見滝原に魔法少女(幻想体)が居るのはおかしくないよね?   作:黒月天星

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 訂正! この度深夜に書きかけのまま途中で投稿してしまい、一部読者の方にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。


居候 二組の一人と一体

 

 シャコシャコ。シャコシャコ。

 

 あまりにも濃い激動の一日が明けた翌朝。

 

 まどかは洗面台にてリズム良く歯を磨いていた。ただその表情は少し硬く、視線も鏡の中の口元というより別の所に向いている。何故なら、

 

『どうしたのまどかちゃん? もしやこの僕のプリティーなボディにメロメロかい? いやまいったね! 貰い物の身体なので少~し複雑だけど、まあそこは溢れ出る僕の内面が良い仕事をした結果という事で前向きにとらえようじゃないかうん! ……ちょっとぐらいなら触っても良いよ?』

「一回眠って目が覚めてみたけど……やっぱり夢じゃないんだよね」

 

 鏡越しに映る、わざわざ()()()()()()()()()()()()()()()()()白いナマモノがペラペラ喋り倒すのを見て、まどかは少々疲れた声で呟いた。

 

 

 

 

 昨日の夜、

 

『君、()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

 そんな事を言いながら登場したキュゥディーを名乗る謎の怪生物に、まどかは困惑して動けずにいた。……だが、ここに居るもう一人は違った。

 

 ぴょん。ぴょん。

 

「ロボットさん?」

 

 何も言わずロボットが、まさにその耳のモチーフのウサギのように器用に飛び跳ね、さっきまでそいつが居た棚に飛び乗る。そして、

 

『……とぅっ!』

 

 彼はその身を回転させながら跳んだ。それは水泳の飛び込みのように優雅で、それでいて獲物を狙う鷹のように鋭く、岩盤を抉るドリルのように激しい。そう。

 

 

『キュゥディーシスベシキリモミキイィックッ!!』

『いやそれキックじゃなくてただのボディプレぐはぁっ!?』

 

 

 そして白いナマモノを奇声を上げさせつつ圧し潰すと、そのままさらに追撃のストンピング(に見えるのしかかり)を連打するロボット。

 

「あの……ちょっと!?」

『このっ! このっ!』

『ちょちょっ!? ちょっと待って話を聞いておくれよっ!? 僕が何をしたというんだいっ!?』

『黙れっ! まともな記憶すらないこの身だが、お前の名乗りを聞いて一つだけ直感した事がある。そうっ! ()()()()()()()()()()()!?』

 

 どちらも小柄な上体重も軽いため、傍から見れば大した事なさそうだが、本人達はいたって大真面目。

 

 目の前で突然そんな大乱闘が勃発してあたふたするまどかを置いて、ロボットとキュゥディーの喧嘩は数分に渡り続いた。

 

 

 

『すまない。……本当にすまない』

「全然大丈夫だよ。ちょっとびっくりしたけど」

 

 全身で平謝りするロボットを、まどかはちょっぴり苦笑しながら宥める。

 

『ごめんねぇまどかちゃん。それもこれもこの荒れ狂うロボット君のせいで』

 

 そう顔を拭いながらいけしゃあしゃあと宣うキュゥディーを、器用にも怒りの四つ角を表示させた顔で睨むロボット。

 

 流石に第二ラウンドを始められたらたまらないと、まどかは慌てて本題へと軌道修正する。

 

「そ、そう言えばキュゥディーさん」

『さんはいらないよ。気軽にキュゥディーと呼び捨てにしてくれればいいさ』

「そう? じゃあキュゥディー。さっき言っていたのはどういう事なの? 魔法少女に逢ってみたくはないかって」

『ちょっと待つんだまどかっ!?』

 

 まどかの言葉にキュゥディーはニヤッと笑い、ロボットは慌てて制止する。

 

『そいつはイマイチ信用できない。第一こんな丁度良いタイミングで出てきた時点で怪しい。……俺達を監視していたな?』

『いやいや監視なんてとんでもない。君達を見つけたのは本当につい先ほどだとも。まあより良い登場シーンを演出すべく機を窺っていたのは認めるけどね。……さて。まどかちゃんの質問に答えるのなら、そのままの意味だよと返そうか』

