見滝原に魔法少女(幻想体)が居るのはおかしくないよね?   作:黒月天星

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 注意! 今回多少のキャラ崩壊があります。


レティシア(とネク)のぼうけんと優雅なほむほむ

 

 緊張がまどか達の間に走る。それもそのはず。非日常の代名詞であった魔法少女が、この日常ど真ん中とも言える学校の、しかもこんな身近に存在するというのだから。

 

 ガタっ!

 

 近くのベンチの陰で、何か物音が聞こえた。そして、

 

「……めて。……ないの……」

『そん…………けじゃ…………に食べ……』

『……すな…………逃げら…………無駄……』

 

 続けて、誰かが話している声まで聞こえてくる。まどか達は顔を見合わせ、もう一度キュゥディーの腹部を見た。……方向も距離も間違いないと確認し、キュゥディーを先頭にそろりと忍び寄ってベンチの陰を覗き込んでみれば、そこには、

 

 

「止めてったら!? 私は昼食はもう済ませたから要らないわ」

『そんな事言わないで。カロリーバーだけじゃ寂しいよ? パン持ってきたから一緒に食べよ! ジュースもあるよ!』

『離すな我が運び手よ。一度離せばそのままあの妙な力で逃げられるぞ。ここまで来た苦労を無駄にさせてたまるかっ!』

 

 

 うんざりしたような顔をしている転校生暁美ほむらと、その服にしがみ付くフリフリの服の幼女。そして横から囃し立てる喋る人形が居た。

 

((…………何この状況っ!?))

 

 この瞬間において、まどかとさやかの心は奇しくも一つになった。

 

 

 

 

 さて。何故こんな状況になったかと言うと、時間を少々遡らなければならない。

 

 それは暁美ほむらが今日の朝、マンションを出発して少しした時の事。

 

『はむ……はむ……美味しいっ!』

 

 ほむらに拾われた幼女(レティシア)人形(ネク)は、彼女が昨日の内に買ってきた菓子パンをぱくついていた。もっとも、幸せそうに食べているのはレティシアのみで、ネクの方は専ら大半をレティシアに押し付けていたが。

 

『ふむ……昨日この部屋に入った時から思っていたが、なんとも妙な部屋だな』

『そう? 確かに少し前に居た所とはちょっと感じが違うけど』

 

 その部屋は明らかに普通とは言い難かった。

 

 どう見ても本体のアパートよりも広い面積。床も天井も真っ白で殺風景。そこに直接椅子や机と言った最低限の家具がぽつんと置かれているという異常事態。

 

 おまけに空中には何かしらが映った画面が幾つも浮いていて、天井の中央からは巨大な歯車が生えているという滅茶苦茶っぷりだ。

 

 昨日来た時から警戒したり興味を持ったりしているネクに対し、レティシアは別段気にしていなかった。そんな事よりも目の前の美味しいパンの方が重要なのだから。

 

(しかしひとまずの宿は出来たが、我々だけではどうにもならん。やはり最優先は()()()()()()()()か。そのためにも、まずはほむらとかいう娘を利用できれば。幸いレティシアは誰かと仲良くなることに関しては天才的だ。後は上手く私が丸め込めば…………クックック)

 

 そうネクが悪い顔をしながら今後の方針を練っていると、

 

『……あっ!? 大変っ!? 大変だよっ!?』

『どうした? 何事だ急に?』

 

 急にレティシアが何かに気が付いたように大声を上げた。ネクはいったん悪だくみを止め、自分の運び手の言葉に耳を傾ける。すると、

 

『ネクちゃん。そう言えばほむらお姉ちゃんって……()()()()()()()()()()()?』

『弁当? ……さてな。少なくとも何か調理した形跡は見当たらんが』

 

 昨日の夜も今日の朝も、食事はコンビニで買った物だけだった。そしてそれはほぼここに置いていかれ、消えているのはカロリーバーが一つだけ。つまりそれがほむらの弁当という事になる。

 

『まあ心配せずとも、途中で奴もパンでも買って食べるのだろう。何ならあの円盤のような物から保存食でも取り出すとか』

 

 だがそんなネクの言葉をよそに、レティシアの脳内に突如存在するけど微妙に違う記憶が浮かび上がる。それは、

 

 

『夕食? ……はぁ。好きに選びなさい。その辺りのパンなら安いから、明日の分も考えて多めに買っても構わないわ。プリン? ……一つだけよ』

 

 ぐぅ~。

 

『……何? 私も食べるの? 遠慮するわ。別にお腹は減っていないもの』

 

 ぐぅ~。ぐぅ~。

 

『念のため、何かあった時の為に千円ほど渡しておくわ。……返さなくて良いから」

 

 ぐぅ~。ぐぅ~。ぐぅ~。

 

 

 冷たく最低限の事だけ口で言いながらも、()()()()()()()()()ほむらの姿だった。

 

(もしかしてほむらお姉ちゃん。あたし達の為にお腹を鳴らしながらも自分の食べる分を分けてくれたんじゃっ!?)

