異世界をロッカー達と共に。 作:本乃栞
ちょっとした友達のじゃれ合いがキッカケだった。学校の掃除用具ロッカーに入れられてそのまま。
「はぁ?」
暫くして、ロッカーから出たらそこは初めて見る景色だった。先が見えない程続く草原。さっきまで俺は教室にいた筈なのに何でだ?
そんな困惑を抱えながら辺りを見回してみる。
「うわぁ……何にも無い。ってか何処だ?此処」
さっきも言った通り初めて見る場所だ。さっきまで……と言うか。さっきじゃないのかもしれない。学校の近くにこんな場所は無いから、割と離れた場所まで移動した。トラックか何かで運ばれた?いや、それだったら。
「揺れたり音がするよな。難聴系ラブコメ主人公じゃないんだから分かる筈だ」
でも、音はしなかった。時間も大体10分ぐらいだと思うし。はぁ……。
「あっそうだ!スマホ」
文明の利器があれば何処にいても、自分の場所が分かる。そう思ったのだが、
「圏外か……」
だとすると山奥か無人島か?いやでも、一般人のドッキリにそこまで頑張るか?大したリターンが出るとも思われていないだろうし、おかしい。
何もかもがおかしい。
取り敢えず歩いてみれば、人なり村なり何が出て来るだろ。そう思って、歩いてる事にした。
あっ、ロッカーどうしよう。俺は歩くのを辞めてふと考える。
暫く歩くと大きな門があり、その奥には城が見える。城下町があるのだとしたら人もいるだろう。漸く色々聞けそうだ。
門の前には門番が立っていたので、話しかけてみるか。
「あ、あの!すいません。この街へ入りたいんですけど……」
「ふむ、ギルドカードはある?」
ギルドカード?何だそれ。
「いえ……無いですね」
「そうか……そいつは困ったな。ギルドカードは証明証なんだ。ソレには名前、年齢、色々書いてある。欲しかったら、ギルドへ行けば貰える。そして街へ入るにはギルドカードが必要だ。だからお前を入れる事は出来ない」
マジか、どうしよう。
「だが、俺がお前と一緒にいるなら大丈夫だ。だから下手な事はしようとするなよ?最近、何だか騒がしいみたいだしな」
そう門番が言う。
「ああ、下手な事はしない」
そう約束して、俺は街へ入った。
「所で、何処か行きたい場所とかあるのか?」
そう門番に尋ねられる。うーむ、どうしようか。
「いや、特に無いなぁ」
「そうか、なら王城にでも行くか。何でも今、城にはこの世界を救う勇者様達が集まっているらしい。この世界には無い、特殊なモノを持っているって言う噂でな、今この街の商人は全部城にいるんだ」
チャンスは逃すまいと言う感じだろうよと門番が言う。
「へえ、そうなんだ!勇者様達か……。凄え」
「ああ、同じ格好で固めた団体らしいぞ。復活してきた魔王も可哀想だな。折角復活したのにすぐまた封印される羽目になるなんて」
門番は最早、魔王に同情さえしている。それほどその"勇者様達"は強いんだろうか。
「そう言えばアンタのその格好も、こっちでは珍しいな。何処の国だ?」
「日本だよ」
それにしてもこのドッキリだか何だか分からないが、早く終わらないだろうか。腹も減ったし帰りたい。後普通に眠い。
「ニホン?何処だそこ。知らないな」
「ああ、そう?」
日本を知らない人もいるのか。まあ、世界は広いからいるだろう。
そうのんびり話していると、目の前に城が見えた。
「うわぁ……デッケェ」
見上げれば、大きな城がそこに佇んでいた。しっかりとした洋風の城だが、赤と白が主に使われたシンプルなモノだった。
「ははっ俺はコレを見るのは初めてじゃないが、何度見ても感動するよ!」
そう門番が誇るように言う。
「まあ、入ってみるか。おい、入って良いか」
門番が城の入り口の門番に尋ねに行ったので、俺はその場で待つ。少しした後、門番は戻ってきた。
「大丈夫だそうだ、行くぞ」
門番の後ろを付いて行って城内を歩くと、知った顔があった。だけど……。
「同じクラスの……」
「うっす俺は山鹿だ、今まで何処にいたんだ?」
「ロッカーの中だ」
「はぁ?まあ、良いや。じゃあ、お前はこれからか。良いのだと良いな」
「何がだ?」
「見てからの楽しみだな。あぁ、そうだ。この先真っ直ぐ行けば王様と大臣がいる。そこでイベントがやってるからお前も早く行ったほうが良いぜ。一人足りないって騒いでたしな。」
そう言って去ってしまった。何なんだよアイツは……。
「お前……。勇者様達の仲間だったのか!何で言わなかったんだ⁉︎」
そんなギャアギャア言われたって、俺だって知らなかったんだからしょうがないだろ!
