Fate/black flash   作:なんか変な色の翼

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気合い入れて書いたので遅れました。
今回はアンケート回です。後書きもお読み下さい。


宿命の前夜

 

退屈な授業が終わり、下校時刻になった。

 

今日は士郎はバイト。俺は士郎から頼まれた導線とかのガラクタを買いに行ってから、身内の墓参り。行先は二人とも新都なのだが、俺は柳洞寺に寄るので帰りは別々。合流は晩飯の時になるだろう。

 

俺も士郎もバイトと家事ばかりで面白味がない、などと藤ねえに言われたことがあったっけ。確かに学生にしては多忙な方だというのは理解しているが、趣味もないのが窮屈と思った事はない。晩飯の後にテレビをかけっぱにしながら皿洗いするくらいで丁度いいのだ。

 

 

「士郎、掃除終わったから一緒に....あれ?」

 

 

昇降口のあたりを探してみるも、見当たらない。士郎に限って置いて行かれた、だなんて事は無いだろう。下駄箱を見てみると、士郎の上履きが突っ込まれていた。学校の中ではなく、運動場や体育施設の方となると、恐らく弓道場だろう。もともと所属していた部活であり、藤ねえが監督している、桜もいる。士郎が外でうろついているとなれば、ここ以外有り得ない。

 

探しに行こうかとも思ったが、手伝いを優先してバイトをほっぽり出すような馬鹿はしないだろう。そう合点した俺は、一足お先に新都行きのバス停へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

あの時、俺の中に走った感情とは何だったのか。

 

目の前でバタバタと人が死んでいく中で

「そんなのは嫌だ」と、自分も死にゆくのにも気づかず、叫びたくなった。

 

.....別に正義感とか、そういう類のモノじゃない。

ただ只管に、目の前の事実を子供なりに拒絶しただけかもしれない。

 

 

それでも

 

 

その感情が今でも、あの火事の記憶を鮮明に縫い留めている。

 

 

 

 

馬鹿みたいに歩いた。道行く人は死んでいた。

 

阿呆みたいに歩いた。倒れた人は死んでいた。

 

アテもなく歩き続けた。出会った人は死んでいた。

 

 

死んでいた(・・・・・)」と思い込もうとした。

 

 

 

 

 

 

人を助けろ

 

 

半年前に死んだ祖父の遺言だ。

 

俺は優しくて他人より頑丈だから、誰かを助けろと言っていた。

死にそうな人を見捨て続けた人間だと知っていれば、別の言葉を遺したのだろうか。

 

それでも間違っているとは否定できなかったし

俺自身に否定する資格も無かったと思うから。

 

俺は俺なりに、あの日死んでいった人達のために

あの日の自分を裁いてみよう、なんて考えた。

 

 

 

 

これは虎杖悠仁の原罪だ。

 

 

あの時、俺は多くの人を助けられなかった。

幾人もの人々が目の前で死ぬのを、ただただ傍観し続けていた。

 

助けられなかった。見殺しにした。俺じゃなかったら救えていた。

 

 

.....右腕を伸ばす。もう、この腕は俺自身のモノじゃない。

あの日、俺は人生の中で犯していい悪行を全て為し切ったんだ。

 

ここからは贖罪の時間。

できる限り多くの人を助け、救い、必要が有るのなら命すら投げ出せ。

 

最後の一瞬くらい、自分を否定しなくてもいいように。

最後の一瞬くらい、誰かに自分の存在を肯定してもらえるように。

 

 

俺は、自分の命を使い切らなければいけないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「──────やっべ。完全に意識飛んでた」

 

 

 

気づけば日が暮れていた。墓石にもたれかかって寝ていたなんて、一成に知られたら大目玉を喰らうに決まっている。アイツが真面目に生徒会長やってる事に感謝だな。

 

 

「駄目だなぁ。ここ来たら、いつもこうだ」

 

 

