汚いエルフを見つけたので虐待することにした   作:音塚雪見

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第六話

 最近のフリーレンは猫のようになってしまい、当然のように反抗することはもちろん、朝はドロドロに溶けて起きてこなくなった。

 

 

 流石にこれからの虐待ライフに支障をきたすと判断した俺は、なんとか性根を直せないかと頑張ったが「ケーフィヒのせいだから。責任取ってね」などと訳の分からないことを言われてしまった。

 

 

 クックック……自分でも忘れてしまうほど長い時を生きた大魔族に、ここまで抵抗するとはな。

 天晴れだフリーレン。生涯貴様を忘れることはないだろう。

 

 

「起きろ」

「んぅ……あと百年」

「起きろ馬鹿」 

 

 

 いい加減手慣れてきた俺は、対フリーレン用に改良した「布団を吹き飛ばす魔法」と「髪を整える魔法」、「寝坊助をシャッキリと起こす魔法」を使用する。

 

 

「目覚めはどうだァ? フリーレン」

「……おはよう、ケーフィヒ。私としてはもう少し丁寧に起こしてほしいかな。それに満足するまで寝るのが良いって言ったのはケーフィヒじゃないか」

 

 

 おうこいついっちょ前に反論してくるようになったか。

 ここらで誰が〝御主人様〟か教えてやる必要があるようだな?

 

 

「ククッ、いつまでその生意気な言動が続くかな……」

「うーん、多分その馬鹿さがなくなるまでかな」

 

 

 言うに事欠いて俺が馬鹿だと!?

 

 

 思わず懐に隠し持った『魔剣・ディアボロス(ハリセン)』を抜き放とうとしたが、ふとある考えが思い浮かび、半目になってこちらを見つめてくるフリーレンから逃れるように、「さっさと着替えてこい」と部屋から出て行った。

 これではまるで敗走したようだが、実は虐待の仕込みである。

 

 

 虐待はメリハリが大事。先程退いたのも、朝食による史上最悪の虐待をするためだったんだよなぁ!!!

 

  

「…………これは」

 

 

 嫌がらせに用意してやったピンク色の「ゆるふわ♡ショッキングピンク」なフリルが山ほどついた服を着て、フリーレンがやってきた。

 わざわざ俺が縫ってやった服だからなぁ……さぞかし着心地はよかろう。着心地は、な。

 

 

 そしてテーブルに乗った皿を見て、彼女は驚愕の表情を隠さない。

 

 

「フリーレン。人間というのは随分と面白いものを考えるなぁ? まさか、こんなものを作るとは……」

 

 

 ニヤリ。

 口角を上げた俺は手を広げ、舞台俳優のように高らかに謳い上げる。

 

 

「愛玩動物を模したパン!!! これがお前の朝食だァ!!!」

 

 

 そこにあったのは、白黒はっきりした体毛が特徴の滅茶苦茶可愛らしい動物……そう、つまりパンダの顔にとても似たパンだった。

 とは言っても、流石にデフォルメされているものだが。

 そりゃリアルなパンダの顔で作ったとしても売れないだろうからなぁ? 商人もそこらへんはわかっているだろう。角を隠して人間の街に行ったとき、これを発見して驚愕したものだ。

 

 

 ……間違いなく、虐待に使える!! と。

 

 

 人間も面白い。なぜか自分を追い詰めるものを開発してしまうのだから。

 そのせいで俺みたいな悪辣な魔族に利用されるんだぜ?

 

 

「可愛いね」

「あァ……?」

「いただきます」

 

 

 なん……だと……?

 こいつ、わずかに逡巡したとは言え、この短時間で口に入れた……?

 

 

 馬鹿な……人間は可愛いものを食べるとき、いや傷つけるときに抵抗感を覚えるものじゃないのか……?

 俺は時間によってそのたぐいの感覚は摩耗してしまったが、フリーレンはエルフ。一応は人類側の存在なのだから、少しくらいは悶えてみせろよ!!!

 

 

 クソ、今回の虐待は失敗してしまったか……?

 ――いや、違うな、これは発見だ。フリーレンにこのような虐待をしても効果が薄いという。なにげに、こいつ食い意地が張ってるからな。

 全く誰に似たんだか……今後、もしも弟子とかを取ったりしたら、フリーレンに似て食い意地が張ったりするんじゃないか?

 

 

「……俺は下界に行ってくる。問題はないと思うが、留守番をしていろ」

 

 

 ならば仕込みだ。

 最も効率的にフリーレンを痛めつけられる手段を用意しよう。

 

 

 ……少しリスクはあるが、致し方ない。

 過去を掘り返しに行くかァ!

