ゼロの絶望神   作:一般デーモンコマンド

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色が、ついた...だと?


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先攻5ターン目

 フーケは、壁に掛けられた『破壊の杖』を見て薄い笑いを浮かべた。

 

 聞いていた通り、見た目は平凡な杖そのものだった。1メイル弱の長さで、見たことのない金属で出来ていた。柄の先端に装飾があしらわれており、装飾の付近は赤く熱されたように変色していた。そのあまりにシンプルな姿は一周回ってどこか異様な雰囲気を醸し出している。

 

 その下には『破壊の杖、持ち出し不可』の文字。フーケの笑みがますます深くなった。

 

 

 

 フーケは『破壊の杖』を手に取る。金属製の杖らしいズッシリとした重さが手に伝わった。

 

 

 

 フーケは急いでゴーレムの肩に乗り、去り際に杖を振る。すると、壁に文字が刻まれた。

 

 

『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』

 

 

 

 

 

 ゴーレムを動かし、この場をさっさと離れようとしたときだった。

 

 

 

「おぉ、いい景色だ」

 

 

 

「!?」

 

 

 

 直ぐに距離を取る。声のした所には、蒼い姿の使い魔...サガが居た。

 

 

 

「さて。『土くれ』のフーケ殿、で間違いないか?」

 

 

 

 いやに丁寧な言い方で訪ねてくるサガ。しかし、フーケは黙っていた。こんなところで正体をバラすわけにはいかないのだ。

 

 

 

「ふーむ。答えないか。なら、こちらの名前がやはり正しいのか?なぁ、ミス...」

 

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

杖を取り出し、土の波をサガに向けて起こす。

 

 

 

が、ひらりとサガは飛んでそれを避けた。

 

 

 

「これが強者のメイジの魔法か。凄まじいな」

 

 

 

飄々と言うサガ。それに、つっこむものがいた。

 

 

 

「オイオイ、そんなこと言ってる場合かね、相棒」

 

 

 

 デルフリンガーだ。鞘から少し飛び出し、喋っている。

 

 

 

「む、それもそうか。では、デルフリンガー、久々の戦闘はいかがかな」

 

 

 

「そりゃあ...喜んでやらせてもらうぜぇ!」

 

 

 

 

 サガはデルフリンガーを抜いた。その時、サガの手に刻まれていたルーンが淡く光る。

 

 

 

「いくぞっ!」

 

 

 

 自身の後ろにブラッディ・タイフーンを唱え加速し、デルフリンガーをフーケに向けて突進する。

 

 

 

「チッ...」

 

 

 

 土の壁を何枚も作りデルフリンガーの刃を防ぐが、そのあまりにも激しい剣撃にだんだん押され始めた。

 

 

 

 

 このままでは不味い。フーケは考える。どうすればこの状況を乗り切れるかを。

 

 

 

「トドメだ。いけ、超神星DOOMドラゲリオン!」

 

 

 

 サガの持つ杖から闇が溢れ出す。今だ、とフーケは薄ら笑いを浮かべ、ルーンと共に杖を振った。

 

 

 

 ゴーレムが、崩壊する。思わずドラゲリオンの召喚をやめたサガは、重力に流されるまま落下し、頭から土の山に埋まった。

 

 

 

 ゴーレムは、文字通りただの土くれとなって完全に沈黙した。そして、フーケの姿はそこにはもう無かった。

 

 

          ◇

 

 

 

「...やりよるのぉ」

 

 

 

 オスマン氏は、宝物庫の壁に書かれたフーケの犯行声明を見て、感心したように呟いた。

 

 

 

『破壊の杖、確かに領収いたしました』

 

 

 

 学園中の教師が集まり、宝物庫の壁にあいた大きな穴を見て愕然としている。

 

 教師たちは、次々に好き勝手なことを言い始めた。

 

 

 

「土くれのフーケ!貴族たちの財宝を荒らしまくってるという盗賊か!魔法学院にまで手を出しおって!ずいぶんとナメられたもんじゃないか!」

 

 

「衛兵はいったい何をしていたんだね?」

 

 

「衛兵などあてにならん!所詮は平民ではないか!それより当直の貴族は誰だったんだ!」

 

 

 

 それを聞いたミセス・シュヴルースは震え上がった。まさか魔法学院を襲う盗賊がいるなどとは思わず、当直をサボって自室で寝ていたのだ。

 

 それを指摘されたシュヴルースは、目に大粒の涙を浮かべてうろたえた。

 

 

 

「も、申し訳...」

 

 

「泣いてもお宝は戻ってこないのですぞ!それともあなた、『破壊の杖』の弁償をできるのですかな!」

 

 

「わたくし、家を建てたばかりで...ローンがまだ...」

 

 

 

 そのまま、とうとうミセス・シュヴルースはよよよと床に伏した。

 

 

そんな様子を、オスマン氏がなだめる。

 

 

 

「これこれ、女性を苛めるものではない」

 

 

「しかしですな、オールド・オスマン!ミセス・シュヴルースは当直なのに、ぐうぐう自室で寝ていたのですぞ!」

 

