汚いエルフを見つけたので虐待することにした   作:音塚雪見

1 / 17
この作品はkonpeitou様の「汚い艦娘を見つけたので虐待することにした」を多分に参考にしております。


第一話

 気がつくと俺は異世界にいた。おそらく死んだのだろう。その時の記憶がないからいまいち実感に欠けるが、自分の持つオタク的知識と謎の確信が、俺の死を認めさせた。

 そしてどうやらお約束の中世ヨーロッパ風世界らしい。にしてはどうも文明らしきものの姿が見えないが、きっと古代転生とかそんな感じだと思う。

 

 

「にしても……立派な角だなぁ」

 

 

 俺は水面に映る自分の姿を見て、ほぉ……とため息を吐いた。

 そこにいるのは前世とは似ても似つかないイケメン。額からは一対のねじれた角が生えており、明らかに人間でないことを主張している。

 異形転生ってやつか。前世で見たスライムとかに転生するやつの亜種だな。

 

 

「つまりこれから俺のチート無双人生が始まるってことだ」

 

 

 冴えない学生時代を送り、社会の歯車として酷使された前世。

 そのご褒美として異世界転生をさせてくれたのだとしたら、なるほど神様というやつも信仰するに値するらしい。現代日本の価値観としては神の存在を信じられていなかったのだが、転生なんていう超絶ファンタジーなことがあるんだ、神様くらいいるだろう。

 

 

「サンキューゴッド。ありがたく第二の人生を謳歌させてもらうぜ」

 

 

 いや、少なくとも人生ではないか……。

 

 

「この見た目、まぁ短絡的だが『魔族』とでも呼称しようか」

 

 

 こうして俺の魔生が始まったのであった――!

 

 

 ◇

 

 

 それから、数え切れないほどの時間が経って。

 

 

「酷い有り様だな。エルフの集落か」

 

 

 強大な魔力を感じた俺は、気まぐれにとある村を訪れた。

 そこは炭と化した家屋、血に塗れたエルフの死体が散乱しており、およそこの世のものとは思えない光景となっている。

 

 

「玉座のバザルト……? そうか、死んだか」

 

 

 魔王軍の将軍の一人であった彼だが、おそらくは軍勢を率いてこの集落を潰しに来たのだろう。

 そして、あのエルフにやられたと。

 

 

「彼を殺したのはお前か? 死にかけのエルフ」

「魔族……」

 

 

 土に汚れているが、目に見える傷はない。玉座のバザルトを相手にして傷ひとつすら負わずに殺したか。

 

 

「強いな。そして強大な魔力……」

「殺す」

「まぁ待て。今のお前では俺にかすり傷も与えられん。それよりも話をしようじゃないか」

 

 

 白髪のエルフは殺意のこもった目線を向けてくるが、俺は余裕を持って腕を広げた。

 あぁ、実に虐めがいがありそうだ。

 

 

「お前、名前は?」

「…………………………フリーレン」

「そうかフリーレン、お前は馬鹿だ」

 

 

 唐突な罵倒になんの反応も見せず、先程からこちらの隙を窺っている。

 流石は彼を殺したエルフ、魔族の操る言葉が人間を騙すものだと理解しているのか。

 

 

「確かに玉座のバザルトは強かった。お前ならば十回戦ったら九回勝つだろう。だからこそ疑問だ、何故正面から戦いたがる? 逃げる、隠れる、不意打ちする、いくらでも選択肢はあるだろう」

 

 

 フリーレンは僅かな疑問をその瞳に宿していた。

 

 

「……お前は魔族だ、魔法使いの誇りを持っている。何故それを自身の言葉で否定する」

「それは強い魔法使いの誇りだからだ。俺は弱い、とても正面から戦うなど出来ないさ」

 

 

 大げさに肩をすくめて、暗い空へと視線を漂わせる。

 ……この気配、フランメか。もうまもなくここに到着するだろう。それよりも早く去りたいな。

 

 

 そんな事を考えて、この場を離脱するために転移魔法を展開しようとしていた俺に、彼女が呟いた。

 

 

「嘘だ」

「何?」

「お前は、私よりも……」

 

 

 ――遥かに強い、魔法使いだろう。

 

 

「…………………………どうしてそう思った?」

 

 

 吊り上がる口角が抑えられない。さり気なく口元を隠して、動揺など何もしていないかのように尋ねる。

 

 

「……なんとなく」

「クハッ」

 

 

 駄目だ、我慢が出来ない。

 俺は顔を押さえて、天を仰ぐようにして笑い出す。フリーレンはいまいち何を考えているか分からない表情だが、あれはきっと困惑しているのだろう。

 

 

 俺は一人逃げ出そうとしていたのをやめ、羽のように軽い彼女を担ぎ上げた。

 

 

