見滝原に魔法少女(幻想体)が居るのはおかしくないよね?   作:黒月天星

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 注意! 今回、オリキャラっぽいキャラクターが登場します。


自分探しのロボットと、スカウトマンの白い獣

 

 夜。鹿目家風呂場にて。

 

「……はふぅ」

 

 どこか気の抜けた声を上げながら、鹿目まどかはゆったりと浴槽に身を委ねていた。

 

 自分でもこんな声を出す気はなかったのに、身体がとんでもなく疲れていた事を自覚して、まどかは小さく苦笑する。

 

 ぽちゃん。ぽちゃんと、シャワーノズルから垂れる水滴の音を聞きながら、まどかは今日一日で起きた思いがけない出来事の数々を思い出していた。

 

 どこかからの呼び声。不思議なロボットとの出会い。人ならざるモノからの襲撃。そして……自らを魔法少女と名乗った者に救われる。

 

 これがたった数時間もしない内の出来事だと言われれば、誰が聞いても首を傾げざるを得ない。

 

「夢……じゃないんだよね」

 

 まどかはそうポツリと漏らす。

 

 現実離れしている事を夢と断じるのは簡単だ。しかし、今現在自室に連れてきてしまったロボットの存在が、これが事実であると証明している。

 

 そう。魔法少女ココロと別れた後、まどかはロボットを連れて心ここに在らずという具合ながらもどうにか帰宅したのだ。

 

 なお、道中さやかをモールに待たせている事を思い出し、顔を青くして慌てて連絡する一幕があったのだが、

 

 

『まどか。アンタ……何かあった?』

 

 最初は御立腹モードだったさやかだったが、開口一番まどかが疲れた声で謝罪するなり急に落ち着いた。声だけでも何か察する事が出来る辺りやはり友人である。

 

 しかしまどかの方も詳しく説明しようのない話。突如ロボットを拾って怪物に襲われて、魔法少女に助けられたなど、普通に話せば揶揄っているか熱でも出たかと言われるレベルである。

 

 どう答えたものかと悩んでいると、

 

『良く分からないけど、なんかキツそうだし明日聞くよ。じゃっ! また学校でね』

 

 さやかからの言葉はこれである。きちんと人を気遣える良い子であった。

 

 

 何はともあれ、そうしてロボットを隠しながら帰宅したまどかだったのだが、

 

『大丈夫? 顔色悪いよ? 今日は早めに休んだ方が良いね』

 

 父であり専業主夫である鹿目知久に一発で見抜かれ、早々に夕飯を終え風呂を済ませて寝る事となった。やはりまどかの周囲の人物は皆温かい。

 

 

 

 

「戻ったよロボットさん。少しは良くなった?」

 

 さて。パジャマに着替えて髪も乾かし、部屋に戻ったまどかであったが、

 

『ああ。お帰り。こちらも大分()()()()()()

 

 ベッドの脇でちょこんと座りながら充電中のロボットに、良かったと花開くような笑みを見せる。

 

 

 そう。これこそがロボットの助けを求めていた理由。……()()()()()()()()()()であった。

 

 

『すまないが、これをそこらのコンセントに挿してもらえないだろうか? この通りコードを出せはしても、俺だけでは挿し込むのも一苦労なんだ』

 

 自宅に戻るなり、そう言って背中からぴょこっとプラグを飛び出させるロボットに、まどかは内心拍子抜けすると共にホッとしていた。

 

 機械いじりの経験も技術もないまどかだったが、それくらいならお安い御用だからだ。ちなみに今月の鹿目家の電気代については全力で見て見ぬふりをする予定である。ロボ助けと思って許してほしい。

 

 そうしてまどかが戻るまで充電に勤しんでいたロボットだったが、それなりに残量に余裕も出来たらしく器用にまどかの方に向き直る。なんとこの起き上がりこぼしのようなロボット、自力で跳ねるくらいは出来るのだ。

 

『先ほども言ったが、改めてお礼を言わせてほしい。まどか。君が来てくれなかったら、俺はあのままエネルギー切れか怪物に襲われて死んでいた。君とあの魔法少女は命の恩人だ』

「ティヒヒヒ。いいよいいよ。それよりも無事で良かったね」

 

 頭を下げるロボットに対し、まどかはポスンとベッドに腰かけて、ちょっと特徴的に笑いながら照れたように手を振る。

 

『出来ればすぐにでも恩を返したいんだが、今は身一つな上自分でも大分困った事になっている。しばらくの間待ってもらえれば助かる』

 

 割と義理堅いのかそんな風に言うロボット。まどかとしてはお礼が欲しくてやったという事でもないしそこは良いのだが、ふと気になる事があって尋ねてみる事にした。

 

