仮面ライダーギーツ ウマ娘・クロスオーバリング 作:玉ねぎは大正義ッ!
この3ヶ月、書き溜めを繰り返している間にすっかり時間が経過してしまってました
2話連続投稿です
どうぞ
──────デザイアグランプリ第2回戦を終えて、勝ち残ったのは5人。次脱落するのは…俺かもしれない…」
「脱落って…何の話?」
「あ、いや…何でもないよ、姉ちゃん」
「景和…、隠し事してるでしょ!?」
「まさか…また入社面接落ちたの?」
「はあ…。うん、まあそんなとこ」
「しっかりしなさいよ、ほんとにもう。ダイヤちゃんのためにも次は受かって来なさいよ」
21年皐月賞も迫った春先のある日のこと。
景和は沙羅とそんなやり取りを繰り広げていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『納期間に合ってよかったな、道長』
『明日から新しい現場だ。浸ってる暇なんかない』
『相変わらずドライだね。なんでこの仕事続けてるんだ?』
『理由いるか?』
『食うために働くのは人間の宿命ってか?俺はいつでも夢もってたいけどね』
『…夢?』
『生まれ育った故郷に、でっかいランドマーク、建てるんだよ!』
『…ふっ、高所恐怖症のお前には無理だろ』
『いやあ克服してみせるよ。俺の理想の世界を叶えてな』
──それから少しのち、道長は1人デザイアドライバーを見つめながらもの想いに耽っていた
デザイアグランプリに彼が参加する前の回想のようである。随分と悲惨なもの想いだ。
『俺の理想の世界を叶えてな』
「…今思いだしてもしゃあねえだろ」
しかしすぐに忘れようとする。というのも今日版どうやら仕事、正確にはクラウンの知り合いに資産家の邸宅の一つを改築する日。
そう、道長は普段トレーナー業と掛け持ちでサトノグループの系列の土建会社で働いているのでこういう仕事もちょくちょく担当しているのだ。
「こんな広大な土地に一軒家ですか?」
「これは別荘の一つに過ぎない。気分転換に全面リフォームしようかと思って」
「教え子であるキタのトレーニング施設も兼ねようと考えている次第だ」
「は、はい、そんな感じで頭が上がらないでふっ!」
(噛んじゃったあ⁉︎)
「浮世トレーナーともキタサンブラックさんとも共通の知人ということで、今回は私サトノクラウンがおすすめさせてもらった次第です」
「…んなっ⁉︎」
しかし、どうやら内容は違ったらしい。
クラウンだけならともかく、道長が常日頃目の敵のようにしているスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズこと浮世英寿とその担当アスリートであるキタサンブラックが来ているのだから。
にしても改築前時点で凄みを感じる英寿の別荘、なかなかに凄いものである。
「さすが、スターオブザスターズ!オブザスターにサトノ家のご令嬢ですね!」
「えっ、あれ…! 浮世英寿じゃねーか?」
「クラウンお嬢の指示を受けてきたらすげえのが来たなぁ…」
そこへ業者仲間も到着、道長の比にならないぐらい驚いていた。まあ当然の反応である。
「これはこれは」
「お前ら、何でここに?」
「今日はクラウンの知り合いの資産家宅の改築って聞いてたんだが…」
「ああ光栄だよ。クラウンづてとはいえお前が俺の家の改築兼キタ用のトレーニング施設建造の依頼を引き受けてくれるなんて」
「はっ…?俺の家…?キタサン用施設…お前?」
「…おいクラウン…」
「对不起(ごめんなさいミッチー)!」
「ちょうどロケ中でな。番組名、なんでしたっけ?」
「『ガツンと一軒家』です」
しかもどうやらキタサン用の新規トレーニング施設も兼ねているようだった。至れり尽せりというやつか。
「テレビになんか出て、チャラチャラしやがって」
「教え子まで引っ張って余裕だな?」
「これが勝者と敗者の差ってことだな。悔しかったら、お前もデザグラで勝って理想の世界、叶えてみろよ」
「もう2度と、お前には…お前にだけは負けない!」
インタビュー後少しの間、道長は英寿と話せる機会を得た。
ただし相変わらずというか、英寿に食ってかかる始末。
「あまり偉そうに言えないし今さらだけれど、2人とも毎度毎度お約束みたいに仲良く喧嘩してるわね」
「あはは、ただ今回はあたしもクラさんも吾妻トレーナーには内緒だったからね…」
「…いやほんとにごめんなさい、ミッチー」
「すいません…」
「そういうことはもっと早くに言え、たく!」
