Fate/black flash   作:なんか変な色の翼

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遠坂介錯エンド回避です、おめでとう。
引き続き気を付けながら地獄を歩いてくれ。


士郎のスタンスが「償いたい」なら
虎杖のスタンスは「自分の命を使いたい」です。

メンタルブレイクにはご注意を。





【分岐】正しい道を

 

 

「........虎杖悠仁。俺は虎杖だよ、遠坂」

 

 

 

自分の名前を口にする。

 

俺は、虎杖(罪人)であって宿儺(怪物)じゃない。

だから、実はそんなに強いってわけじゃないんだ。

 

きっと間違いを犯したら、自分が自分でいられなくなると分かってる。

その間違いを突き通すことが出来る人間じゃないと、分かってる。

 

だから、俺は正しい道を歩き続ける。

幽鬼のように、歯車のように、機械のように。

 

 

贖罪以外の生きる理由が見つからなくても。

 

 

俺は────────

 

 

 

 

 


 

 

 

「.........そう。分かった」

 

 

遠坂の手が下ろされ、俺に向けられた光が消える。

彼女の瞳に殺意は無い。そこに在るのは、少しの哀れみだけだ。

 

 

「遠坂、ごめん、俺は、」

「貴方の中のサーヴァントが暴走してるのは、今の貴方に魔力が足りていないから。魔力って生命力みたいなものだし、欠乏したら中身を抑えられなくなるのは当たり前。だから、貴方の本能が私で魔力を補給しようとした判断は仕方が無い事よ」

 

 

なんでだよ。今、俺はお前を殺そうとしたんだぞ。

.....なんで、その判断を肯定するんだ。

 

 

「違う。遠坂、俺は、お前を────」

「令呪を失くしてる貴方がサーヴァントを抑え込むには、魔力が必要。手っ取り早い方法なら、貴方は何処かのマスターと契約して、魔力を供給してもらうしかない。それは自分でも分かるでしょ?」

 

 

淡々と、必要事項だけを伝えていく遠坂。ありがたい、ありがたいけど違うだろ。お前は、怒っていいんだ。裏切り者とか、信じてたのにとか、俺を罵るべきなんだ。俺の事をお前は恨んでいいんだよ。

 

 

「言っておくけど、私は契約できない。貴方と契約するって事は、アーチャーを裏切るって事だから。だから私は────」

「お前、自分が殺されかけたって分かってんのか!?死ぬのは嫌だろ、殺されるのは怖いだろ!損得勘定で"ハイお終い"って、当たり前のように受け入れんじゃねぇ!もっと自分を大切にしてくれ、頼むから!!」

 

 

がむしゃらに、思ったままの事を口にする。なんて我儘だろうか。また温情で生かされたっていうのに、逆ギレじみた罵詈雑言が止まらない。

 

 

自分の事が嫌いな人間は、いつしか自他の境界が曖昧になって、自分に対して手を差し伸べる人間も嫌いになるという。きっとそれだ。もう俺は、自分を否定する事でしか生きられない。だから、肯定する言葉を信じられないんだ。

 

いや、そもそも元から肯定なんて必要なかった。

 

死んでいった彼らに報いなければ、とても生きてなどいられないと正義の味方なんて理想に縋ったのだ。それが今や、誰かを傷つけようとする怪物に変貌しつつある。なんて皮肉だ。今まで自分を生かしてきた理想が、今度は自分の身体を刺し貫こうとしている。

 

 

「いいんだ、遠坂。ここで切り捨てていいんだ、ここで殺した方がいいんだ!俺が此処にいる限り、士郎も遠坂も、ずっと苦しむことになるんだぞ!!」

 

 

 

"殺してくれ"

 

 

それが、俺の選んだ本音だった。

 

もう助けなくてもいい。救われるはずがない人間に構わなくていい。俺は、俺が存在していいのかどうかも分からないんだ。意味を与えられても、それ以上に他人を傷つけたら全てが台無しになる。それに俺は、士郎も遠坂もセイバーもアーチャーも殺せない。誰を殺して誰を生かすだなんて、命の取捨選択が出来る人間じゃない。

 

見てみろ。勝敗は既に決している。

なら、今死んでも大した差じゃないだろう。

 

そんな、子供の駄々みたいな俺の言葉を。

 

 

「..........虎杖君」

「────────」

「貴方独りで、勝手に諦めないで」

 

 

遠坂は、それをも肯定で塗り潰した。

 

 

「貴方には、まだ戦う権利が残ってる。貴方には、まだ戦う身体が残ってる。それに、まだ貴方に生きてほしいって思ってる人がいる。自分が嫌になるのは自由だけどね。勝手に諦めて、一番身近な人達まで否定するつもりなの?」

「──────ッ!!」

「貴方を殺さなきゃいけない立場の人間が言える台詞じゃないかもしれないけど。死んだら、全てを放棄して楽になれるだなんて思わないで」

 

 

.....死んでも、楽にはなれない。

そりゃそうだ。俺が俺を罪人だと思ってようが、他人からすりゃ関係が無い。

 

酷い理不尽だ。被害者から死ぬなと言われている。

俺は償いたくて贖いたくてたまらないというのに。

 

 

 

「遠坂」

「........なに?」

「宿儺、いや、俺の中にいるサーヴァントは危険だ。アレを外に出しちゃいけない。俺も精一杯努力はするし、相当弱ってなかったらアレが表側に出てくるのは無いって思う」

 

 

