ゼロの絶望神   作:一般デーモンコマンド

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ちょっとギャグ気味です。


先攻7ターン目

 

 朝食を終えたルイズ達が教室で待っていると、扉がガラッと開き、漆黒のマントのメイジが入ってきた。生徒たち全員が一斉に席に着く。

 

 

 ギトーというこのメイジは長い黒髪に漆黒のマントを纏った姿で、まだ若いのに不気味さと冷たい雰囲気があり、生徒たちからは不人気だった。

 

 

(闇文明使いっぽいやつだな。多分序盤のデュエルで負けるタイプだ)

 

 

サガは誰目線か分からない事を考えていた。

 

 

 

「では授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」

 

 

 

 教室中が、しんと静まり返る。満足気に、ギトーは言葉を続けた。

 

 

 

「最強の系統は知っているかね?...ミス・ツェルプストー」

 

 

「...『虚無』じゃないんですか?」

 

 

「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いてるんだ」

 

 

「...火に決まってますわ。ミスタ・ギトー」

 

 

 

 いちいち癪に触る言い方にカチンときつつ、キュルケが言い放つ。

 

 

 

「ほほう。どうしてそう思うね?」

 

 

「全てを燃やし尽くせるのは、炎と情熱。そうじゃございませんこと?」

 

 

「残念ながらそうではない」

 

 

 

ギトーは腰に差した長柄の杖を引き抜くと、キュルケに言う。

 

 

 

「試しに、この私に君の得意な火の魔法をぶつけてきたまえ」

 

 

 

 キュルケはギョッとした表情を浮かべた。この教師はいきなり何を言い出すのか。

 

 

 

「どうしたね?君は確か、火系統が得意ではなかったかな?」

 

 

 

 その口調は、明らかにキュルケを挑発していた。キュルケが目を細める。

 

 

 

「火傷じゃすみませんわよ?」

 

 

「構わん。本気で来たまえ。その有名なツェルプストー家の赤毛が飾りではないのならね」

 

 

 

 サガは、二人の間で雷が落ちたような気がした。

 

 

 

 

 キュルケは胸の谷間から杖を引き抜き振るう。目の前に差し出した右手の上に小さな炎の玉が現れ、キュルケがさらに呪文を詠唱し続けるにつれて膨れ上がる。直径一メイルほどの大きさになった火球を見て、生徒達が慌てて机の下に隠れた。一部の生徒は先に隠れたサガのせいで入れなかったりしたが。

 

 キュルケは手首を回転させ、右手を胸元に引きつけて、火球をギトーめがけ押し出した。

 

 飛んでくる炎の玉を避ける仕草すら見せずに、ギトーは長柄の杖を剣を振るうようにして薙ぎ払う。

 

 烈風が火球を掻き消し、そのまま向こうにいたキュルケを吹き飛ばした。

 

 

 

 そして、たまたま生徒達によって机から追い出されたサガにキュルケは受け止められた。...というより、クッションになった。サガの身体が固いせいで、あまり意味はなかったが。

 

 

 

「ありがとうね、使い魔さん。背中痛いけど」

 

 

 

「...すまない」

 

 

 

そんなやり取りを後目に、ギトーは続けた。

 

 

 

「いいか、諸君。風が最強たる所以を教えよう。簡単だ。風は全てを薙ぎ払う。火も、水も、土も、風の前では立つ事すらできない。残念ながら試した事は無いが、虚無さえ吹き飛ばすだろう。それが風だ」

 

 

 

「目に見えぬ風は見えずとも諸君らを護る盾となり、必要とあらば敵を吹き飛ばす矛となるだろう。そしてもう一つ、風が最強たる所以は」

 

 

 

ギトーは杖を立て、低く、呪文を詠唱する。

 

 

 

「ユビキタス・デル・ウィンデ...」

 

 

 

 しかしその時、教室の扉がガラッと開き、いやに緊張した顔のミスタ・コルベールが現れた。

 

 見ると、かなり珍妙な姿をしていた。頭にやたらと馬鹿でかいロールした金髪のかつらをのっけ、ローブの胸にはレースの飾りやら刺繍をつけている。

 

 

「ルイズ、コルベールはあんなに髪があったか?」

 

 

 

「ぶふっ...ちょ、急に止めなさいよサガ...」

 

 

 あまりにも奇妙なその姿に、ギトーが眉をひそめる。

 

 

「...ミスタ?」

 

 

「あややや、ミスタ・ギトー!失礼しますぞ!」

 

 

「授業中ですが」

 

 

 

 ギトーが言う。コルベールは咳払いをひとつした。

 

 

 

「おっほん。今日の授業は全て中止であります」

 

 

 

 コルベールは重々しい調子で告げる。教室から歓声が上がったが、それを抑えるように両手を振りながら、コルベールが言葉を続けた。

 

 

 

「えー、皆さんにお知らせですぞ」

 

 

 

 もったいぶった調子で、コルベールは仰け反った。その拍子に頭に乗せたカツラが、床に滑り落ちた。ギトーのおかげで重苦しかった教室の雰囲気が一気にほぐれ、教室中が笑いに包まれる。

