三章
ある日、日の神は他の五柱に自らの指を一本ずつ与えこう言いました。「これで新しい動物を作りなさい、知恵を持ちよく働きよく尽くす動物を作りなさい。」
芸術の神は日の神の指と己の片目を使い、無邪気で享楽的な精霊の番を作った。その内過去の全てを見通し、どこまでも正確に確実に記していった男の精霊をシェクスビア。未来の全てを見通し、何より楽しく面白く歌った女の精霊をグロイアと言った。
二人との間に産まれた子共達は、今を見通す目を持ち。様々なことに興味を示しては面白そうなものを持ち帰り、見せ合い、時に奪い合って楽しく暮らしていた。
山の神は日の神の指と己の皮膚を使い、豪快で職人気質なドワーフの番を作った。その内強い力と堅い皮膚を持ち、無双の剣捌きを誇る男のドワーフをロックル。強い力と器用な手先を持ち、誰にも負けぬ鍛冶の腕を振るう女のドワーフをクッレルと言った。
二人の間に産まれた子達は頑丈な皮膚と強い力、器用な手先を持っていた。鍛冶や戦いに興味を示して素晴らしい技術を編み出し、作り出し、時に競い合って楽しく暮らしていた。
風の神は日の神の指と己の羽を使い、自由で奔放なハーピィの番を作った。その内誰よりも疾く飛び回り、翼の一振りで嵐を起こす男のハーピィをホークル。誰よりも華麗に飛び回り、恵みと幸運を運ぶ女のハーピィをピークアと言った。
二人との間に産まれた子共達は空を飛び回る翼を持ち、踊りや旅に興味を示た。楽しそうな場所を巡り、作り、時に喧嘩して楽しく暮らしていた。
雲の神は日の神の指と己の髪を使い、厳格で頑固な天使の番を作った。その内誰よりも知識を蓄え、大きな雲を持つ男の天使をライブディ。誰よりも知恵が回り、上手く魔力を管理していた女の天使をへーウィキと言った。
二人との間に産まれた子共達は賢い頭と知識を蓄える髪を持ち、知識や学問に興味を示した。知識を求めてな各地を巡り、学び、時に時にハーピィと争って楽しく暮らしていた。
海の神は日の神の指と己の血を使い、おおらかで優しいマーフォークの番を作った。その内誰よりも泳ぎが疾く、波の心を読むことのできる男のマーフォークをドゥレット。誰よりも優しく、癒やしと活力の血を持つ女のマーフォークをグロワーと言った。
二人との間に産まれた子共達は傷を癒やす血と魚と会話する能力を持ち、漁と人助けに興味を示した。困った人々を求めて各地を巡り、助け、時に間に合わない事がありつつも楽しく暮らしていた。
四章
こうして、五つの種族が産まれた。ドワーフ達が山の魔力を取り込み、それをハーピィ達が各地へ届け。天使達が空に昇った魔力を落し、マーフォークたちが皆を癒やす。そして精霊達はそれ等の偉業を後世に遺した。
そうして世界が回り始めた頃、日の神は遂に竜を作り始めた。
まずシェクスビアとグロイアを殺して目を剥ぎ取り、ロックルとクッレルを殺して皮を剥いだ。
次にホークルとピークアを殺して羽根をもぎ、ライブディとハーウェキを殺して髪を毟った。
最後にドゥレットとグロワーを殺し、血を絞った。
日の神は自らの指を五本使って竜の肉と骨を作り、目を埋め皮を貼り羽根を付け鬣を植え付け血を流し込んだ。
すると竜は目を開け皮を強張らせ羽根を伸ばし鬣を逆立て血を巡らした。
その竜はこの世界の全てを見通す目、山を投げつけられてもビクともしない皮膚、瞬きの間に世界を十週することの出来る羽根、この世の全てが記された鬣、一滴飲むだけで傷が癒え六十日は寝ずに戦える血を持っていた。
竜は言った「創造主よ、貴方は我に何を望む」
日の神は言った「竜よ、誰よりも強くあれ。常勝無敗の竜であれ」
日の神は言った「竜よ、誰よりも気高くあれ。高潔無比の竜であれ」
日の神は言った「竜よ、誰よりも強欲であれ。大欲非道の竜であれ」
日の神は言った「竜よ、誰よりも傲慢であれ。傍若無人の竜であれ」
竜は神妙な顔をして一つ頷き、こう言った「日の神よ、創造主の分際で頭が高いぞ。這いつくばれ」
そう言うと炎でさえも生温い灼熱の息吹を吐き、日の神を殺してしまった。
日の神の骨は一万を超える程の欠片に分かれ、空に昇って星になった。
日の神の血は六箇所に飛び散り、人間が産まれた。地に染み込んだ上澄みは男に、地に残った澱は女になった。
竜は目の前に残った日の神の心臓を空に打ち上げ、太陽とした。
しかし何時も太陽が頭上にあるのは気に食わなかったので。六時間かけて昇らせ、六時間かけて降ろし、残りの十二時間は山の下に沈めた。
日の神の肉は大量の灰となり、竜の誕生を祝福して世界に降り注いだ。
各種族の由来と命名法則
シェクスビア→シェイクスピア(劇作家)
グロイア→グロイア(グローリア→聖歌の一つ)
名前の最後の子音が「あ」
ロックル→ロック(岩)
クッレル→クレイ(粘土)
二文字目が「ッ」
ホークル→ホーク(鷹)
ピークア→ピーコック(孔雀)
二文字目が「ー」
ライブディ→ライブラリ(図書館)
ハーウェキ→ウィキペディア(百科事典サイト)
最後の子音が「い」
ドゥレット→ドレッドノート(戦艦)
グロワー→ラ・グロワール(戦艦)
最初の音が濁音