妹にやらされていた乙女ゲー世界に転生したら序盤で死亡するクズ貴族だった 作:泡沫幻想黒衣の人
職員室
side アイリ
アウシュビッツ「さて、君は勇者について、知っていることはあるかな?」
「はい、職業【勇者】とは、遍く全ての人に希望を齎す…篝火、そう故郷の村でお世話になった、オババ様から聞いております」
アウシュビッツ「オババ様か………その、予言のことも聞き及んでいないか?」
「ん〜いいえ、聞き及んでおりません」
アウラウネ「世荒む時、勇者が地上に誕生し、あらゆる闇を打ち払う(よくありそうな勇者に対する予言の定型句だよね、こんなものの為に勇者となる人間が…)と、亡国の姫、ジー・ランディア・タスマン様が齢1歳の時点で予言されたとか…」
グラコス「えぇ…、この大陸では皆知っているはずの話なんだけれど?」
「そう言われましても…」
知らないものは知らないのである。
アウラウネ「ときにアイリ、その…声はどうした?私は近くに住んでいたから、君は声を出せないって聞いてたんだけど」
「あー、それは………龍神様のおかげだと思います」
アウシュビッツ「龍神様、ねぇ…遥昔は女神様から光の玉を授かる者が勇者となる流れが、いつのまにやら龍神様に…」
グラコス「その辺りは歴史学者の間でも意見が様々にありますが、ここで重要なのは龍神様がアイリ…さんに求める、期待する役割がなんなのかということですね」
アウシュビッツ「それは当然闇を打ち払うことでしょう?我々の祖先、祖国を滅ぼした獣人達とか…」
アウシュビッツが言う祖国、ヨシュア国は、現状獣人達によって既に滅ぼされている国だ。それでもこの人は未だに大都市ヘラクレス、港町、幾つかの集落や村を纏めてヨシュア国としている節がある。
そして、その各地に配備している自分の手勢、近衛兵団団員としてボクを雇いたいんだろうな。
「ボクは、獣人さん達とは仲良くしたいです」
アウシュビッツ「向こうもそう思っているかは分からんぞ?…まぁ、向こうも手を取り合う未来を望むのなら、こちらとて吝かでは無いんだが…」
アウラウネ「貴方がそうして受け身になっていては、壁を挟んでの種族間の融和はいつまで経っても達成できませんよ…」
アウシュビッツ「ええい、分かっておる(何処の馬の骨ともしらん小娘が)」
アウラウネ「そこでどうでしょう、貴方が率先して獣人の方達と仲良くする姿を見せるというのは…」
アウシュビッツ「それだけであの壁が取り払われたら苦労はしないんだがな…」
「一回やってみてはどうでしょう?きっと壁は撤去され、もっと東側との行き来が楽になる未来が待ってますよ」
ボクはそう信じる。
アウシュビッツ「そうだといいな………と、話を戻していいか?この世の全ての闇を払うことを勇者様1人に背負わせるのはなんとも酷なこと、学業として学ぶものだけではなく私達の元で兵法を学んでみないか?勿論近衛兵団団員として所属してくれるのならば、遠出の際兵を貸し出すなどの援助もしよう」
グラコス「有難い申し出です、アイリさん、所属しちゃいなさいな」
アウラウネ(おいマジか、そんな軽いノリで勧めるな)
「うーん、そうだなぁ〜、ボク、指揮は苦手なんだけどなぁ」
アウシュビッツ「なに、勇者様に指揮を無理強いすることはない、此方の兵達は自ら考え、自ら行動する、勇者様のお手を煩わせる事はありますまい」
「そう言ってくださるなら、そうですね…有り難くお話を受けたく思います…」
アウシュビッツ「おぉ…!!(我が兵団に勇者が、士気が高くなるな)」
アウラウネ(よしよし、これで今後の勇者道、序盤盤石だn________)
「が、時にアウシュビッツ様?その、兵達の中に獣人さんはおります?」
アウシュビッツ「うん?あ、あぁ、丁度居なかったと思うが…きっと今後入る」
「そうですか…では、今回の話は無かったことに…」
アウシュビッツ「な、何故だ?」
アウラウネ(何故?WHY???)
グラコス「アイリさん、どうして…」
「実は兵団に入るのなら、誘いたい獣人さんがいたんです、でもきっとアウシュビッツ様はお許しにはならないかと思いまして…」
アウシュビッツ「い、いやぁ〜、許す、許すから、その獣人が何者か教えよ」
「【人喰いの陽炎】…と言ったら、分かります?」
アウシュビッツ「あ、あぁ…何とも許し難い食人鬼の狼獣人とは聞いているが…それと、此度話している獣人は何か関係が?」
アウラウネ(何でカゲロウが出てくる………まさかっ!!?)
「
アウシュビッツ「そ、そうだなぁ…、流石に我らの所でも彼のことを隠し通すことは難しい…ともすれば遺族などに復讐として彼が狙われることもあろう…」
アイリ「そのことで其方に迷惑をかけたのでは、申し訳が立たないと思い、今回の話は辞退させていただきたく…あ、絶対口外はしないでくださいね?グラコス校長先生も」
アウシュビッツ「あぁ、分かった(まさか勇者を取り込むことに失敗するとは、おのれ人喰いめ、見つけたらただではおかん、勇者が何やら解決しようとしているが、処せば解決するではないか…ふん!)」
アウラウネ(おーい、序盤は周り適当な兵で固めとけよー、色んな勢力にちょっかいかけられまくるんだからさ〜…)
アウシュビッツ「ところで、その彼は今何処に?」
アイリ「さ、さぁ?」
アウラウネ「近くに居れば既に見廻り組が見つけているかと…(シュタイナーと一緒のはず)」
そういえばあれから会ってないや…、アウラウネさんが言っていた通りなら近くにはいない筈だけど…どうだろうね?
昼過ぎ
校舎前
side ティア
「もう、まったく、いずれヒノモトで開業しようと思っていたらいきなりだよぉー、心臓に悪いなぁ、もう…」
そんなことより明日の為にも食材の買い出しだ!…と、突然走り出しとき、服の中にしまっていた小さな小袋が落ちる。
「しまった………(毒薬が入った袋が………)」
幸いにも直ぐに拾ったため、中身の毒薬が少し外に覗く程度で、散らばらずに済んだ。
アウシュビッツ「あー、お嬢さん、入用かな?」
一緒に落とした財布の中にあった金額が少ないことに同情でも寄せたのか、金持ち風の男性から施しの声が掛かる。
「………施しは受けません、大丈夫です」
アウシュビッツ「そうかい………ところで私は今とても話し相手を欲しているんだが、相手になってくれるかい?ちょっとそこまででいいから…」
「うーん…いいですよ、買い物もこの街の中で済ませるつもりですし、話し相手くらいなら…」
そして他愛のない話が始まった、彼はアウシュビッツ様と行って何処かの自治区の長だという…私も簡単に自己紹介をし、天気の話などをする。
他にも最近旧友と会ったことだとか、そんな話もした。
それから_______
私は誘拐された。