俺はトゥ!ヘァ-!なんて言わないからな!【本編完結】   作:無限正義頑駄無

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更新です。
本当は今回で第8艦隊戦までやるつもりだったのですが、思っていた以上に文字数が伸びてしまったので次話に回します。
このシリーズ、5〜6話じゃ終わらないかも...。


ANOTHER-PHASE もしもの世界(04if〜05if)

4番目のチャプターが始まった。

映像の中では、アークエンジェルの面々がアルテミスの兵士に銃を突き付けられていた。

 

「えっ、味方じゃないの?」

 

「当時は新造艦だったアークエンジェルに船籍も友軍識別コードも無かったのよ...」

 

げんなりとするマリュー。

そしてキラとアスランがアルテミスの司令と会話している場面へと移る。

 

 

 

『君たちは裏切り者のコーディネイターだ』

 

『う、裏切り者...!?』

 

『......』

 

『どんな理由かは知らないが、同胞を既に何人も手に掛けているのだろう?ならば色々と...』

 

『違う!僕たちは...!』

 

『フフッ...』

 

『......何がおかしい?』

 

『裏切り者のコーディネイター、か...。お褒めの言葉ありがとうございます』

 

『(ア、アスラン...。顔は笑っているのに目が全然笑っていない...!)』

 

『(裏切り者のコーディネイター?上等だ。キラを守るためなら、喜んで名乗ってやろうじゃないか)』

 

 

 

アスランの黒い笑顔に、マリューたちは思わず引いてしまう。

 

「さっきの『殺す』発言といい、あっちのアスランがヤマト隊長に向ける感情ってかなり重たくないですか...?」

 

「プラントを裏切った理由も、『ザフトが間違っているから』より『キラを守りたいから』の方が割合が高そうだしな」

 

「まあ、『祖国の見知らぬ誰か』よりは『目の前の親友』を守りたいですよね」

 

「それでも『裏切り者のコーディネイター』を自分から名乗るのは、覚悟がキマりすぎてるような気がするけど...」

 

上から順にルナマリア、カガリ、メイリン、アグネスの台詞である。

 

「(愛されるって、こういうことを言うのかしら...)」

 

キラのためなら殺人も、汚名を被ることも厭わない覚悟をしているアスランを見ながらアグネスは思考する。

かつての自分は恵まれた容姿とモビルスーツパイロットとしての能力の高さから、誰からも無条件で愛される資格があると信じて疑わなかった。

しかし自分の周りに寄ってくるのは容姿と適当な愛想に釣られた愚かな男たちばかりで、自分の心に響く言動をする者は誰1人いなかった。

 

コンパスとファウンデーションの決戦の際に格下だと思っていたルナマリアに敗北したことをきっかけに、捻じ曲がった性根は矯正されつつある。

この映像でひとつの『愛』の形を知ったアグネスが、彼女自身の求める『愛』にたどり着けるのかはまだ誰にもわからない。

 

続いて場面はユニウスセブンで資源と共に、ラクスの乗った救命ポッドを回収したシーンへと移る。

 

 

 

『ディノ准尉、何だその格好は...?』

 

『ポッドに顔見知りが乗っているかもしれないので』

 

 

 

「ぶふっ!? アスラン、アンタ何やってんですかアレ...!?」

 

「彼自身は至って真面目なのでしょうけど、見た目は完全に不審者ね...」

 

「シン!ラミアス艦長まで...!」

 

映像の中で不審者スタイルでポッドの前に現れたアスランに、皆が必死に笑いを堪える。

そうしている内に、ポッドが開いて中からラクスがハロを伴って現れる。

 

 

 

『ありがとうございます。ご苦労様です』

 

 

 

そう言って、敬礼しながら周囲を見渡すラクス。

しかしアスランとサングラス越しに目が合った瞬間、一目散に彼の元へと駆け寄る。

 

 

 

『ねぇアスラン、ここはザフトの艦ではありませんの?』

 

『(変装を1発で見抜かれた!? ハロが俺に反応している以上、誤魔化すのは無理か...)』

 

『お久しぶりです、ラクス』

 

『あらあら、やっぱりアスランでしたのね。うふふ、いつ見ても素敵な顔ですわ』

 

 

 

「速攻でラクスにバレてるじゃないか、俺...」

 

「そりゃあ婚約者であるラクスを欺こうとするなら、あれに加えてカツラも必要だっただろうな」

 

「(あら?あちらのわたくしはアスランにかなり好意的ですわね...)」

 

映像の中でアスランはラクスをアークエンジェルのとある空室へ案内する。

 

「これを見ていると、俺たちの世界でもアスラン(コイツ)が最初から味方だったらと思わずにはいられないな...」

 

