「...はっ。なにか変な夢を見た気がするが」
次の日の朝。いつもより早く目覚めたサガは、ぼーっとする頭をふって、軽く伸びをすると、まだ寝ているギーシュを起こさないように部屋の外へと出ようとした。
「なんだ、随分と早い目覚めじゃねえか、相棒」
その時、壁にたてかけられたデルフリンガーが話しかけてくる。サガはデルフリンガーを手に取ると、背負って言った。
「あぁ、何故か目が覚めてな。せっかくだ、一緒に散歩にでも行くか」
「そりゃあいいや。朝の澄んだ空気を思う存分に味あわせてもらうぜ」
サガとデルフリンガーは宿の外へと出る。少し肌寒かったため、サガの身体はブルリと震えた。
ふらふらと、行き先も決めず。一言も話さずただひたすらに進んだ。山の間からさしこむ
日の光、野鳥の鳴き声、風の音。それを一通り堪能した。
「...」
ふと後ろを向くと、そこには人影が1つあった。影の形を見て察したサガは、その人物の名前を呼んだ。
「...ワルド殿。そこで何を?」
「おや、気づかれてしまったか。いや、君が朝早くから何処かに歩いていくものだから気になってしまってね」
そう言うワルドの顔は笑っていたが、目が笑っていなかった。まるでサガの隙を狙っているようだった。
「...ただの散歩です。もう宿に帰るところですよ」
「...そうか、後ろからつけるようなまねをして悪かったね。じゃ、また宿で」
そう言ってワルドはスタスタとサガとは逆方向へと歩いていく。
「...ふぅ」
「いやぁな雰囲気のやつだったな。相棒のことを何処か値踏みするように見てたぜ、奴さん」
「...これは、デルフリンガーだけに話すが...」
サガが神妙な顔で言う。デルフリンガーは無言で聞いた。
「ワルドから...私と同じ気配を感じた」
「!?そいつは...奴さん、相棒と同じクリーチャー、ってことか?」
そう言うデルフリンガーに、サガは首を振る。そして続けた。
「いや...正確にはそれを使っていたクリーチャーの気配だ。恐らくだが...やつは超獣世界の道具か何かを持っている」
「相棒の世界の道具か...そりゃあ厄介だな。だが、奴さんはこちらの仲間だろ?話しゃあ教えてくれたかも...」
「それはないだろうな。...やつはなにかを企んでいる」
「なにかを?」
「あぁ。確証はないが...私のゴッドとしての
カンがそう感じているのだ...」
サガはワルドの歩いていった方を向いて言う。
デルフリンガーは神妙な声で答えた。
「成る程な...取り敢えず、アイツは警戒していたほうがいいってこったな。了解、おれも普通の剣のフリしてアイツのことを良く見とくぜ」
「ありがとう、デルフリンガー。では、宿に戻ろうか。朝ご飯が待っているぞ!」
そう言って、サガは宿の方向へと身体を向け、戻るのだった。
◇
時間は経ち、その日の夜。サガは二階でジッと月を見ていた。2つある月のうち、赤い月の後ろに青い月が隠れ、1つだけに見える月がギラギラと輝いている。
普段なら幻想的で美しいと思えるのだろう。だが、今日は不思議とそうは思えなかった。
青魔導具や我我我に先攻をとられた時のような緊張感が、サガを襲っていた。
下からはわいわいと、ギーシュやルイズの声が聞こえてくる。その時だった。
「お久しぶり...」
「っ!!」
月の光が遮られる。それと同時に現れたのは...巨大なゴーレムと、肩に乗ったフーケだった。
「ロングビル...いや、フーケ。何故貴様がここに居る」
サガの言葉にフーケはニヤニヤと笑って答える。
「親切な人がいてね、私みたいな美人はもっと世の中の役に立たなきゃいけないと言って出してくれたのよ」
そう言うフーケの隣には、黒マントを着た男が立っていた。白い仮面で顔は確認できなかった。
「くだらんな。むしろ迷惑をかけるの間違いだろう...もう一度捕まえてくれる」
「はっ...やってみなさいよ!」
ゴーレムの腕がサガに迫る。それを横に避けたサガはデルフリンガーを右手に、杖を左手で持ち、自身の周りに五枚の薄水色の板...シールドを展開した。
「私のターン、『ブラッディ・タイフーン』をチャージし、ターンエンド」
杖にエネルギーが貯まる。そんなサガの様子を見て、フーケは笑う。
「悪いけど、あんたの思惑通りにはさせないよ」
ゴーレムは何度も腕をサガに振り下ろす。それをサガは軽快な動きで避けていた。
「『蒼神龍ヴェール・バビロニア』をチャージ!2マナ!『エマージェンシー・タイフーン』!」
杖にマナをためながら、サガは隙を見つけては呪文を打ち、さらにデルフリンガーでゴーレムに剣を打ちつけていく。そして...
