バカとテストと召喚獣〜The Another Story〜 作:ぷろとうぃんぐ
良かった………ってかもう疲れた…………
蓮「お疲れ様」
蘭「それじゃ、最終話(仮)よ!」
「よくやった、翼」
「…………うん」
「すごいですっ!翼さんなら最初から最後まで勝てると思ってましたっ!」
「負ける要素がなかったわよ、まず」
鳥花さんと蘭さんが出迎える。これで………あとはFクラスの勝利を決めれば、もうこの学校にいる意味はないかな………
「これで2VS2ですね」
高橋先生からも若干焦りが感じられた。ここまで渡り合えるとは思っていなかったのか、それとも………
「最後の1人、お願いします」
そう指名され、当然決戦に向かうのは、坂本君。彼しか残ってない。
向こうは最大の敵である霧島さん。
坂本君はフィールドに上がると、叫ぶようにして言う。
「科目は日本史。内容は小学生レベル。そして………方式は3分間勝負だ!召喚獣の戦闘はなしにする!」
すると、今まで静かだったAクラスが急にざわめき始めた。霧島さんが負けるわけがない、そう過信していたからこそかな。
100点満点の上限ありだと、流石にきつかったみたいだ。
これが、最後だ………!
「では、始めて下さい!」
「あわわ………どうなるんでしょうか………私、心臓が飛び出しそうです」
「何で張本人よりも応援側がバクついてるのよ。大丈夫よ、信じましょう」
ウロウロする鳥花さんを宥める蘭さん。流石の信頼だ。幼馴染だけあるよね。
「……翼。浮かない顔ね。どうしたの?」
蓮が私に話しかける。そんな顔をしていたのかな………私はあくまで無表情だったけど………
いや、無表情だからこそ、私の真意を汲み取ったのかもしれない。
蓮にだけはいっておかないとね………
「………蓮にだけは、言っておくことがある」
「な、何よ………改まって」
「私は、このAクラス戦が終わったらこの学校をやめる」
「………本気なの、翼?」
「本気。その結果が勝っても負けても」
「はぁ………だからアンタ、朝からテンション低かったのね。それで?理由はなんなの?」
「私は才能に溺れてる『強者』だから。私にこのクラスは場違いだよ。こうやって、蘭さんみたいに、弱者でも勝利を掴む方法を、真剣に考えて、ここまで勝ち抜いてきたこのクラスとは根本的に違う」
「私や姫路さんはどうなるのよ?」
「……それは知らない。でも、私はこれからもFクラスに在籍して、同じ学年から嫉妬を受けながら暮らしていくのは、耐えられないから」
学力だけで決まってしまうこの学校が嫌い………それは私も同じだ。
後ろめたさを感じながら1年間も疎まれるのは、精神が持たないから。
「そ、じゃあ私もやめるわ」
「………何で。もしかしてストーカー?」
「一緒に暮らしてて何でストーカーなんてしないといけないのよ。翼がいない学校は、退屈だからよ」
「………蘭さんは」
「あれは別物」
あれって。いやまぁ、勝手に決めた私がとやかく言う意味はないんだろうけど………勿体無くない?
「それに、今の翼をおいて、のうのうと暮らしてけるほど、私は落ちぶれていないわ」
「……そっか」
せめて蓮はこの学校に、なんて言おうとしたけど、この強情がそんなことはさせないか………
すると、採点の終えた先生がマイクで呼びかける。
運命の結果だ。
「採点が終了しました。霧島さんの点数は………28点。そして坂本君の点数は………………」
うわー、怖い………どっちだろう。勝ちか、負けか。緊張するなぁ……
周りを見渡すと、手を合わせて祈る人、まだ霧島さんが勝つと過信して余裕の表情を浮かべている人、ショックで卒倒してる人。
………ん?卒倒?
「わー!鳥花さんしっかり!!」
「保健室に!保健室にーーっ!!」
結果を聞く前に卒倒してどうするの鳥花さん!
そしてついに、とうとう待ちに待った結果が告げられる。
「……………坂本君、30点」
【Fクラス 坂本 雄二 日本史 30点】
VS
【Aクラス 霧島 翔子 日本史 28点】
時が、止まったかのような錯覚を覚えた。
ディスプレイに浮かび出される点数を見る。………勝った?
