バカとテストと召喚獣〜The Another Story〜 作:ぷろとうぃんぐ
しばらくすると、先生と坂本君達が帰ってきた。その間、クラス内が注目してるとは知らずに、謎の茶番劇を繰り広げた。
内容が内容なので以下割愛。
私が暇を持て余して本を読んでいる間も、自己紹介が流れるように続いて行った。そして………
「坂本君。貴方で最後です。自己紹介をお願いします」
「はぁ。やっとか………さて」
謎の笑みを浮かべながら、壇上の上に立つ坂本君。
さっきも吉井君と話してたみたいだし、何かやるつもりなのかな。
「俺がFクラスの代表、坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも構わない」
一拍置いてから、私達を見やる。
「さて………諸君達に問おう。Aクラスの設備を見た者は既にいるかもしれない。
1人ずつにリクライニングシートやシステムデスク、エアコン完備の上、プラズマディスプレイまでもが置いてあるそうだが………」
そして、このFクラスの内部………
蜘蛛の巣が張った窓。
いつ抜けてもおかしくない畳。
ガムテープで補正されたドア。
一通り見渡した後に、再び彼は口を開いた。
「…………不満はないか?」
『『『大有りじゃあぁぁぁぁぁっ!!!』』』
クラス初めての一丸となっての大コール。私含めて、女子達はただ静かに見ているだけだけど。
でも、確かに異存はある。学力だけで良し悪しが決められてしまうということも含めて、AクラスとFクラスでは、さも当然のようにこの扱い。
流石に反論もしたくなるよね。
坂本君はその反応を聞いて、頷いた。
「そうだろう。この件に関して言えば、俺も問題意識を持っている」
『同じ学費なのに、この扱いはあんまりじゃないか!』
『そうだそうだ!異論を唱える!』
「そこでだ。我々Fクラスは………Aクラスに試召戦争を仕掛けようと思う」
ピク、と私の体が疼いた。
試召戦争。どんなものかは分からないけど、要するに下剋上を行う、ということか。
マニュアルに書いてあったけど、あまりにダラダラ8ページに渡って書いてあったから読んでない。
携帯の説明書も読まないタイプなんだ、私。
でも、勘で、勘だけで分かるよ。
しかし、坂本君が提案した試召戦争宣言に対して、反論が飛び出す。
『何を馬鹿なことを』
『Aクラス相手に勝てるわけがない』
『俺は姫路さんが居れば何も要らないんだ!』
その反論は予想通りなのか、その反対意見を無視して話を進める。
「転校してきた奴もいるから、簡単に説明しておくぞ」
以下省略。私が更に簡単にするよ。
試召戦争……『試験召喚戦争』は、クラスの設備を賭けて戦う、学年全体の戦争らしい。
で、各生徒は自分の点数の強さを持った召喚獣、というもので戦わせ、勝敗を決する。
先に代表を倒したクラスの勝ち。私達Fクラスの場合、代表に当たるのは坂本君になる。
当然、これは学力順で振り分けられているため、最下層のFクラスがお嬢様クラスのAクラスなんかに、勝てる訳が無い。そういうことなのかな?
確かに、世の中学力だけじゃない。知略や財力、死力、五感全てを使えばひっくり返すことも出来る。
坂本君は一通り説明し終えた後、皆に向けて訴える。
「勝てない?そんな訳はない。このクラスには勝てる人材が揃っている………それを教えてやろう」
ニィ、と悪の笑みを浮かべる坂本君。何か考えあっての発案だとは思ったけど、私達は最下層のクラス。本当に勝てるのかな。
「まずは、木下秀吉がいる」
『おお、確か演劇部のホープ……』
『そういえば、木下優子の双子の姉妹だったな………』
成績とは何の関係もない気がする。そもそもFクラスにいるんだし、学力はないかも知れないけど、士気を上げるにはいいのかも。
何かと役に立つ時があるんだろうし。
「土屋康太もいる」
『誰だ………?』
「知らないようなら教えてやる。彼奴は『
『な、なんだと!?あいつが!?』
『だがみろ………姫路さんのスカートの中を盗撮しようとしているぞ……』
「は、はわっ」
土屋君の存在に気付かなかったのか、慌てて体制を変える姫路さん。女の子の敵だね………
あだ名については言及しない。だってムッツリ、ってことだよね?
