バカとテストと召喚獣〜The Another Story〜 作:ぷろとうぃんぐ
慌てて教室に戻る須川君。坂本君に指示を仰ぎに行ったのだろう。戦局を覆すためには、確かに時間稼ぎをする必要がある。
その前に、間に合うのかな………
時刻は3時を過ぎていた。今だ交戦一方だけど、徐々に押されているのが分かった。
私達も参戦するしかないのか、そう思っていた。
すると、また相手クラスに動きがあった。
『く、埒があかないぞ!』
『あいつら、時間つぶしが明らかな目的だ!!』
『もう少し持ちこたえろ!今数学の船越先生を呼んでいる!』
これは………
「つまり、さっき木内先生を呼び出したのは補充試験のためで、船越先生を呼んだのは教科フィールドを作るため………?」
「合ってるわよ翼。なかなか頭回るじゃない」
「でもFクラスは地力で押し負けてる………」
『Fクラス 宮野 解人 化学 32点』
VS
『Dクラス 杉内 都 化学 73点』
目の前で打ち取られる宮野君の召喚獣。確かに、実力が全然違う。
衰弱したところを狙い撃つしか、勝つ方法がないってことなんだ……それでも例外はあるみたいだけど。
前衛部隊も残り5人となったところで、
----------ピンポンパンポーン
『マイクテスマイクテス。緊急の呼び出しです』
校内放送。この声は須川君の声だね。
「面が割れないように放送室で校内放送をかけるのは正しいわね……」
「代表、そこまで考えてるなんて流石ね……」
『船越先生、船越先生』
しかも話題の対象はさっき名前が出た船越先生。ナイスタイミング。まるで狙ったかのようだよ。
『Fクラスの吉井明久君が体育館裏でお待ちしております』
「え」
『生徒と教師の垣根を超えた、大切な話があるようです』
………………どゆこと?
「………船越先生は婚期を逃してね………ついに生徒にまで求婚するようになったらしいのよ……あくまで噂よ?」
そんな先生があの放送を聞いたら……。………う、うん、確かに体育館裏に行くね………下手すれば数時間も待つかもしれない。
「……………………」
「よ、吉井君………」
作戦のためとは言え、すごく可哀想に思えてきた。
すると、あの放送で廊下内が歓声に変わった。
「隊長!あんたぁ男だよ!」
「俺たちのためにここまで………」
「よーし、お前ら!隊長の死を無駄にはするな!何が何でも押し通すぞ!!」
『『おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!』』
『おい聞いたかよ、今の放送』
『こんなことまでしてくるか……』
『こんな意思の高い奴等に勝てるのか………?』
士気も上がり、作戦は大成功。……1人の儚い犠牲を生み出してしまったけど………
「…………す…………須川ァァァァァァァ!!!」
「…………命令したのは、坂本君だけどね」
「はっ!雄二ぃぃぃぃいいい!!姿を現せぇぇぇ!!」
吉井君錯乱。
でも、とにかく司令塔だけは倒しておく必要がある。
「……………試獣召喚《サモン》!!」
私が踏み込んだ瞬間、蘭さんも試獣召喚を行った。
やはり蘭さんのデフォルメと両手には短剣を握っていて、服装はジャージ着用だ。
「Fクラス、東雲蘭が
「く……っ!お前は
「あら、私のこと知ってるのね。話が速いわ!」
『Fクラス 東雲 蘭 化学 24点』
VS
『Dクラス 塚本 正志 化学 101点』
「ひっくっ!」
絶えれず蓮が叫んだ。さっきの人は弱ってたからあの点数だったんだろうけど、蘭さんの場合はこれが初の試合となる。
初期からこの点数はやばいんじゃないの?