………勝った、の?
その事実を飲むのに、私は数秒ほど間が空いた。
その瞬間、Fクラスが歓喜した。Aクラスはまだ飲み込めていないのか唖然としたまま。
『うおおおおおお!!マジか!マジなのか!!』
『夢じゃないよな!!福浦!頬をつねってくれ!』
『これは夢じゃない!本当だ!!俺たちは、勝ったんだ!!』
これまでにない大騒ぎ。Aクラス戦に挑み、見事下剋上を達成させた。
「…………」
「何やり遂げた、みたいな顔してるの翼。まだ、終わってないわよ」
「知ってる。でも………人間って、やれば出来るんだなぁって……」
「………負けた……」
「代表………」
霧島さんは悔しそうに俯いている。それは当然だ。Fクラスの代表に、負けたのだから。
『これで俺たちの設備が!システムデスクに!!』
私たちが散々かけて言っていた設備の交換。
しかし、坂本君は手を上げて牽制する。
「そのことなんだが」
「俺たちは、Aクラスの設備は不要だ」
『何だとお前坂本!どういうつもりだ!』
『百合と睡眠薬を持ってこい!ゆっくり眠らせてやるぜ!』
「落ち着けお前ら」
Aクラス戦は無事戦争に勝利して、狂喜乱舞している最中の宣言。そりゃ気持ちは分かるけど……
坂本君は『FクラスでもAクラスに勝てる』ことの証明を果たしている。
すると、優子さんが思わず口を挟む。
「何?情けでもかけようっての?そんなのは不要よ。また取り返してあげるから」
「情け?そんなつもりはないな。お前らは負けたクラスだ。そんなものかける必要はないだろう?」
「じゃあ………」
「答えはお前が今言っただろ……『また取り返す』って」
坂本君は何とも言えない複雑な表情を浮かべる。そうか………そういうことね………
「それが?」
「例え今勝ったとしても、それは一時的なものだ。次に誰でもいい。戦争宣言されればこっちには手も足も出せない。そういうことだ」
つまり、設備を奪い取ったとしても、次に攻められれば保証はない。そういうことだよ。
そりゃ………かなりここ数日の連戦で疲労してるし、土屋君たちの点数もない。
いつまで戦力を保持できるかわからないってこと。
「でも、そんなこと言ったら、いつまで経っても設備交換なんて出来ないよね?」
「だが、今回はあえてAクラスを手放して、また今度の機会を伺おうじゃないか」
「そうね………それが1番いいかもね」
「だから、Aクラスに交渉がある」
坂本君はAクラスに向けて言う。
「俺たちは今回はここで引かせてもらう。だが、3か月後………再戦権を貰いたい」
「再戦権?」
「そうだ。ここに来るまでにかなり手を施した意味が分かるだろう?」
Dクラスに室外機を壊せ、と言ったり。
Bクラスに女装してAクラスに宣告させたり。
それらは全てAクラスに挑むための布石だった。
結局は、劣等生クラスのFクラスがAクラスに挑んだとしても、まず宣戦布告を受けて貰えない恐れがある。
だから、その力の見せしめとして順に飛ばしながら勝ち進み、挑戦権を得たと言っても、過言じゃないよね。
「今度もまたDクラスから……はこちらとしても勘弁願いたい。だからこその、再戦権だ。つまりはこの場で、こうしてまた、
「………分かった。雄二が言うのなら、そうする」
「その代わり、雄二君を自由に使っていいから、ねっ?」
蘭さんの小悪魔にも似た不条理な提案。それに食いついた霧島さんは、坂本君の首根っこを使って連れて行く。