「ねぇロボットさん。そう言えばあなたは何者なの? どうしてあんな所に居たの?」

『それは……』

 

 そこでロボットは少しだけ迷う様に言葉を濁す。しかし、どこか決心したかのようにまどかの視線を受け止める。

 

『話自体はそこまで長くはならない。でも、信じてもらえないかもしれない。それでも良ければ、話すとしよう。それが恩人に対する礼儀だろうから』

 

 そう前置きしたロボットの話は、とんでもない出だしから始まった。

 

 

『信じてもらえないかもしれないが……実は、()()()()()()()

 

 

 

 

『……という訳なんだ。そうして今はここに居る。質問があれば言ってほしい。自分でも上手くまとめられたか分からないから』

 

 約十分。ロボットの話はどちらかと言えば短い物だった。しかしそれを聞いたまどかの頭上には疑問符が飛び交っていた。

 

「え~っと……一つずつ確認させてね。まず、ロボットさんは()()()()()()()()()()()()()

『ああ。自分が人間だったという事以外、名前も住んでいた場所も職業も思い出せない。話し方から多分男性……だとは思う」

 

 自分を人間だと名乗るロボットは、何故か人間で言う所の記憶喪失に陥っていた。

 

「それで、気が付いたらあの工事現場に居たんだよね?」

『ああ。どうやって来たのか。どこから来たのかは不明だ。ただ見ての通り自分で移動するのは難しいから、誰かが運んだと考えるのが無難だな』

 

 ロボットはどこか自嘲するように語る。一応自力で跳ねて動く事は出来るが、それでも速度は子供の歩みより遅いしこの見た目だ。わざわざ自分でやってきたとは考えにくい。

 

『周囲には誰も居ず、人間の筈なのに身体は機械になっていた。自力移動は難しい上、おまけにエネルギー不足という事も感覚で分かったので、誰かに助けを求めるしかなかった。無我夢中だった。そして、やってきてくれたのが君だったんだ』

「そうだったんだね」

 

 さらにまどかはあの怪物達についても質問してみたが、その辺りをロボットはまるで知らなかった。ただ、

 

『あの場では一刻を争うため聞けなかったのだが、何と言うか……あの後現れた()()()()()()に関しては何か引っかかりを感じた。もしかしたら、以前の俺は彼女を知っていたのかもしれない。あくまでなんとなくというレベルに過ぎないが』

「魔法少女ココロさんだね。……うん。そうかもしれない」

 

 まどかからすれば、目の前のロボットも先ほどの魔法少女も同じく日常の外、不思議な何かのカテゴリに入る。なら向こうがこのロボットの人間の姿を知っていたかもしれないと漠然とだが思った。

 

 ここまで話した所で、急にロボットが頭を……というより身体全体を下げ、まるで土下座するような体勢を取った。

 

「急にどうしたのロボットさんっ!?」

『命の恩人に厚かましいとは思う。だが恥を忍んでお願いしたい。どうか、俺に力を貸してはくれないだろうか? 俺は自分が何者なのか、何故こうなったのか知りたいんだ』

 

 驚くまどかだったが、ロボットがあまりにも必死な様子だったのでそのまま続きを促す。

 

『しかしその為には情報を集めなくてはいけないし、充電できたとは言えまたエネルギー不足になるかもしれない。それにこの身体では自分で動く事すら難しい。誰かに……頼るほかないんだ。勿論ただとは言わない。俺に出来る事があれば出来る限りの事をするし、他に適当な拠点に出来そうな場所が見つかればそこに放り出してくれて構わない。だから……頼む』

 

 と言ってはみたものの、ロボット自身受け入れられるとは思っていなかった。

 

 何故ならこの話、()()()()()()()()()()()()。自身に出来る事などこの身体ではたかが知れているし、何なら自分で動く事すら難しいと言ったばかりだ。

 

 これは交渉ですらなく、少女の善意に頼るしかないただの懇願。しかも酷く分が悪い。なので、

 

「うん。良いよ」

『なっ!?』

 

 まどかが二つ返事で承諾した時は、喜びを通り越して呆れてしまった。

 

『……本当にか? 言っておいてなんだが、今の俺では大した役には立てないぞ』

 

 ロボットが念のため確認するが、まどかは本当に構わないよと返した。

 

 ちなみにまどかも馬鹿ではない。もしロボットから少しでも自分に対する悪意や、騙してやろうという害意が見られれば、首を縦に振るつもりはなかった。いくら魔法少女という非日常と遭遇して少々浮かれ気味とはいえそのくらいの分別はある。

