見滝原に魔法少女(幻想体)が居るのはおかしくないよね? 作:黒月天星
まどかとさやかが魔女の結界から脱出し、二人のいちゃつきをニマニマと見物していたキュウディーがお空にホームランされた後の事、
『セイよ。“魔法少女 絶望の騎士”と呼ぶ者も居るわ。まあよろしく』
「えっと……よろしく、お願いします?」
そうそっけなく自己紹介するのはさやか曰くセイ先生。しかし引き合わされたまどかは挨拶を返しながらも、ある一点が気になって仕方がなかった。それというのも、
「……先生。さっきからなんなんですそれ?」
『さっきも言ったでしょう? 探し人の一人が見つかったから、こうして逃げ出さないように捕まえているだけ』
『は、放してくれぇ』
『ダメ。じっとしていなさい』
我らが記憶喪失のロボット君が、情けない声を上げながらセイに抱きかかえられているからである。
さっきからロボットはジタバタと逃げ出そうとしているのだが、セイが優しくしかしがっちりとホールドしているためそれは叶わない。
「うわぁ。あんな優しい雰囲気になった先生初めて見たよ」
「優しそう……なの? ちょっと表情が硬くて読み取りにくいんだけど」
「一見分かりづらいけど、もうめっちゃご機嫌だよあれ。これがいわゆるデレたって奴なのかな? あたしに対しては普段はもっと厳しいのに……なんかちょっとあのロボット君にジェラシー」
『それは良いから早く助けてくれっ!?』
結局、ロボットを抱っこして放そうとしないセイに対し、まどかはその場で話し合いをする事となった。互いの自己紹介から始まり、何故ここに来たのかもだ。
まずまどかの側から説明していくと、少しずつセイの顔がまどかにも分かるほどに険しくなっていく。そして、この場所にキュウディーが導いたという話に差し掛かった所で、
『お~イタタ……なんとか戻ってこれたよ! やあやあ皆様お揃いで。楽しい話し合いなら僕も混ぜてピギャっ!?』
いけしゃあしゃあと戻ってきたキュウディーに対し、先ほどの比じゃない数の細剣が飛来。肉に当たらず皮のみをギリギリ近くの瓦礫に縫い留められ、キュウディーはたまらず残った耳でどこから取り出したか白旗を振る。
『さっきぶりね諸悪の根源。
『もうなってるよっ!?』
明らかに機嫌を損ねているセイの言葉にまどかは引っかかりを覚えた。そう。
「吹き飛ばした? セイさんをキュウディーが?」
『おっと。それは勘弁しておくれ。跳ぶ事自体は君も承諾した筈だよ?』
『せざるを得ない状況にしたのはアナタよ。もっと自分のした事に責任を持つべきね』
改めてまどかが話を聞いてみると、とんでもない事実が判明した。それは、元々セイは
『どんな世界だったかは聞かないで。……事の発端は、そこの今は白い獣になっているデ』
『キュウディー! ここではキュウディーで通ってるからね!』
『……そこのキュウディーのやらかしが原因ね。コイツは私達の世界でも勝手気ままに色々とやっていたけど今回は洒落にならない事をしたわ。
「それって……よくアニメや漫画にあるワープみたいな?」
まどかの質問に対し、多分そんな感じと先に話を聞いていたさやかが頷く。
「それでさ。先生の大切な人がどうやらこの町に跳ばされたらしいの。それを追って先生はこの町に来て、あやうく怪物のおやつにされかけていたあたしを助けてくれたんだ。その姿にあたしはもう痺れちゃってね。早速弟子入りを志願して今に至るって訳」
『フフっ。敢えて茶化して言うのは癖なのかしら我が弟子。あの時のアナタはもっと良くも悪くも大真面目だったわよ。そう“大切な人達を”』
「わあっ!? わあっ!? 恥ずかしいから止めてくださいよ先生っ!?」
そんなさやかとセイの掛け合いを見て、まどかは内心ホッとする。この人なら、さやかちゃんの陰りが大きく膨らむ前に吐き出させてくれるだろうと。
『あの~……そろそろ俺も話に入って良いだろうか?』
そこへ響くのは未だ抱きかかえられたままのロボットの声。逃げないからいったん話しやすいように下ろしてくれというロボットの頼みに、セイは本当に渋々という感じでそっと地面に下ろす。
『ありがとう。さて。話を聞く限りで尚且つ俺にうぬぼれがなければの話なのだが……セイさん。君の探している大切な人というのはその……』