「行くぞ、ループ開始だ!『絶望神サガ』を3マナで召喚!能力で墓地から『絶望神サガ』を出す!」
サガはデルフリンガーを空中に投げ、杖を掲げた。すると、隣にもう一体サガが現れる。
最初のサガが崩壊していく。もう一体のサガも同じようにサガを出し、崩壊していく。
何度も何度も何度も。
サガのループ、サガループが始まった。
が、しかし。フーケはそれをみてもなお、不敵に笑っていた。そして、隣の仮面の男に言った。
「ねぇ、そろそろアレ、使えば?」
「...」
男は黙って頷くと、一枚の札のようなものをループしているサガに投げつけた。札はサガの杖にぴったりと貼り付き...
「がっ!?こ、これは...墓地がリセットされた...!?」
サガループが中断される。フーケは笑って言った。
「どう?効くでしょ?死者を清める御札らしいんだけど...あんたの言う通りだったね。まさかこんなにバッチリ効くとはね!」
サガは知っていた。この札、いや棘の正体を。ここに来るまでに何回も食らった、これこそ...!
「『お清めシャラップ』...!何故貴様らがこれを...」
「この人がねぇ、こういう道具を色々持っているのよ。昔話で出てきた骨董品をね」
「なん、だとぉ...」
その時である。ルイズとワルドの声が聞こえてきた。
サガが下を見ると、ワルドがルイズと共にグリフォンに乗って裏口から港へと向かっているのが見えた。
「おっと、行かせないよ」
サガはその方向へと走り出したが、ゴーレムの腕に阻まれる。
「悪いけど、あんたとあの小娘を引き離すのが今の私の目的なのよ。だから、ここで大人しくするのが吉、というやつだよ」
「...ふん、墓地がリセットされたからなんだ。マナはある、もう一回ループすれば...!」
サガが呪文を唱え始める。それに対し、男はフーケに何かを渡すと、そのままルイズの方へと向かっていった。
「じゃあ、あんたのループとやら、止めてあげようじゃないか。...これを、私のゴーレムに組み込めば!」
ゴーレムに何かをいれるフーケ。すると、ゴーレムの形が変化していく。長い腕をそのままに、身体はスマートに変化していった。
そして、サガがよく知る姿に変化した。
「そ、れは...」
「なんだったかね、確か、とこしえだとかなんとかいうゴーレムらしいよ、こいつは」
とこしえ。それはサガが聞けば一発でわかった。
「『
(不味いな...今はメタを焼くクリーチャーが居ない。一度デュエルを始めたらデッキの中身は変えられない。この状況は...詰み、だな)
サガは考えて考える。だが、とこしえとなったゴーレムの止まらない攻撃に、段々と疲弊していく。クリーチャーを召喚しようにも、マナを貯める暇がない。サガの動きが鈍る。その時、とこしえゴーレムの拳がサガに直撃した。
サガが土煙の中に消える。勝利を確信したフーケは、高らかに笑うのだった...
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