ただ今回はいつも通り+クラウンやキタサンも道長が軽く怒るそもそもの原因を担っているので仲裁する気にはなれず、なんなら謝罪もしながら2人の口論を見守っているのだった
「相変わらず血の気が多いな。赤い服きてるからか?」
「人を闘牛みたいに言うな」
「初めて会った時から感じてたよ。俺になにか特別な恨みでもあるような気迫をな」
「そう言われてみると、確かに…」
「質問なんですけど吾妻トレーナーをそこまで恨みを感じるようなこと、トレーナーさん何かしたんですか?」
「…お前は気にすんな。俺とこいつの問題だ」
「うぬ惚れたスター野郎には一生分からないだろうことだがな!」
「ええ、そんなにですか…」
道長が普段英寿に向ける眼差しにはただ気に入らないだったり超えたい者を見る以外の意図が英寿曰く見え隠れしているらしい。
ただキタサンにはそんなものは当然分からず、質問を返すもはぐらかされてしまうのだった。
「キタ、幻滅したか?」
「してはないですけど、あまり恨みつらみはトレーナーさんに向けられたくないです。事実でも恩人が悪く言われてると、あたしも悲しいですし…」
「…嘘ならどんなに良かったか」
「吾妻トレーナー…」
「ミッチー…」
(いつもより気迫を感じる怒りかた、これは私も知らないただならぬ過去がありそうね…)
ただ、何やら悲しい秘密がそこに秘められているのは間違いなさそうで。
「このメロディは!」
「確かデザイアグランプリ再開、ってことかしら。前から数ヶ月経ってるけど」
しかしそれを許さないのか、デザイアグランプリの再開を告げるスパイダーフォンの着信音が軽く周囲に響き渡る。
「だろうな、お呼び出しだ。というかバッファ。俺の家直すならデザグラ、棄権するか?」
「なんならクラウン共々観戦してても怒らんぜ?」
「あ、誰が?ソッコーで仕事、終わらせてやる!」
「律儀ですね…」
「真面目で義理堅いのよ、彼は」
しかし仕事を放棄してまで参戦する気は吾妻道長という男にはなく。当然タスクをこなしてから参戦するような旨をスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズに高々と告げるのだった。
ちなみにクラウンが道長に惚れた理由の一つだったりするのだが、そんなことは当然今の今に至るまで道長に伝わったことはない。
「キタちゃん、浮世トレーナーの別邸改築は上手くいきそう?」
「上手く行きそうではあるんだけど、案の定吾妻トレーナーが最初カンカンだったよう…申し訳ないことしちゃったや」
「でもなんとかなったんだね」
「うん、一応なんとかなったのかな」
(吾妻トレーナーの過去は気になるけど)
そうして彼女たちもスパイダーフォンでデザイア神殿のモニタールームに移っていく。1人目はキタサンではなくダイヤ。キタサンもいつも通り、というわけではないがトレセンでしているような他愛ない会話を繰り広げるのだった。
「昨日ぶりだねクラちゃん♪」
「ダイヤ、今日は私はいなかったけれど皐月賞に向けたトレーニングは今日のぶんは大丈夫そう?」
「うん。ちょうど一区切りついたタイミングでデザグラ再開のお知らせが来たんだ」
「ただ、着替えは流石に持ってきてなかったからトレーナーさんのをお借りしたの」
「呀、やっぱりね。つまり彼シャツってことかしら♪」
「⁉︎ も、もうクラちゃん!」
どうやら景和とのトレーニングを終えた直後ぐらいにデザグラ再開のお知らせを受け取ったようだ。通りで景和の私服を身につけているわけである。クラウンからすれば微笑ましく写ってしょうがないのだった。
「…皆、普段通りですごいね。僕はまだ慣れないや…。祢音ちゃんが死にそうな目にあったのが前回だし」
「そのせいで変な度胸が日常でついたけど」
「シュヴァルちゃん…」
「…今回は出ないと信じるしかないわね。流石に、毎度毎度初回みたいになるわけじゃないでしょうし…」
「クラさん…だと、いいなぁ」
シュヴァルも到着したようで、しかし前回平の死を目撃したことや彼女のトレーナーである祢音が生死を賭けた事態に直面したのを目撃したのもあってか、今回もデザグラには消極的だった。
(キタちゃんもクラちゃんもシュヴァルさんも皆、やっぱり緊張してる。当然だよね…)
「…トレーナーさんが無事でありますように」
「「「…トレーナーさん(ミッチー)(祢音ちゃん)…」」」
そんな彼女を見てダイヤが始めた細やかな祈り、それを見た3人も自らのトレーナーの未来の安全を祈るのであった。
そう、自らの命と同じ程度には大切である自分たちの運命の相棒の無事と勝利を
