俺はトゥ!ヘァ-!なんて言わないからな!【本編完結】 作:無限正義頑駄無
遅くなって申し訳ありません。
ちなみに作者が無印の女性キャラで最も好きなのはフレイです。
彼女を上手く表現できているか不安ですが、よろしくお願いします。
『ザフト軍に告げる、こちらは地球連合軍艦アークエンジェル。
本艦はプラント最高評議会議長シーゲル・クラインの令嬢ラクス・クラインを保護している。
現時点では人道的立場から彼女を保護しているが、以後本艦へ攻撃が加えられた場合...。
それは貴艦のラクス・クライン嬢に対する責任放棄と判断し、彼女の身命は一切保証しない事をお伝えする』
ナタルさんがオープンチャンネルでラクスを保護している旨を告げることによって、ザフト軍が撤退していく。
『アレックス、大丈夫?』
敵が居なくなったことでストライクと合流する。
「あぁ、俺は大丈夫だ。イージスも損傷は大したことない。けど...」
『守れなかったね、フレイのお父さん...』
「それだけじゃない。ラクスに人質なんて役割をさせてしまった...」
『アレックス...』
「......戻ろう、キラ。ザフト軍の撤退は一時的なものだ。戦いはまだ終わっちゃいない」
『......うん』
☆★☆★☆
「あっ、フレイ...」
アークエンジェルに戻った俺とキラを出迎えたのはフレイだった。
「......」
フレイはこちらを見つめるばかりで口を開こうとしない。
『あんた、自分もコーディネイターだからって本気で戦っていないんでしょ!!』
原作で彼女はキラにトラウマを植え付ける台詞を発する。
目の前の彼女がそれを言う前に、ヘイトを俺に向けたいが...。
「殴りたければ殴れ。君の父親が死んだのは俺が弱かったからだ」
「......っ!」
俺がそう言うと、フレイは込み上げるものを抑えきれなくなったような表情でゆっくりと言葉を紡ぎだす。
「なんで......なんで何も言わないのよ...」
「え?」
「通信を聞いていたならわかるでしょ!? あんたの婚約者を人質にするよう言ったのはわたしなの!文句が言いたいのはあんたの方じゃないの!?」
あぁ、そうか...。
彼女は原作においてキラを利用するためとはいえ、アークエンジェル内で誰よりもキラの心に寄り添っていたんだった。
俺が時間を稼いだことで父親と会話することができ、こちらの心情を察するだけの心の余裕が生まれたのだろう。
「それも含めて俺の至らなさが招いた事態だ。君を恨んだりはしていない」
これは紛れもない本心だ。
キラと一緒なら、どんな障害も打ち破れると本気で思い込んでいた。
それなのにこの体たらく。
今思えば、俺はキラの味方になれたことに浮かれていたんだ...。
「どうして......、どうしてパパを守ってくれなかったのよ...」
フレイは俺に近付くと、俺にしがみついて静かに泣き始める。
婚約者であるサイではなく、俺がこの役目を請け負って良いのか?
しかし彼女を突き放す訳にもいかず、腕を回して背中をさする。
「......すまない」
「パパのバカ、わたし独りぼっちになっちゃったじゃない...」
そのままひとしきり泣いたフレイは、俺に背を向けて去っていった。
「アレックス...」
「キラ、彼女は優しいんだな。俺は『同じコーディネイターだから、どうせ手を抜いているんだろう』くらいの罵倒は受けると覚悟していたんだ」
「......」
「一旦別行動にしよう。俺はラクスの様子を見に行った後、ラミアス艦長たちにラクスをプラントへ返還する許可を貰ってくる」
「わかったよアレックス」
☆★☆★☆
『同じコーディネイターだから、どうせ手を抜いているんだろう』
「(馬っ鹿じゃないの。あの光景を見たあとでそんな台詞を言うなんてどんな間抜けよ)」
アスランの胸の中で泣き終えたフレイは、立ち去るふりをして物陰に隠れてキラとアスランの会話に聞き耳を立てていた。
ラクスを連れてアークエンジェルのブリッジに入った際、フレイは初めて戦場の空気に触れた。
敵も味方もあっという間に死んでいく世界。
自分とは無縁だと思っていた場所に、自ら足を踏み入れた瞬間だった。
そんな中でアスランは撃墜される危険も厭わず、自分との約束を果たすために必死に父を守っていた。
「(どうして?どうして赤の他人との口約束に命をかけられるの?)」
胸の内に溜まっていたドス黒いナニカを涙と一緒に吐き出した今は、何故アスランがあそこまで自分のために動いてくれたのかという疑問が湧いてくる。
「(そういえばキラはサイたちに悩みを相談していたわね。『アレックスが自分自身を大事にしてくれない』って...)」
とても生半可な覚悟でできることではない。
他にもアスランは、アークエンジェルのクルーやヘリオポリスの避難民が抱いているコーディネイターに対する悪印象を払拭するために奔走していた。
