バカとテストと召喚獣〜The Another Story〜   作:ぷろとうぃんぐ

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9話 対談と交渉

『Dクラス 平賀源二 討死』

 

その一報を聞いたFクラスの面々はそれぞれに喜んだ。

最下層に位置するFクラスが、中間に位置するDクラスに勝てるのか、それすらも虚偽の疑いがあった。

それを、しっかりやり遂げることが出来た。これ時点で既に下剋上の完成だね。

代表である坂本君を賞賛する声や、最後の一撃を決めた姫路さん、敵の行動を上手く抑えた蘭さんなどが英雄扱いされているの図。

蘭さんがいなければ、前線部隊はあはや全滅になってたみたいだし。

ちなみに、吉井君はさっきの偽情報の恨みか、坂本君をどこからか持って来た包丁で刺そうとしてたみたいだけど、見破られてた。知略においては坂本君の方が上だもんね。

 

「まさか………Aクラス並の実力候補が2人もいるとは………信じられん」

 

悔しそうに俯くDクラス代表。すると、Fクラスのとある男子生徒が尋ねる。

 

『2人………?』

「あぁ、姫路瑞希と小林翼だ。転校生だから、という理由で調べてなかったんだが………大いに敵を混乱させてくれた。しかも小林の点数は、あのAクラス代表よりも遥かに上回っている。ウチの2大戦力だ」

 

坂本君がそう説明すると、またしても盛り上がる面々。

Fクラスだから、と油断したのが向こうの敗因の1つだと思う。

 

「ルールに従って……クラスを開け渡そう。だが、今日はこんな時間だ。明日でいいか?」

「……もちろん、明日でいいよね。雄二?」

「…いや、その必要はない」

「何で?」

「Dクラスの設備を奪うつもりは、こっちには一切ないからだ」

 

坂本君はそう言い切る。

そっか、私たちの狙いはあくまでAクラスであって、途中段階にあるDクラスじゃない。設備をダシにして、別のことをお願いする-------当初の目的の算段と同じだね。

まさかそんなことを言われるとは思わなかった平賀君は、少し戸惑いながら言う。

 

「それは俺達には有難い提案だが……それで本当にいいのか?」

「もちろん、それに見合った条件がある。それを飲んでくれれば、設備の明け渡しはナシだ」

「………その条件っていうのは」

「なんだ、大したことじゃない。俺の指示があったら、アレを壊して欲しい」

 

坂本君の指を指す方向に、それはあった。それは、窓の外に位置する。

スペースの関係で置かれて居た………

 

「………Bクラスの室外機(・・・)……!」

「設備を壊すんだ。教師にはある程度目をつけられるリスクはあるが………悪い取引って訳でもないだろう?」

 

試召戦争に負けたクラスは、3か月という当面長い期間、戦争を起こすことは出来ない。設備を取り替える、という話になれば、3か月の期間、彼らは卓袱台で過ごすことになる。そんなことは、向こうも望んでないし、こっちも望んでない。

そう考えると、好条件だよね。

 

「それは願ってもない提案だが……本当にいいのか?」

「あぁ。次のBクラス戦に必要なんでな」

「……そうか。ではその条件を呑まして貰おうじゃないか」

「分かった。タイミングについてはまた後日だ。今日はもう解散して大丈夫だぞ」

「ああ。お前達がAクラスに勝てるように祈っているよ」

「……無理をするなよ。どうせ無理だ、とでも思ってるんだろう?」

「………どうかな。学年最上位候補にAクラス常連レベル。加速斬撃(マッハブラスト)………もしかしたら、もあるかもしれない。あくまで『かも』の話だが」

「推定でも可能性があるなら、最後までやり通す主義なんでな。ま、応援でもしていてくれ」

 

坂本君はそう告げて、教室へ戻って行った。私達も、後に続くようにして動いた。

そうだよね。不平不満を感じてるのは、私達に限った話ではないんだ。表面上では取り繕っても、Aクラスには何かしらの嫉妬がある。

勉強も出来て、教室内の環境もいい。それに比べて自分達はどうなんだろう。

そう思うと、段々苛立ちが募って行って、最終的には試召戦争……なんてことに発展する。

でも、結局試召戦争っていうのは、ただ設備の取り替えをかけてしているものでもない。生徒のモチベーションの向上と、成績アップのためだ。

これを考えた人は、よっぽど頭が回るんじゃないだろうか。

 

「さて皆!今日はご苦労だった。明日は補充試験を行うから、今日はゆっくり休んでくれ!では解散だ!!」

 

その号令を聞いて、教室から出て行く生徒達。

さて、じゃあ私達も帰らないと……

 

「蓮、行こっか」

「そうね。今日は祝杯をあげるわよ。豪華にワインに見立てた葡萄ジュースでも飲みましょう」

「あ、私も同行していいですかっ!翼さん、蓮さん!」

「ん?いいよ?」

 

月風さん、まだそのハイテンションだったんだ………疲れないのかな。

 

「蘭、貴女も一緒に行か-------ってあれ?」

 

蓮は蘭さんも誘おうと教室を見回したけど、いるのは何やら向こうで話している坂本君と姫路さん、吉井君くらいしか残っていなかった。

 

「……先に帰っちゃったのかしら」

「……東雲さん、双子の妹が居ますから、もう帰っちゃったみたいですね」

「妹?」

「はい。Aクラスの上位チームに属しています」

「……ってことは、蘭は姉……」

 

まるで木下さんみたいだ。

でも、姉が妹に負けてる……ってことだよね……どんな気持ちなんだろう。

ふと、私の脳裏に、あの時蘭さんが言っていた言葉が思い浮かんだ。

 

 

『点数で補えなきゃ、別のものでフォローするしかないじゃない。弱者は強者には勝てない(・・・・・・・・・・・)、なんて一体どこの誰が決めたのよ』

 

 

これって、自分の家族のことを言ってたんじゃないのかな。出来のいい妹と、出来の悪い姉………その間には絶対的な力がある。

弱者と強者………蘭さんは、今まで自分の妹(きょうしゃ)に勝つために、色々な手を講じて来た。

その段階で手に入れたのが、あの加速斬撃(マッハブラスト)の能力。

………繋がりつつある。彼女が、何を求め、何をしたいのか。

 

「ほら、何を考え込んでるのよ。さっさと行くわよ」

「あ、うん………」

「蓮さん、翼さん!また今度どっか行きましょうよ!買い物とか映画とか!」

「良いわね。まず貴女の家どの辺よ……」

 

私は、今日家に帰ってもずっと考え込んでいた。

自分には、全然、知って得をする話でもないことなのに。

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