ありふれた職業で世界最強withオリキャラ&ウマ娘 作:気まぐれのみった
今回でオルクス大迷宮でのお話となります。それと序盤は宿屋での一幕です。
どうぞご覧ください。
七大迷宮の一つ、【オルクス大迷宮】。
全部で百層からなるこの迷宮は内部に出現する魔物が階層を降りるごとに強くなるため、階層ごとに魔物の強さが測りやすく基準が作りやすい。故にこの迷宮は新兵の訓練や冒険者の腕試しに最適らしい。
また魔物から取れる魔石も地上で取れる物より上質なためそれを売って金にしようとする者達も集まって来ることもあって非常に賑わいのある迷宮である。
現在シュウガ達はオルクス大迷宮のすぐ近くにある宿場町の『ホルアド』へ来ていた。今日はここにある王国直営の宿屋で一泊して明日に迷宮に潜る事になっている。
そしてこの遠征にはハジメも参加している。元々別行動中の愛子先生以外は全員参加が決まっていたがそろそろ魔物相手の実戦訓練をハジメにもしたいとシュウガは考えていたためこの話に乗っかる事にしたのだ。そして今、シュウガとハジメは宿屋の一室で話し合っていた。偶然か否か同じ部屋に泊まれる事になったので都合が良かった。
シュウガとの訓練で着実に力を付けているハジメ。今のところハジメが異形の姿になる兆候はなく、グルメ細胞の悪魔が宿った様子もない。ただシュウガは異形化はともかく悪魔に関してはハジメなら心配いらないかもしれないと漠然とした考えがあった。確証はないがそう感じたのである。
シュウガ「さて、いよいよ明日だな。ハジメ。お前はずっと俺との訓練だったから魔物相手の実戦訓練はこれが初だ。気張っていけよ。」
ハジメ「はい。ふぅ、緊張するなぁ。魔物とは言え初めて生き物を殺すのかぁ………。」
シュウガ「大丈夫か?ハジメ。」
ハジメ「あ、すみません。ちょっとナイーブになっちゃって。でもそんなの鍛えてくれたシュウガさんに失礼ですよね?」
シュウガ「なに、気にするな。恐れなどあって当然だ。肝心なのはその恐怖にどう向き合うかだ。もし乗り越えるべき恐怖と判断した時は全力で立ち向かえ。お前がこれまで積み上げたものが必ず力になる。」
ハジメ「はいっ!」
シュウガの言葉に力強く返事をするハジメ。そんな時だった。
コンコンッ
シュウガ・ハジメ「ん?」
シュウガ達の部屋のドアをノックする音が聞こえた。時間は既に真夜中。こんな時間に一体誰が?と二人揃って怪訝そうな顔を浮かべる。すると、
香織「ハジメ君、起きてる?白崎です。ちょっと、いいかな?」
聞こえてきたのは香織の声であった。
ハジメ「え?白崎さん?」
シュウガ「ふむ、こんな時間に何だろうな。とりあえず出てやれ。」
ハジメ「あ、はい。」
そう言ってハジメは部屋のドアを開けた。
外に立っていたのは純白のネグリジェにカーディガンを纏っただけの香織であった。
ハジメ「なんでやねん。」
予想外の姿に思わずツッコむハジメであった。
結局香織を部屋へ招き入れたハジメ。何やら深刻そうな顔を香織はしていた。香織が椅子に座ったところでシュウガは逆に部屋を出る事にする。香織がハジメ目的に来ているのは明らかなのでそんな二人の話に混ざるのも野暮だろうと席を外す事にしたのだ。
シュウガ「それじゃあ、俺はしばらく外にいるから。ゆっくり話すといい。」
ハジメ「え?は、はい。分かりました。」
香織「ありがとうございます。」
こうして部屋を出るシュウガ。その際ふと視線を感じたのである。それもかなり憎悪のこもった視線である。視線を感じた方を向くと慌てて姿を隠す人影が見えた。シュウガはその人影の人物に覚えがあった。はぁ、とため息をついたシュウガは念の為その人物に釘を刺しておく事にした。その人物とは、
檜山「クソッ!クソクソッ!」
檜山であった。檜山は元いた世界から香織に好意を抱いていた。だが香織はハジメに構っており自分には見向きもしない。それがハジメへの当たりの強さに拍手をかけていた。何故ハジメなのかと何度考えた事か。そしてハジメを虐めては鬱憤を晴らし、更にハジメを下げて自分を上の様に見せて香織の気を引こうとしたのである。だがそんな奴に香織が靡く訳がなく、益々ハジメに構うと言う事態に。それでも自分は嫌われているなどと微塵も思わない檜山はさらにハジメに筋違いな憎しみを向けるのであった。