 

 

 オスマン氏はつまらなそうに髭を撫で、一喝した。

 

 

 

「今は責任を追求している場合かね」

 

 

「しかし...」

 

 

「そうはいうがね。さて、この中でまともに当直をしたことがある教師は何人おるかな?」

 

 

 

 オスマン氏が辺りを見渡す。教師たちはお互い顔を見合わせ、恥ずかしそうに顔を伏せた。まともに当直をしたことがあるものなど、1人もいなかったのだ。

 

 

 

「さて、これが現実じゃ。責任があるとすれば、我々全員じゃ。この中の誰もが、もちろん私も含めてじゃが、まさかこの魔法学院が賊に襲われるなどと夢にも思っていなかった。しかし、それは間違いじゃった。このとおり、敵は大胆にも忍び込み『破壊の杖』を奪っていきおった。

つまり、我々は油断していたのじゃ。責任があるとすれば、我々全員にあるといわねばなるまい」

 

 

 

 ミセス・シュヴルースは感激してオスマン氏に抱きついた。

 

 

 

「おぉ、オールド・オスマン!あなたの慈悲のお心に感謝いたします!」

 

 

 

 オスマン氏はそんなシュヴルースの尻を撫でた。

 

 

 

「ええのじゃ。ええのじゃ、ミセス...」

 

「わたくしのお尻でよかったら!そりゃもう! いくらでも!はい!」

 

 

 

 オスマン氏はこほんと咳をした。場を和ませるために尻を撫でたが、みんな一様に真剣な眼差しでオスマン氏の言葉を待っていたためだ。

 

 

 

「で、現場の犯行を見ていたのは誰だね?」

 

 

 

改めて、オスマン氏が尋ねた。

 

 

 

「この3人です」

 

 

 

 コルベールが進み出て、自分の後ろに控えていた3人を指した。ルイズ、キュルケ、タバサの3人。使い魔であるサガは数に入っていないようだ。

 

 

 

 一方、サガは考えごとをしていた。目の前のオスマン氏を見て、何処かでこの爺の人間を見たことあるなと。結局思い出せず、直ぐに思考の外へと消えていったが。

 

 

 

「ふむ...君たちか」

 

 

 

 オスマン氏は、じっとサガを見つめた。サガもそれに気がつく。少しの間目が合う。が、オスマン氏は先に目をそらし、詳しい説明を求めた。

 

 

ルイズが進み出て、見たままを述べた。

 

 

 

「あの、大きなゴーレムが現れて、ここの壁を破壊したんです。肩に乗っていた黒いメイジがこの宝物庫から何かを、その、『破壊の杖』だと思いますけど、盗み出したあと、またゴーレムの肩に乗りました」

 

 

 

 そこまで話して、ルイズはサガの方を見た。

ルイズはここを話していいか迷ったが、サガも特に反応しないため、重く口を開いた。

 

 

 

「その...私の使い魔がゴーレムの上に飛び乗って、黒いメイジを追いました。ゴーレムは城壁を越えて歩き出して、こいつがあと少しまで追い詰めたみたいなんですが、ギリギリのところでゴーレムが崩れて土になっちゃいました」

 

 

 

 

「ほう、使い魔がメイジを追い詰めた...と」

 

 

 

 ルイズの説明に、教師たちがざわめく。彼らからすればサガはただの使い魔。それがメイジであるフーケを追い詰めたなどと、にわかには信じがたかった。

 

 

 

「それで後には、土しかありませんでした。肩に乗っていた黒いローブを着たメイジは、影も形もなくなってました」

 

 

「ふむ」

 

 

 

 オスマン氏だけがさして驚いた様子もなくひげを撫でた。

 

 

 

「後を追おうにも、手がかりナシというわけじゃの」

 

 

 

 それからオスマン氏は、気づいたようにコルベールに尋ねた。

 

 

 

「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」

 

 

「それがその、今朝から姿が見えませんで」

 

 

「この非常時に、どこに行ったのじゃ」

 

 

「それは、私には...」

 

 

 

 そんな風に話していると、見計らったようにミス・ロングビルが現れる。

 

 

 

「ミス・ロングビル!どこに行っていたんですか!大変ですぞ!事件ですぞ!」

 

 

 

 興奮した様子でコルベールがまくし立てる。しかし、ミス・ロングビルは落ち着き払った様子で、オスマン氏に告げた。

 

 

 

「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」

 

 

「調査?」

 

 

「そうですわ。朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこのとおり。すぐに壁のフーケのサインを見つけたので、これが国中の貴族を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」

 

 

「仕事が早いの、ミス・ロングビル」

 

 

 

 それを聞いたコルベールがあわてた様子で促した。

 

 

 

「で、結果は?」

 

 

「はい。フーケの居場所がわかりました」

 

 

「な、なんですと!」

 

 

 

 コルベールが、素っ頓狂な声を上げる。それを後目に、オスマン氏が冷静に尋ねた。

 

 

 

「誰に聞いたんじゃね? ミス・ロングビル」

 