宿儺が俺に干渉できたのは、きっと一時的なモノだ。僅か一日で令呪を全て使い切ったからこそ起こったバグ。今際の際なら兎も角、相当な事がなければ俺ごと宿儺は死ぬと思う。

 

だが、アイツが何を考えているのかは俺には分からない。英霊の魂を安置するだけなら器としての能力で踏みとどまれるのだろうが、サーヴァントが内側から俺の身体を食い破ろうとした場合、俺の身体がどれだけ保てるかは未知数だ。

 

もしかしたら明日目覚めた時、俺の意識は無いかもしれない。

 

 

「でも、もし俺が俺じゃないと思ったら直ぐに殺してくれ」

「..........」

「遠坂は、俺より強い魔術師だ。きっと出来ると思う」

 

 

耳に残る返答はない。代わりに、コクリと遠坂は首を縦に振った。

 

ああ、それならいい。

 

 

お前がそう言ってくれるなら。俺も、安心して前を向ける。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

.....白い日差しが差し込み、俺の瞼を開かせる。

 

今度は、宿儺が出てくる夢を見る事は無かった。そうだ。あんなのがポンポン出て来たらたまったものじゃない。もし今夜も出てきてたら、目を瞑ることすら億劫になってるところだった。

 

今の時刻は六時過ぎ、もう朝飯の調理は佳境に入っている頃だろう。今朝の食事の当番は、たしか桜だったか。昨日のアレ、引きずってなかったらいいんけど。

 

 

「おはよー。悪い桜、今日は手伝ってやれな.....あり?」

「おはよう、悠仁。桜、まだ起きてないぞ」

「マジか、珍しいな」

 

 

台所にいたのは、桜ではなく士郎だった。主菜のサンドイッチは既に完成。今はトントンと軽快な調子でキュウリを切っており、もうじきサラダも仕上がって立派なモーニングが出来上がるだろう。

 

 

「もしかして、枕が合わなくて寝付けなかったとか?」

「それも有るかもな。間桐の家、ちょっとセレブな所あるし」

「ウチは広いけど、家財はところどころ古いもんな。やたらレトロというか、旧世代型というか。まあ、最新家電とか買いに行く暇が無いのが実状なんだけども」

 

 

うんうんと頷き合っていると、洗面所で顔を洗ってきた遠坂が居間に転げ込んできた。別に本当に転んだってわけではないが、ムスカの最期みたいな歩き方をしてるんだからそう表現するのが適切だろう。

 

.....あの後、俺は遠坂と同盟を続けることなった。期限は元々と同じ、バーサーカーを撃破するまで。それ以降は遠坂との同盟は解消され、俺と士郎は遠坂と敵対する事になる。それまでは、俺の事は不和になりかねないから士郎には黙っている事にした。

 

遠坂は、なんだかんだ義理堅い。約束はちゃんと守ってくれるだろう。

 

 

「おはよ、朝型人間って羨ましいわね」

「よ、遠坂。桜は見てないか?」

「見てないわよ。あの子も人間だし、寝坊くらいするでしょ」

 

 

ふにゃ、と欠伸をしながら席に着く遠坂。そういえばセイバーも来ていない。たしか障子を張り替えながらの雑談で、消費する魔力を抑えるために基本は寝ているとかいう話を聞いてた気もする。そうでなくても平時は寝てるらしいし。

 

 

「うしっ、サラダ完成!悠仁、配膳頼めるか?」

「悪い、ちょっと桜起こしに行ってくる。このままだと遅刻しそうだし」

「了解。藤ねえじゃないんだから、優しく起こすんだぞ?」

 

 

苦笑しながら居間を後にする。そういや、藤ねえがココに泊まった回数は数知れない。そしてその度に寝坊して、俺たちが起こしに行っているわけだ。一年前、あまりの寝相で士郎がロメロスペシャルを喰らったのは良い思い出である。

 

 

そうだ。戦う理由なら、ちゃんと有るじゃないか。サーヴァントが聖杯を求めて戦うなら、俺は日常に戻るという夢を掲げて戦えばいい。求められている限り、俺はそれに応えなければ。その理屈で俺は宿儺と対峙し、聖杯戦争を勝ち抜けばいい。

 

.....違う、遠坂が言いたかったのはそういう事じゃないと思う。

こんなのは、ただの言い訳に過ぎないんじゃないか。

 

 

「.....わっからねぇな、本当」

 

 

気づけば、桜の部屋の目の前に来ていた。こんな辛気臭い顔はしていられない。ピシャピシャと両の頬を打って、足りていない気合を入れ直す。死ぬにしろ生きるにしろ、迷惑はかけたくない。

 

 

「桜、起きてるか?遅刻しちまうぞー?」

 

 

コンコンコン、とドアを軽くノックをする。

それでも眠りが深いのか、部屋の中から変わった気配はしない。

 

 

「桜ー?早くしないと、朝飯冷めちまうぞー?」

 

 

今度は少し強めにノックする。しかし、やはり反応は無い。いつも朝早くに来て、土蔵で丸まってる士郎を起こしてくれる桜からしたら違和感すら感じる。毎朝ウチの家に手伝いに来てるのは、実は無理をしていたんじゃないだろうか。

 

しかし、このままでは埒が明かない。まさか後輩を泊めているのに、何もせずにむざむざ遅刻させるなんて事が出来る筈が無かろうて。

 

 

こうなったら────────

 

 

 

 

 





一日に二本投稿したので、明日は休みます。

こうなったら────

  • 中に入って直接起こそう
  • 遠坂を呼びに行こう
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