「……降ろせ」

「降ろさない。お前には才能がある。そんな奴こそ、俺が摘むにふさわしい」

「は?」

 

 

 あぁ、俺は長い時を生きた。

 それはそれは長すぎる時を。

 長すぎる時は俺の人間としての感性を歪め、この「魔族としての感性」として生まれ変わってしまったのだ。

 

 

 魔法の才能がある奴を見つけては虐め倒す――これが、未だ終わりの見えない魔生の無聊を慰める行為。

 およそ人間としては失格の、魔族らしい楽しみ。

 意味もなく人間を食らう、それも良いだろう。人間の今際の際特有の恐怖に満ちた……あるいは絶望、困惑、怒り、その他負の感情に満ちた顔を観察する。確かにそれも良い。

 だが、本当にそれ以上はないのか(・・・・・・・・・)

 その程度の娯楽に満足するようでは、仮にも前世を持つチート転生者として落第なのではないか?

 

 

 そこで、だ。

 俺は見つけたのだ。それ以上に魔族らしい……人間として存在してはいけない楽しみを。

 

 

「楽しみだなぁ、お前が絶望に喘ぎ、その端整な面を歪めて命乞いをする姿が」

「……反吐が出る。やっぱりお前ら魔族は生かしておくべきじゃない」

「生かされているのはお前だ、フリーレン。お前に拒否権はない」

 

 

 俺は彼女を担ぎ上げていたまま、開いた転移門を潜り抜ける。

 

 

「じゃあなフランメ。追手の処理は頼むぞ」

 

 

 ぷつりと途絶えた魔力の波動のあとには、ただ静寂と血の香りだけがそこに漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 汚いエルフを虐待するために拠点に持って帰ってきたぜ。人目についちゃ不味いからなぁ……!

 俺はフカフカのソファにフリーレンを投げ、拘束する魔法で動けなくした後に風呂場へ行く。いつもは面倒くさくて碌に使っちゃいないが、偶には活用しなくちゃなぁ?

 

 

 温泉を出す魔法で浴槽を満タンにする。うーん、この鼻につく匂い、間違いなくフリーレンは嫌がるだろう。

 そして髪がもこもこふわふわになるシャンプーを出す魔法を使う。あいつは現在かなり汚れているが、その状態にあまり嫌悪感を覚えている様子はなかった。つまり汚いのが好き……風呂に入ることが嫌いってことだよなぁ!?

 ハッハッハッハッハッハッハッ!!! なんて悪辣な魔族なんだ!!!! 自分で自分のことが怖くなるぜぇ?

 

 

 熱責めをするために、服を脱いでも寒くならない程度の室温に調整し、彼女を魔法で連れてくる。

 ぷかぷか宙を浮いてくるお前の姿は見ものだったぜぇ? だがいつまでその殺意に満ちた目が出来るかな! 

 

 

「……何だ、これは」

「知らないのか? お湯攻めだ」

「いや、これは風呂……いや、温泉……?」

「何をごちゃごちゃ言っている。とっとと来い」

 

 

 すっぽんぽーん、と服を無理矢理剥ぐ。

 はっ、流石にエルフと言っても乙女、異性に裸を見られるのは恥ずかしいだろう? あぁ、羞恥に悶えるその表情が透けて見えるようだぜ……!

 モラル的に目隠しを装着した俺は、未だ抵抗しようとするフリーレンを座らせる。

 

 

「温水を程よい勢いで出す魔法」

「何を……あっ」

 

 

 強制的にお行儀よく座らせ、少しも動けない状態で髪を濡らす。髪は乙女の命って言うからなぁ? 許可も貰わずに洗うこの行為ッ! まさに悪辣極まりないッ!!!!

 更にペットに使うようなシャンプーで洗ってやれば、あっという間に人権を無視して家畜扱いする鬼畜の完成!!

 

 

「クハハッ、流石に身体は自分で洗えよ? いくらなんでもライン越えだからな」

「え、でも動けない……」

「拘束解除! 一応後ろを向いててやる。お前は精々僅かな自由を謳歌するんだな……!」

 

 

 言葉通り、俺は目隠しをした上で後ろを向いた。フリーレンはそれを隙だと見たのか、かなり破壊力の高い魔法で殺そうとしてくる。

 が、ここは風呂場。いなそうにも防ごうにも必ず被害が出てしまうので、魔法を吸収する魔法で完全に受け止めた。こういうところで実力差をまざまざと見せつけるのも、虐待の一つだよなぁ?

 

 

 それからも何度か魔法を撃ってきたが、その尽くを受け止めてやるとやがて諦めたのか、ゴシゴシと体を洗う音が聞こえてきた。

 ここでヤスリみたいな垢すりを用意することも考えたのだが、それだとこの後の拷問が少し楽になってしまうと判断したので、天毛羊の毛を使ったモコモコの奴を使わせている。やはり何事も大事なのはメリハリ……若干楽な拷問と、キツイ拷問を繰り返すことで精神を摩耗させるのだ……!