「そうですわね。ですが、アスランがアークエンジェルに居てもこの映像の世界と同じ流れにはならないでしょう」

 

「何?」

 

「どうしてそう言い切れるんだラクス?」

 

ムウの呟きを拾い上げるラクスと、ラクスの発言に疑問を抱くアスラン。

そんなアスランに対して、ラクスは無言でスクリーンを指差す。

 

 

 

『お願いがあります、ラクス。もし貴女の身柄をプラントへ返還することになったとしても、俺のことは他言しないでいただきたい。父とは袂を分かった身ですが、父が《裏切り者の父親》という烙印を押されるのは気が引けるので...』

 

『貴方の存在を黙っているのは、それはそれでプラントへの裏切りになりそうなのですが......わかりましたわ。交換条件でそのお願いを聞いてあげます』

 

『交換条件?』

 

『わたくしとはもっと砕けた口調で話をしてくださいな。婚約者なのですから』

 

 

 

スクリーンの中では、アスランとラクスの会話が行われていた。

ちなみに2人は1台のソファーに肩を寄せ合って座っており、互いの手を握って至近距離で見つめ合いながら会話をしていた。

端的に言うと、見ている側が恥ずかしくなるレベルのイチャイチャをしているのである。

 

「あちらの世界では、わたくしとアスランの関係が良好なのですもの。わたくしたちの知るアスラン・ザラとは、もはや別人と言っても過言ではありませんわ」

 

「ちょっと待てラクス、そんな理由で...!?」

 

「「「あぁ〜...」」」

 

「お前たちも何だその反応は...!」

 

アスランの為人(ひととなり)をよく知っているカガリ、ルナマリア、メイリンが納得の声を上げる。

 

 

 

『(俺とラクスは婚約者であっても恋人ではない。この距離感は正しいのか...?ラクスは嫌がるどころか更にくっつこうとしているが...)』

 

『(やりましたわ。アスランに敬語を止めさせることに成功しましたわ。婚約者として1歩前進ですわね。このままアスランとハグ、あわよくばキスまで漕ぎ着けたいところですわ)』

 

 

 

「あっちの総裁はアスランに対してかなり積極的ですね」

 

「そうですわね。我が事ながら信じ難い光景です」

 

そんな中、アークエンジェルを迎えに来た先遣隊がザフトと遭遇したと連絡が入る。

 

 

 

『大丈夫だよね?パパの艦、やられたりしないわよね?』

 

『最善を尽くすと約束する。だが何が起こるかわからないのが戦場だ。確約はできない』

 

 

 

父親の安否が気になるフレイ・アルスターに対し、アスランはそう答えた。

 

「このフレイって女性、親がブルーコスモスだからコーディネイターであるアスランや隊長に凄く当たりがキツかったのに、よくアスランはここまで真摯な対応ができますね......うん?」

 

シンが喋っている途中で、キラとアスランの心情が表示される。

 

 

 

『(あの時の僕は、何の根拠も無いのに《大丈夫だ》と言おうとしていた。アスランが間に入らなかったら、僕はフレイを傷つけることになっていたかもしれない)』

 

『(理想は彼女の父親を助けて、彼女の中にあるコーディネイターへの偏見を少しでも和らげること...。万が一それが叶わなかった場合は、俺とキラに向けられるであろう憎悪(ヘイト)を俺1人で引き受ける...!)』

 

 

 

「......こっちの世界だとこの戦闘って、どうなったんですか?」

 

2人の心情を読んで嫌な予感がしたルナマリアが、マリューに尋ねる。

 

「先遣隊はザフトに全滅させられたわ。当然、フレイさんの父親であるアルスター事務次官も死亡。わたしたちは当時民間人だったクライン総裁を人質にすることで、無理矢理戦闘を終わらせたの」

 

「えぇっ...!?」

 

「そんな...!?」

 

愕然とするシンとアグネス。

尊敬している人物が、まさか民間人を人質にする行為に手を染めていたなんて......と。

 

「言い訳をするつもりは無いわ。でも、当時のわたしたちはそんな非道なことをしなければ生き延びられないくらい弱かったの...」

 

マリューの悔恨に満ちた表情に、アスランはキラを殴った時のことを思い出す。

 

『仕方ないだろ、君らが弱いから!』

 

キラが誰にも頼らず1人で溜め込んでしまっているとは思っていたが、まさか最初(ヘリオポリス)からずっとだったとは予想していなかった。

 

そして戦闘が始まるのだが...。

 

 

 

『くそぉっ!なんだよこの数は!ナスカ級はモビルスーツを6機しか搭載できないんじゃなかったのか!? 10機くらいいるぞ!』

 

 

 