「悪い、でも知らなかったんだ」
「まあ、なら仕方がないか。取り敢えず、進もう」
そうか、山鹿も勇者になったのか。出世したなぁアイツも。熟女三股して、双子の
「王様!大変です、一人足りません」
『何だと!?どうするんだ!国税で
「……王様。此処だけの話ですが、召喚した人数を民は知らないのです。だからこそ元々この人数だった事にしませんか?そうすればハッピーです」
『クズ過ぎないお前。常習犯か?コレからお前に仕事任せるの辞めようか』
「いや、何でですか。勘弁して下さいよ必死に考えて、この仕打ちは酷すぎる」
『まあその案にするか。あ、お前は死刑で』
「王‼︎」
「あの、遅れてすみませんでした」
何かひと段落付いてたみたいだし、入ってみるか。
『誰だお前。ん?その服……もしかして"コウコウセイ"って奴か?』
「あーそうです。って言うかこの茶番いつまでやるんですか」
『あー良かった。心配してたぞ。どうして遅くなったんだ?』
「ロッカーに閉じ込まれてたんです」
『何言ってんだお前、まあ良いや。大臣いつもの』
「はいはい、ってか死刑はどうなったんですか王よ。ってかさっき仕事振らないとか言ってたよなオイ」
『ズッ友♡』
「クズ過ぎるだろ、ハローワの神殿行こ」
「はい、じゃあちょっと目の前立って下さい、そうソコ」
大臣と呼ばれた男の前に立つ。彼と目が合った。髪の毛がやや寂しいが、鋭い眼光だった。まるで全てを知っている様な……。
「君の
「オンリーアイテムとは、何ですかね」
『異界の者をこっちに呼び出した時に身に纏っていた者以外で、持っている物を言う。それはこの世界で類似品を作る事が難しいのだ。色々な効果を持っているのが多くてな』
「へぇ……例えばどんな物があるんですか」
『神速の靴だったり、魔を切り裂く双剣とか色々ある。特にその二つを持った持ち主は強いと騒がれている。まぁ詳しくは、他のコウコウセイにでも聞いてると良い』
「それより、無限のロッカーがどんな物か、良ければ見せて貰えませんか?」
「ああ……ロッカー。……ロッカー?あ」
そうだ、さっき置いてったんだ。こんな重い物待てるかって思って。
「来た場所に置いて来ました」
『はぁ?』
二人の顔は真っ青になった。
「……盗まれてたら終わりですよ」
『今すぐ取りに行かせろ!」
「はい!」
そう言って、大臣は走り出した。
ヤバイんだ。俺は二人を見て、そのヤバさを感じた。でも、アレ重すぎるんだよ。俺はそう言い訳をした。
数時間後、俺らがドタバタしている間に二人のコウコウセイが城内から出ていった事を聞いた。その時俺は、放置プレイをしていたロッカーに言い訳をしていた。ロッカーに言い訳を考えるのは、初めての経験だった。
どうやらオンリーアイテムは所有者に対して少し、
「ほぉ、面白そうな場面発見!コレは特ダネになりそうです」
そんな声も届かないぐらい俺の頭の中はロッカーでいっぱいだった。