バカとテストと召喚獣〜The Another Story〜 作:ぷろとうぃんぐ
「それでは、1人目の方、前に出てきて下さい」
高橋先生がそう言う。坂本君はゆっくり目を開く。
「よし………こっちはまずは木下。お前だ」
「行ってくるのじゃ」
「私が行きます。科目は英語でお願いします」
木下と対峙するのは………誰だろ。名前が分からない。
これ、1人称の小説としては最悪だよね。ごめんなさい赤髪の人!
でも仕方ないじゃん!会ったことないし面識ないんだから!
【Fクラス 木下 秀吉 英語 106点】
VS
【Aクラス 西川 千尋 英語 361点】
ぶっ………!!
差が違いすぎる!これがAクラスの力なの!?
「すまぬ………開始10秒も立たずに負けてしまった………」
「いや……大丈夫だ。あとは俺たちが何とかする」
5分間のハーフタイムを挟んで、次の試合になる。
これで1敗………4勝した方が勝ちになる。坂本君と霧島さんの勝負に持って行くには、3勝3敗で行かないといけないわけで……
「では、2人目の方は………」
「………私が行くわ」
2人目に名乗りをあげたのは、副代表の蘭さん……!
対して向こうから出て来たのは……
「やっほ、お姉ちゃん」
「……!!鈴………!!」
東雲鈴。蘭さんの妹……!!
蘭さんにとっては出来るだけ戦いたくない相手だったのだろう。苦い顔で話す。
「やっぱり貴女が出てくるのね……!」
「うん。当然」
「…………鈴。この際はっきりさせましょ。どっちが強いのか」
「………………分かったよ」
蘭さんが目の敵とまでは行かないけど、最大の敵。
強者と弱者。この絶対的な壁を壊す最大のチャンスであって、最大のピンチでもある。
鈴さんの成績を知っている人なら、確実に鈴さんが勝つと豪語するくらいに点数が離れすぎている。
すると、蘭さんが溜息をつく。
「……私はね、強者が嫌い。努力しない人はもっと嫌い。でも、貴女は違うわ。強者だけど、努力は人一倍して来てる。それは私が見て来たもの」
「……………うん」
「でも……私は鈴を超える。
「……じゃあ私も全力で行く。白黒つけよ、お姉ちゃん」
「………高橋先生。科目は世界史でお願いします」
ついに姉妹対決が実現しようとしている………
長年自己を恨んで来た蘭さん。それでも努力は欠かさなかったらしい。
だからこそ…………『奢れるものは大嫌い』なんだ。
【Fクラス 東雲 蘭 世界史 60点】
VS
【Aクラス 東雲 鈴 世界史 471点】
短刀を持つ蘭さんの召喚獣。
大槍を持つ鈴さんの召喚獣。
その差は歴然としすぎている。蘭そんの点数のざっと8倍近くの点数を誇っている。
普通の人は、鈴さんの方に軍配が上がると思っていることだろう。むしろそれが当然。学力で決められるんだから。
でも、私は知ってる。
蘭さんは、そんな簡単に負けたりはしない。
「はぁぁぁぁっ!!」
大槍を蘭さんに向けて放つ。確かに、この大きな槍、掠っただけでも相当量持って行かれることだろう。
でも、その分
一直線に振るわれたその大槍を一筋縄で避けると、一気に鈴さんの懐に入る蘭さん。
ざっと2回、攻撃を入れるものの、そこまで点数に変わりはない。短刀のため、威力もないはず。
「私は………負けないっ!!」
「私もだよ、お姉ちゃんっ!!」
2本の短刀で大槍の攻撃を止めると、すかさず切り返す蘭さん。
【Fクラス 東雲 蘭 世界史 58点】
VS
【Aクラス 東雲 鈴 世界史 318点】
徐々に鈴さんを追い詰める蘭さん。まさにこれこそ正々堂々の勝負。これが、蘭さんが本当にしたかった試合だろう。
がんばって………蘭さん………!!