『新たなジャマトが現れました。これより、デザイアグランプリ第3回戦。神経衰弱ゲームを始めます』
そして時を同じくしてツムリのアナウンスがデザグラ神殿各所に伝播され、それはつまりデザイアグランプリ3回戦がスタートすることを意味していたのだった。
「神経衰弱…」
「つまりトランプかな?」
『トランプのアレですよね?』
『まさに。今回のジャマトはトランプジャマトです。カップルや仲睦まじい2人が集まるスポットを襲い、その仲を引き裂いて、自分たちの巣へ持ち去る習性があります』
『ひどい』
「人間臭さのあるジャマトね…毎回習性が変わるのかしら」
「僕、まだ付き合ってなくて良かった…」
『今回はくじ引きでデュオを決めてミッションに挑んでもらいます』
『2人1組のチーム戦てわけか』
「くじ引きだからそこが最大のメリットでデメリットになるのかな」
どうやら今回のミッションはチーム制らしい。
死なば諸共一連托生、とまでは行かないが片方の敗北はもう片方の敗北にもなる。
なら気をつけねばならないことは山ほどありそうだ。
『ジャマトを殲滅させればミッション完了。今回もスコア勝負です。最終的にスコア最下位だったデュオ2名が脱落となります』
「「「ええ⁉︎」」」
「つまり、あたしたちのうち2人も次から観に来れなくなる可能性ありってこと?」
『えっ…?2人同時に…!』
『望むところだ』
(ミッチー…頑張ってね)
キタサンたちもそれに気づいたようで、観客ながら戦々恐々としているのだった。
『では、前回までのスコア成績順にくじ引きをしてもらいます」』
『まずは』
『俺だな…。ナーゴだ』
『英寿様と私がチーム!?』
「トレーナーさんと祢音さんかあ」
「…祢音ちゃんにいかがわしいことしませんように」
「そこは流石に大丈夫じゃないかな…」
一組めは英寿と祢音に。
『では次は』
道長が引く。すると…
『タイクーンか…』
『俺が…君と…?』
「へえ! チームカペラ、ここでも結成ね♪」
「2人で応援しなきゃだね、クラちゃん」
「ええ、まさかこんな偶然があるなんてって気持ちだわ」
2組目は景和と道長に決まった。ダイヤとクラウンも自分たちが現在所属しているチームカペラ再結成だと湧き立つのだった。
『じゃあ…俺が組むのは誰?』
『我々デザイアグランプリの運営側から特別に1名参加します』
『その名も仮面ライダーパンクジャックです』
「くまさん?」
「カボチャ?」
「南瓜(ナングァ)bear…って言ったほうがいいのかしら…?」
「可愛い…」
『おわっ!?びっくりしたー。えっ?いきなりライダー?』
そして余った森魚はパンクジャックという謎のプレイヤーを当てがわれていた。外見はオレンジのダパーンといったところか。
『顔出し、声出し、NGのスタッフなので、ご理解ください』
「そういうパターンアリなんだ…』
「でもなんだろう、あたし最近会ったような気がする。いや初めてなんだけど」
「キタサンの身近な誰かが変身してるってことかしら?」
「うーん、そこまでは分かんないけど。でもなんとなく、初対面じゃない気がしたんだ」
「なるほど…気に留めておくわね」
そしてキタサンは初めて会った感じがしないらしい。しかし誰がそうなのかまで思い浮かぶはずもなく。
『ギーツ、ナーゴデュオ。タイクーン、バッファデュオ。メリー、パンクジャックデュオに決定しました。今回はデュオごとに宝箱を1つプレゼントしますので、仲良く使ってください。それではミッションスタート!』
その間に第3ミッションはスタートしたのだった。
『あっ、宝箱。これは…爪?』
『クローバックルだ。ナーゴが使え』
『いいの?』
『そのほうが2人のパワーバランスがとれるからな』
『さすが英寿様。イケメン』
「フォークみたい…でも幸先はよし…!」
英寿と祢音は早速クローレイズバックルをゲットしゲームスタート。
『鉄球?念願の武器だ!』
『えっ…?何?欲しいの?』
『ハロウィンちゃんは、はい、盾でも使いな』
(…なんか、俺に合わねえ!みたいな感じで怒ってそう)
森魚はというとチェーンアレイレイズとシールドのバックルレイズバックルをゲットするも自分が攻めたいのかシールドをパンクジャックに回していた。
これが原因かは分からないが、キタサンから見たパンクジャックは不服そうにしているように見えたのだった。
「やっぱりこの森魚って人、僕、前に何かのニュースで見た気がする…」
「ニュースで、ですか?」
「うん。それもそこまでいいニュースじゃなかったような…」