 

 そう言うとキュゥディーは、まどかに対してふふっと笑う。

 

『今現在、丁度この町には()()()()()()()()()()()()()()()。もし君達が望むなら、僕が逢えるように手を貸そうじゃないか』

「本当っ!? だけど……私お礼出来そうな物は持っていないよ?」

『俺もだ。しかしそれくらいはコイツも分かっている筈。……何が狙いだ? まさかどこぞのおとぎ話の悪魔よろしく、()()()()()()()()とでも言うつもりじゃないだろうな?』

『魂……まあそれも悪くはないけどね。今回ばかりは本当にタダ。というより、こちらにも理由があってタダにせざるを得ないというのが正しいかな。まあ強いて理由を挙げるなら』

 

 そこでキュゥディーは意味深に笑い、ただ一言だけ答えた。

 

『ちょっとした弁済と、これからへの投資と……営業の一環というだけさ』

 

 

 

 

 その後も、まどか達はそれぞれ「キュゥディーは一体何者なの?」とか『正直に話せ。一体何をやらかす気だこのバカ』等の質問を重ねたが、どれもこれものらりくらりと躱されてしまう。

 

 一応回答はしているのだが、やれ自分は太古から地球に干渉していた宇宙人だの、或いは“元”神様だの、もしくはスカウトマン兼セールスマンかもねと笑って語る。それに『やらかすだなんてとんでもない。心外という奴さ。……まあ色々動くつもりではあるけどね』だのと意味深な答えばかり。

 

 そんなこんなで時間だけが過ぎ、

 

「……んっ」

『おっともうこんな時間か。育ち盛りの少女はそろそろ寝る時間だよ。まあ諸々の返事はまた明日って事で!』

 

 疲れが溜まっていたのかうつらうつらとしていたまどかを見て、キュゥディーは自分からまた棚に飛び乗って丸くなる。

 

『おいっ!? ここで寝るのかっ!?』

『いやあすまないね! こうしてボディを持ってみると寝床問題は切実でね。ちょいと失礼するよ。……あっ!? 心配しないで。寝具は自前で用意するから。じゃあお休みまどかちゃん! ぐっすり眠るんだよ?』

 

 そう言ってどこからか取り出したナイトキャップと小さなブランケットに身を包み、キュゥディーはすぐさますやすやと寝息を立て始め、

 

 

 

 

 こうして、現在に至る。

 

 寝起きでうとうとしていたまどかにおはようを言い、充電中のロボットを揶揄ってはどったんばったんケンカして、遂には洗面器による朝風呂を楽しむという自由っぷりである。

 

 最初はこんな所に居たら見られちゃうよと慌てていたまどかだったが、キュゥディー曰く『僕の姿が見えるのは、僕が見せようと思った人か特殊な素養を持った人だけだから平気平気』との事だった。そして、

 

「よ。おはよぅ」

「……お、おはよう。ママ」

 

 途中顔を洗いに来た鹿目家の母、詢子が実際にまるで気が付いていないのを見てホッと胸を撫で下ろす。そんな中、急に詢子が少しだけ真面目な顔で切り出した。

 

「なぁまどか。昨日は帰ってきた時に酷く顔色が悪かったんだって? 大丈夫かい?」

「えっ!? うん。ちょっと昨日は忙しくって。でももう大丈夫だよ」

「……そっか。なら良いけど、あんまり疲れが酷いようだったら言いなよ。学校だって休んだって良いんだ。心配させるかも~とか思って溜め込むと碌な事になんねぇからさ」

 

 そう言いながらさっさと身支度を整える詢子に、まどかは笑って元気な所をアピールするのだった。

 

 

 

 

 さて。色々あった鹿目家の朝の出来事はいったん省略する。

 

 何故かまどかの弟タツヤ(三歳)にキュゥディーが見られて遊び相手にされたり、ついでにロボットも巻き込まれたり、まどかが家族にロボットをもうすぐ発売予定の子供用ロボットのモニターに選ばれて貰ったと誤魔化したりしたぐらいで、極めて平和な物だったと予め述べておく。