檜山「チクショウッ!何であんなオタク野郎を構うんだよ?!俺の方がいいに決まってるだろっ!変に力つけて調子乗ってやがるし!オタクらしく下で大人しくしてやがれっ!上の俺が香織に相応しい事を証明してやるっ!」
シュウガ「ほう?どうやって証明するんだ?」
檜山「っ?!」
檜山が何やら呟いていると、いつの間にかシュウガが隣に立っていた。
檜山「い、いつの間に?!」
シュウガ「そんな事はどうでもいい。それより、嫌われ者のお前がどうやって証明するんだ?」
檜山「はっ?嫌われ者?俺が?」
シュウガ「ん?自覚ないのか?」
檜山「う、嘘だ!俺は嫌われてねぇ!」
シュウガ「まぁそう思いたいならそうしておけ。とりあえず一つ忠告しておく。」
檜山「な、何だよ。」
シュウガ「誰がどんな相手を好きになるかは自由だ。だがな、相手の気持ちを踏み躙ってまでモノにするなんて悍ましいことするなよ?もしするのであれば、少し痛い目を見るぞ。」
シュウガは覇王色を滲ませながら忠告する。
檜山「ひっ?!」
シュウガ「まっ、そういう事だからさ。まずは自分磨きでもする事だな。誰かを下げるより、自分を上げる方がモテるぞ。」
そう言い残してシュウガはその場を去る。檜山はその後ろ姿を強く睨みつけるのであった。
檜山に忠告をしたシュウガは宿屋の裏手にある雑木林に来ていた。別段目的がある訳ではないがとりあえず外の空気を吸おうとやって来た。すると林の奥から何やら音が聞こえる。シュウガは見聞色で気配を読み取る。すると覚えのある気配を感知した。音のする方へ行くとやはり覚えのある人物が二人いた。
ルドルフ「てやぁっ!」
雫「はあぁーっ!」
それはルドルフと雫であった。どうやら二人で模擬戦している様だ。
ルドルフ・雫「はあっ、はあっ、はあっ。」
シュウガ「よう、精が出るな。」
ルドルフ・雫「えっ?!」
剣の打ち合いに夢中になっていた二人は突然現れたシュウガに驚いていた。
シュウガ「すまんな邪魔して。偶々外の空気を吸いに来たら見かけてな。しかしこんな時間にまで熱心だな?」
ルドルフ「ああ、実は眠れなくてね。少し疲れれば眠れるかと思って、剣の素振りをしようと外に出たら雫と出会ったんだ。そこで模擬戦に付き合ってもらったと言うわけさ。」
雫「私も同じ理由です。何だか寝付けなくて………。」
シュウガ「………やはり怖いか?」
ルドルフ・雫「っ!!」
シュウガの言葉に顔を強張らせる二人。
シュウガ「別に責めてるわけじゃない。お前達にとって今の環境は非日常の連続だろう。そしてしまいには戦争しなきゃならんかもしれん。普通に考えれば怖くて当然だ。何も気にする事はない。」
ルドルフ「気遣いありがとうシュウガ君。だが私はこれでも生徒会長。私がしっかりせねば他のウマ娘達に示しがつかない。不安なのは私だけではない。そんな彼女達を前に弱音を吐く訳にはいかないよ。」
雫「私も、光輝や龍太郎の事がありますから。私がしっかりしないと………。」
シュウガ「やれやれ、苦労人体質だな。特に雫。あんな勇者のお守りなんて大変だろうに。」
雫「光輝の思い込みにはもう慣れっこですから。」
シュウガ「まぁお前達の気持ちは分かった。だがそれだと、お前達は誰を頼るつもりだ?」
ルドルフ・雫「えっ?」
シュウガ「お前らだって年頃の女だ。立場がどうあれ誰かを頼ってもバチは当たらん。もしこのまま誰も頼らずにいようとしたら、いつかお前達は壊れるぞ。そうなったらそれこそ周りに心配かける事になるぞ。」
ルドルフ「た、確かそうだが…………。」
雫「頼る相手と言われても…………。」
二人とも誰にどう頼ればいいか分からない様だ。すると、
シュウガ「なら俺を頼ればいい。」
ルドルフ・雫「えっ?」
シュウガ「もうここまで関わりを持ったんだ。今更変に改まる事もない。お前達がどうしよもないと感じたら俺を頼れ。俺に出来る事があれば必ず力になろう。」
