俺はトゥ!ヘァ-!なんて言わないからな!【本編完結】 作:無限正義頑駄無
今更ですが、トールたちは原作通り軍に入隊しています。
しかし最近まで民間人だったので、何かの拍子にポロっと口を滑らせてしまうかもしれないという理由でアスランの素性はまだ秘密にしています。
アルテミス内での出来事は、概ね原作通りに進んだ。
ただ、『裏切り者のコーディネイター』云々のやり取りに関しては、
「お褒めの言葉ありがとうございます」
と、満面の笑みで返してやったがな。
その際、キラには軽くヒかれてしまった。
解せぬ。
物資の補給という当初の目的を達成できなかったアークエンジェルは、現在デブリベルトに向けて移動していた。
ヴェサリウスはアルテミスに入る前にムウさんが損傷を与えたことで一足先にプラントへ帰還。
ガモフもアルテミスの爆発に紛れて出港したことでこちらの反応をロスト。
ザフト艦を振り切ることには成功したが、アークエンジェル内では水の貯蓄が限界に達しようとしていた。
「あそこには宇宙空間に漂う様々な物が眠っています。そこには無論、戦闘で破壊された戦艦なども有る訳で...」
「まさかそっから補給しようってんじゃあ...」
「仕方ないだろ、そうでもしなきゃこっちが保たないんだから」
「貴方達にはその際ポッドでの船外活動を手伝ってもらいたいの」
「「「えぇ...」」」
「あまり嬉しくないのは同じだ。だが他に方法は無いのも事実。我々が生き延びる為にはな」
「「「......」」」
「失われた者達を漁り回ろうというんじゃないわ。ただほんの少し、今わたし達に必要な物を分けてもらおうというだけよ。生きるためにね」
☆★☆★☆
デブリベルトで弾薬を補給した俺たちは、今度は水を補給するためにユニウスセブンを訪ねていた。
補給作業を開始する前に、ミリアリアがここに眠る者たちに向けて紙で作った花を供える。
「ミリアリア、俺も一緒に花を手向けても良いか?」
俺はイージスから降りてミリアリアの隣に立つ。
「アレックス?えぇ、どうぞ」
ミリアリアが持っていた花を半分受け取って一緒に供える。
「でも、急にどうしたの?」
「このユニウスセブンには、俺の母が眠っているんだ」
「えぇっ!? それって...」
会話を聞いていたトールやサイが近寄って来る。
「地球連合軍が事前通告無しで行った核ミサイル攻撃、通称『血のバレンタイン』。俺の母はその犠牲者のひとりだった」
「そんな......」
「でもアレックス、だったらなんで地球軍に入隊したんだ?母さんの仇なんだろ?」
「確かに戦争の発端は地球軍の核ミサイルだ。
だけど、だからといって地球軍全てを恨むつもりは無い。
それに、プラントが報復として打ち込んだNジャマーは地球全体に大規模な混乱を引き起こした。
キラのような地球在住のコーディネイターがとばっちりを受け、犠牲者は今も増え続けている。
最近だと、ユニウスセブンの悲劇を経験しておきながらヘリオポリスであんなことをするプラントやザフトが正しいとは思えない。
母も今のプラントを見たら俺を応援してくれることだろう」
「はえ〜、キラと同い年とは思えないくらい大人だ」
「キラはほわほわしている感じだけど、あなたはしっかりしてるのね」
『ちょっとトール、ミリィ。それはどういう意味!?』
「あははははは!」
ストライクの中のキラも会話に加わり、俺たちは自然と笑いが込み上げてくる。
目の前の光景をずっと守りたいと、そう思った。
☆★☆★☆
「つくづく君は落とし物......いや、『落とし者』と縁があるようだな」
「......」
回収作業の最中に、キラは再び救命ポッドを見つけてアークエンジェルに持ち込んだ。
俺は中に誰が入っているのかを知っているので、帽子・マスク・サングラスを装備した不審者スタイルでこの場に居る。
「それじゃあ、開けますぜ」
整備兵のマードックさんが端末を操作することによって、ポッドの扉が開く。
中からはピンク色の球体ロボットを抱えた、同じくピンク色の髪の少女が現れた。
『ハロ、ハロ』
「ありがとうございます。ご苦労様です」
敬礼しながら周囲を見渡す彼女だが、やがて自分を取り囲んでいる者たちが見慣れない制服を纏っていることに気付いてきょとんとする。
「ねぇアスラン、ここはザフトの艦ではありませんの?」
『ハロハロ。マスター、オヒサー』
俺の元へ近寄ってそう呼び掛ける彼女。
変装を1発で見抜かれた!?