コキコキと肩を鳴らしつつ身体をほぐす。別に悪夢や幻覚を見るのは今に始まったことではない。この程度のフラッシュバックであれば毎晩見ている。もう十年も前の話だというのに、未だにあそこに取り残されているような感じがしているのだ。ダメだなぁ、気合が足りていない証拠だ。

 

 

「えっと....おっ、買い物袋有るじゃん。ちゃんとやる事やってから来てて良かったぜ。んーと、導線に銅板に.....」

 

 

"こう"なると前に何をしていたのかの記憶が曖昧になってしまう。新都行きのバスに乗ったところまではギリギリ覚えているが、そこから先がぽっかりと空洞になっている。

 

藤ねえや士郎に相談してみようかと思ったが.....やめた。きっと、これは病気とかじゃない。トラウマを克服できない、自分の弱さが原因なのだろう。そんな事で迷惑はかけられない。

 

 

「うし、全部有るな。心配される前に帰ろっと」

 

 

買い物袋を腕に掛けて、柳洞寺の墓地を後にする。普段の食料品の買い物と違い、金属製のずっしりとした重みが感じられる。また藤ねえにストーブを壊されたら、修理用品の買い出しは全部丸投げしてやろうかな....

 

 

「.....にしてもコレ、早く治さないとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後九時。晩飯の片付けも終盤に差し掛かり、今日の予定は鍛錬をして風呂を待つのみだ。桜は用事が有ると言って直ぐに帰ってしまったので、今は男手二人で黙々と皿洗い中である。ちなみに破壊神こと藤ねえは、当家では猫の手にもカウントされておりません。理由は察してくれ。

 

 

『次のニュースです。今朝、深山町××区で強盗事件が発生しました。被害に遭ったのは四人、内三人は死亡が確認され、一人は意識不明の重体.....』

「悠仁、チャンネル変えてもいい?」

「おー、いいぞー」

 

 

プチンと画面が暗転し、すぐさま藤ねえお気に入りのバラエティー番組が始まった。さすが、番組表を見るためだけに新聞を定期購読しているだけある。今夜の特番バラエティーも把握済みのようだ。今もこうして新聞を.....

 

 

「.....ちょっと待った。何見てんだ?」

「んー、ポスター。悠仁と士郎へのお土産とも言う」

「お土産、ねぇ?」

 

 

騙されるべからず。藤ねえは要らないガラクタを衛宮家に不法投棄するという、捕まえたゴキブリを主人に見せに来る猫より酷い悪癖を持っているのだ。

 

その数や計り知れず。ファミレスで貰った臼みたいな巨大ドンブリだとか、学校で廃棄処分になった骨格標本の一部だとか、百葉箱に入っていた謎の指だとか。それはそれは数多くの特級危険物を持ち込んできたのである。ちなみに指は柳洞寺で供養して貰った。南無三。

 

 

「士郎、ちょっと偵察頼む」

「よし、またしょうもない.....ナニコレ!?」

「......士郎?どうした士郎!?」

 

 

蛇に睨まれた蛙のようにフリーズしてしまった士郎を見て、台所からスポンジ片手に飛び出す。こうも士郎がビビるのは珍しい、どんな恐ろしい事が書かれていたのか。固まった士郎の手元のポスターをのぞき込んでみると.....

 

 

 

新人歓迎 みんなで咲かせろ、鉄の花

いいから来てくれ鉄華団

 

 

 

「それ、いらないからあげるね」

「.....なにこれ、青年団のポスター?」

「そうそう、こないだ解散したっぽいけど」

「じゃあ殆ど価値無くね?いや、逆にプレミアが付くのか...?」

 

 

もう一度ポスターを覗き込んでみると、ハリボテっぽい青空を背景に、背中を見せつつ人差し指を空へと伸ばす白髪の青年がいた。もっと別のポージングもあっただろうに。一体どんな心境で写真撮影をしたのか、是非とも聞いてみたい一枚だ。

 

 

「しかもやけに固いな.....って、鉄板じゃないか?」

「おお、さすが士郎!初回特典版だけ鉄板仕様なんだよ、違いが分かってるぅ!」

「くっ、正解してしまった.....」

 