「うるさいわね。まぁ、見てなさいよ」
蘭さんはそう言うと、目を閉じた。
集中するのに外からの雑音は邪魔になるだけだからなんだろうか。
真っ直ぐ、ただ動きもしない蘭さんを刺そうと、獲物である刀を構えて突っ込んでくる相手。
距離はおよそ30cm。刀身ならば一撃振れば当たってしまう。掠っただけでも、蘭さんの場合だと死んでしまう恐れがある。
一撃を当てようと、踏み込んだその一瞬の隙をついた。
蘭さんの召喚獣が消えた。
否、速過ぎて目で追うことが出来なかった、というのが正確なのかな。
『Fクラス 東雲 蘭 化学 24点』
VS
『Dクラス 塚本 正志 化学 71点』
「は、速すぎる………これが、加速斬撃の力か………」
「ま、点数がないから攻撃力もないけど--------」
「-------当たらなければいいのよ」
刹那、先ほどとは比べ物にならない速さで相手を切り刻む。
1回1回の攻撃は小さいけど、当たらなければ、点数が減ることも、当然死ぬこともない。
『Fクラス 東雲 蘭 化学 24点』
VS
『Dクラス 塚本 正志 化学 0点』
気付けば、1ダメージも与えることもなく倒していた。
生徒指導の西村先生が、塚本君を担いで学習室へ消えて行った。
司令塔が連れて行かれたので、指示が滞ったDクラスの前線。
『こんなメタルスライムみたいな奴、人数で攻めればどうにかなる!』
『そうだ!たかだか24点だ!たった一撃でも当てればいい!
たった1人の女の子を、大人数で攻める気………!?
……見過ごしておけない。
「Fクラス、小林翼が勝負を受けます………!!」
「貴女………!大丈夫なの?試召戦争は初めてじゃないの?」
「わかんないけど………今この状態を放っておけるほど、堕落はしてない!」
私は歯をくいしばると二刀流の召喚獣を前に走らせる。
これ、なかなかコツがいるかも。邪念が少しでも入ると、命令が途切れちゃう訳だし。
その瞬間だった。
一閃。
相手の攻撃を止めた私は、即座に片手の剣で相手の召喚獣を貫いていた。
『Fクラス 小林 翼 化学 486点』
VS
『Dクラス 輝 王暸 化学 102点』
『『『な…………っ!!』』』
フィールド全体から、味方も敵もみんな唖然とした顔をしていた。
482点。少なくとも、Fクラスの実力ではない。
「何よ………この点数………」
『あれ………学年代表よりも上じゃねえか……!?』
『何でFクラスなんかに………』
「………相手は怯んでるよ、蘭さん。お願いします!」
「………!わかったわ!」
高速でフィールドを駆け抜ける蘭さんの召喚獣。近くにいたDクラスの面々を切り裂いて行く。
『これはやばいぞ………』
『こんなやつに、正面きって勝てるかよ!』
騒然となる中、ついに坂本君率いる近衛部隊も到着した。
「………明久。これはどういう状態だ?30字以内で簡潔に頼む」
「……小林さんの召喚獣が、あまりにも強すぎて……」
「ほう」
吉井君からそこまで説明を聞いて、少し笑みを浮かべると、伝令する。
「今がチャンスだ!相手は怖気付いている。代表を探し出せ!」
もうすぐ下校時間ということもあり、戦争と関係のない生徒が下校していく。その中から代表を探すのは骨が折れるが、近衛部隊だった月風さんが早々見つける。
「居ました!敵将の
「よし、ボコるぞ!この面子ならば一瞬だ!!」
「お前ら人でなしか!!」
敵将である平賀君。何故か怯えきっている。
その理由は、至極簡単。
だって私・姫路さんのダブルコンビに加速斬撃の蘭さん。その他不明の面々が突っ込んできてるし。
『く、Dクラス玉野美紀が------』
「Fクラス、霧島蓮が勝負を受けて立つわ」
平賀君の要である近衛部隊も坂本君や蓮たちによって抑えられた。
これで、
「ご、ごめんなさいっ!」
『Fクラス 姫路 瑞希 現代文 339点』
VS
『Dクラス 平賀 源二 現代文 129点』
最後の一撃を決めたのは、姫路さんだった。