しかもハロが製作者である俺に反応している以上、誤魔化しはできそうにない。
俺はため息を吐きながら変装を解く。
「お久しぶりです、ラクス」
「あらあら、やっぱりアスランでしたのね。うふふ、いつ見ても素敵な顔ですわ」
「アレックス君、彼女は...」
「えぇ、紹介しますラミアス艦長。彼女はラクス・クライン。プラント評議会議長シーゲル・クラインの娘にして、俺の婚約者です」
「よろしくお願い致しますわ」
☆★☆★☆
「まぁ、ではアスランは地球軍に入隊したのですね」
「えぇ。軍人の皆は俺の正体を知っていますが、民間人の前では俺のことはアレックス・ディノと呼んでください」
「わかりましたわ。でもアスラン、どうして地球軍の一員に?貴方のお父様は...」
「俺は友達へ会いにヘリオポリスを訪ねていた時に、戦争に巻き込まれました。そこで見たんです。市街地を破壊するザフトのモビルスーツを」
「......」
「確かにヘリオポリス内でこの艦を始めとした地球軍の新兵器が開発されていたのは事実です。ですがあんな光景を見てしまっては、とてもザフトに正義があるとは思えません。友達を守るため、祖国の過ちを正すため俺は地球軍に入隊しました」
「......そうだったんですの」
「お願いがあります、ラクス。もし貴女の身柄をプラントへ返還することになったとしても、俺のことは他言しないでいただきたい。父とは袂を分かった身ですが、父が『裏切り者の父親』という烙印を押されるのは気が引けるので...」
「貴方の存在を黙っているのは、それはそれでプラントへの裏切りになりそうなのですが......、わかりましたわ。交換条件でそのお願いを聞いてあげます」
「交換条件?」
「わたくしとはもっと砕けた口調で話をしてくださいな。婚約者なのですから」
☆★☆★☆
キラ・ヤマトにとって、アスラン・ザラは同い年でありながら兄のような存在だった。
内向的な自分の手を引いて、明るい場所へ連れて行ってくれる素敵な友達だった。
自分の家族がヘリオポリスへ引っ越すことになって1度離れ離れになってしまったが、アスランは自分から会いに来てくれた。
しかし、再会を喜ぶ暇をザフトは与えてくれなかった。
ストライクを自分しか動かせないような設定にしてしまったことで、再びストライクに乗る羽目になってしまった。
もしアークエンジェルにアスランやトールたちが居なかったら、逃げ出していたことだろう。
その後の戦闘では、無事にアークエンジェルを守ることができた。
しかし迫り来る敵機に咄嗟に身体が動いてしまい、
人を殺してしまった。
しかもアスランと同じプラントの人たちを...。
アスランに嫌われてしまう。
そう思っていたキラだったが...。
『キラ。お前はついさっき俺を、俺が乗ったこの艦を守ってくれたんだぞ?守られた側の俺がそのやり方に文句を言う筈がないだろう』
『ありがとう、キラ』
アスランはそんな自分を受け入れてくれた。
そしてアスランが今度は自分の代わりに戦おうとしている。
「戦場に出るのは怖い。でも僕はアスランの力になりたい。アスランを守りたいんだ」
その想いを胸にキラは地球軍に入隊し、自らの意思でストライクに乗り込む。
しかしアルテミスを出て最初の戦闘で、キラたちは苦戦を強いられることになる。
☆★☆★☆
『くそぉっ!なんだよこの数は!ナスカ級はモビルスーツを6機しか搭載できないんじゃなかったのか!?10機くらいいるぞ!』
通信機からムウさんの悪態が聞こえてくる。
僕たちの乗るアークエンジェルを迎えに来てくれた第8艦隊の先遣隊。
それがザフトのナスカ級と遭遇してしまったため、救援のために出撃している。
『大丈夫だよね?パパの艦、やられたりしないわよね?』
先遣隊の艦にはフレイの父親が乗っている。
出撃前に僕とアスランを呼び止めた彼女に対し...。
『最善を尽くすと約束する。だが何が起こるかわからないのが戦場だ。確約はできない』
とりあえず『大丈夫』だと言おうとした僕をアスランが制し、フレイにそう言った。
『キラ、ああいう状況で適当な返事をしたり安請け合いはしちゃいけない。大抵の場合、取り返しのつかないことになってしまうからな』
お互いにモビルスーツのコックピットに乗り込んだ後、通信でアスランにそう言われた。
フレイにとっては父親の命が懸った瀬戸際なんだ。
僕がしようとした返答は、場合によってはフレイを傷つけることになっていただろう。