 

 一番前に座ったタバサが、コルベールのつるつるの禿げ頭を指差して、ぽつんと呟いた。

 

 

 

「滑りやすい」

 

 

それにサガも小声で続いた。

 

 

「成る程、ミスタ・SBATER(スベーター)という訳か」

 

 

 教室が爆笑に包まれた。キュルケがひーひーと笑いながらタバサの肩をぽんぽんと叩く。

 

 

 

「あなた、たまに口を開くと、言うわね!」

 

 

 サガの言葉が聞こえていたルイズはサガの後ろで笑いを噛み殺していた。

 

 

 

 そんな中で、コルベールは顔を真っ赤にさせると、大声で怒鳴った。

 

 

 

「黙りなさい!ええい!黙りなさい小童共が! 大口を開けて下品に笑うとはまったく貴族にあるまじき行い!貴族はおかしいときは下を向いてこっそり笑うものですぞ!これでは王宮に教育の成果が疑われる!」

 

 

 

 コルベールのあまりの剣幕に、とりあえず教室中がおとなしくなる。

 

 

 

「...とにかく!皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、良き日であります。始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります。恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされます」

 

 

 

その言葉に、教室中がざわめいた。

 

 

 

「したがって、粗相があってはいけません。急な事ですが、今から全力を挙げて歓迎式典の準備を行います。そのために本日の授業は中止。生徒諸君は正装し、門に整列すること」

 

 

 

 生徒達は緊張した面持ちになると一斉に頷いた。コルベールはうんうんと重々しげに頷くと、目を見張って怒鳴った。

 

 

 

「諸君が立派な貴族に成長した事を、姫殿下にお見せする絶好の機会ですぞ!御覚えがよろしくなるように、しっかりと杖を磨いておきなさい!よろしいですかな!」

 

 

 

そうして、コルベールは教室から出ていった。

 

 

 生徒達がざわざわと話し合っている中、コルベールがカツラを忘れていったなぁとサガは一人思っていた。

 

 

 

 

              ◇

 

 

 

正門前。サガ達は、王女が来るのを待っていた。

 

 

 

「あっははは!似合ってる、似合ってるわよサガ!」

 

 

 

「ふふふっ、確かに!青に金が映えてるわ!」

 

 

 

「ゴージャス...フフっ」

 

 

 

「そうだろうそうだろう。これで私も最先端の流行を先取りだ」

 

 

 

 コルベールが落としていった金のカツラ。ひっそりと回収したサガは自らの頭に乗せ、様々なキメポーズをしていた。

 

 

 

 と、そうやって王女が来るまで暇をつぶしていると...

 

 

 

 魔法学院の正門をくぐって王女の一行が現れた。ルイズは、失礼にならないようにとサガのカツラをむしり取ってどこかに投げ捨てると、他の生徒達と同時に杖を掲げた。サガは泣いた。

 

 

 

 正門をくぐった先、本塔の玄関。学園長オスマン氏が、王女の一行を迎える。

 

 

 

 馬車が止まると、召使い達が駆け寄り、馬車の扉まで絨毯を敷き詰めた。呼び出しの衛士が、緊張した声で王女の登場を告げる。

 

 

 

「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーりーーッ!」

 

 

 

 がちゃりと扉が開いて現れたのは枢機卿のマザリーニだった。

 

 

 

 生徒達は一斉にずっこけた。マザリーニは意に介した風もなく馬車の横に立つと、続いて降りてくる王女の手を取った。生徒の間から歓声が上がる。

 

 

 王女はにっこりと薔薇のような微笑を浮かべると、優雅に手を振った。

 

 

 

「あれがトリステインの王女?ふん、あたしの方が美人じゃない」

 

 

 

キュルケがつまらなさそうな口調で言った。

 

 

 

「ねえ、使い魔さんはどっちが綺麗だと思う?」

 

 

 

「カツラをつけた私」

 

 

 

「そもそも話にすらならなかったわ」

 

 

 

 サガはいつの間にか拾ったカツラをつけながらふと横にいるルイズの方を見た。

 

 

 

 真面目な顔をして王女を見つめていたが、その横顔が突然はっとした顔になった。そして顔を赤らめる。サガは、その変化が気になってルイズの視線の先を確かめた。

 

 

 

 彼女の視線の先には、見事な羽帽子を被った凛々しい貴族の姿があった。鷲の頭と獅子の体を持った獣にまたがっている。

キマイラか。

 

 ルイズはぼんやりとその貴族を見つめている。様子から察するにただ男前だから見とれているというわけではなさそうだ、何か縁のある人間なのだろう。

 

 

 

「知り合いか?」

 

 

「へっ!?...まぁ、そんなところよ、うん」

 

 

 

 ルイズの言葉にそうか。と答えながらサガはカツラの毛を弄るのだった。 

 

 

 

 




金髪ロールのサガ概念。

こいつカツラの話ばっかしてんな...
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