シュウガは自分を頼る様に二人に話したのだ。シュウガの提案に驚く二人。しばらく思案した後、ルドルフが口を開いた。
ルドルフ「それは凄くありがたい話だ。現時点で君はかなり信頼出来る相手だ。その君に力になってもらえるのは悪い気はしない。だがそれだと、君自身は誰を頼るつもりだい?」
シュウガ「む、そうだな。色々と慣れてるしむしろ状況を楽しむタイプだからあまり考えた事ないが………。よし。俺の事は二人に任せていいか?」
雫「えっ、私達に?」
シュウガ「ああそうだ。普段は俺がお前達の相談役になろう。だがもしもの事があったらその時はお前達を頼らせてもらおう。互いに助け合う関係だ。これでどうだ?」
ルドルフ「成程。ならそうしようじゃないか。私で力になれる事があれば何でも言ってくれ。」
雫「えっと、私が役に立てるか分からないですけど、それでシュウガさんが良いなら引き受けてみます。」
シュウガ「よしっ。それじゃあこれで決定だ。これから宜しくな、二人とも。」
ルドルフ「ああ、よろしくシュウガ君。」
雫「はい、よろしくお願いします。」
こうして互いに助け合う事を約束した三人。その後シュウガを交えて軽く模擬戦をしてからその場は解散となった。シュウガが部屋に戻ると既に香織の姿はなく、ハジメが起きて待っていた。その顔は何やら新たな決意に満ちていた。
シュウガ(どうやらまた一つ強くなる理由ができたみたいだな?それが成せるかこれからのお前を見届けさせてもらうぞ、ハジメ。)
こうして一部の者達が各々の決意を胸に明日の訓練に向けて眠りについたのであった。
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翌朝、シュウガ達はオルクス大迷宮の入り口がある広場に集合していた。
迷宮にしてはしっかりとした作りのゲートがあり受付の窓口まで備わっている。ここでステータスプレートを確認して出入りを記録する事で死亡者数を正確に把握するのだと言う。
シュウガとハジメがプレートを提出した際にそのステータスの高さから何かの間違いじゃないかと受付嬢に訝しむ目で見られたがメルドの説明でその場は納得してもらった。
こうしてシュウガ達はオルクス大迷宮へと足を踏み入れた。
迷宮内部は人が集まって賑やかな外とは打って変わって静まり返っていた。
明かりが無くてもぼんやり光がある。緑光石と言う鉱石が光を放っている様でそのおかげで道具や魔法がなくても進める様だ。
しばらく進むとドーム状の大広間の様な所に出た。すると一行の前に魔物が湧き出すかの様に姿を現した。メルドの説明でラットマンと呼ばれたその魔物は早速一行に襲いかかってきた。
相対するは光輝達勇者パーティー。前衛の光輝、龍太郎、雫が迎撃する。その隙に後衛の香織とその友人、中村恵理と谷口鈴が魔法の詠唱を始める。
後衛の邪魔はさせないと奮闘する前衛組。特に雫の動きがいい。昨日シュウガと話した事で少しは肩の荷が降りた気分になったのか比較的リラックスして挑めている様だ。
シュウガを除く待機組が光輝達の戦闘に見惚れていると後衛組の準備が整い魔法が炸裂する。
「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れーー"螺炎"!!」」」
途端に螺旋状の炎がラットマン達を焼き尽くす。あっという間に絶命して灰になった。
こうして勇者パーティーを始め生徒達やウマ娘達は順調に迷宮の魔物達を倒していく。迷宮と言ってもやはり低層の魔物では相手にならないようだ。
そしていよいよシュウガとハジメの出番が回ってきた。
メルド「よし、ここからはお前達の番だ。魔物相手にどんな戦闘をこなすか見させてもらうぞ。」
ハジメ「はいっ!分かりました!」
メルド「よしっ、出発だ!」
こうしてシュウガとハジメを先頭に歩みを進める一行。しばらくするとラットマンの群れが姿を現す。ラットマン達は一行を認識すると即座に飛びかかって来た。しかし、
ハジメ「錬成!」
ドゴォン!!