 

 

「そう。どれくらい?」

「長くても一週間くらいだ。お前の飯は『食物の保存状態を保つ魔法』をかけたのがあるから、決まった量を食べろよ。それ以上はないからなぁ?」

 

 

 まるで犬猫の扱いだ。さぞかし屈辱的だろうなぁ!!!

 こいつに虐待以外の方法で弱られると困るからな……栄養バランスはしっかりと考えてある。

 俺がいない時間を存分に楽しむといい。その分、後の虐待タイムが辛くなるだけだけどなぁ?

 

 

「任意の場所に移動する魔法」

 

 

 目の前に空間の穴を出現させ、ひらひらと手を振るフリーレンを尻目に移動する。

 パチリと目を開けたそこは木々が茂っており、人の手が入っていないことがわかった。

 

 

「……フランメの近くに出てきたはずなんだけどなぁ? あいつこんなところにいるのか?」

 

 

 もしや座標のミスか。

 万が一にも自分の完璧な魔法に傷があると不味いので術式を確認する。

 

 

 俺には他の追随を許さない圧倒的な集中力がある。しかし、このときばかりはこれが仇になった。

 

 

師匠(せんせい)

「ッ!?」

 

 

 足元に魔法陣が形成され、反射的に宙に浮いたがそこから出現した蔦に脚を掴まれる。

 それは俺を地面に縫い付け、揺らぎがほとんど見えない魔力が背後に出現した。

 

 

 フランメ。

 こいつを探しに来たとは言え、まさかこんな邂逅になるとはなぁ。

 

 

「………………よぉ、一年ぶりくらいか?」

「二十年だよ」

 

 

 滅多にないピンチだ。

 俺は密かに冷や汗を流し、魔法を解析する時間を稼ぐことにした。

 

 

「随分と久しぶりじゃないか。可愛い弟子を放って何処へ行っていた?」

 

 

 オレンジ色に近い茶髪をまとめ、腰よりも長く伸ばしている魔法使い。

 俺がちょっと手を出して放置した、いわば見えないように深く埋めておいた地雷だ。

 

 

「…………フランメ」

「なんだ」

「まずはこの魔法を解け。話はそれからだぜぇ?」

 

 

 クソ、調子に乗って魔法を教えすぎてしまった!!!

 こいつは虐待耐性が高く、何年虐待しても折れなかったから面白くなって、人間にとって禁忌である魔法を教え込んだのだ。

 そうしたら予想以上に強くなってしまったので、反抗を恐れた俺は忸怩たる思いを抱きながら天脈竜の背に避難した。

 なんかフランメの俺を見る目が怪しかったからな……。

 

 

 あれは間違いなく「殺してやるぞケーフィヒ」という目だった。

 

 

「あんたは目を離すとすぐどっか行くだろ」

「クックック……」

「それに、魔族の言葉は人類を欺く術だと言っていたのは師匠(せんせい)じゃないか」

 

 

 なんでそんなくだらないことを覚えているんだ??

 俺はあまりにも魔族に話が通じないから、愚痴じみた風評被害を流していただけなのだが……?

 

 

 魔法が好きだというフリーレンに、自分よりも短い時間しか生きられないフランメを会わせることで、劣等感を覚えさせる虐待をしにきたはずが……!

 どうして俺が捕まらなくてはいけないのだ!! 女神様よぉ、こいつぁ大罪人として地獄行きだろ。

 

 

「……まぁ、もういいか」

「お?」

 

 

 頭の中で悪魔も真っ青になるフランメに対する虐待を考えていると、案外あっさりと解放された。

 なにを企んでいるのかと訝しんだが、多分、虐待に満ちた過去を思い出して恐怖したんだろうな!!

 クックック、やはり趣味と実益を兼ねた虐待は最高だぜェ……!

 

 

「マーキングはしたし、これで何処にいてもわかる」

「なに言ってるんだぁ?」

「なんでもない」

 

 

 ブツブツとフランメが呟いているが、小さすぎてデビルイヤーの持ち主である俺にも聞こえてこない。

 尋ねても答えないし、きっと俺に出会ってしまった不幸を嘆いているのだろう!!

 ハーハッハッハッハッ!!!

もともとフランメは寿命で亡くなる予定だったのですが、予想以上に感想で生存を望まれたので

  • そのまま行こう。
  • 生存のIFルートも見たい。
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