「こ、のぉぉぉっ!!」
攻撃を仕掛ける鈴さんだが、全く攻撃が当たらない。それを器用に避ける蘭さん。
どちらが勝ってもおかしくない。
「そんな大振りじゃ当たらないわよ、鈴!!」
3度。こうして削っていくのも戦法の1つ。相手の判断を鈍らすことが出来るからか、蘭さんは全て鈴さんの行動を読んでいる。
「だったら………これで!」
横一線に放たれた大槍。でも見抜いていた蘭さんが鈴さんの後ろに回り込んだ………その時。
大槍の一閃を止めず、そのままぐるんと1回転をさせた。
「なっ!?」
行動を読んでいたのか、短刀で受け止めるも、遠心力という力で倍増された大槍を避けきれず、後ろに大きく飛ばされた。
判断が鈍っているばかりか、更に鋭くなっている。
【Fクラス 東雲 蘭 世界史 24点】
VS
【Aクラス 東雲 鈴 世界史 210点】
「止めたのにこれだけ……!」
段々焦りが見えてきたのは、蘭さんだった。この絶対的点差はどうやってもひっくり返らないのか。
でも。
『これはもう鈴さんの勝利は確定だよなー』
どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。
蘭さんは、苦しんできていた。妹の方が出来が良くて、非難される自分に。
その言葉を聞いた瞬間、蘭さんの目の色が変わった。
そして、いい放つ………!
「………言ったわね………私の、真の力………見せてあげるわッ!!」
刹那、目に見えない速さで切りまくる蘭さん。私でさえ、目を凝らしても動きに注視することはできない。
フラグを建てたあの人には感謝すべきかもしれない。
【Fクラス 東雲 蘭 世界史 24点】
VS
【Aクラス 東雲 鈴 世界史 93点】
「う………流石お姉ちゃん………でも……!!」
お互いこれで2ケタの勝負になった。すると妹は行動を読んだのか、狂いなく蘭さんに向けて大槍が振り下ろされる。
更に蘭さんはこの攻撃を右に躱す………!!
その瞬間、
鈴さんの振り落とした大槍の動きが、僅かながら
「……えっ……!?」
軌道修正した槍は蘭さんに向けて再度振り下ろされ、蘭さんは反応出来ず真っ二つに切り落とされた。
…かにみえた。
そこに、蘭さんはいなかった。
「え、どこ…………に」
「ここよ、鈴っ!!」
居なくなった蘭さんを探そうと虚空を仰いだ時、ものすごいスピードで接近する召喚獣-----------
あの一瞬で上に飛び、さらに追撃を仕掛けた。
そしてついに…………
【Fクラス 東雲 蘭 世界史 24点】
VS
【Aクラス 東雲 鈴 世界史 0点】
姉妹対決が、勝敗をつけた。
これで1勝1敗。……お疲れ様、蘭さん。
「はぁ…………はぁ…………」
「ふぅ……流石、お姉ちゃんだね……」
「………私は、貴女のお姉ちゃんよ?簡単には負けるわけにいかないもの」
お互いに疲弊しているみたいで、息を整っていない。
あれはもしかすれば、今までで1番いい試合だったんじゃないのだろうか。
「……それにしても……鈴、あの『ぶれ』は何だったのよ………」
天井を見上げて汗を拭う蘭さん。そう、一瞬だが槍先がぶれて軌道を変えた。これは私も確認済みだ。
すると、鈴さんもその場に倒れこんで言う。
「………400点を超えるとね、腕輪が召喚獣につけられるの。その能力だよ………」
「腕輪の能力………?空間を捻じ曲げたの!?」
「うん。切っ先だけだけど………私の奥の手だった。でも……お姉ちゃんには、通じなかった」
内心悔しそうに嘆く鈴さん。そうか、あのぶれは腕輪の能力だったんだ。
初期能力が400点を超えていれば、使うタイミングは制限はない。効果は1試合だけ。
「……あんなことまで出来るようになるなんてね……鈴は強いわ…」
「何言ってるの。お姉ちゃんも十分強者だよ。だって、私を倒したんだから」
笑顔を見せる鈴さん。思わず蘭さんも微笑み返した。
蘭さんが目的としている『復讐』は成し遂げられた、と言っても過言ではない。
いくら弱くても、最後には勝つことが出来たんだから。