「シュヴァルちゃんが気になる人、か…クラさん」
「ええ、普段大人しいシュヴァルがそこまで言うなんて気になるわね…というか気になること出まくりよ」
そしてシュヴァルは前回に引き続き、どうしても森魚に既視感があるらしい。しかも悪い意味で。
「でもマジックを多少嗜んでる身から言わせてもらうと、この人、手癖が悪そうな気は前に見た時からしてるのよね」
「なら悪いんだけどクラさんやダイヤちゃんのほうで調べてもらうことできそう? あたしの実家だと難しそうだし」
「呀Of course! 今ダイヤがまさに連絡してくれてるわ」
「──はい、はい。…! ありがとうございます!」
「うん、依頼はしておいたからあとは時間が解決してくれるよ。それもそこまで掛からずに」
なのでダイヤ・クラウンらが実家であるサトノグループに捜索届や各種個人情報の調査を依頼しておき、それに頼ることとしたのだった。
「良かったぁ。あっ見てダイヤちゃん、桜井トレーナーがなんか見つけたみたいだよ!」
「ほんとだ、しかもこれは…」
『うわあ!ブーストバックル!ラッキー!』
『お前、いつもそれ手に入れてないか?』
「ほんとにね、ミッチー」
今回も今回とて景和がブーストレイズバックルを開幕早々ゲット、案の定道長に、なんなら今回はクラウンにも不思議がられている。
『ま、使ったことは一度もないんだけどね』
『運がいいのか悪いのか、分かんないやつだな』
「トレーナーさんとブーストは相性いいのかな、今のところは」
「もしくは赤スパみたいに誰かが投入してたり、かな」
「ああなるほど、スパチャシステムや視聴者が存在する可能性…でも私たちが見てるわけだし、なくもない可能性、なのかしらね」
それに繋げて、ここでオーディエンスが存在する可能性をキタサンやクラウンが提示する。そう言われればそうだとなるが意外と気に入らない見方である。
『『『『『SET』』』』』
『『『『『変身!』』』』』
『『『『『MAGNUM(ARMED ALLOW)(ARMED CLAW)(ZOMBIE)(ARMED CHAIN ARRAY)』』』』』
『『『『『READY FIGHT』』』』』
直後にそれぞれのライダーは変身しトランプジャマトと交戦
道長/バッファはトランプジャマトを角でかち上げ吹っ飛ばし、息の根を絶やす。
が、クローバーが浮き上がり、トランプジャマトはあっさり立ち上がる
『ALLOW VICTORY』
『ジャジャァ⁉︎ …ジャジャッ!』
景和/タイクーンもアロー直撃でジャマト一体撃破と思いきや、スペードが浮き上がり、つまるところ倒せていない。
『MAGNUM TACTICAL BLAST 』
『ジャジャッ⁉︎』
そんなことで止まらないとばかりに道長/ばはマグナムシューターの必殺技をゼロ距離射程から放つ。
『チョロいな』
(う、撃つんじゃなく殴るんだ…貴方らしいけど。というかそれはフラグよミッチー…)
『ジャジャァ…』
『ん…? 何だと!?』
見事にフラグを建築して回収。やはりジャマトを倒したと思ったら、クローバーが浮き上がり、復活してしまうのだった。
『やあっ!!』
『ZOMBIE VICTORY』
『『ジャジャァ…』』
『何?』
『復活した! なんで⁉︎』
祢音/ナーゴ はアームドクロークローで斬り裂く。
英寿/ギーツゾンビフォームもすかさずベルト操作で必殺技を繰り出し、ジャマト撃破。
かと思いきや、やはりハートが浮かび上がり…
「シュヴァルちゃん、ジャマトってこんなにしぶとかったっけ?」
「僕が見てる限りじゃ、そんなことはなかったはずだけど…僕もデザグラ初心者だし分かんない、かな…」
そうなるとジャマトにまあ詳しくないキタサンやシュヴァルも気になってくるわけで。
『ジャジャァ〜〜〜ッ⁉︎』
そうこうしているうちにトランプジャマトは逃げていき姿を見失う。
結果、一時的にお開きとなったのだった。
『…なるほど。どうやらこのゲームにはある秘密があるようだ』
『化かされたままでは終わらないさ』
「…トランプ、神経衰弱…」
(…呀、なんとなく分かったかもだわ)
「でもその前にミッチーに会ってこようっと」
英寿やクラウンは今回のミッションやジャマトが持つ仕掛けに気づいたらしく意味深に納得する。
ちなみにどのペアも0ポイント、つまりまるで得点を稼げていない。ここから巻き返していくしかない。
「どうなってるんだ?…ああくそっ!…外の空気でも吸ってくるか」
道長もまた今回のミッションについて頭を悩ませるも、慣れないことを試しにやったぐらいですぐ解が導き出されるわけでもなく。