「当時のナスカ級は改良前の旧型だろ?これだけの数のモビルスーツをどうやって運んで来たんだよ...」

 

「俺たちの時の2倍はいるじゃねぇか。イージスがこちら側にあるとはいえ、そこまでやるかクルーゼ...」

 

ジンのあまりの多さに、呆れるしかないシンとムウ。

随伴艦の2隻はあっという間に轟沈してしまい、残った1隻である旗艦モントゴメリを必死に守るアスラン。

 

「いやこれ厳しくないか?」

 

「艦を守らないといけないからイージスが全くと言って良いほど身動きが取れてないじゃない...」

 

「バッテリーを節約するためにビーム兵器も殆ど使えない状況とはな...」

 

「あっ、PS装甲が...!」

 

とうとうフェイズシフトダウンしてしまうイージス。

 

 

 

『何よ、エネルギー切れ?どうしたの、パパを守ってよ。ねぇ...』

 

『っ!うおおおおおーーーーーっ!』

 

 

 

ラクスを連れてアークエンジェルのブリッジに入って来たフレイの懇願に、アスランが吠える。

変形したイージスの突撃でジンを1機撃破するアスランだが、機体もパイロットも限界なのは誰が見ても明らかだった。

 

 

 

『もう良い、もう良いのだイージス』

 

『パパ!?』

 

『君が乗るG兵器は我が地球連合軍の希望なのだよ。文官1人のために失って良いものではない』

 

『しかし......ぐぅっ!?』

 

 

 

フレイの父親がアスランにモントゴメリから離れるよう言った直後に、攻撃を防いだ衝撃で弾き飛ばされるイージス。

 

 

 

『愛しているよ、フレイ』

 

『やめろぉぉぉぉぉぉっ!』

 

 

 

ブリッジをジンに吹き飛ばされるモントゴメリ。

 

 

 

『いやあああああぁーーーーーっ!!』 

 

 

 

フレイの絶叫と共に、4番目のチャプターが終了する。

そこから1分ほど、室内を沈黙が支配する。

 

「......あのフレイって人は、この後どうなったんです?」

 

最初に口を開いたのはアグネスだった。

 

「彼女はこの後、地球連合軍に入隊してキラ君の傍に居るようになるわ。どういう気持ちで入隊したのか、キラ君にどんな感情を抱いていたのか......わたしたちに推し量ることはできなかったけど」

 

「彼女は今は...」

 

「亡くなっているわ。ヤキン・ドゥーエで、彼女の乗った救命艇がザフトのモビルスーツに撃墜されたの。彼女を守ろうとした、キラ君の目の前で...」

 

「そんな...!」

 

マリューの話を聞いて、アスランはメンデルで地球連合軍と戦った時のキラの言葉を思い出していた。

 

『僕が傷つけた、僕が守ってあげなくちゃならない女性(ひと)なんだ...!』

 

あの時ドミニオンに回収されたポッドの中の人物こそが、フレイなのだろう。

続きを見るため、5番目のチャプターが再生される。

 

 

 

『あっ、フレイ...』

 

『......』

 

『殴りたければ殴れ。君の父親が死んだのは俺が弱かったからだ』

 

『......っ!なんで......なんで何も言わないのよ...』

 

『え?』

 

『通信を聞いていたならわかるでしょ!? あんたの婚約者を人質にするよう言ったのはわたしなの!文句が言いたいのはあんたの方じゃないの!?』

 

『それも含めて俺の至らなさが招いた事態だ。君を恨んだりはしていない』

 

『(キラと一緒なら、どんな困難も乗り越えられると本気で思い込んでいた。これはそんな思い上がりをしていた、俺に対する罰なんだろう...)』

 

 

 

「隊長を庇うためとはいえ、あっちのアスランは抱え込み過ぎじゃないですか...?」

 

「なんかファウンデーションと戦う前の隊長の1歩手前......って感じ」

 

「実際、俺たちがこっちの世界でキラ(ボウズ)に掛けちまってた負担をだいぶ肩代わりしているだろうからな...」

 

フレイはアスランの胸の中でひとしきり泣いた後に立ち去り、部屋にはアスランとキラの2人が残される。

 

 

 

『アレックス...』

 

『キラ、彼女は優しいんだな。俺は《同じコーディネイターだから、どうせ手を抜いているんだろう》くらいの罵倒は受けると覚悟していたんだ』

 

『......』

 

『一旦別行動にしよう。俺はラクスの様子を見に行った後、ラミアス艦長たちにラクスをプラントへ返還する許可を貰ってくる』

 

『わかったよアレックス』

 

 

 

「あの......もしかしてですけど、こっちの世界だとフレイさんはコーディネイターだから手を抜いている云々の台詞をキラさんに言ってしまったんじゃないですか?

