、誰宛の電話であろうと一先ず居合わせた人が取ってやるのがルールになっている。

 

発信者は.....非通知か、珍しいな。もしかしたら教会からかもしれない、出来れば遠坂かセイバー。士郎でもいいから人を呼びたいが、辺りに気配は無い。俺一人で応対するしかあるまいて。

 

 

「あー。もしもし、衛宮です」

『.....虎杖、先輩?』

「ん、桜か。どした、こんな時間に」

『今、公衆電話からかけてるんです。少しお願いしたいことが有って』

 

 

んん、何故に公衆電話から。首をかしげながら、桜の言葉を考える。向こうの家にも固定電話は有ったはずだ。そこから掛ければいいだろうに、どうして家の外にいるんだろう。

もしや、慎二に聞かれたくない話とか.....やっぱ首根っこ掴んで教会に叩き込んでおくべきだったか?

 

 

『先輩、本当に言いづらい話なんですが.....』

「おお、何でも言ってくれ。力になるから」

『その.....そちらの家に、泊めてくれませんか?』

 

 

遠坂に続いて、何故に桜まで。アレか、キレた慎二が手に負えなくなってんのか。セイバーに遠坂で男女比が一対一だというのに、桜が増えれば衛宮邸のパワーバランスがひっくり返ってしまいかねん。

 

まあ、そういう冗談はさておき、詳しく話を聞かねばと受話器を構えなおす。ウチは聖杯戦争の戦場のど真ん中、そう安々とゴーサインを出すことはできない。

 

 

「なあ、桜。理由も話してくれるか?」

『り────理由ですか』

「ああ、そうだ。もしかして慎二が原因だったりするのか?それなら、俺が今からでもそっちに行ってやる。アイツとは、本気で話し合わなきゃ埒が明かないからな」

 

 

電話越しだというのに腕まくりをしつつ、桜を安心させるように優しい口調で語り掛ける。全く、妹を家から叩き出すなんて酷い話もあったもんだ。今度は逃がさない、確実に教会へと────

 

 

 

『い、いえ。そうではなくて、私が不在の内にガス爆発が起こってたらしくて。それも結構な大規模な爆発だったので、警察の人からは安全が確保されるまで立ち入り禁止だって言われたんです』

「.........」

 

 

あ、俺のせいじゃん。

 

 

『立ち入り禁止が解除されても崩落が酷くて、修理のための工事は避けられないとも言ってました。それで新都の方でホテルを借りようかと思ってたんですが、今朝の話を思い出して.....』

「..........」

『す、すいません!遠坂先輩が入ったばっかりなのに.....!』

 

 

申し訳なさそうに謝る桜。クソ、謝るのはこっちだと言うのに、事情を説明できないのが歯痒い事この上ない。桜は聖杯戦争とは無関係なのだ、ここにいては危ない。このまま話を聞き流して、新都へと移ってもらうのが一番だろう。

 

あそこは夜でも人通りも多いから、おいそれとマスターは戦闘を起こせない。木を隠すなら森の中だ、こんな荒れ地では隠すにも隠せないというもの。頼ってくれた桜には申し訳ないが、そっちの方が最善なのだ。だから私情は切り捨ててしまえ。

 

 

『夜分遅くに電話してすいません、切りますね』

「あ────ちょっと待って!」

 

 

反射的に呼び止めてしまう。クソッ、何がしたいんだ俺は!

 

先輩としての筋を通すか、マスターとして正しい判断を下すのか。

俺は虎杖悠仁なのか、それとも一人の魔術使いでありサーヴァントなのか。

今すぐ決めろ。俺がどちら側の人間なのかを。

 

 

俺は────────

 

 

 

 






虎杖の黒閃の威力?
今は劇場版セイバーオルタのビームくらいです。

慎二マスターのライダーであれば一撃でノックアウトできます。

桜を泊めるなんて、そんなの────

  • 先輩として当たり前だ
  • 悪いが、できない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。