気晴らしにサロンから出て行くことを選択したのだった。
「ミッチー!」
「トレーナーさん!」
「お前ら、今は接触していいのか?」
「ギロリさん曰く休憩タイミングに知り合いのプレイヤーと会うならOKだそうよ」
どうやらキタサンたち4人が英寿たち4人やその知り合いに休憩タイムに接触するのはデザグラ的にはOKらしい。
「なるほど…でもダイヤちゃんに恥ずかしいとこ見せてなかったかなぁ、俺」
「いえいえ、まだ序盤みたいですがトレーナーさんなりに頑張ってたとダイヤは思います」
「そっ、そっかあ〜! なら良かった♪」
仮にも担当の目に写す試合で失望させるようなことをしていないか景和なりに不安だったのだが、どうやら問題なかったようだ。
「ミッチーもよく無事だったわね、私としてはそこが嬉しいかな♪」
「///…ふん、どうも」
クラウンも道長のことを変わらず案じてくれていたようで、彼も彼女のそれをお節介焼きやうざったさにこそ感じれど悪くは感じないのだった。
「ただマグナムシューターでぶん殴ってたのは、その、仕事の癖?」
「そうそう、何で吾妻トレーナーはマグナムなのに近づいて殴りかかるんですか?」
「ああ? 単に距離を置いてやり合うのは性に合わないだけだ」
「というか、これならゾンビの方がマシだな…」
どうやら先程道長がマグナムシューター40Xの持ち手を叩きつけているだけだったのは、単に近距離で獲物片手に殴り合うほうが道長の性に合っているかららしい。
普段から荒削りな生き方をしている彼らしさをよく表しているというべきか。
「なるほどなるほど。よく誰かに突っかかってるし、ライダーとしても人としても距離が近いんだね」
「ぷっ! う、上手いわね桜井トレーナー…!」
(私が普段ミッチーに思ってることだわ…)
「なんか文句でもあんのか⁉︎」
「いやいやそうじゃなくて…そんなにゾンビがいいなら、それ貸して」
「あっお前…っておい⁉︎」
景和はそれを見て何を思ったのかキレッキレの天然煽り文句で道長を煽りクラウンを笑わせたかと思うと、ブーストレイズバックルを道長の手から捥ぎ取るとサロンのほうへ姿を消したのだった。
何事かと言わせる間もなく。
「行っちまった…」
「トレードでもしに行ったんでしょうか?」
「お待たせ〜!」
「ほんとに交換してきたみたいね」
「はい、これ」
数分後戻ってきた景和だったが、その手にブーストレイズバックルは握られていなかった。
代わりにあったのはゾンビレイズバックルだった。これはつまり…道長は嫌な予感がした
「…どういうつもりだ? お前まさか、ブーストを交換したのか?」
「うん、英寿とトレードしてきたんだ。これが欲しかったんでしょ? バッファのIDコアとも相性がいいらしいって…!」
「…お人好しにも程がある。ブーストまで渡す必要はないだろ⁉︎」
「ちょっとミッチー⁉︎」
聞いてみれば案の定ブーストを担保にゾンビとトレードしてきたらしい。
感謝より先に困惑や怒りが込み上げてくる道長だった。
クラウンが宥めようとするも聞き入れる気もなさそうだ。
「君の役に立つと思ったからだよ。デュオになった以上、俺たちは仲間なわけだし…!」
「何よりカペラのトレーナー同士じゃん、俺たち」
「フン、誰が!?」
景和も仲間だからと歩み寄ってもつっけんどんに返してくる始末。相当にご立腹のようだった。
「ッ、なんでそんなに皆を目の敵にするんだよ⁉︎」
「私も気になります。そこまで敵意を剥き出しにしなくても…」
「…お前らルーキーは分かってないんだよ。デザイアグランプリにおいて理想の世界が叶えられるのは一人だけっていうのがどういうことか」
「それが、それが叶わないってことが意味する可能性が、どういうことかもな…」
「ミッチー…」
(彼が話したがらない過去に関係があるのかしら…)
流石に少し頭に来たのか景和はダイヤとともに訳を問う。
が、道長の返答は甘い、分からずやというような感じのものばかり。
敢えて私のトレーナーだからと見逃していたクラウンも心配になり、そして思いついたのは道長の過去に関係があるのではというもの。
「…前になんかあった?」
「…もしや吾妻トレーナー、過去に何かお辛いことがあられたのではないですか?」
「お前らには関係ない!」(道長)
「…邪魔したな」
景和・ダイヤも似たことを想像したようである。だが素直にぶつけてみても道長は乱暴に誤魔化すばかりで挙句に通路を離れ、またどこかへ。
