妹にやらされていた乙女ゲー世界に転生したら序盤で死亡するクズ貴族だった   作:泡沫幻想黒衣の人

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第26話 兎の奮闘と件の最期

 アパート「グレーテル」裏林

 

 Side ラビラビ

 

 

「お前、ここ住み?人間なんかと仲良く暮らしちゃって…人間に噛みつく牙をなくしたか」

 

とか言いながら近づいてきたのはなんか感じ悪い薄桃色の狼獣人。

 

ナミナミ「あ、あんたの場合は角かな?私は人間に対して並々ならぬ想いを持ってるナミナミってもの、よろしく」

 

 悪いけど、此方としてはよろしくされる覚えはない。

 

ナミナミ「人間に対する想い、と言っても、マイナスな方の想いだけだよ…?憎悪とかね」

 

「それで、なんのようなの?」

 

 態々私1人の時に近づいてきたってことは、スカウトか何かかも。

 

そうだとして、応えるつもりは全くない。

 

 一応世話になってる身だから義理は通さないと、とは思うし。

 

ナミナミ「…私達と人間絶滅計画に参加しない?」

 

 どうやらスカウトのようだった、でも答えは決まってる。

 

「私はそんなの…」

 

ナミナミ「あっ、もし断ったら人間に降った獣人ほど許せないものは無いんで殺しまーす、そこんとこよろしく」

 

 ………何が彼女をこんな奴に変えたのかな。

 

人間にも良い奴はいる………んだけどな。

 

 言葉も無しに、というかビビって言葉が出せずに私がかぶりをふると、彼女達は構えた。

 

彼女の後ろから狸、猫獣人。

 

 3対1だけど、私の2種類の熱を発せる発火の固有スキルを上手く使えば退かせるのは容易い相手。

 

まずは発火ひとつめのスキル、視界の中の自由な場所に炎を具現。

 

 それだけで後ろの2人は私を殺すのに及び腰になったみたいで下がる。

 

そこにナミナミの剣…早いけど、戦闘経験があんまりない私でも見切ることができるくらい剣筋は出鱈目だ。

 

 甘く入ってきた剣を蹴り上げて、その隙にふたつめ、耳から出る超振動波により熱を発生させる。

 

私自身、よくは分からないけど、目に見えないほどの超振動波を相手に当てることで相手の体内の水分が沸騰して死ぬ恐ろしい発火ふたつめのスキル。

 

ナミナミ「ん?な、なんか熱い!」

 

 動かれると狙いが定まらなくて、全然熱せられないんだけどね。

 

もう…動くなっ!

 

 というか、私なんか無視して、次のスカウトに行けばいいのに、なんでこんなことしてるんだろ。

 

ナミナミ「火を起こせる固有スキル持ちっぽいけど、好きなところに随分と小さな火と熱を発するだけ?よわっちぃ」

 

 …この固有スキルを戦闘でどう使ったらいいか、まだ経験が足りない。

 

でも、私の武器は発火の固有スキルだけじゃない。

 

ラビラビ「兎蹴!」

 

ナミナミ「おっと!?」

 

 剣を当てるために距離を詰めてきた彼女に対して、瞬時に蹴りを出すと、彼女は軽く吹っ飛んでいった。

 

狸「あねさん?!ふんっ!」

 

 狸獣人が振るう戦斧、ちゃんと避けないと一撃であの世行きだ。

 

猫「逃さんっ!」

 

 猫獣人の方は切れ味抜群のムチ、ムチを振るったそばから地面や木々に大きく鋭い溝が刻まれていく。

 

当たったらただじゃすまなそう。

 

 それらを持ち前の敏捷性でかわしていくうちに、吹っ飛んだ彼女が戻ってきて攻撃に加わる。

 

斧、剣、ムチ…この中で最も注意しなければいけないのは、どんどん剣筋が早くなってきている彼女の剣かな?

 

ナミナミ「さっきはよくも…蹴りを浴びせてくれちゃって!こんの!」

 

 くっ、剣が私の首をかすめるたびに体が動かなくなる幻想に取り憑かれる…それを現実のものとしないためにも、全力で避けきる!

 

間に攻撃を入れるのは難しそうだから…粘って粘って粘っていれば、そのうち3人も疲れてくるはず、こうなったら我慢比べだ!

