汚いエルフを見つけたので虐待することにした   作:音塚雪見

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アンケートの内容を勘違いされてしまっているようなのでご説明します。
まずフランメ老衰ルートですが、こちらがメインになりますので確実に書きます。
その上で、IFルート、つまりフランメ生存ENDが見たいですか? という質問です。
わかりづらい書き方ですいませんでした。


第八話

 フリーレンを拉致ってきてから二年が過ぎた。

 初めこそなぜかギスギスしていた彼女らだったが、半年もする頃にはすっかり打ち解けていた。

 フランメは比較的しっかりしているため、だらしなくなった弟子を毎朝起こしている。これぞ二人同時に虐待を行うという高等テクニック……! 

 

 

師匠(せんせい)

「なんだ」

「ケーフィヒって魔族なの?」

「……………………言葉を話す魔物が魔族だ。その定義に当てはめれば……」

 

 

 午前の修行が終わり、昨日から仕込みをしていたシチューをいただく昼食の時間。

 同じ机で仲良く歓談していた彼女らが、首をひねりながらこちらを見てくる。

 なんだァ、俺の弱点でも探そうとしているのか? 

 

 

「クックック……やはりシチューなんてお上品なものは食べられないぜ……」

 

 

 そんな姿を観察しながら、俺は人間の街で買ってきた串に刺さった焼き肉を頬張る。

 あれはしっかりと煮込んだから、肉を口に放り込んだ瞬間に消えてなくなってしまうほど柔らかくなっている。せっかく肉を食べようとしたのに、舌で味わう間もなく消失……食を侮辱するような虐待だぜ。

 やっぱり肉ならこういう噛みごたえ抜群のものが食べたいよなぁ!?

 まぁこれは焼きすぎなのか肉が悪いのか、いくら噛み続けても飲み込めないのだが。

 

 

 そうこうしていると食事の時間が終わり、食後だらーっとしたい様子のフリーレンと、今すぐ修行するぞと腕を引くフランメの姿が目に入った。

 俺がなにもしなくとも関係が悪化する……やはり師弟関係というのは虐待的であるということだな。

 

 

「おい、フランメ」

 

 

 ようやく噛み切れた肉を嚥下しながら、地面と熱い抱擁をしているフリーレンを引きずっている彼女に話しかける。片眉を上げながら、フランメは振り返った。

 

 

「今日の修行はなしだ。散歩に行くぞ」

「……散歩ォ?」

 

 

 クク、なにをまた馬鹿なことを言い出しているんだという目だな。

 そりゃ修業をするべき時間に、そのような気の抜けた行動をするなんてもっての外だろう。

 だがこれはスケジュールにないイベントを捩じ込むという、社会人なら胃が痛くなる虐待なんだよなぁ!

 上司に命令されて行うサビ残、上司に命令されて休日出勤、御主人様に命令されて散歩……そこになんの違いもありゃしねぇだろうが!

 

 

 俺は手を伸ばしてくるフリーレンを引っ張って立ち上がらせつつ、得意げな顔をして口角を上げる。

 

 

「魔法使いは魔法だけだと思うか? 違うなぁ、それは甘すぎるぜ。あるいはもっと大事なものがある……!」

 

 

 眼の前で魔法使い観を破壊するという虐待を織り交ぜ、なにかを悟ったかのように能面になり、一瞬で逃げ出そうとしたフリーレンを拘束した。

 その光景を見て同じく「酷いこと」をされると理解したのだろう、フランメも顔を強張らせる。

 

 

 クックック、虐待センサーが育ってきたようだな……。

 まぁ事前にわかったところで虐待されるという運命からは逃れられないんだけどなぁ!

 ……知らなかったのか……? 大虐待からは逃げられない……!!!