「それに姫路瑞希もいる」
「わ、私ですか!?」
「あぁ。ウチの主戦力だ。期待している」
そっか。実力としてはAクラスレベルなんだよね。不慮でFクラス入りになったとしても、学力は変わらないはず。
『そうだ、俺たちには彼女がいる』
『姫路さんさえいれば、何も要らないな』
ところで、さっきから姫路さんに告白してる人は誰なんだろう。
「島田美波もいるしな」
彼女はドイツからの帰国子女らしく日本語がまだ不安定だった。
でもその代わり、理数科目においては成績がBクラス常連レベルらしいから、十分に戦える。
「更に東雲蘭もいる」
『確か、あの『
『あぁ………東雲さん、好きです………』
ふぁ、ファンクラブがありそうなほど人気なんだね、蘭さん。
ところで、マッハブラストって何の中二病?
物知りな月風さんに聞いてみる。
「マッハブラスト………って?」
「東雲さんは学力はそこそこなんですけど、召喚獣の動きがやたらと速くて………捉えるのが難しいそうです」
要するに、スピード能力を持った召喚獣だから、ってことか。成る程、納得したよ。
本人にとっては不名誉なのか吝かじゃないけどね。
「当然、俺も全力を出そう」
『坂本って小学生の頃は神童って呼ばれてたよな』
『じゃあAクラスの実力を持った奴が2人もいるってことか!』
いけそうだ、やれそうだ。そんな声があちこちで響く。
これが坂本君の纏める力か………士気高めには定評がありそう。
………じゃあ私はどうなんだろ。勉強は得意ではあるけど、役に立てるのかな。
「それに………吉井明久もいる」
『……………誰だ?』
「知らないのか。あいつは『観察処分者』だ」
「か、観察処分者?」
聞きなれない言葉に私は思わず首を傾けた。
少なくとも、褒め言葉ではないみたいだ。
坂本君が私に説明をしてくれる。正確には、縁が無かったのか姫路さんもハテナを浮かべている。
「ああ。基本召喚獣はその性質からか物に触れない。だが、設定を変えれば触ることが出来る。召喚獣の腕力は成人男性の約10倍………と言われている」
「そんなに………!?」
「ま、簡単に言えば教師の雑用係ってことだ」
「バカの代名詞、とも言われていますけどね……」
「そうだ。居ても居なくても変わらない奴だしな」
「肯定するな、バカ雄二!」
これが特例、という奴なのかな。教師の雑用、なんて罰ゲームみたいだ。
しかも、と坂本君は続ける。
「観察処分者の召喚獣にはちと仕様が違ってな。召喚獣の疲労の一部が本人に帰ってくるフィードバックつきだ」
「ってことは………戦争にはマトモに参加出来ない……ってことね」
「あぁ。攻撃されても本体にダメージが飛んでくるからな。だが、居ても居なくても同じだから気にするな」
「2回も言う必要がどこに!!」
坂本君の毒に吉井君は頭を抱える。
何をしたら、そんな観察処分者なんて不名誉な係に任命されるんだろう………
「だが、使える人材は揃っている。最底辺と罵られるクラスにこんなに力強い人材が揃っているんだ!皆、ペンを執れ!俺たちに必要なものは卓袱台ではない!システムデスクだ!!」
『『『おおおおおおおおおお!!!』』』
男子達の歓声。すごい団結力だ。……私達6人はついていけてないけど。
でもこの現状には不満足なのは確かだから、気持ちは同じだよ。
坂本君は吉井君に告げる。
「明久。お前にはDクラスの宣戦布告の使者役をやってもらおう。今日の午後からだ」
「……下位勢力の宣戦布告の使者って、大抵酷い目に遭うよね」
「大丈夫だ。俺を信じろ。俺は友人を騙すような人間じゃない」
「………分かったよ、それなら僕が行くよ」
「お前にしか出来ないことだ。頼んだぞ」
クラスメイトたちの歓声と拍手を横目に、吉井君はDクラスに向かった。
成る程、まずは相手はDクラスで決定なんだ。
すると吉井君を哀れな目で見送って居た蘭さんが口を開く。
「………試召戦争は、上位クラスには何の得もないから、暴行されるのは目に見えてるわね」
「……利用されたんだ、吉井君……」