 

 では何故承諾したのか? それは詰まる所、最初にロボットと出会った時と同じなのだ。

 

 相手が心底困って助けを求めるのなら、まどかはそれを決して無碍にはしないし見捨てず助けようとする。

 

 それが彼女の優しさであり、美徳であり、良くも悪くも本質の一面である“救済”の理である。

 

『……ありがとう。本当に』

 

 この時、ロボットは涙も流せない今の自分の身体をとても恨めしく思った。

 

 

 

 

 こうして、改めてロボットの記憶探しに協力しようとするまどかだったが、そこでふと気が付く。

 

「そう言えば、いつまでもロボットさんって言うのも変だよね。せめて名前だけでも思い出せれば」

『……実は少し充電中に思い出した事があるんだ。自分はどうやら()()()と呼ばれていたらしい』

 

 正確には、思い出したというよりすっと浮かんできたという方が正しいがと続けるロボットだったが、それを聞いてまどかは少し考えこむ。

 

「管理人。何かの施設とか、道具とかのかな? じゃあ管理人さんって呼ぶ?」

『いや、何の管理人なのか分からないし、しばらくは今のままで良い』

「そう? ……じゃあロボットさん。今みたいに他に何か思い出した事はない?」

 

 何か手掛かりになればとまどかが尋ねるも、ロボットは首を横に振る。

 

『いいや。それ以外は何も。やはり今の所最大の手掛かりになりそうなのは』

「ココロさん……だよね。やっぱり」

 

 唯一ロボットが見覚えがあるかもと思ったあの魔法少女。ココロにもう一度会えれば、何かしら判明するかもしれない。

 

 もう一度逢いたいなぁという個人的な気持ちも多少あり、それに関してはまどかも同意する。

 

「でも、魔法少女なんて今日初めて見たし、ココロさんがどこに居るかなんて」

 

 そう困り顔でまどかが話した瞬間、

 

 

 

『クックック。お困りのようだねぇ』

 

 

 

 そう。まどかとロボットしか居ない筈の部屋の中から、()()()の声が聞こえてきた。

 

 まどかは驚いて立ち上がると周囲を見渡し、ロボットは慌ててぴょんとベッドの上に跳ね上がる。すると、

 

「だ、誰っ!?」

『失礼失礼。ノックもなしに女の子の部屋に入るのは流石に不作法だった。でも許してほしいなぁ。なにせ目の前にこ~んな光り輝く才能の原石と、実に面白そうな役者が揃っているんだ。声を掛けずにいる事は僕にとってとんでもない苦行になってしまうのでね!』

 

 そいつは部屋の棚、まどかのお気に入りのぬいぐるみが陳列された中にしれっと混じり込みながら、ほとんど重さを感じさせない軽い足取りで床に着地した。

 

 その四足歩行の獣の姿は猫やウサギのようにも見えるがそうではなく、真っ白な体色ととても柔らかそうな肌を持つ。上にピンと立った耳とはまた別に、下に垂れる耳のような何かを持ち、その先には金色のリングのようなものがくっついている。

 

 小さく、愛らしく、まるで()()()()()()()()()()()()()のような姿に、まどか達は言葉を失う。

 

『おっと。自己紹介がまだだったね。楽しい楽しい対話の時間の為には、まずこういった下準備が大事というものさ。うん。という訳で』

 

 それは真紅の瞳をまどか達に向け、前脚を器用に胸元らしき場所に当てながらクスクスと笑う。

 

 そう。とても面白そうに、()()()()()

 

『僕の名前はキュゥ()()()。世界を股にかけた人材発掘、及び人間観察が仕事兼趣味のしがないスカウトマンさ。……ところで物は相談なんだけどね』

 

 

 

『君、()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

 

 

 

 一方その頃。

 

『プリン美味し~いっ! ほらネクちゃんっ! 美味しいよこれ!』

『分かったっ!? 分かったからレティシアよ。自分で食べるから私の口に勢いよくスプーンを突っ込むのは止めモガガっ!?』

「……何かしらこれ?」

 

 目の前で騒がしくも嬉しそうにプリンを頬張る、“小さな魔女”を名乗る少女と喋る人形を前に、暁美ほむらはどうしてこうなったと頭を抱えていた。

 




 べえではありませんディーです。

 という訳で、今作ではキュゥべえの代わりにコイツが暗躍します。どういう奴かは話を進めるにつれ少しずつ明らかになるかもしれません。

 なお、ほむほむの方はちょっぴりキャラ崩壊が起こるかもしれません。レティシア達を前にして、どこまでクールぶった態度が続くかな?




 この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。

 お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!
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