「(敵わないなぁ、アスランには)」
『ストライク、発進どうぞ!』
「キラ・ヤマト、ストライク行きます!」
そうして出撃した僕たちだったけど、戦場に着いた時点で3隻あった先遣隊の艦の内1隻は既に轟沈。
もう1隻もボロボロで無事なのはフレイの父親が乗る旗艦モントゴメリだけだった。
『(こちらにモビルスーツが2機あるから原作よりも頭数を多く揃えたのか!?)キラ、俺は艦に張りついているモビルスーツを引き剥がす!お前は離れた場所のやつを頼む!』
そう言って、イージスをモビルアーマー形態に変形させて先遣隊の元へ急行するアスラン。
「うおおおっ!」
イージスに驚いて動きを止めたジンを、背後からビームライフルで撃ち抜く。
爆散するジン。
他の機体がこちらに向かって来る。
「これ以上、やらせはしない!」
こうして、僕たちの戦いの火蓋は切って落とされた。
ムウさんは敵の隊長機と一騎打ち。
僕はジンの半分を相手に少しずつ数を減らしていっている。
しかし艦の護衛をしながらもう半分のジンを受け持っているアスランは...。
『ハァ...、ハァ...』
アスランがモントゴメリに到着した時点でボロボロのもう1隻は致命的なダメージを受けて轟沈した。
アスランは全方位からモントゴメリを襲うジンに防戦一方になっていた。
なんとかブリッジは死守しているけど、艦の武装やエンジンは殆ど潰されてしまっている。
『イージス、バッテリー低下!このままでは2分以内に危険域に入ります!』
ブリッジへの攻撃を身体を張って守っていたりもしたので、イージスのバッテリーは底を突きかけている。
イージスはストライクと違って戦闘中にバッテリーを回復する手段が無い。
このままじゃ...!
「くそっ!早く助けに行かなきゃならないのに...!」
ジンが邪魔でアスランを助けに向かえない!
『パパッ!』
通信からフレイの声が聞こえる。
アークエンジェルのブリッジに入って来たのか!?
『パパ、無事なの!?』
『フレイか、こんな状況だが会えて嬉しいよ。私は大丈夫だ。流石はイージス、女神の盾の名を持つモビルスーツだ』
フレイ、通信越しとはいえ父親に会えたんだね。
でも...。
『イージス、バッテリーが危険域に突入!フェイズシフトがダウンします!』
装甲色がグレーになってしまうイージス。
あの状態ではもうビーム兵器は使えない。
イージスに迫るジン。
『何よ、エネルギー切れ?どうしたの、パパを守ってよ。ねぇ...』
『っ!うおおおおおーーーーーっ!』
イージスは再び変形すると、ジンに向かって突貫する。
左右のスラスターをそれぞれ上下に向けることで回転の加わった突撃は、見事にジンの胴体を貫いた。
『ハァ...、ハァ...。まだやれます!』
『駄目だイージス戻れ!残りのバッテリーは戦うためではなく帰艦するためのものなんだぞ!』
『パパを見捨てるっていうの!?』
アスランに戻るよう指示するナタルさんの声が聞こえる。
僕もアスランには戻ってほしい。
このままじゃアスランが死んでしまう...!
『もう良い、もう良いのだイージス』
『パパ!?』
『アルスター事務次官!?』
フレイの父親までもがアスランに戻るように言っている!?
『文官とはいえ私も軍人、死ぬ覚悟はできている。娘の無事をこの目で確認できた。それだけで満足だ』
『パパ、駄目っ!』
『そうです!俺が時間を稼ぎますから早く脱出を!』
『君が乗るG兵器は我が地球連合軍の希望なのだよ。文官1人のために失って良いものではない』
『しかし......ぐぅっ!?』
アスランがジンから攻撃を受ける。
咄嗟にシールドで防いだけど、衝撃で弾き飛ばされてブリッジまでの道を開けてしまう。
『それでも君が申し訳なく思うのなら、私の代わりに娘を頼むよ。私が死んでしまえば、アーガイル家との婚約も解消となるだろうからね』
ブリッジに肉薄するジン。
『愛しているよ、フレイ』
『やめろぉぉぉぉぉぉっ!』
ジンの攻撃で吹き飛ばされるブリッジ。
『いやあああああぁーーーーーっ!!』
フレイの絶叫が、アークエンジェルに響き渡った。
本作アスランは意図的にラクスの好感度を上げるようなことはしていませんが、原作アスランのような駄目男ムーブをしていないので原作より好感度が高めです。
原作アスランはデートの場所にジャンク屋を選んだとか何処かで聞きましたけどこれって公式情報ですか?