そこでデザイアドライバーを見つめる道長は、かつての忌まわしき情景に思いを馳せていた。
もう2度とは帰らない親友(とも)の、2度と見たくはない最期を、その顛末を。
『俺の理想の世界を叶えたとき…』
(…切断されたドライバーが転がり落ちる)
(ジャマトに斬られる透)
(理想の世界と言ってたが、やはりあいつもデザイアグランプリに参加していたのか)
(もう分からないことだが)
『透!透…!大丈夫か?しっかりしろ!』
『こ…こんなはずじゃなかったんだ…』
『…ご、めん。みち、な、ガ…』
『』
『はっ…?』
『おい…透…?』
『』
『ッ、とおるううううううああああああァアアアア!!!!!』
(その後、ジャマトと戦うギーツの姿を目撃した)
(さらには笑いながら去って行く2人のライダーの後ろ姿を我ながら険しい表情で見つめていた)
(──このとき決めたんだ)
(透がああなる前に間に合わなかった俺自身を乗り越えると)
(…同僚を、俺の親友を嬲り見殺しにした、助けちゃくれなかったライダーという薄情者の集団も)
(そいつらのような、てめえの幸せのために他者の幸せを意図的に踏み躙る連中をのさばらせるデザイアグランプリという世にも醜い戦場も、全て残らずぶっ潰してやると)
「ここは…?」
「サロンの中にある、トレーニングエリアだ。地上戦や水中戦、空中専用のエリアまでいろいろある」
「あたしたちも付いてきて良かったんでしょうか?」
「うん、祢音ちゃんの無事はずっと気がかりだけど」
「構やしないさ。ある種の体験入会みたいなもんだ」
道長が景和やダイヤ、クラウンと揉めていたその頃。英寿・キタサンと祢音・シュヴァルはデザイア神殿のまた別区画、プレイヤーのために配備されたトレーニングルームに顔を出していた。
こんな感じでデザイア神殿にはプレイヤーでさえ知らない区画や部屋が数多く存在している。
まるでダンジョンである。
「ふ~ん…。で?何をトレーニングするわけ?」
「ダンス得意なんだろ?前に動画配信やってたから」
「ああ、祢音TVの最新ぶんのことね」
「かっこいいっていうか、祢音ちゃんはただ音楽が好きなだけなんです…」
「十分だ」
「「「?」」」
自分たちをここへ呼びだしたわけを問えば返ってきた十分という答えに祢音たちは困惑するも
英寿がリモコンスイッチを推すと、そんなことを言う余裕は無くなる。
「うわーっ!? ジャマト! 何でここに?」
「ヒィッ、ね、祢音ちゃあん⁉︎」
そう、ジャマト2体が現れたのだから。
「うわわ!…あれ、これって…」
「お察し通りトレーニング用の仮想ジャマトだ」
「な、なーんだ。脅かさないでよもう〜〜!」
「(びっ、ビビったあ〜…!)…」
が、しかし。
仮想の存在と分かるや、その恐怖も氷解。
「じゃあトレーニングを始めよう」
「さて、ミュージックスタート!」
『♪』
「あっあたしこれ聞いたことある、というか…」
「日曜日のノラネコだ…」
この後、はたしてどんなトレーニングを行ったのか?
それは神のみぞ知る。
「ふぃ〜、た、大変だったあ…」
「あっ、あんなダンストレーニング初めてだよぅ…」
「そんなに大変だったの、2人とも?」
そうして今はモニタールーム。ミッション再開少し前である。キタサンとシュヴァルはと言うと、もうへとへとだった。
慣れないトレーニングはいつの世も人間とウマ娘の大敵である。
「うん…でも、楽しかったよ!この先デザグラに参加することがあるなら案外楽しめそうって思っちゃった」
「あと、中身はすぐに分かるらしいから僕たちからは言えない…」
「ネタバレ要素ってことかな、キタちゃん?」
「たぶんそんな感じだね」
そしてどうやらこのトレーニングがそのまま今回のジャマトの攻略法に繋がっているようで、二人は教えることを良しとしないのだった。
「……」
(ミッチーのことが心配になってきちゃってそれどころじゃないわね…)
ちなみにクラウンは道長のことがあれからずっと強く心配でそれを満足に聞いてはおらず。
というか半ば心ここに在らずだった。
「あっミッションが再開したよ!」
そうしてミッションが再開され、トランプジャマトが再び出現
それぞれのデュオは再び現場へ向かうのだった。
『さて、今度こそ攻略できるかな?ミッションスタート!』
『『SET』』
『『変身!』』
『『ARMED ALLOW(ZOMBIE』』
『『READY FIGHT』』
「おお…なかなか絵になるわね…」
(ミッチーが心配なのは変わらないけど)
「なかなかにフレキシブルな変身なんだ、トレーナーさん」
