詠唱はロマンだよなぁ…? 作:クソ長詠唱大好きお兄さん
アンケートの結果、第一話「異端」の最後の技名を変更しました。
突然ではあるが「必殺技」と言われて真っ先に思い付くものはなんだろうか。
漫画やアニメなどに登場する技は千差万別だが、その形は作品に応じて「型」が存在しているものだ。
例えば唯無言で腕を振るうと言う簡単な動作だけで敵を殲滅する、使用者の強さをこれでもかという程表現するもの。
例えば一言静かに技名を呟いて爆発的な破壊力を発揮したり、複雑怪奇な技を瞬時に発動したりするもの。
あるいは技名を叫んでから豪快に撃ち出すもの。
各々が各々には無い良さを持ち、我々ただ眺めるだけの者達の心を揺さぶってくれる。
だが、敢えて言おう。
必殺技に於いて至高であるのは技名でも技の内容でもない、その前振りであると。
そしてその中でも一番カッコ良く美しいのは、そう———
———詠唱である、と。
死んだ。目が覚めた。森に居た。
当時の俺の状況を表すならこれに尽きる。
所謂転生という奴だ。
何を言っているかわからねぇと思うが、俺もわからねぇ。
俺は確かに死んだはずである。
具体的にはコンビニで店員の目を盗んで立ち読みでもしようかと悩んでいたところにクソデカトラックが突っ込んで来た。
うーん、カオス。
死ぬ瞬間はアドレナリンが出まくって視界がクリアになるだなんて聞いた事があるが、最後に俺が見たのは焦りに焦った顔をした運ちゃんだった。
もしかしたらブレーキが効かなかったとか色々事情があるのかもしれないが、取り敢えず彼が無事である事を祈ろう。
俺の死体を超えてゆけ。
だがこうして生きているところを見るに、もしかしたら奇跡的に一命を取り留めたのだろうか、だなんて考えたが、もう既にこの世界に生まれ落ちて長い。
流石に此処が日本どころか地球でないことくらいは見当もついている。
え、何を以てそんな事を言っているのかって?
ではお答えしよう。
まず、俺の姿が全然違う。
目が覚めた時、体の感覚は変わってないな…と思ってペタペタと己の身体を弄っていたいたところ、頭に違和感を感じたのだ。
そうして丁度側にあった池に少しの期待を込めて覗き込めば、そこには左右に一対と額に一つ切れ長の眼を持つ化け物が居た。
結膜は黒く、更には瞳まで真っ黒。唯一我がサードアイのみ赤い瞳を持っているのが不気味さを助長している。
肌はペンキでも塗りたくった様に白く、生え揃う歯は異様に鋭い。
髪は灰色で、前世なら手入れの必要が無いだろう程度にはサラサラである。
角は四本あるようで、悪魔のような捻れた角が波打ちながら後方へと流れるように生えている。
コスプレにしては妙に生々しいし、硬いし、それに引っ張っても頭ごと持って行かれてしまう。
どうやらコレは装飾でもなんでもない、正真正銘俺の一部のようだ。
負け組に拍車が付いてやがるぜ。
…で、どうやらソレが俺らしい。
いやベースはめっちゃイケメンな美少年なんだけどさ…異形はほら、違うじゃん…。
そして、まずそこで大体は確信したのだ。
『もしかしてコレが噂の転生、ってやつか…成程』
頭がファンタジー過ぎる(二重の意味で)ような気もするが、身近である海だって15%しか解明されていないって言うし、この世は人間の知らないことばかりなのだろう。
何よりそう考えるのが一番楽だし。
そして二つ目、なんとこの世界には魔法があるのだ。
それを確信したのは右も左も分からないまま森に放り出された哀れな俺が数時間程歩き回って見つけた古い小屋でのこと。
やっとこさ第一村人、基第一家屋発見し、静かに喜ぶ俺。
当時は何気に数時間も息切れすることもなく歩き続けることが出来たこの体に驚いた。
どうやらこの身体は人間のものよりも遥かに体力があるらしい。
そこら辺に転がっている木の幹とかも踏ん張れば退かせれたし、筋力も高いようだ。ありがてえ。
そうして何度か呼びかけるも返ってくるのは虚しい程の静寂であったため、割と必死だった俺はそのまま不法侵入を実行。