 

「はい。近所の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」

 

 

 

ルイズが叫ぶ。

 

 

 

「黒ずくめのローブ? それはフーケです、間違いありません!」

 

 

 

 

 それを聞いたサガは、一瞬口を開きかけたがやめた。まだ、言うときではないと思った。

 

 

 

 

「ミス・ロングビル、そこは近いのかね」

 

 

「はい。徒歩で半日、馬で4時間といったところでしょうか」

 

 

 

「すぐに王室に報告しましょう!王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

 

 

 

 コルベールが叫んだ。が、オスマン氏は首を横に振ると、年寄りとは思えない迫力で怒鳴った。

 

 

 

「ばかもの!王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ!その上...身にかかる火の粉を己で払えぬようで、何が貴族じゃ!魔法学院の宝が盗まれた、これは魔法学院の問題じゃ!当然我らで解決する!」

 

 

 

オスマン氏は咳払いをすると、有志を募った。

 

 

 

「では、捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ」

 

 

 

 誰も杖を掲げようとはしない。困ったように、顔を見合わせるだけだ。

 

 

 

 その時だった。俯いていたルイズがすっと、杖を顔の前に掲げた。

 

 

 

「ミス・ヴァリエール!」

 

 

 

ミセス・シュヴルースが、驚いた声をあげた。

 

 

 

「何をしているのです! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて...」

 

 

 

「誰も掲げないじゃないですか」

 

 

 

 

 ルイズがきっと唇を強く結んで言い放つので、シュヴルースも言い返せない。

 

 

 

 

 ルイズがそのように杖を掲げているのを見て、しぶしぶキュルケも杖を掲げた。

 

 

 

「ツェルプストー!君は生徒じゃないか!」

 

 

 

「ヴァリエールには負けられませんので」

 

 

 

 キュルケが杖を掲げるのを見て、タバサも掲げた。

 

 

 

「タバサ、あんたはいいのよ。関係ないんだから」

 

 

 

「心配」

 

 

 

 キュルケは感動した面持ちでタバサを見つめた。ルイズも唇を噛み締めて、お礼を言った。

 

 

 

「ありがとう、タバサ」

 

 

 

 そんな3人の様子を見て、オスマン氏は笑った。

 

 

 

「そうか、では、頼むとしようか」

 

 

「オールド・オスマン! わたしは反対です! 生徒たちをそんな危険にさらすわけには!」

 

 

「では、君が行くかね? ミセス・シュヴルース」

 

 

「い、いえ...わたしは体調が優れませんので...」

 

 

「彼女たちは、敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」

 

 

 

 返事もせずにぼけっと突っ立っているタバサを、教師たちは驚いて見つめた。

 

 

 

「本当なの? タバサ」

 

 

 

 それに、キュルケでさえ驚いた。王室から与えられる爵位としては最下級の『シュヴァリエ』の称号ではあるが、タバサの年齢で与えられることは驚くべきことだったのだ。金で買うことはできない、純粋に業績に対して与えられる、実力の爵位だ。

 

 

 

「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」

 

 

キュルケは得意げに、髪をかきあげた。

 

 

 

 それから、ルイズが自分の番だとばかりに可愛らしく胸を張った。オスマン氏は困って咳払いをすると、少し目をそらした。

 

 

 

「その...ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いているが?しかもその使い魔は!」

 

 

 

サガを向いて、オスマン氏は言った。

 

 

 

「平民ながらあのグラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという噂だが」

 

 

 

「そうだな、勝ったぞ。私は強いからな」

 

 

 

「ほっほっほ!言うではないか!」

 

 

 

 この場で、もはやオスマン氏に反論するものなど誰もいなかった。オスマン氏は威厳のある声で言った。

 

 

 

「この3人に勝てるという者がいるなら、前に一歩出たまえ」

 

 

 

 誰も前に出ない。これほどの太鼓判を押された面々を蹴落としてなおフーケを捕まえに行こうとするものなどいるはずもない。

 

 

 オスマン氏もそれをわかって、誰もいないとわかっていてこの質問をしたのだ。

 

 

 

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

 

 

 

 ルイズとタバサとキュルケは、真顔になって直立すると、「杖にかけて!」と同時に唱和した。それからスカートの裾をつまみ、礼をする。オスマン氏は、彼女らをしっかりと見つめ、微笑んだ。

 

 

 

「では、馬車を用意しよう。それで向かうのじゃ。魔法は目的地につくまで温存したまえ。ミス・ロングビル、彼女達を手伝ってやってくれ」

 

 

 

 ミス・ロングビルは頭を下げた。

 

 

 

「もとよりそのつもりですわ」

 

 

 

 

 話は決まった。ルイズはサガの方を向いて言った。

 

 

「よし。サガ、行くわよ!」

 

 

ルイズがサガに意気込んで言う。そして、サガは答えた。

 

 

「む?私も行くのか」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

 

なんともいえない空気が、場を包むのだった。

 

 

 

 




今回はあんまりデュエマネタ仕込めなかったな...

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