「ぐおっ!まて翔子落ち着ぐぁぁぁぁ」
「ドナドナドーナードーナー……」
蓮は哀れと感じたのか、それとも連行される坂本君を子牛と取ったのか、『ドナドナ』を歌い上げ始める。
ここに、Aクラス戦が集結した。
「…………ちょっといい?翼?」
Aクラス戦を終え、代表がいないまま解散となったFクラス。私はパンフと一緒に入っていた『退学届』を手にしていた。
私の出番は終わり……そう思ってたんだけど、蘭さんが私を引き止めた。
出来るなら、今は顔を合わせたくなかった。
「………何?」
「聞いたわ………本当に退学するつもりなの?」
いつもより険しい……いや、少し悲しそうな顔をして聞く蘭さん。恐らく情報網は蓮だろう。
蓮め………帰ったら苺サイダーでもプレゼントしてやる………果物と炭酸が大の苦手だからね。
私はあくまでも冷静に言う。
「うん………私は、このクラスで1年も生活するのは、無理だから」
「……理由を聞かせて。蓮が本人から聞いた方がいい………って教えてくれなかったから……」
損な役回りまでさせる気か、蓮め……
奥歯を噛みながら溜息をつく。
「それは、私が強者だから。貴女の大っ嫌いな」
「………」
「蘭さんの嫌いだって言ってたその人。まさにそれ、私のことだよ。強いのに、何の努力も、才能だけに縋って生きてきたんだもん。嫌われて当然だよね」
「………翼、貴女は……………」
「私はね。人間じゃないの」
蘭さんに告げた。
私の最大にして、最悪の秘密。それは蓮や私、あとは居候組しか知らないこと。
私が1番後ろめたく思っていることで、蘭さんと決定的に違うことだろうと思う。
蘭さんは乾いた声で、尋ねる。
「ど、どういうこと………人間じゃないって………」
「文字通り。私は人間とは少し変わってるんだ。臓器はないし、骨も体に入ってない。私が産まれたのは、研究所だったよ」
それは蓮のお父さんの経営していた研究所なんだけど。
「まずね、産まれてから私は心にあるぽっかり空いた穴があることが分かったの。頭脳は0歳ながらあるにはあるし、運動も出来る。でも………これからどうやって生きていけばいいのか分からなくなった時がある。それが、両親を事故でなくした時」
小学生の頃。私は両親を事故で亡くした。
蓮のとは違う、育ててくれた両親。あとは、私が産まれたきっかけである長男。
雪の降る夜。雪崩に巻き込まれて、私と次男だけが生き残った。
その時に、どうしようもない空虚感に襲われた。
「何とか私は1人で生きていったよ。次男は施設に入ってね………私は施設が嫌いだから逃げた。そこから、私は研究所で努力もせず、ニート生活だったよ」
「……………」
「疎まれるのは、もう嫌なの。人間の気持ちなんて分からないよ………後ろ指刺されながら生きてくのは、もううんざりだから」
「翼………!」
「私が優ってるからって、私を有名にして、噂されて、事実無根なこと言われて………嫉妬されて、殺されそうになったこともある」
「えっ………」
「………私なんて、この学校に合わないでしょ?」
そもそも、私は学校には合わないんだよね。集団で生きてくのは、すごく怖いから………
過剰かもしれないけど……私は……
「……………翼っ!!」
ギュム、という柔らかい感触が体に伝わった。
蘭さんは私が言葉を紡ぐ前に、抱きしめたのだ。
なんで蓮といい蘭さんといい、私を抱きしめるんだろ………?
