見滝原に魔法少女(幻想体)が居るのはおかしくないよね?   作:黒月天星

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 お待たせしましたっ!? (前話から半年ぶり)

 新作の方の執筆で中々時間が取れなかったのですが、久しぶりに筆を執りました。

 どんな話だったかなぁと本人もド忘れして少々口調が変わっているかもしれませんが、暖かい目で見守っていただければと。


それは、絶望を刺し貫く騎士

 

 そこは見滝原の外れ。かつて隆盛を誇りつつも、再開発によって大半が放棄された工場地帯の一画。

 

 あちらこちらに廃ビルが立ち並ぶ中、どこかびくびくしながら周囲を見渡す少女の姿があった。そう。かの悪名高い白い獣(キュウディー)に目を付けられた者。鹿目まどかである。

 

『ここから少し離れた所で、どこかの魔法少女が怪物と戦っているみたいだけど見に行くかい?』

 

 自室で突然のそんな明らかに怪しいキュウディーの誘いに頷いたまどかだったが、まさかその後すぐ『OK。じゃあこっそり玄関から靴を持っておいで。あっ!? 勿論外出用の服に着替えてね』と言われ、堂々と見物しようとするキュウディーとそれを阻止せんと取っ組み合うロボットから隠れながらお着換え完了。

 

 すると『じゃあ行くよ~。う~ん…………えいっ!』とキュウディーが何か念じたかと思えば、気が付けばまどか達はこの工場地帯に跳ばされていたという訳だ。

 

 ワープなどというまさしく魔法みたいな出来事に驚くまどかだったが、考えてみれば目の前のキュウディーは神出鬼没。今日の昼休みにも、ほむらと共に目の前で忽然と姿を消した前例があると納得する。

 

 そして、一つの疑問に片が付けば次なる疑問に行きつくのは当然で、

 

「ねぇキュウディー。本当にこんな所に魔法少女が居るの?」

『ああ。それは間違いないともまどかちゃん。ほらこれを見て! 僕のレーダーがそれはもうばっちり反応を示しているのさ』

 

 両腕で自らの家に居候する謎の記憶喪失ロボットを抱え、そう心配そうに尋ねるまどかだったが、キュウディーはクククと笑いながら仰向けになって自らの腹部を指し示す。

 

 魔法少女の居場所が分かるというその腹部には、ピコンピコンと中心から少し離れた場所で光点が点滅していた。

 

『間違いなくこの辺りに反応がある。そしてこんなにはっきりと反応しているという事は、ほぼ間違いなく何者かと戦闘中だ。……しかし誘いこそしたけれど、まどかちゃんがこうも簡単に乗ってくれるとは思っていなかったよ』

『そうだ。今からでも遅くはない。キュウディーに言って俺だけ残して早く帰るんだまどか。またあんな危ない目に遭うかもしれないんだぞ』

 

 キュウディーは単なる好奇心で、ロボットはまどかを気遣ってそう口々に言うのだが、まどかは首を横に振る。

 

「危ないのはロボットさんもおんなじでしょ? それならまだわたしが運んだ方が危なくないし、それに……わたしもまたココロさんに逢いたいから」

 

 そう言って僅かに緊張しながらもまどかがニコリと微笑むと、ロボットは『……ありがとう。だが本当に危なくなったら俺を放り捨ててでも逃げるんだぞ』と心配そうに返した。

 

 

 

 

 それから一行は、キュウディーのガイドに従って歩みを進める事数分。

 

『あったあった! どうやらアレみたいだね!』

「あ……これ、は」

 

 そう言いながらキュウディーが指し示したのはとある廃ビルの入口。朽ち果てボロボロのその隙間からは、普通なら建物の内部が見える筈だった。しかし現実に見えるのは、明らかにおどろおどろしく広がる謎の空間。

 

 まどかは一目それを見て、それが先日自分とロボットが入った謎の世界と同様の物であると真っ先に反応。知らず知らずの内に恐怖で身体が震える。だが、

 

『まどか。大丈夫か?』

「……すぅ~……ふぅ。うん。大丈夫だよ。ありがとうロボットさん」

 