 

ナミナミ「ちいっ、人間のペットが…よく粘る」

 

 私は…あの子らのペットじゃない、現状だけみれば妹ちゃんの下で似たようなものになってるんだろうけど…。

 

そもそもなんで妹ちゃんは私を連れてくることにしたんだろう。

 

 ハレルヤくんと親交を深めようとする合間合間に、私に対しても色々目をかけてくれて…。

 

あいつ(ラング)が何かにつけて働けニートって言えば、ラビラビちゃんは世間を知らないから大目に見て!って庇ってくれたっけ。

 

 …あぁ、何故だか今、この時色々脳裏に浮かんでくる過去(もの)が、って走馬灯???

 

いや、死ぬには早い、早すぎるよ私!諦めるな!頑張るんだ!

 

 頑張って粘って…粘って…粘っ…てどうする?

 

今私は1人、誰の助けも期待できそうにない。

 

 足掻いてもここで私の命は終わるの?

 

終わるのであれば、最後に妹ちゃんと百合○○○でもしたかったなぁ。

 

 剣が、斧が、ムチが迫ってくる。

 

………そうだ、あれやってみるか。

 

 たった今思い出した、あいつにやろうとしていたことをこいつらにやってみよう。

 

上手くいくかどうかは考えない、とにかくやってみよう。

 

 確かあの時は自分の足元にしか着火出来なかったから、それを全身に…!!

 

猫「捕らえたっ!」

 

 あ、足が…!ムチに捕まってしまった。

 

けど、こんなの燃やせばいい。

 

猫「むむっ?!姉御早くっ!」

 

ナミナミ「よし!これで終わりっ」

 

 次いでくる剣を叩き落とす!

 

ナミナミ「なっ!?」

 

 斧持った狸は火が怖いのか離れてる、ならあとは頭頂部まで、自ら起こした火を纏って突っ込めば………っ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブーメランアックス!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここら一帯全て焼き尽くすことができる………まで私の思考は続かなかった。

 

何故なら斧の刃が、私の頸動脈を裂いたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・、

 

 

 ヨシュア国の海岸線

 

 Side ラング

 

 

件「行かなくていいのか?」

 

 件がそう問うてくるも、あいつ(ラビラビ)がどうなろうと俺の知ったことではない。

 

件「妹が泣くぞ」

 

 それを言われると…でも手遅れな気もするし。

 

件「それの中で助けなさい」

 

 ランプのことか。

 

件「そうだ…しかし、魔人はきっちり多くの願い達を代償にしたぞ」

 

 え、マジ?どこのなんの願い達が…。

 

件「なに、これからあの魔人に願いを叶えてもらう筈だったもの達の願いだ」

 

 それなら問題ないな、代わりにどこかの誰かさん達の願いや夢達が犠牲にならずに済んだんだから。

 

件「時に、それ(願いを叶えるために犠牲になった願い)は未来の自分自身が叶えた願いや夢だったりするあたりたちがわるい」

 

 あ、そういう代償もあったんだ…ん?って、待て、そうするとユウがいずれ生き返る運命だった場合、その未来を先取りしてる訳で…?

 

件「いやいや、既に代償は払っただろう?考えても無駄になることに頭を使うな」

 

 そ、そっか、そうだよね、よかったー、ユウが生き返る未来を先取りしてるんじゃなくて。

 

件(そも、彼女は生き返ることを望んでいるのだろうか?それを確認もせずに…いやはや、そのことに思い至らないあたりが奴の醜さよな)

 

件「それより早くしなさい、まだギリギリ間に合うかもしれ…」

 

 そうだった、そうだった!!フェリルを喚び出してアパートまでワープだ!

 

「フェンリル、しょぉぉぉおおおおおおおおおうかんっっっっ!!!!」

 

フェリル(巨)「我が主よ、呼んだか?今人探しの最中で…お前の顔、その尋ね人に似ているな?」

 

件「うん、そう、で、それから何日経っている?」

 

「?」

 

フェリル「行方不明から何日か…っていうならば、少なくとも1日未満だろう、その期間尋ね人の姿は誰にも目撃されていない」

 

件「そこで残念なお知らせだ、その子は帰ってこない」

 

フェリル「何故だ!?何故それが分かる、何を知っている!」

 

件「その質問に答えてもいいが、…ちと喋り過ぎた、時間がない、最期に伝えたいことだけ伝えとくぞ、活かせるかどうかはお前次第」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「声に 魂は のふ」

 

 それだけ言って、件は…人面子牛は姿を消し、それが居た後には少女の遺体だけが残った。

 

フェリル「カーネーション・リィン……………尋ね人本人だ」

 

 心底無念そうにフェリルがそう呟いた。




reincarnations
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