蘭さんは涙目になって、叫んだ。
「そんなことない!私は………今回の戦争で知ったの!強者が嫌い、私は弱者だ、なんていってる私が強者だったって………」
「………だね。蘭さんは、強者の鈴さんに勝ったんだから………」
「才能に溺れてたのは私よ!それに………翼とは、一緒に過ごしていきたいわよ!学力が高いのに、奢ることもしないで、自慢すらしないで、ただ私を………Fクラスをサポートしてくれた!初めて点数を見た時は驚いたけど………貴女が本当に強い人だったって思ったわ!」
「…………それは、違うよ。学力が高くても……私は、弱いから。あの時のことをまだ引っ張って、理屈にして…………」
いくら強いからと言っても、精神は実は脆いものだよ。
強がってるだけで、内心弱かったりする。
某キャラクターの言葉を借りるなら、『人類は皆弱者』なのかもしれないね………
「………私に、あのクラスは重すぎるよ………目標に向かって団結して、励ましあって……私みたいな人外が、いる場所じゃない……!」
「私は必要なのよっ!!!」
ついに耐えられなくなったのか涙を流しながら叫ぶ。
「翼もっ、蓮も、雄二君も、吉井君もっ!姫路さんも、鳥花さんも!あのクラスは誰かが欠けたら、成り立たないのよ!!」
「………………そんなこと」
「あるのっ!!貴女が居てくれたからこそ………!あのクラスはここまで勝ち続けられた!誰か1人でもいないと、ここまで来れなかったわ!」
抱きしめる力がより一層強くなるのを感じた。私もそっと、蘭さんの腰に手を回す。
蘭さんは、そんなことを思って、私と接してくれてたのかな………
「確かに私は強者は嫌いよ!でも、翼!貴女は違う。才能を頼りにしないで、それを自慢もしないで……!弱い私にも優しく、接してくれて………」
小さい頃から、きっと妹と比較され続けて、姉としてのプライドが壊れてしまったのだろう。
だから、彼女は見返そうとした。自分を馬鹿にする人を。
「……私は生まれつき、覚えることが出来なかった。今でも勉強してるのに、頭に入ってこないの……そんなことを御構い無しに、あいつらは………!!」
「……………蘭さん」
「私は、翼のことが必要なの!誰であっても、失いたくないのよ……!」
温かいクラス。互いを励ましあって協力していくクラスなんて、生涯何度出会えるのかな。
すると、蘭さんが衝撃的な言葉を口にした。
「翼っ!!私は貴女が好きよっ!!」
「………………え?ちょ、ちょっと待って?」
「待たない!大好きだわ!蓮の次に!」
「それでも二の次……って待て待て待て待って!?」
何なにナニ!?百合の気でもあるの!?さっきからキスされそうなんだけど!?
「なによ、心配してきてあげたら……盛り上がってるわね」
「れ、蓮っ!助けて!貞操奪われそうなんだけど!!」
教室に入ってきた蓮に助けを求める。この状況は私にとって、すごくピンチだよ!?
「なんかたまになっちゃうらしいわ………蘭の百合百合モード」
「えっ!?蓮、まさか……」
「………まさかよ………何がいけなかったのかいきなり発動して……….キスされたわ………」
「は、む、ムグッ!?」
まさか蘭さんにこんな一面があるなんて………もしかして感情が高ぶるとこうなっちゃうの!?
必要に「必要必要」言ってたからあれ、とも思ったんだけど!?
「ちょっ………蘭、その辺にしとかないと、そろそろ翼が死んじゃうわよ……(羞恥で)」
ご丁寧に色々やられまくって、放心状態の私。なんか………なんだかなぁ…………
蓮がこちらに近寄って来た時、蘭さんは目を光らせて私から手を離し、今度は蓮に飛びかかった。
「ぎゃーっ!?」
私は放心状態から立ち直ると、バッグを持って百合モードが立ち込める教室を飛び出そうとする。
「ちょっ………!!」
「蓮。秘密漏洩の罪………これでチャラだよ?」
「罪、重すぎないかしら!?」
さて、自主規制自主規制と思いながらドアをパタリとクローズ。
色々な意味で、今日はぐったりだ………
『結局、どうするのよ?』
『………あの学校に行くよ。少なからず1人は必要にしてくれる人がいるって分かったし』
『………あの暴走百合副代表だとしても?』
『……う、うん………』
『………そう』
『ごめんね、蓮。私のせいで振り回しちゃって………』
『何を今更………今に始まったことじゃないから、別に構わないわよ。昨日のことを言ってるの?』
『昨日は………蓮と蘭さんの濃厚な絡みが………』
『うるさいわ……地味にショックなんだから、言わないでよ』
『とにかく、私はこのまま何とかやってくよ』
『そう……何かあったら言いなさいよ。私でも、鳥花さんでも、蘭でもいいから』
『うん…………』
若干の不安を押し込んで、私はこれからの学園生活を送ることになった。
強者だろうが、弱者だろうが、関係ない、平等な関係を目指して--------
ということで、第1章が終了となります!
翼「するの2回目だから前書き後書き端折ったよ。別に支障はなかったけど………」
………感想とか全部消えた(涙)………………
蓮「真面目にショック受けてるわね。第2章は早くて今日から。遅くて9月初めかしら?」
翼「それじゃー!また会いましょうねー!」