 震えを敏感に感じ取ったロボットに気遣われ、まどかは一度大きく深呼吸をする。すると震えは大分治まっていた。

 

『そうか。……しかしキュウディー。まさかとは思うが、まどかに()()()()()()などとは言わないよな? 言ったらその瞬間百ストンピングの刑に処すが』

『いやいやまさかそんな。流石の僕も、戦う力も意思もない者にそんな事は言わないよ。今回はあくまで見学。こうして安全圏から一緒に、この()()()()()の中で魔法少女が命を懸けて戦う様を高みの見物と洒落込もうって誘っただけさ』

『……その悪趣味さに言いたい事はあるが今は置いておく。それで? その結界とやらに入らずどう中の様子を見るんだ?』

 

 微妙に不機嫌さを隠し切れないロボットと、何も言わずじっと見つめて来るまどかに対し、キュウディーは軽くポンポンと垂れた耳のような物を打ち合わせる。すると、

 

 ブウンっ!

 

「何これっ!? 何か出たよ!?」

『これは……どこかの映像か?』

 

 まるで古いブラウン管テレビがつくような音を立て、廃ビルの壁の一部に何かの映像が映し出された。

 

『この通り。結界の中の様子を知るくらいならお茶の子さいさいというやつでね。さ~て二人共! どうぞそこらの適当な場所に座って座って!』

 

 そこでキュウディーはにっこり嗤って、近くの瓦礫の上でゆるりと横になり、

 

『これから君達が目にするのは、本来なら決して日常と交わらず、しかし日常のすぐ隣にある裏側の戦い。世界に呪いを振り撒かんとする魔女と、輝かしい願いを胸に抱く魔法少女の戦いを、どうぞお楽しみあれ』

 

 

 

 

 

 そこはヒトならざる者……魔女の結界。

 

 温かな陽の下に生きる者達の心に忍び寄り、入り込み、そしてその身体と命をも取り込むための魔女の隠れ家。

 

 その内容は主人たる魔女によって様々だが、この結界内はいわば……庭園であった。所々に茨と赤い薔薇が咲き乱れ、黒と赤の蝶が乱舞する悪夢の薔薇園。

 

 そこにはまどかが先日見た、蝶の羽と髭の生えた綿飴のような怪物達が多数。そして、その中央に鎮座するモノこそ、

 

「あれが……魔女?」

『そう。通称“薔薇園”の魔女。誰も寄り付かない廃墟を好み、ただひたすらに使い魔達に命じてお気に入りの薔薇園を造園し続ける魔女。珍しく使い魔から高い忠誠を持たれている魔女なのに、本人の性質は“不信”という困った魔女さ』

 

 まどかがその姿を見て唖然とするが、それも常人なら仕方のない事だろう。

 

 なにせ薔薇園の魔女ときたら、人を簡単に圧し潰せそうなその巨体は芋虫のそれ。そのくせ背中からは蝶の翅。植物と虫の脚が混ざったような触手が胴体から生え、極めつけに頭部らしき所には、まるで長髪のような緑の草木と赤薔薇が咲き誇っている。

 

 控えめに言ってキメラ的な何かである。気の弱い者なら見ただけで失神するそれを見て、どうにか保っているだけまどかの気丈さを褒めるべきだろう。

 

 問題はその魔女と、多数の使い魔達が対峙している者なのだが、

 

(さ~て。少々流れは変わっているが、この局面で駆け付けてくるとすれば本命はマミ。対抗でほむら。大穴で杏子。どう動くか分からないダークホースでココロといった所か。一体誰が……おやっ!?)