悩みを聞いたり作業を手伝ったり。
アークエンジェル内で彼に1度も助けられたことが無い者はほとんどいないだろう。
「(思い返してみればわたし自身も、アルテミスでユーラシアの軍人に乱暴されそうになった時に助けてもらったじゃない!わたしのバカ、恩知らず!)」
己の過去の所業に、思わず頭をポカポカと叩いてしまうフレイ。
アスランたちにバレたと思ったが、2人はいつの間にか移動していたようで姿は見当たらなかった。
ほっと安堵の息を吐くと物陰から出て立ち上がる。
「アレックス。あんたは確かにわたしたちを守っているわ。でも、あんた自身は一体誰が守ってくれるの...?」
コーディネイターに対する嫌悪感が薄れたわけではない。
しかしアスランのことを心配せずにはいられなかった。
そうなると...。
『彼女は優しいんだな』
「......」
フレイは自分のやりたいこと・やるべきことを見定めて、その場から歩き出した。
☆★☆★☆
「無事か、ラクス?」
「あら、アスラン。わたくしは大丈夫ですわ。特に乱暴をされたりはしていません」
「そうか、良かった...」
「アスランこそ、お怪我は?」
「平気だよ。俺の乗っているモビルスーツはバッテリーが切れるまでは頑丈だから。......兵器だけに」
「あらあら、うふふっ」
「......すまなかった、ラクス。民間人の君を戦闘に巻き込んでしまった」
「アスラン。わたくしは、貴方のお役に立てましたか...?」
「え?......えぇ。それは、もう...」
「それでしたら、謝罪ではなく感謝が欲しいですわ」
「......ありがとう、ラクス。君のおかげで命拾いをしたよ」
「うふふ、どういたしまして」
☆★☆★☆
『こちらは地球連合軍艦アークエンジェル所属のモビルスーツ、ストライク。
これよりラクス・クラインの引き渡しを行う。
ただし、ナスカ級は艦を停止。
非武装の隊長機が1人で受け取りに来るのが条件だ。
これらの条件が守られない場合、彼女の無事は保証しない...!』
キラがラクスを連れ出してザフトに呼び掛けている。
マリューさんたちはラクスの返還に許可を出してくれた。
イージスのパイロットである
ラクスは俺に送り届けてほしがっていたが、俺の声がザフト艦の通信記録に残るのはマズいので諦めてもらった。
俺は現在、ラクスを受け取った後にザフトが戦闘を再開した時のためにパイロットスーツに着替えているところだ。
「あの子が議長の娘ってことは、あなたの親もプラントのお偉いさんなのかしら?」
「フレイ...?って、その格好...!」
着替え終わってイージスに向けて移動している最中、フレイに呼び止められた。
そして目の前にいるフレイは、地球連合軍の制服に身を包んでいた。
「地球軍に入隊したのか」
「そうよ。それでさっきの話の続きなんだけど、あなたの親ってどんな人?」
「君に隠し事はしたくないが、それはまだ話せない。少なくとも、第8艦隊と合流してヘリオポリスの避難民をアークエンジェルから降ろすまではな」
「ふぅん、まぁいいわ。今すぐ知りたいことじゃないし」
「今度はこっちから質問だ。どうして地球軍に入隊した?復讐か?」
「確かにパパを奪ったザフトは許せない。でもザフト兵の誰がやったのかがわからない以上、復讐に固執するつもりは無いわ」
モントゴメリを沈めたのは隊長機や奪われたGではなく、ただの
個人の特定が困難な以上、誰か1人を殺せば終わりということにはならない。
ならばザフトを皆殺しにするまで戦うのか、という問いに対する答えがそれなのだろう。
「アレックス。パパはあなたに対して『
名前で呼ばれた。
二人称もいつの間にか『あんた』ではなく『あなた』になっている。
「軍人になって俺に守り続けてもらうより、民間人のまま戦場から離れた方が安全なんじゃないのか?」
「あなたの力になりたいと思ったのよ」
「何だと?」
「あなたは全身全霊でこの艦を守っている。でも誰かを頼ることをほとんどしない。そのままだと潰れてしまうわよ」
「......」
「もしパパの件でわたしに対して罪悪感を感じているのなら、罰を与えてあげる。これからも戦いなさい。戦い続けなさい。あなたが倒れそうになる度に、わたしが支えてあげるから」
発している言葉こそ物騒だが、フレイの表情は
ラクスの返還の後に戦闘にはならなかったらしく、ストライクが無事に戻って来るのが窓から確認できた。
「長い付き合いになりそうだな。改めてよろしく、フレイ」
「えぇ、よろしくアレックス」
夕方頃にお気に入り登録が1000人を越えたなと思ったら、既に1500人以上...?
まだ話数が1桁な現状でここまで応援を貰えるとは感無量です。
本当にありがとうございます!