『えぇ。アナタの事よ。我が剣を捧げた主様』
セイはそう言うと、まるで中世の騎士がするようにロボットに対して片膝を突き首を垂れる。その様子を見てロボットを始めまどかとさやかもどよめいた。まあ純粋に混乱しているロボットに対し、まどかとさやかはどちらかと言えば物語のような出来事に少々心ときめいている違いがあるがそれは置いておく。
『そうか。なら教えてくれっ! 俺は一体誰なんだっ!? ……俺にはここに跳ばされてから記憶がない。自分が人間だったという事しか覚えていないんだ。ここに来たのも魔法少女なら俺の事を少しでも知っていると思ったからこそ。頼むっ! 教えてくれ……俺はっ!?』
そのロボットの切なる願いに、セイは少しだけ悲しそうな顔をして返した。そう。
『ごめんなさい。教えてあげたいけど教えられないの。何故なら……
自分も記憶喪失であり、自分以外にも魔法少女が来ているという爆弾発言を。
◇◆◇◆◇◆
奇しくもほぼ同時刻の事。人知れず夜の町の更に暗い道を歩む者達が居た。そう。
「……こっちね」
『あっ!? 待ってよほむらお姉ちゃんっ!』
『もう少しゆっくり行くのだほむほむよ。慌てた我が運び手がすっころんで私を落としでもしたらどうする?』
「誰がほむほむよっ!?」
ちょっぴり普段よりもシリアス度が減った、ほむらと愉快な仲間達である。
(急いでココロとかいう魔法少女を探さなければ。まどかがこの件に深く関わって魔法少女に憧れを持つ前に)
消えたキュゥべえの代わりに現れた、キュウディーを名乗るまた微妙にベクトルの違う害獣。
キュウディーと静止した時間の中で話した結果、ほむらは少しだけ方針を転換する事にした。
(何故か今回の世界はこれまでと違う。でも、キュゥべえが居ないのならまどかを魔法少女に誘う者は居ない。ならまどか自身が憧れを持って魔法少女に関わらなければ良いっ!)
キュウディーがどう動くかは微妙に読み切れなかったが、何がなんでもまどかを魔法少女にしようとする意思は感じ取れなかった。どうしてか自分の方にも興味を持っていたようだが、それは別にほむらにはどうでも良い事。
一番の害獣が居ないだけで、なんとも難易度が下がるもの。後はそのココロを探し当て、余計な事を言わないよう釘を刺してからまどかに引き合わせればこれで魔法少女との関りはなくなる。まどかが救われる世界になるのだと、ほむらは内心昂っていた。だが、
「ねぇ。悪い事は言わないわ。レティシアは家でおとなしく待っていなさい。ここから先は大人の時間よ」
『ほむらお姉ちゃんだってまだ子供だよ。それに私ココロお姉ちゃんの事知ってるもん! 一緒に居た方が話しやすいと思うよ』
情報源とするだけならまだしも、流石に自称小さな魔女であっても幼女を夜連れまわすのはどうかと思い帰るよう促すほむらだったが、レティシアは頑としてついていく気まんまんだった。
『諦めるが良いほむらよ。レティシアはこう見えて意外に頑固でな。一度こうと決めたらしつこいぞ』
「……仕方ないわね」
ネクがニヤニヤしながら言うのを一睨みし、ほむらは渋々同行を許可。こうして夜の町を行く妙な集団が誕生した訳だが、
「次は……あっちね」
『ねぇほむらお姉ちゃん。さっきから迷わずにずんずん進んでいるけど、ほむらお姉ちゃんも探し物の魔法が使えるの?』
まるで目的地が定まっているようにほぼ迷わず進んでいくほむら。それをレティシアが不思議に思うのは当然だろう。しかしその問いにほむらは首を横に振る。
「いいえ。残念だけど私はそんな魔法は使えないわ」
『ほぉ。ならば何か他の当てがあるのか?』
「そうね。ココロという魔法少女の居場所は知らないけど、
繰り返す世界の中で、ほむらには目当ての人物が今日この辺りで魔女と戦っている可能性が高い事が分かっていた。その相手こそ、
「あら? ごきげんよう。良い夜ね」
この見滝原を何年も守り続けてきた正義の魔法少女巴マミ。
特徴的な髪と中学生とは思えない豊満な胸を軽く揺らして、彼女はにっこりと微笑んだ。
まどかといいセイといい、良く抱っこされるロボットです。まあほどほどの大きさと重さですし多少はね。
そして、ほむほむとレティシア(とネク)も色々動いていますがどうなる事やら。