 

 

「フリーレンは以前やったことがあるだろう?」

「……そうだね。もう二度とやりたくないから、私はパスするよ」

「さて、それでは行くか。フランメもついてこい」

 

 

 当然のようにものぐさエルフの言うことは無視。

 いちいち聞いてやってたら話が一向に進まねぇからなぁ。

 おそらく会話のテンポを遅くすることが目的のちょっとした反抗なのだろうが、その程度じゃ俺の鍛え上げた虐待スキルにはなんの痛痒も与えられないぜ。

 

 

 魔法使いというか人類は身体が資本! 身体が貧弱なやつは魔法が強大だろうと怖くないからな……例えば俺の開発した「一定領域内の生物の体力を奪う魔法」とかを使えば、一発だ。

 お遊びとはいえこの俺が教えているのだから、その辺の魔族に負けるとあっちゃプライドが許さないんだよなァ。

 

 

「……そうだ、お前たち防寒はしっかりしろよ」

「防寒?」

「見てて寒々しいんだよ。特にフランメ」

 

 

 風邪でも引かれた日には思う存分虐待ができなくなるからなぁ。

 フリーレンには街で買ってきたコートを渡してあるのだが、なぜかフリルのついた服ばかり着ている。あれは俺の技術が未熟だったときに作ったものだから、その瑕疵を咎めようと見せつけているのか?

 それにフランメに関しては、多分本人の好みなんだろうが腕を露出させた風通しのよさそうなものを着ている。

 

 

「……じゃあ師匠(せんせい)の作ったのをくれ」

「あァ?」

 

 

 言うことはこれで終わりだ、と立ち去ろうとしたのだが、なにかを思いついたかのように目を細めたフランメが腕をつかんできた。

 ほぉ、反撃か。

 ニヤリと笑っている彼女は得意げだ。急に衣服を要求することで、「用意できないのぉ? それでも最強の魔族を名乗れるんですかぁ〜?」みたいな攻め筋を見出したのだろう。

 

 

 甘すぎるぜ。

 

 

「クックック……じゃあこいつをプレゼントだァ!!」

 

 

 前々から用意していた……具体的には一年前から作り始め、ついこの間完成した服を何もない空間から取り出す。

 一見ただのデカいフリル付き女児向けワンピースといった洋装だが、実はしっかりと術式が刻み込まれている魔道具なのだ。自動的に装着者の魔力を吸い取って周囲を適温にしたり、その外観からは予想できないほどの防御力を持っていたり。

 

 

 見た目と機能を両立させるのが難しくてな……杖よりも時間がかかってしまったぜ。

 その代わりにだいぶ虐待性能が上がったけどなぁ!

 

 

「これは……流石に私の歳じゃ」

「今まで女っ気の一つもなかったんだから、少しくらい許されるだろ」

「そうだよ師匠(せんせい)。可愛いよ」

 

 

 追撃とばかりにフリーレンがニヤついている。

 普段修行でボコボコにされている仕返しなのだろう。それをすることによって後がキツくなるという、簡単な予想ができないとは……あるいは見据えたうえで、「今」を楽しむことにしたのか。

 

 

「それに年齢年齢言うが、まだお前は若々しいだろう」

 

 

 別にメイクとかをしているわけではないだろうが、ナチュラルボーン若作りと罵倒することによって精神を傷つけていくノンデリ発言!

 日々俺の虐待スキルが上がっているようで嬉しいよ……。

 

 

「そ、そうか? まぁ私の大人の色香で師匠(せんせい)もメロメロに……」

「百年早い」

 

 

 調子に乗ってワンピースを胸に抱えたフランメを切って捨てる。

 ペットに愛情を抱くことはあれど、恋慕することはない。同様に虐待用玩具であるフランメに恋をするはずがないんだよなぁ。いわんや愛など。

 そもそもそのワンピースを着た時点で大人の色香(笑)だ。

 

 

「一週間程度の行進だ。最近は冷え込んできてるからなぁ、フリーレンもコート着てこいよ」

「私もケーフィヒの作ったやつが欲しいんだけど」

 

 

 だらしなくなった上に厚かましくなっていやがる。

 俺が毎日ピカピカに磨き上げている床の上に、今もなお寝転ぶフリーレンを見下ろして、ため息を吐いた。

 

 

「今はない。これで我慢しろ」

 

 

 屈辱的だぜェ……これは俺の予想よりもフリーレンの厚かましさが勝った、つまり負けたということだからな。

 羽織っていた温度調節機能付きのコートを脱ぎ、ものぐさエルフに投げ渡す。

 クソ、シンプルなデザインの白いコート、気に入っていたのに。

 ついでに愛用の青いマフラーも渡して、なぜかニヨニヨしている――実際はそこまで表情に変化はないものの、親しいものならば読み取れる程度――フリーレンを置いて立ち去った。

 

 

 ◇

 

 

 その後、魔法少女みたいな見た目になったフランメと、俺のコートとマフラーを持っていきやがったフリーレンを連れて地上へ降りた。

 歩き始めて一時間くらい経ったときに、

 

 

「ケーフィヒ、足が痛い。おんぶ」

 

 

 などとほざきやがったが「我慢しろ。将来旅をすることになったら苦労するぞ」と言って断った。

 クックック、無理矢理歩かせるなんて恐ろしい虐待だなぁ……!