ラットマン達「っ?!?!」
ハジメが地面を錬成して岩の棘を無数に出現させてラットマン達を拘束したのである。かなりの勢いで突き出してきたようで何体かのラットマンは棘が刺さってダメージを負っている。そこにすかさずシュウガが印を組み術を発動。
シュウガ「"火遁・豪火球の術"!!」
うちは一族が好んで使っていた火遁忍術である豪火球の術をある程度威力と規模を制限してラットマン達に放つ。身動きの取れないラットマン達はあっという間に豪火球に飲み込まれて焼き尽くされた。
シュウガ「よし、終わったぞ。」
メルド「そうか。いや、見事な連携だった。錬成師の力がここまで凄いとは。やはりお前達の動きは勉強になるな。そしてシュウガ。お前の忍術?だったか。それも凄まじいな。一人であれだけの威力が出せるとは。あれでまだ本気じゃないんだろ?いつか全力のお前を見てみたいもんだ。」
シュウガ「ありがとよ。あの術は俺がガキの頃にはこの術をマスターすればうちは一族として一人前と言われたぐらいだからな。そんな基準になるくらいの強い術なのは確かだろう。因みにこれを進化させた更に上の術もあるぞ。」
メルド「そりゃ凄そうだ。機会があれば是非見てみたいな。」
そんな会話がなされている間、ウマ娘達や生徒達もその光景に湧き立っていた。
テイオー「やっぱりシュウガは凄いや!剣や体術でも強いのにあんな忍術まで使えるなんて!」
マヤノ「ホントだねテイオーちゃん!シュウガちゃん凄くカッコいい!」
香織「ハジメ君も凄かったね!ね、雫ちゃん!」
雫「本当にね。まさかあんなに強くなるなんて。シュウガさんとの訓練の成果かしら。」
そんな中ハジメの活躍を良く思わない者達もいた。檜山と光輝である。檜山は言わずもがな、光輝はこの前の決闘に敗れて以来ハジメをよく睨みつける様になっていた。なんであんな不真面目なオタクが、と言うハジメの側面一つ、それも過去のものをいつまでも愚痴愚痴と呟いており現実を受け入れてないようだ。その姿は勇者と呼ぶにはあまりにも歪み過ぎたものであった。
その後何のトラブルなく二十階層に無事到達した一行。この階層での訓練を最後に今日は終わりとなる様だ。ただしここからは数種類の魔物が混在して現れるのでより注意が必要となる。
しばらく進んだ所で小休止となった。ハジメは一息つきながら地面に座り込んだ。
ハジメ「ふぅ、疲れたぁ。」
シュウガ「お疲れ様だ、ハジメ。初の実戦にしてはよく動けていたぞ。」
ハジメ「あ、シュウガさん。ありがとうございます。でも今日は殆ど錬成で戦っていたからフィジカル面ではよく分からないですけどね。」
シュウガ「いや、それでいい。己の長所を活かして戦うのは当たり前だ。お前はそれが出来てる。確実に成長している証だ。胸を張れ。」
ハジメ「シュウガさん…………。はいっ!分かりました!」
ハジメの自信に溢れた返事にシュウガも笑顔になる。するとその時、シュウガは何やら憎悪の込められた視線を感じる。振り向くと檜山がこちらを睨んでいた。シュウガに気づかれた事に驚いて慌てて視線を逸らす檜山。この分だと昨日の忠告は効いてなさそうだと思ったシュウガであった。
休憩が終わり二十階層の探索が再開される。二十一階層への階段まで辿り着いたら今日の訓練は終了となる。帰りも地道に歩いていかなければならないが終わりが近い事に緩んだ空気になりつつあった。
そんな中先頭を行くメルドや光輝達が止まった。どうやら敵のようだ。
すると、せり出した岩の一部が変色して魔物の姿が現れた。カメレオンの様な擬態能力を持つゴリラ型の魔物、ロックマウントである。
光輝達勇者パーティーが相手をするが地形の悪さから上手く立ち回れない。
するとロックマウントは突如後ろへと下がり大きく息を吸った。
そして、
ロックマウント「グゥガァァァァァーーーー!!!」
強烈な咆哮が響き渡った。ロックマウントの固有魔法、"威圧の咆哮"である。これをくらうと一時的に体が麻痺してしまう。そして光輝達は見事にくらってしまい体が硬直する。
その隙にロックマウントは自身のすぐそばにあった岩を持ち上げ後衛の香織達に向かって投げたのだ。香織達はその岩を魔法で迎撃しようとしたのだがそこで衝撃的な光景を目にしてしまう。
実は投げられた岩は岩に擬態したロックマウントだったのだ。投げられたロックマウントは勢いよく香織達に迫る。その姿は何やら目が血走り鼻息も荒くなっていた。実に気持ち悪い。香織達も気持ち悪く思ったようで悲鳴を上げて魔法を中断してしまう。するとその時、
