窓から入って来る温かな風がキツネの様な少女の頬を優しく撫でる。それを合図に部屋の中で一枚の紙を見つめていた少女【百合園セイア】が立ち上がり窓の外へ視線を向けた。そこに広がるのは意気揚々とけれどお嬢様学校の名にふさわしく落ち着いた新入生達の姿。
「__この集団の中では君は非常に目立つね」
だけどその中で一つ、周りの空気をぶち壊すかのように土煙を上げながら走る影が一つ。誰よりも小さな新入生は人の合間を縫うようにぶつかる事なく、駆け抜けると校門の前で立ち止まり大きく背伸びした。
「カービィ……」
呟かれたその名は風に乗り、カービィの元に届いたようでセイアに向け満面の笑みを浮かべ大きく両手を振るう。まるで小さな子が大好きな姉を見つけ、今度は自分に気が付いてもらうかのような幼児を想起させるその様に小さく笑みを浮かべるセイア。
(この学校にあり方に君は浮くのは必然だ。だけど君ならそんなの関係なく友達を増やすのだろう? それにこの学校を襲う悪夢を払うには君の力が必要になって来る。無理に第一志望校をトリニティにして貰った分、私にできる最大限のサポートはさせてもうよ)
「だからしばらくは苦痛だけど耐えてほしい。……それに私の精神衛生的にもね」
胸の中で広がる幼馴染への罪悪感。その痛みを確かに感じながら窓を閉めた彼女は机の上に置かれた一枚の紙、新入生への挨拶の文を再び読み進めるのだった。
カービィとセイアの出会い。それは彼女が5歳の時まで遡る____
セイアは生まれつき夢の中で未来を見る事が出来た。いわゆる【予知夢】と呼ばれる力だ。そんな力を持つセイアであったがある日、夢の中で不思議な場所へと誘われる。
「ここは?」
辺り一面に広がる水面、正面には噴水がありその先端には星が付いたステッキが突き刺さっている。奥には天高く伸びる巨大な花を三日月が照らし、夜空には青を基調としオールが羽ばたく船が浮かんでいた。
「???」
自身が立つ泉と目の前の噴水だけなら自然に囲まれた神秘的な場所で済む。しかしながら視界の奥に広がる光景が彼女の理解を超えしばらくその場で固まる事態となった。
「きれい……!」
自然と彼女の視線は噴水の先端にあるソレを見つけた瞬間セイアは再起し、吸い寄せられるかのように向かう。小さな身体の全てを使い噴水の上に立ち上がると、好奇心に身を任せ星のステッキへと手を伸ばした。
「だみぇっ!!」
あと僅かで指先が触れようとした瞬間、セイアの後方から舌足らずの歯抜けな声、しかしながら凄みのある声が響き渡る。居ると思っていなかった第三者の言葉に肩を震わせたセイアが振り向くと、そこには首が座らぬほどに幼いカービィの姿があった。
自身の頭の重みでふらつく身体で立ち上がり、確かな覚悟を秘めた瞳でセイアを睨みつける。これがファーストコンタクト。
「ごめんなさい」
「だいじょうぶ」
一触即発から一転、泉の端の草むらに座った二人が仲良く会話を広げる。あの後、カービィの威圧に怯え噴水から離れたセイアが泣き出したのを慰めた事で距離が縮まった二人。自己紹介を終え、軽く話をする中でセイアが謝罪の言葉を紡ぐ。
「ねぇ、よかったらあのステッキについておしえて?」
「ありぇは、すたーろっと」
「スターロッド?」
「とってもたいせつなもにょ」
この日を境にセイアとカービィは夢の中の泉で出会い、なんてことない会話から重要な相談、更には勉強会などを行っていく事となる。この小さな出会いがセイアの運命に変化をもたらした事を本人達は知らない。ただこの時の二人は新しい友達との会話を弾ませていた。それだけで十分なのだから。
百合園セイア
トリニティ総合学園「サンクトゥス
カービィがギヴォトスで