道長と景和も早速会敵し、臨戦態勢に。
それにしてもクラウンも言っているが、この2人の並んでのダブル変身、レアな感じでなかなか絵になるものである。
「おい! 勝手にやるなって、もう…!」
一方こちらは森魚/メリーとパンクジャック。
メリーがチェーンアレイでジャマトを攻撃し、続けて強烈な一撃を見舞おうとした瞬間、パンクジャックがジャマトへ体当たりし、不発。
『ALLOW VICTORY』
『ジャアアアッ⁉︎』
『…ジャジャァッ!』
『また復活した…。何で…?』
今回もまた景和/タイクーンが必殺技でトランプジャマトを撃破!かと思いきや、倒したはずのトランプジャマトはやはりすぐさま復活する
「…やっぱりそういうことかしら」
「クラちゃん、どういうこと?」
『これは神経衰弱ゲーム。ということは…まさか…!』
「今桜井トレーナーが言ったことがヒントよ、ダイヤ」
そしてクラウンは自身の予想が当たっていることをなんとなく確信し、ダイヤにそのヒントを与えるのだった。
『何ボーっと突っ立ってんだ?本気で勝つ気、あるのか!?』
「神経衰弱は2枚1組でしょ……あっ、つまり!」
「うん、ダイヤちゃんも分かったみたいだね」
「…僕たちのダンスの中身もそれ絡みなんだ」
そして彼女は閃き、同時に…
『神経衰弱ゲームといえば、攻略法はただ一つ』
『同じ柄のジャマトを2体同時に倒すこと!』
「やっぱりそういうことね」
「トランプが肝だったんだ」
その答えも英寿と祢音により明かされる。
分かってみれば単純明快なものだった。
『『SET』』
『へ~んしん!』
『変身!』
『『MAGNUM(ARMED CLAW)』』
『『READY FIGHT』』
『さあ。開幕からハイライトだ』
『オッケー!それじゃ、ミュージックスタート!』
「来たあ!」
「名付けてノラネコ大作戦…スタート、だね」
そして彼ら彼女らの短時間ジャマト攻略法、通称ノラネコ大作戦がスタートするのだった。
まずは英寿/ギーツがマグナムでトランプジャマトを攻撃し図柄を確認する。
『見切った!』
そしてブーストをここでセット。
『フッ!』
高速移動で同じ柄のトランプジャマトにペイント弾でマーキングを次々と付けていく。
『ナーゴ。この2体がターゲットだ!』
『オッケー!ヤアーッ!』
『『ジャジャジャッ⁉︎』』
「上手い、上手いですトレーナーさん!」
「ダンスして良かったぁ…」
1体を祢音/ナーゴに任せ、もう1体は英寿/ギーツが攻撃。かと思えば彼女がジャンプし、彼がスライディングし、相手を交換。
澱みなく、されど軽快に、軽やかに進んでいく。
「ナーゴ。タイミングを合わせてフィニッシュだ!」
「合点承知!」
『MAGNUM TACTICAL BLAST 』
『CLAW VICTORY』
ノラネコの終盤メロディで息を合わせつつ
必殺技を同タイミングで叩き込む。
『『ジャアアアッ!!??』』
撃破完了である。
「やったー!」
「最速クリアだ」
「うん」
しかもどうやら最速クリア。流石のスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズっぷりと言うべきか。
「ッ…シュヴァルちゃん!」
「…うん!」
「「ノラネコ大作戦、だいっせいこお(大成功)〜〜!!」」
「2人とも嬉しそうだね」
「そりゃもう!」
「柄じゃないのは、分かってるけどね…♪」
釣られてキタサンとシュヴァルも思わずはしゃいではしゃいでにっこり笑顔。
ジャンルは違えどトレーニングの成果が出たときの楽しさをよく知る彼女たちなればこそなのだろう。
(…あの人が今回の件でストレスを溜め込んでないとは思えない)
「ミッチー…ごめんなさい皆、ちょっと部屋を空けるわ」
「あっクラさん⁉︎」
ただクラウンからしてみれば、今の英寿と祢音の活躍、その結末を以て道長が内心荒れていないわけがないだろうと確信できてしまった。
…なので脇目も振らず、モニタールームを飛び出したのだった。
「皆様、お疲れ様でした。逃走したジャマトは後6体です。またいつ出没するか分かりませんので、呼び出しがあるまで、デザイアエリア内で待機していてください」
「腹ごしらえでもしとくか」
「私もー! 何たべよっかなー?」
「…調子に乗りやがって」
「だから言っただろ? これが勝者と敗者の差だ」
「かあ~~、もうこんな相棒じゃ、無理だよ、もう!」
「あでっ⁉︎……えっ?」
今回の討伐により、残るミッション内ジャマトの総数は6体。そしてそのどれもがまた逃げてくれたので、再びのフリータイムとなった。