結果、何時まで経っても人はやって来なかった代わりに興味深いものを見つけた。
それが魔導書である。
日本語でもないのに読めることに違和感を覚えつつ手に取り読み進めれば、どうやらこの世界には魔法なるものが存在していることが分かったのだ。
勿論、有るよと言われてすぐに信じるほどハッピーな頭はしていないが、大いに期待したことは確かである。
そうして読んでみればそこには複雑怪奇な幾何学模様やら小難しい論文じみた文章がつらつらと並んでおり、頭が痛くなりながらも何とか理解できる部分から実践してみることにした。
最初は魔力がどうのとか何言ってんだ、という感じであったのだが、どうにもこの世界の住人の性質なのか、はたまた俺の肉体の特質なのか、何となく体の奥底に感じた事の無い存在を知覚したのだ。
感覚の赴くままにその存在を吐き出せばあら不思議、指先から轟々と滾る大火———ではなくマッチくらいの火が着いたのだった。
結構思い切り出したつもりだったのだが…まあ未知の現象に初挑戦して成功するはずもないだろう。
思いの外、この身体はセンスがあるのではないかだろうか。
まあ、そういうようなことがあり俺はこの世界が元の世界とは根本から異なる世界であると確信したわけである。
と、そのことを認識した時、俺の頭の中ではとある妄想が爆発していた。
なんせ魔法があるということはアレが———則ち、詠唱がリアルで出来るかもしれないということでもあったのだから。
いい歳こいて厨二病気質でもあった俺は詠唱というものに非常に大きなロマンを感じていた。
此処だけの話、学生時代はかっこいい詠唱なんかを一人で暗唱していたりなど目も当てられない黒歴史も存在している程である。
そんな俺は再度魔導書を手に取りそれっぽいところを読み漁ったわけなのだが…問題は此処からである。
この世界の魔法、特段詠唱というものが一般的には存在しないようなのだ。
正確には「俺の思い描く」詠唱は存在しない。
此処には具体的なものは無いが、曰く「女神の魔法」なるものには儀式が必要なものもあるようなのでそこに含まれている可能性もあるが、女神の魔法には聖典の所持が必要とのことで、今の所俺には希望が無い。
時間をかけて力強い言葉を並べ、技の発動と共にエクスタシーを解放するあのクソ長詠唱が無いのだ。
正直期待していた分凄まじいショックを感じたものである。
それはもう叫びながら森中を走り回った程だ。
途中で獣を呼び寄せてしまい追いかけ回されたが、何とか撒いて拠点まで帰っていた己を称賛したい。
だが、そうして絶望に膝を突いて項垂れていた時、ふと思いついたことがあった。
「魔法で重要なのはイメージ」であるということ———則ち自己効力感がこの世界の魔法の鍵となるという絶対の理であった。
曰く、魔法は己が実現出来るという感覚が重要であり、それが足りていれば再現することは十分に可能であるという。
故に、俺は思った———
「———詠唱が無いなら作ればいいじゃない」
———と。
「…ただいまー」
誰も居ない虚空に向かって癖付いた言葉を投げかける。
一度足を踏み見れれば金属なのか鉄なのか、腐食によって軋んだ音が暗がりに響き渡った。
「いやぁ、いいもん獲れたぞー」
天上に吊るされたランプの中に、指先から生み出した光球を投げ込み部屋全体を照らす。
そうして真ん中に設置されたテーブルの上へと今日の戦果である猪を乗せた。
「コイツの肉が美味いんだよねぇ」
今の俺にとって食事は魔法の研究以外の唯一の楽しみと言っても過言ではない。
なんせテンプレファンタジーよろしくスマホもテレビなんかもあるはずがないし、ゲームだってありはしない。
魔法を利用すれば生み出せるかもしれないが、別にそこまでする程退屈もしていない。
しかし無い無い尽くしの世界ではあるものの、前世以上に没頭出来るものがあるのは良いことである。
え?化け物の癖に何人間みたいなことしてるんだって?