シュウガ「ハジメ!やれっ!」
ハジメ「錬成!」
シュウガから指示を受けたハジメが地面を錬成。すると投げられたロックマウントに向かって一本の岩の棘が突き出してきた。さっきは無数の棘であったが今回は一本の棘をピンポイントに打ち出したハジメ。その為先程より集中して錬成できたのでさっきより早く、高威力で打ち出す事に成功。結果、ロックマウントはそのまま串刺しになりしばらくの抵抗の後絶命した。
ハジメ「白崎さん!皆んな!大丈夫?!」
香織「は、ハジメ君!ありがと〜。」ナミダメ
ハジメの助けによって色んな意味で命拾いした香織達はハジメに礼を言う。するとそんな中、痺れから回復した光輝がロックマウントに対して怒り出して残りの一体にとんでもない大技をかまそうとしたのである。
光輝「万翔羽ばたき、天へと至れーー"天翔閃"!!」
シュウガ「いやふざけるなよ!」
シュウガは咄嗟に天井の崩落に備えた。
光輝の一撃はロックマウントを両断しただけに留まらず奥の壁まで破壊してようやく止まった。
部屋中の壁がパラパラと欠片を落とす。どうやら天井までは崩れない様だ。その事にふぅと息をついたシュウガはメルドと目を合わせる。メルドはシュウガの意図を察して頷く。そしてこちらに向かって実にムカつく笑顔を見せながら戻って来る光輝にシュウガはメルドとのダブル拳骨をくらわせた。
光輝「へぶぅっ?!」
シュウガ「テメェここが何処だか分かってないだろ。ここは地下だぞ。なのにあんな大技使ったら下手すりゃ全員生き埋めだ。お前のせいで皆んなが死ぬところだったんだぞ。馬鹿な真似するな。」
メルド「シュウガの言う通りだ。もう少し使う技を考えて戦え。気持ちは分からんでもないが、崩落でもしたらどうするんだ。」
光輝「うっ………、すみません。気をつけます。」
二人からの真っ当な説教にバツが悪そうに謝罪する光輝であった。
その時、香織が崩れた壁を見て声を上げる。
香織「あれ、何かな?キラキラしてる………。」
香織の言葉に全員が彼女の指差す方へと顔を向ける。
そこには青白く発行するかなり大きな鉱物が壁から生えていた。その美しさに香織達女子生徒や一部のウマ娘達も見惚れていた。
メルド曰くこれはグランツ鉱石と言う宝石の原石らしく珍しいとの事。求婚の際に用いられる宝石として有名なんだとか。すると、
檜山「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って動き出したのは檜山であった。グランツ鉱石を採ろうと崩れた壁を登っていく。きっと香織にいいところを見せたいのだろう。そんな檜山を慌てて追いかけるメルド。安全確認もしてないのに鉱石を採ろうとする檜山を止めようとしている。シュウガもそんな珍しい鉱石がこんな簡単に見つかるのかと思案していた。
するとフェアスコープというアイテムで確認していた騎士団員が顔を青ざめさせて叫んだ。
騎士団員「団長!トラップです!」
シュウガ・メルド「ッ?!」
しかし一足遅かった。檜山が鉱石に触れた瞬間、部屋全体に魔法陣が広がる。そして輝きが増していく。メルドが部屋からの撤退を指示したが間に合わず、全員が光に包まれた。直後、一瞬の浮遊感に包まれたかと思うとドスンという音と共に叩きつけられた。
シュウガは即座に周囲を警戒する。すると今までいた部屋とは明らかに違う景色が目に飛び込んできた。どうやら転移系の魔法陣だった様で先の部屋から違う場所に飛ばされたようだ。
シュウガ達は巨大な石造りの橋の上にいた。かなり広い空間の様で天井が高い。加えて橋の下には川が流れておらず底の見えない深淵が存在していた。落ちたらまず助からない奈落が広がっていたのである。
橋の出入り口にはそれぞれ奥に続く通路と前の階層へと繋がっているであろう階段が見えた。メルドはそれを確認すると階段まで急げと指示を出す。だがトラップはこれで終わりではなかった。
橋の出入り口両方に魔法陣が現れ階段側には無数の魔物が出現。反対の通路側には一体の巨大な魔物が現れた。メルドはその巨大な魔物を見て絶望したかの様に呟いた。
メルド「まさか…………、ベヒモス…………、なのか…………。」
第7話、オルクス大迷宮前編でした。
いよいよハジメ君に運命の時が近づいて来ました。果たして彼に待ち受けるのは希望か絶望か?皆さんの目でお確かめください。
では次回もよろしくお願いします。