「皆様が力を発揮できないのはくじ運のせいだとお思いですか?でしたら、ご案内がございます」
「ゲームの活動時間に応じて配られるデザイアマネーで、一度だけくじ引きをやり直せる、スペシャルくじ引き券が購入出来ます」
「ただし一枚につき二人まで使用可能。要は二人で一度ずつ使用可能ということです」
「えっ、嘘…! デュオ、替えたくないんだけど!」
「すでに獲得済みのスコアは個人の持ち点として、新しいデュオに引き継げるので、問題ありませんよ。もっとも、スコアゼロの方々には関係ありませんが…」
「⁉︎ ふざけやがって、情けなんていらねえよ!」
組み合わせをやり直す機会を与えられたはいいものの、あからさまに下手に見られたなら我慢できるはずもなく。
英寿の実力、自らの至らなさ、その他もろもろ腹に据えかねた道長は堪らずサロンを出ていくのだった。
その後、屋上のトレーニング場にて2体の仮想ジャマトを出現させる。
殴る、蹴る
殴る、蹴る
殴る、蹴る
仮想ジャマトを生身でひたすらに痛めつけ、怒りを発散する。
「ヴアアアアアアアアアアッ!!!!」
およそ人間とは思えないような怒号を出せるほどに溜まった怒りを集中爆破させる。
「ミッチー、落ち着いて!」
「あ?」
「担当の顔も分からないぐらい荒れてるか」
「ギーツ…!!」
なので当然、見知った男とウマ娘が近づいてきていたことにも気づかない。
「デュオを変えられるチャンス。お前ならどう使う?」
「…浮世トレーナーから聞いたわ。一枚につき二人、両人とも一度だけペアを交代できるチケットを提示されたそうね、ミッチー?」
「…チッ!」
「理不尽をぶっ潰すことに、浮世トレーナーに勝つことに貴方がずっとこだわってるのは分かる」
「…そんな貴方に惹かれた私もいるから」
「…でも、自分を見失わないで!」
「我ながら上手く言えないけど、ここで見境なくパートナーを変えてしまったら、貴方は絶対後悔するわ!」
そして自らのトレーナーを止めるべくクラウンは叫ぶ、思いのうちを。
漠然としていながら、決して良くないことになると強く囁く己が心に従って。
「うるせえ! ライダーは全員、敵だ。パートナーなんて誰だっていい!」
「ミッチー…ッ!」
がしかし。一時的とはいえ、怒りに支配されかけている彼、吾妻道長には弾き返され、己が無力さだけを思い知るのだった。
「…このゲーム、お前には向いてないかもな。無自覚に愛している者の言葉にさえ耳を傾けない、群れることを嫌う、孤高のバッファロー」
「黙れ、クラウンがいようがいまいが必ず突破してやる。俺が理想の世界を叶えれば、お前はもう終わりだ!」
英寿もそんなクラウンの非力さを、道長の未熟さを見かねたのか、いつもより露悪的に道長を挑発する。
「ハハハ…! つくづく興味深いな。多くを切り捨て過酷な戦いに身を投じてまで、お前が叶えたい世界とは?」
「俺がデザイアカードになんて書いたか知りたいか?お前みたいな奴をぶっ潰す事だ、ギーツ!!」
「それが、ミッチーの願いなの…?」
「ああ、全てのライダーをぶっ潰す力、それが俺が望んだ世界だ!」
そうして明かされた彼の願いはあの過去に濃く結びついたようなソレだった。
「徳にならない話はもう終わりだ!」
「クラウンはとっとと鑑賞室に引っ込んでろ!」
「じゃなきゃ2度と俺に関わるんじゃねえ!」
「ッ⁉︎ みっ、ちー…?」
「私、わた、しはぁ…!」
「ぁっ‥」
世界が真っ白になる、そんな感覚に近かった。
絶縁とも取れるような宣言をされた。
それが瞬間、彼女、サトノクラウンの胸にどれだけ響いたか。
「…」
(あの野郎…理由はどうあれ、担当ウマ娘を泣かせやがって)
(ここからどう動くつもりだ、バッファ)
そんなクラウンを見つめる英寿は道長への呆れと心配を彼なりに募らせていた
「お互い苦労するね。パートナーに恵まれないと」
「…そんなことで俺は負けない」
「強がるな青年。まだ勝ち筋はあるだろう?」
それから数分後、いつの間にか森魚はデュオ交代チャンス券をゲットし、場を離れた道長を誘惑していた。
チャンス券を見つめる道長、思わせぶりな笑顔を見せる森魚。
両者の狙いが、互いを捉え始めていた…
前書きにも書きましたが
この3ヶ月、書き溜めを繰り返している間にすっかり時間が経過してしまってました
お恥ずかしいかぎりです
次はなる早で投稿したいところですが、こんな具合に不定期になる可能性もあるかもです
理解しておいてくれると助かります
それでは今回はここまで