うるさいやい。
いやまあ見た目はぐうの音も出ない程の人外なんだけどさ、やっぱ気持ちだけは人で居たいじゃん?
ほら、人間讃歌は勇気の讃歌って何処かの癖強擬音系オジサンも言ってたし。
因みに人外である俺の食性に関しては基本雑食である。
こうやって肉も食べるしそこら辺の野草とか木の実も美味しく頂くことも問題無く出来る。
ただ気になるのは、前世の己を思い起こす度無性にお腹が空くことであった。
一日中断食したなんてものではない、それはもう今にも狂いそうな程の空腹が襲い来るのだ。
その為極力その事は頭の隅に追いやるようにしているのだが、やはり無意識的に頭を過ぎる事は多々あるので対策が必要だった。
そこで苦渋の思いで詠唱魔法の開発を一時的に打ち切って生み出したのが精神魔法の一つ———その名も《
この魔法はその名の通り、食欲は勿論睡眠欲や性欲、その他一定以上にまで膨れ上がった凡ゆる欲求や衝動を魔力へと変換することができる魔法である。
元は食欲だけのつもりだったのだが、それ以外にも適用できたのは嬉しい誤算である。
ただあくまで欲求が収まるだけで、使い過ぎると当然より強烈な空腹がやって来るし、気づいたら強制的に昏睡状態に陥るなんてこともある。
その為使用には注意が必要とだけ言っておこう。
良い子のみんなは真似しないように。
「《
料理用に作った魔法で丁度良いくらいにバラし、大きめ鉄板の下に火を付ける。
因みに料理用と言ったが、この魔法は俺が食材と認識した物であれば何でも捌けるものである。
基本的には例え魔物であろうと生物に対して使う事は出来ないが、死体であれば一瞬で解体できるのでものすごく便利な代物だ。
「…ん?」
そうして良い具合に鉄板が熱されたところで肉を焼こうと持ち上げた丁度その時、森の奥から何かが迫ってくるのを察知する。
仕方無く焼肉パーティーの準備を中断して外に出る。
するとそこには巨岩の如き隆々とした体躯を誇る大猪が立ち塞がっているではないか。
「…親、かな」
姿形が酷似していることからそう辺りをつける。
どうやら匂いを辿って俺の下までやってきたらしい。
「悪いけど謝らないよ。自然界の弱肉強食はそっちの方が良く知っているだろう?」
その言葉の意味を理解しているのか否か、怒髪天とばかりに全身の毛を逆立て憤怒を爆発させる大猪が後脚を踏み締め地を揺らす。
それを前に、俺はその身に魔力を纏い構える。
「《———血の貨幣、生命の燻り、骨肉は力を貪り喰らう———
その詠唱の終わりと共に大猪はその大質量を以て殺人的な突進を放つ。
蹴り出す大地は爆ぜ、埋まる木の根が掘り返された。
俺は半歩半身となって拳を引く。
そうしてその一撃が迫る寸前、思い切り振り切った。
瞬間、大猪の鼻先がその胴へと沈み、肉体ごと大きく陥没する。
発生した衝撃の波は短い尾の先にまで達し、風船の如く巨体の下半身が破裂した。
一部の内臓が弾け飛び、血の雨が木々を、大地を、そして己を赤く染める。
「いっつぅー…」
俺は生臭い血を浴びながらじんじんと痺れる己の拳を眺め、塵になりつつある無惨な肉片に視線を移す。
「…今晩は豪華だなぁ」
詠唱の時は「〇〇の魔法」って言う形崩してもOK?
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手の動くままに描け
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原作を崩す奴許すまじ