 

 あとタツヤは速攻でキュゥディーとロボットに懐いていた。良い遊び相手判定をしたらしい。

 

 さて。前提としてだがまどかは中学生である。学生の本分は勉強で、学校へ登校する事は義務と言える。なので、

 

「ゴメンねロボットさん。今日はなるべく早く帰るから」

『そうともさ。ただし、その間僕はまどかちゃんとの甘~い一時をたっぷり甘受させてもらうけどね! 君はそこのタツヤ君のお相手を頼むよ!』

『おのれキュゥディーこの野郎っ! ……すまないタツヤ。急に大声を出して悪かったな。泣くんじゃないぞ。……よし。良い子だ。仕方ない。一緒に行ってらっしゃいを言おうな。まどか……とついでにキュゥディー。行ってらっしゃい』

「うん。ねえちゃ! きゅぅで! いってあっしゃい!」

 

 流石に人目に付くロボットは連れて行くわけにもいかず、家で留守番という形になった。ロボットも状況は理解しているのか、キュゥディーをじろりと睨んではいるもののおとなしくまどか達を見送る。

 

 こうしてまどかはいつものように登校する訳なのだが、

 

『ちょっと失敬』

「キュゥディーっ!? もぉ」

 

 途中まではとてとてとまどかの後ろについてきていたキュゥディーだが、突然まどかの肩に飛び乗ってくつろぎ始める。

 

 まどかも驚いた様子だったが、大して重くもない事から苦笑しつつもそのままに。

 

 そしてゆったりと歩みを続けていると、少しずつ同じく登校している生徒達を見かけるようになっていく。しかし、

 

「やっぱり……他の人達には見えていないみたい」

『そりゃそうだよ。さっきのタツヤ君みたいに直感の鋭い幼児には見える子も居るけど、それ以外にはまず見えないって。だから……そりゃ! こ~んな事をしても見えないっ!』

「ちょっ!? キュゥディーったらっ!?」

 

 遂には調子に乗ったキュゥディーは、まどかの肩から反対の肩へ、そして頭に飛び乗ってみたりとやりたい放題。これにはまどかも少々困って払いのけようと手を伸ばし、

 

 

 

「この謎不思議生物っ!? あたしの嫁から離れろぉっ!」

『ふぎゃっ!?』

 

 

 

 突如走ってきたさやかの渾身の張り手が、油断していたキュゥディーを空高く吹き飛ばした。

 

 

 

 

 一方その頃。

 

 とある古びたマンションの一室にて。

 

「じゃあ私は行くから。あなた達は好きにすれば良いわ。昨日買ってきた物を食べても良いし、さっさと家から出て行っても良い。……というより出て行って」

『は~い! おとなしくここで待ってるね』

『おうおう行くが良いさ。私としてはレティシアがおとなしくしてくれればそれはそれで助かるからな。ゆるりと部屋で待っていてやるぞ』

 

 レティシアとネクが一向に出ていく気配がない事を見て取り、ほむらははぁと小さくため息を吐いて学校へと向かおうとする。すると後ろから、

 

『ほむらお姉ちゃんっ! 行ってらっしゃい!』

「……行ってくるわ」

 

 最後にそんな言葉を聞いたのはいつぶりだったかと思いを馳せながら、ほむらは小さく言葉を返して歩き出した。

 




 すみません。ホントウチのキュゥディーがこんな奴ですみません。

 色々あって良い具合のボディを得たから滅茶苦茶はしゃいでいます。あとどさくさで鹿目家の朝食を一部盗み食いしてロボットに叱られています。

 ただこう見えて、べえとはまた別ベクトルで厄介な奴です。気に入った相手や弄り甲斐のある相手にはあの手この手で干渉(良くも悪くも)してくるので、常に真正面から相手をするととても疲れます。逆に言うと、毎回律儀に反応を返してくれるどこかのロボットはとてもお気に入りです。

 それと、なんでさやかにキュゥディーが見えたのかはまたその内に。……先生の指導が良いからかもしれません。




 ほむほむのレティシアへの絆されポイントが1上がった。
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