 

悔しげに膝を落とす士郎。ここまで正解して虚しくなるクイズが有るだろうか。その見た目はさながら、ラスト一問でアメリカ行きを逃した天才高校生の如くである。

 

 

「あ、それとね。こっちは悠仁にお土産」

「クーリングオフの方法は、っと.....」

「ひどーい!しかもそれ、桜ちゃんからのなんだから!」

「.....桜から?」

 

 

一瞬疑ったが、桜の名前を出してまで「嘘でした!」とかいう冗談を言うような人じゃない.....と思う。そう信じたい。差し出した手に渡されたのは、小さなピンク色の布袋。先の部分は黄色の紐で結ばれており、中には紙切れが入っているような手触りがする。

 

 

「うーん、何かのお守りか?」

「そうみたい。親戚の人が旅行に行ってて、そのお土産なんだって」

「ふーん」

 

 

ぐるりと回してみると、甲斐甲斐しい刺繡の形跡が見られた。明らかに手作りだ、商業用の量産品だとは考えにくい。人気の少ないパワースポットからでも持ち帰ったのだろうか。

 

 

「まあ、こういう物なら貰って───なんだよ、その顔は」

「別にぃ?悠仁だけに渡したからって、ひがんでるわけじゃないし?」

「俺に言うな。後で隠しとこっと」

 

 

いや、確かになんで俺にだけとは思ったけども。

ちょっと話を聞きたいし、制服のポケットにでも突っ込んでおくか。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「......ふぅ」

 

 

片付けが終わり、ゴロンと布団の上で寝っ転がる。藤ねえは颯爽と帰宅。士郎はストーブの修理の最終調整に入っているらしく、今日も土蔵に籠り切りだ。

 

 

「.....なんで、士郎にだけ教えたんだろ」

 

 

....俺は、衛宮士郎が「魔術使い」だという事を知っている。

 

確か、衛宮家に転がり込んでから二年が経った頃だろうか。あの日から、よく士郎が道場や土蔵に引き籠るようになった。道場で鍛錬をしているのは俺も一緒だったし、最初は物好きな趣味でも覚えたのかと全然心配していなかったが、それが一年も続けば気が気でなくなってしまった。それで、切嗣に聞いてみたところ。

 

 

『士郎はね、魔術使いになろうとしているんだよ』

 

 

という風に返された。正義の味方になるために、魔術を切嗣から教わってるんだと。

 

そんな事を言われれば、俺だってやってみたくなる。その日から俺は毎日のように切嗣にせがんだが、遂に魔術の"ま"も教えてくれないまま、切嗣は逝ってしまった。士郎にも当然尋ねたが、ふわっとした説明しかしてくれなかった。いや、士郎の説明下手っていうのも有るとは思うけど。

 

 

だから俺は独学で鍛えた。

 

魔術の何たるかも仕組みも分からないが、見よう見まねでやってみた。

そして、そこから苦節五年。"ほんの少しだけ"だが、使えるようにはなったのだ。

 

 

「まあ、それも碌に役に立たない代物だったけどな」

 

 

身体を起こし、いつものように道場に向かう。

 

もう俺に、魔術に対しての憧れはない。我流の小手先に頼るよりは、自分の肉体を信じて鍛え続けた方が得になると知ったからだ。効率を求めるのであれば、下手に新しい技術を取り入れるよりも長所を最大限に伸ばした方が良いのは道理だろう。

 

 

柔軟をして身体をほぐし、寝間着から道着に着替える。

 

 

今日は──────

 

 

 





この作品のプロットが完成しました。

血の涙を流しながら正義の味方を突っ走る部品ルートも、取り返しがつかなくなって遠坂に介錯される(ネタバレ)ルートも、まさかのメリーバッドなイリヤルートも揃い踏みです。でも普通に書いてたら面白くないですよね、これ筆休めの作品なので。

なので分岐はアンケ次第。それでは皆様。

後は任せます。

今日は.....

  • いつも通り、体を鍛えよう
  • ────魔術の鍛錬をしよう
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