 

 

「……終わったよ」

「じゃあ風呂に入れ」

「……これに何の意味がある? お前は何を狙っているんだ」

「クク、何度も言っているだろう。俺はお前が絶望に喘ぎ、命乞いをする無様な姿が見たいんだよ……!」

「だがこれじゃ逆――」

「黙って入れぇッ!!」

 

 

 よほど風呂が怖いと見えるな? そんなあからさまな時間稼ぎ、長い時を生きた魔族には通用しないぞ?

 俺はモゴモゴと舌を回すフリーレンの脇に手を差し込み、無理矢理温泉に入れた。

 先程までは饒舌だったその口も、やはりお湯攻めをされれば余裕が吹き飛ぶ。真っ白な肌は怒りと痛みによって赤く染まり、キツく寄せられていた眉は歪んでいる。

 大層辛いと見えるなぁ? これだよこれ、これが見たかったんだ!!!!!!!!

 

 

「はぁ……」

「はっはっはっは!!!! この後もさらなる地獄が待っているからなぁ? 楽しみにしておけよ!!!!」

 

 

 機嫌よく哄笑する。あー、こんなに楽しい虐待はフランメ以来か? あいつにも数々の虐待を施してやったもんだ……ちょっと強くなりすぎたから人間界に返してきたけどな! 引き際というのは大事なものだ。虐めることだけを考えて、自分が殺されたんじゃ笑い話になっちまう。

 

 

 ――何か気が抜けそうだな……。

 

 

 などと呟くフリーレンの言葉は、当然俺の耳に入ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風呂から出たあと、明らかに女の子っぽい服を着せて。

 

 

「これは……?」

 

 

 フリーレンは目の前に鎮座するモノに慄いている。クハッ、いい反応だなぁ?

 

 

「お前の飯だ、食え」

 

 

 ゴクリ。

 彼女の細い喉から、やけに大きく唾を飲み込む音が聞こえた。

 

 

「これを……本当に、私が食べるのか」

「お前以外に誰がいる? 良いからさっさと食え」

 

 

 そこら辺に生えていた草を適当に炒めて、更に近くの川で釣った魚を適当に料理したものを、シンプルな皿に乗せて提供した。その上メルクーアプリンなるものもデザートに用意してやったぜ……!

 あんな甘そうなもの、好き好んで食べる奴の気がしれないが……まぁ、こうして虐待に使えるんだから問題ないな! ヨシ!

 俺が拠点を構えているのは天脈竜の背中だから、見たこともない草や魚だ。さぞかし不味いことだろうよ……恨むのならば非力な自分か、女神様を恨むんだなぁ!!!

 

 

「………………」

 

 

 肩を震わせながら食事をする彼女を眺めながら、俺はワインを飲んでいる。

 んー、流石二束三文で買ったもの、滅茶苦茶不味いな。しかしフリーレンの辛そうな顔を見ながら飲めば、いかな安物だろうと玉露に様変わりよ……! 見給え、あの何かを我慢していそうな口元。明らかに吐き戻しそうになっているが、俺という恐怖の象徴がいるために堪えている様子ではないか。

 あはははははははははははははは!!!!!!!! これだから魔族はやめられねぇ!!!

 

 

 食事を終わらせた彼女に歯磨きを強制することでヘイトを買いつつ、明日に疲れを残させないためにフッカフカのベッドに放り込んだ。今日は激動の一日だったからなぁ……明日まで疲れが残っていると、拷問が鈍く感じちまうかもしれねぇ……だったら多少楽をさせてやってもいいよな?

 だが完全に楽をさせるわけがない。俺は布団派だ。幼い頃からイ草と布団の感触に包まれて眠りに落ちてきた。その俺に言わせれば、ベッドなんてゴミカスだね。虐待に全身全霊をかける俺が、眠りですらも余裕をもたせるわけがないのだ!!!!!

 

 

 クックック……ベッドはさぞかし辛かろう? フリーレン。

 

 

 ◇

 

 

 勇者ヒンメルの死から29年後。

 北側諸国城塞都市ハイス。

 

 

「フリーレン様、この街についてからずっと温泉に入り浸りですね」

「たまに出てきたと思えば魔法店だもんな」

「どうやら、温泉が好きらしいですよ。昔、無理矢理入れられてからそうなったとか」

「昔って……どれだけ前だよ」

「原始時代くらいですかね……?」




長い時を生きたせいで人間としての感覚が摩耗した悲しき魔族の話。
ちなみにフランメにも似たようなことしてるし、ゼーリエにもしてる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。