 

 興味深そうに画面を見つめていたキュウディーだったが、そこに映った姿を見て少しだけ笑みを深くする。これは予想外だぞと。

 

 

 そこに居たのは、一人の()()()()だった。

 

 

 黒と青の長髪。髪と同色の星空の装飾の付いたドレスと白く透き通ったマント。スペードを組み合わせた形のティアラを被り、もはや蒼白に近いレベルまで白い肌。

 

 顔の左半分と両腕の一部を覆う刺々しい闇により、神聖さと悲哀の絶妙なバランスを保っている美少女。

 

 それが片膝立ちで両手を組みながら、目を閉じて静かに祈りを捧げている様子は、まるで一枚の絵画のようで。

 

「あの人が……魔法少女かな? どこか怖そうで、でもとてもキレイな人」

『……ああ。そのようだな』

 

 まどかとロボットがそういいながら見守る中、魔女の使い魔達が魔法少女に殺到する。四方八方から迫るその攻撃は、並の魔法少女なら躱そうが反撃しようがダメージを免れない。だが、

 

 キィンっ!

 

 その攻撃は通らない。一瞬何かの紋章のような物が空中に浮かんだかと思うと、見えない壁に弾かれて使い魔達は吹き飛ばされる。そこへ、

 

 ギュルルルっ!

 

 あちこちの地面から生えていた茨。それが凄まじい勢いで伸び、見えない障壁ごと魔法少女をグルグル巻きに押し包んだ。

 

「危ないっ!?」

 

 映像越しに叫ぶがまどかには何もできない。そのまま茨がギリギリと締め上げる中、薔薇園の魔女自ら追撃の一撃を食らわせようとし、

 

 

『……そう。大体こんな所かしらね』

 

 

 ヒュンっ! トスっ!

 

 どこからか飛来する、星座を柄にあしらった二振りの細剣。それは僅かな風切り音と共に、あっけなく茨と薔薇園の魔女に突き刺さった。

 

 魔女の質量からすれば取るに足らないそれ。人で例えるなら、精々太めの注射器でも突き刺されたような物。だというのに、刺された瞬間魔女は激痛に大きく身を震わせて暴れ出し、茨は見る見るうちに枯れ果てた。

 

『……如何かしら? その涙と絶望で鍛えられた剣の味は。()()()()()()()()()()()()。魔女であれ呪いや絶望の具現化であれ、実体があるなら例外なく一刺し受ければこの通り。そして』

 

 ズドドドドっ!

 

 それはまるで雨のように使い魔達に降り注いだ。ただ雨と決定的に違うのは、降り注いだのは全てが命を蝕む細剣である事。一つ一つが使い魔達に突き刺さり、着実にその数を減らしていく。

 

「…………凄い。これが、あの人と同じ魔法少女」

 

 まどかが呆然とする中、遂に細剣の雨によって使い魔達を一掃され、薔薇園の魔女はまるで怒り狂うように身体を震わせる。

 

『……何? 酷いとでもいうつもりかしら? 言っておくけれど先に手を出したのはそちら。さらに言えば、()()()()の前で人間を獲物にしようとした時点でアウト。ツイていなかったわね。……そして』

 

 青い魔法少女は祈りを解いて立ち上がった。閉じていた目は開かれ、片眼から黒い涙が溢れ出す。

 

 一歩枯れ果てた茨を踏み越えた瞬間、ヒュンっと飛来する二振りの細剣をその場でノールックキャッチ。聖女ではなく騎士として、対峙する魔女に向けて双細剣を構えた。

 

 

『ここからは……私の手番(ターン)よ。もう貴女に手番は回らない』

 

 

 そう言って魔法少女は、疾風のように薔薇園の魔女へと駆けだした。

 




 すみませんっ!? ホントすみませんっ!? まだ敢えて名前は出しませんが、この騎士にして聖女わりと武闘派です。だって騎士ですもの。剣を飛ばすだけでなく自身も斬り合いが出来て当たり前というか。

 それとウチのキュウディーは、誰が来ても楽しんでいましたが少し予想を超えてきたので内心ウキウキしています。だけどコイツがウキウキすると大抵碌な事にならないという。

 次回もまたいつになるかは未定ですが、現在第一章終わりまで毎日投稿中の新作『異世界予言システム。勇者に迫る死亡ルートを回避せよ!』を読みながらお待ちいただければ幸いです。



 最後に久しぶりのおねだりを。

 この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。

 お気に入りや評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!
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