 

 

 散歩のルートはあえて険しい道を往く。

 題目上は身体を鍛えるためのものなのだから、何ら違和感はない。まぁもちろんそんなことは関係なく、俺が苦しんでいる二人を見たいからなんだけどな。

 

 

 先んじて人の身程もある大岩を乗り越え、恥ずかしげに伸ばしてくるフランメの手を引く。

 フリーレンはまるでそれが当たり前かのようにふてぶてしい態度だったから魔法で持ち上げた。

 

 

「ちょっと。師匠(せんせい)と私とで扱いが違うんだけど」

「相応の態度ってものがあるだろう? あまり俺を舐めるんじゃないぜ……!」

 

 

 うるさいエルフの髪をグシャグシャにして黙らせ、かすかに耳を赤くしたのを横目で確認。

 怒りが堪えきれないようだなぁ……いい傾向だ!

 

 

 そんな感じで一週間が経過した。

 陽光が木の葉で散り散りになるトンネルを抜け、月と暗闇が支配する森の中、命乞いをするフランメを扱いたり、ちょっとしたスープのみというひもじい食事をさせ。

 ようやく歩き詰めたその先では、星々が大挙して俺たちを待っていた。

 

 

「わ……」

 

 

 普段は情動が薄いフリーレンも、流石に目の前の光景に心を奪われたようだ。

 透き通るようなその碧眼に星空が反射し、吹き抜ける風が白髪を攫っていく。

 長く歩いたご褒美だとでも思い込んでいるのか? そいつぁ俺を甘く見過ぎだぜ。

 

 

「そろそろか」

 

 

 俺は高い夜空を見上げ、白くたなびく息を吐く。

 不思議そうに首を傾げるフリーレンと、「あぁ、そういえば」と呟くフランメが視界の隅に入った。

 

 

 ――蒼い光を伴って、星が天球を滑り落ちていく。

 やがてそれらは儚く燃え尽きるが、尽きることなく落ち続けた。

 半世紀(エーラ)流星。五十年に一度の流星群。

 人間の歴史における一種の区切りであり、普通は一度しか目にすることが叶わない特別な自然現象。フランメは前から知っていたようだが、フリーレンはその存在を認知していなかった。

 エルフにとって大したものではなかったのか、それとも教えられる前に村を滅ぼされたか。

 

 

「クックック……フリーレン、どうだ? 自分の力で辿り着いたこの場所で見る光景は」

 

 

 星が落ちてきてしまいそうなほど大きく目を見開くフリーレンに、俺はクツクツと喉を鳴らす。

 

 

「――綺麗だ」

 

 

 相変わらず彼女の表情にあまり変化はなかったが、瞳の奥に「なにか」が刻まれたであろうことは、ほんのりと色づいた頬を見ればわかった。

 いつもは厳しいフランメも、フリーレンの様子を見て唇を緩めている。

 

 

 フフフ……フフフフフフフフフ……ハァーハッハッハッハッハッハ!!!!

 

 

 だいぶ薄れた前世の記憶だが、人にはエピソード記憶というものがあるらしい。

 詳細は覚えていないが頭に残りやすいものだとか。

 つまりフリーレンやフランメの脳裏には、綺麗な半世紀(エーラ)流星=ケーフィヒと見たという事実が記録される! ということは、この光景が汚らしい魔族と結びつき、満足に楽しめなくなるということなのだァ!

 

 

 心を癒やしてくれる自然すらも虐待の手段として使う。

 なんて恐ろしい大魔族なんだ……思わず、震えてしまうね。

 

 

 惚けたように夜空を見つめる二人を眺めながら、俺は思惑通りにことが進んだことに口角を上げた。

もともとフランメは寿命で亡くなる予定だったのですが、予想以上に感想で生存を望まれたので

  • そのまま行こう。
  • 生存のIFルートも見たい。
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