 

 勿論そんな事はない。

 

 ほむらは腹を鳴らしてもいなければ、別に自分の分を分けたという事もない。

 

 最低限食事を出して家に泊めもしたが、勝手に出ていくなら出ていくで構わないと考えていた。

 

 自称小さな魔女のレティシアに興味がない訳ではなかったが、それはそれとしてほむらの一番考えるべき事はまどかの事。使い魔(ほむらはそう判断した)のネクも単独では大した事は出来ず、ここで逃がそうが大きな危険はないと結論づけたからだ。

 

 しかしレティシアの中ではどんどん妄想は膨らんでいき、遂には、

 

 

 ぐぅ~ぐぅ~ぐぅ~。

 

『お腹が空いたわね。レティシア達に今日の分のパンをあげたから、もう残っているのはこの小さなカロリーバーだけ。……でも、あの子達がお腹を減らすくらいなら、この程度は安い代償だわ』

 

 

 と、まるで聖人のような穏やかな顔で腹を鳴らしながら、ちびちびとカロリーバーを齧るほむらの姿が脳内ではっきりと形作られていた。ようするに存在しない記憶である。

 

『……ネクちゃん。あたし、行ってくるね!』

『はぁ? 行くってどこに?』

『ほむらお姉ちゃんの所。確か……見滝原中学校って言ったっけ?』

 

 突然の事に困惑するネクをよそに、レティシアはどこからともなく小さな肩掛け鞄を取り出すと、その中に少しだけ残ったパンや水筒、貰った千円札の入った小さな財布などを詰め始める。

 

『よせよせ。どこにあるのかも分からん。どのくらい時間が掛かるのかも分からん。おまけに奴が本当に腹を減らしているのかも分からんという分からん尽くしだ。そんな面倒な事をするよりはここで帰りを待つ方が良い』

『でも……もしかしたら本当にお腹空いてるかもだし……うぅっ。やっぱり心配だよ』

 

 荷物を詰めた鞄を肩に掛けたまま、心配そうにそわそわするレティシアを見て、ネクは少しだけ考え込む。

 

(と言ったものの、場所はレティシアの魔法なら多少は調べられるし、時間も毎日行き来するような場所がそれほど遠い場所とも思えん。本当にほむらが腹を減らしているのなら貸しが作れ、最悪そうでないか見つからなくとも周囲の探索にはなる。……最低限の拠点が出来たのなら動いてみるのも手か)

 

『……良いだろう。どのみち奴が帰るまでしばらくかかる。それまでの間ずっと悶々と横で悩まれても面倒だ。ならこっちから動いた方がまだマシというものか』

『うん……うんっ! ありがとねネクちゃんっ!』

 

 ぎゅうっ! ミシミシ。

 

『うぎゃあっ!? 分かったから本気で抱き着くなっ!? 壊れるっ!? ヒビが入るぅっ!?』

 

 

 

 

『……という事があってだな。こうして我々は野を越え山を越え(誇張)、数々の障害(職務熱心な警官、息を荒げる変態、通りすがりの優しそうな足長おじさん)を突破し、道に迷ってうろうろしながらも無事こうして目的地にたどり着き、奴の腹の虫を宥めに来たという訳だ』

「な、なるほど?」

 

 そう()()()()()()()()()の苦難を説明するネクに、頷きつつも困惑の色を隠せないまどかとさやか。なにせ急に人形がペラペラと語りだしたのだから無理もない。

 

 ちなみに途中、一瞬ネクとキュゥディーは目配せを交わしたようだったが、それが何を意味するのかは二人には良く分からなかった。

 

 そんな中、レティシアとほむらはというと、

 

「……分かった。食べるからいったんその手を離しなさい」

『ホント? 離したらすぐにフッて消えたりしない?』

「…………しないわ」

 

 レティシアの上目遣いのお願いに、さっさと逃げようと考えていたほむらも仕方なくベンチに座り、適当にレティシアの持ってきた菓子パンを一つ取って齧った。

 

 それを見たレティシアはニコニコと笑いながら、横に並んで座ると自分ももぐもぐとパンを頬張り始める。

 

 その微笑ましい光景を見てまどか達はほっこり。そしてキュゥディーはニヤニヤ笑っていたりした。そうこうしていると、

 

「……っ!?」

 

 半分ほど食べた辺りで、ほむらはやっと自分達が見られていると気が付いたらしく、まどか達の方に勢いよく振り向いた。

 

 普段のほむらならまどかから目を離すなどあり得ない事だが、それだけレティシアの猛攻(お願い)が苛烈だったのだ。

 

 そしてほむらは静かに残ったパンをベンチに置き、何も言わずにそのまま立ち上がると、

 

「…………こんな所で会うなんて奇遇ね。まどか。美樹さやか。……では、失礼するわ」

 

 優雅に髪をふぁさりとかき上げ、そのまま何事もなかったように立ち去ろうとし、

 

 ガシッ! ガシッ! ガシッ!

 

「待ってっ!? わたし聞きたい事があるのっ!?」

「ちょ~っと話くらいしても良くない? 転校生」

『ほむらお姉ちゃん。この二人困ってるみたいなの。少しだけ話を聞いてあげようよ』

 

 必死な様子のまどかと、笑顔だが逃がさないと言わんばかりのさやか、またもや上目遣いになるレティシアに揃って腕を掴まれ、大きくため息を吐くほむらであった。

 

 

 

 

『……で? お前が何故こんな所に居る? お前の言う所の()()にはヤジを飛ばす以外で干渉せず、良くも悪くもその生き足掻く様を面白おかしく高みの見物と洒落込むのがお決まりだろうに。何だキュゥディーって』

『ふふん。良いボディだろう? な~に。たまには僕もお気に入りの役者の為に舞台に上がって手助けしてあげようって事さ。……まあ僕なりのやり方でだけどね!』

『手助けではなく妨害の間違いだろ? 最終的にはプラスになろうが、そこに至る過程をハチャメチャにして嗤うのがお前だろうに。精々手助けだけしてさっさと消える事だな』

 

 その後ろで、白い獣と人形がなにやら密談している事に気づかずに。

 




 すまんなほむほむ。レティシアの前でコミュ障がクールぶったムーブが出来ると思うなよ。

 なおこの姿を見て、まどかとさやかのほむらへの好感度が1上がった模様。こんな幼女に振り回される人が悪い人な訳ないもんね!




 この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。

 お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!
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