向こうのアスランさんみたいにフォローしてくれる人が居なかったから...」

 

『......』

 

メイリンの言葉に、全員が青褪める。

当時のキラは少し前まで民間人だった少年だ。

訓練を受けている訳でもなければ、敵を殺す覚悟ができている訳でもない。

おまけに敵側に親友(アスラン)がいるとなれば、本気で戦うことなどできはしないだろう。

そんな状況で今言ったような罵倒をフレイから受けてしまったら...。

 

映像の中で、部屋を出て行くアスランとキラ。

その後、立ち去ったふりをして物陰に隠れていたフレイが姿を現す。

 

 

 

『アレックス。あんたは確かにわたしたちを守っているわ。でも、あんた自身は一体誰が守ってくれるの...?』

 

 

 

アスランたちが出て行った扉を数秒間見つめるフレイ。

やがて彼女は何かを決心すると、ナタルの元へ足を運んだ。

 

 

 

『何?地球軍に入隊したいだと?』

 

『はい。わたしもサイたちみたいに、アレックスやキラと一緒に戦いたいんです』

 

『......父親を奪ったザフトへの復讐か?』

 

『その気持ちが全く無い訳ではありません。でもそれ以上に、わたしたちを守ってくれた彼らの力になりたいんです』

 

『......いいだろう。ラミアス艦長へは私から話をしておく。制服を支給するからついて来なさい』

 

『っ、ありがとうございます!』

 

 

 

「これを見た感じだと、根は良い人なんでしょうね...」

 

「だけど心根が優しい人ほど、戦争で大きく歪んでしまう...」

 

「隊長のストライクがザフト内でどんな渾名が付けられていたと思います?『鬼神』とか『狂戦士(バーサーカー)』ですよ?」

 

「キラ君にそんな名前が...」

 

映像の方ではアスランがマリューたちを説得してラクスを返還する許可を貰っていた。

実際は『イージスのパイロット』と『キラ(ストライクのパイロット)の友人』という立場を利用した、殆ど脅迫と言って良い内容だったが。

今はアスランがラクスと別れの挨拶をしている。

 

 

 

『それではラクス、どうかお元気で』

 

『アスラン、貴方が送り届けてはくれないのですか...?』

 

『悪いがその要望には応えられない。ザフト側の通信記録に俺の声を残す訳にはいかない以上、受け渡しはキラにやってもらう必要があるからな』

 

『......わかりましたわ、アスラン。ならばせめて...』

 

 

 

そう言って、顔を近付けるラクス。

アスランは一瞬驚いたものの、ラクスの意図を察して彼女と口付けを交わす。

やがて唇が離れると、ラクスは振り切るかのように無言でアスランに背を向けて去っていく。

キラとラクスを乗せたストライクの発進を見届けたアスランは、自身もイージスに向かうために歩を進める。

しかし途中で地球連合軍の制服に身を包んだフレイと出会った。

 

 

 

『もしパパの件でわたしに対して罪悪感を感じているのなら、罰を与えてあげる。これからも戦いなさい。戦い続けなさい。あなたが倒れそうになる度に、わたしが支えてあげるから』

 

 

 

この時、婚約者(ラクス)がいるにも関わらずフレイに見惚れてしまっているアスランの心情が描写される。

 

「浮気ですかアスラン」

 

「理不尽だぞラクス!向こうのアスラン・ザラが俺とは別人だと言ったのは君自身じゃないか!」

 

握手をするフレイとアスラン。

そしてストライクのコックピットから彼らを見つめるキラの3人を映しながら、5番目のチャプターは終了した。

 

「プラント評議会議員の息子とブルーコスモス幹部の娘の握手、か...。俺たちの世界だとなかなか実現しそうにない光景だねぇ...」

 

ブルーコスモスの残党が4年以上経った今でも各地で暴れ続けている現状に思いを馳せながら、ムウが呟く。

 

最後に映ったフレイの表情は、自分が知っているものよりも明るいものだった。

キラも年相応の少年らしさが失われておらず、アークエンジェル内の人物との関係も良好である。

もしかしたら、この映像は自分たちが未だたどり着けていない未来を見せてくれるかもしれない。

ムウとマリューはそう思った。

 

そうしている内に、6番目のチャプターの再生が始まる。




確か原作だとキス待ち顔をしているラクスに対して、ヘタれたアスランはほっぺにチューで済ませたのでしたっけ?
これは原作ラクスが別人認定するのも仕方ないですね...。
本作アスランと原作アスランには、キラとオルフェくらいの差があると認識していてもおかしくありません。

本作の番外編を...

  • 別作品として独立させる。
  • このままで良い。
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