時間は戻り、サガの居ない一階。そこは、戦場と化していた。
ギーシュ、キュルケ、ワルド、タバサが魔法で応戦しているが、いくら魔法があるとはいえ多勢に無勢、苦戦している。
キュルケたちはテーブルの脚を折って倒し、盾にして傭兵たちと応戦していた。傭兵たちはメイジとの戦いに慣れているようで、キュルケたちの魔法の射程外から矢を射かけていた。
地の利は向こうにあるようだ。魔法を唱えようと立ち上がれば、矢が雨のように飛んでくる。
「不味いな。このままだと...」
ギーシュの言葉にワルドも頷く。
「どうするの?このままだと魔法を使う精神力が切れたところで、一斉に突撃してくるわ。サガもいないし...」
ルイズが不安そうに言う。ギーシュは震えながらも毅然と言った。
「その時は、僕のゴーレムでふせいでやる」
バラの造花を握りしめて言う。それにキュルケはため息をついた。
「ギーシュ、あんたのワルキューレじゃあ、一個小隊くらいが関の山よ。相手は手練れの傭兵たちよ?」
「やってみなくちゃわからないだろう...!」
「言っとくけど、あたしは戦のことならあなたよりちょっと専門家なの」
「ぼくはグラモン元帥の息子だぞ、卑しい傭兵ごときに遅れをとるわけがない。...やってやるさ」
そんなギーシュにキュルケは呆れた顔をした。
そしてギーシュは立ち上がろうとするが、ワルドがそれを制すると、全員の顔をぐるりと見渡しながら言った。
「いいか諸君。このような任務は、半数が目的地に到達すれば成功とされている」
それを聞いたタバサが広げていた本を閉じ、ワルドを見た。自分、キュルケ、ギーシュと杖で指し、囮。と呟く。
そして、ワルドとルイズを指して桟橋へ。と呟いた。
「時間は?」
「今すぐ」
ワルドはタバサに確認を取り、すぐに動き出した。
「行くぞ!」
「え?でも、そんな!」
ルイズが信じられないという声をあげる。
「今からここで彼女たちが敵をひきつけてくれる。派手に暴れて目立ってもらうんだ。その間に僕らは裏口から桟橋へと向かう、それだけだ」
「でも、みんなを置いていくなんて!それに、サガが居ないわ!」
「この状況だ、彼を待つ時間はない。行こう、ルイズ!」
ワルドに手を引かれ、ルイズは後ろを振り返りながら裏口へと走っていく。
それを見て、キュルケはしょうがなさそうに言った。
「ま、しかたないかな。あたしたちいきなり押しかけちゃったし」
「ううむ、ここで死ぬのかな。死んだら、姫殿下とモンモランシーに会えなくなってしまうな...」
「...いくよ」
タバサを先頭に、ギーシュ達は再び戦い始めるのだった。
◇
「...」
ゴーレムの攻撃を受けたサガ。幸い、最初に貼ったシールドが割れただけで、ダメージはなかった。土煙に紛れ、近くに出来たガレキの後ろに身を隠す。
(シールドチェック...ないか。...後4枚か...とこしえに変化してくれたのが幸いだったな)
サガは考える。ルイズ達を追いかけるべきか、それともフーケをここで倒すべきか。
(...どっちにしろDOOM型ではもう無理か。どうするか...)
その時、近くでサガを呼ぶ声が聞こえてきた。
「相棒、ここだ。ここ」
小声でサガも答える。
「デルフリンガー?何故そんなところに...」
「相棒がぶん投げてそのまま落ちたんだよ。
あー、痛かった。刃こぼれしたかも」
「すまない...」
「別にいいよ。今は、この状況をどうするかだ」
「そうだが...どうするべきか...」
デルフリンガーは悩むサガに提案した。
「おれに手がある。それにゃあ、相棒が必要だ。やってくれるか?」
「...分かった」
サガはガレキから飛び出し、デルフリンガーを手に取ると、フーケにその剣先を向けた。
「あら...まだ生きてたんだねぇ。...しつこいやつは嫌いだよ」
それにサガは苦笑して言った。
「...今回は私の負けだ。投了だよ。...だから今回は逃げさせてもらう」
「はぁ?一体何を言って...」
フーケが困惑する中、デルフリンガーは叫んだ。
「相棒!今貯めたマナを全部おれに流し込めぇ!」
「承知!」
デルフリンガーに青と黒のエネルギーが纏わりついていく。そのエネルギーは刃に収束していき...
(あれはヤバい!当たったら確実にやられる!)
「ぶちかませ、相棒!」
サガがデルフリンガーを振り下ろす。エネルギーは鋭い刃となり、ゴーレムの身体を真っ二つに切り裂いた。
「うわぁぁぁぁっ!?」
フーケは切り裂かれ、土くれとなったゴーレムの中へと落ちていく。その隙に、サガは桟橋へと向かうのだった。
◇
「ルイズー!」
「サガ!?あんたどこに行ってたのよ!?」
後ろからすごい勢いで走ってくるサガに、ルイズは困惑しつつも、無事だったことに安堵した。
そんなルイズを他所に、ワルドは驚いた顔でサガを見た。
「使い魔くん...」
「ワルド殿。不味いぞ、敵にはフーケもいた」
「フーケ?土くれのことか。君たちが捕まえたはずじゃあ...」
「逃がしたやつが居る。恐らく今のこの状況の主犯だ」
サガの言葉に苦い顔をするワルド。その顔をサガは見逃さなかった。
(やはり...この人間はあっち側か!)
サガは1つ推理をしていた。今回の襲撃、誰かが裏切っていないと起こるはずがない。
そもそもだ。わざわざルイズの部屋まできてこの依頼をするほど警戒しているアンリエッタが、ルイズの婚約者だとはいえワルドにこのことを言うだろうか?
これはアンリエッタがルイズと昔話をしていた時にぼそっと言っていたことである。
『ここには枢機卿も、母上も、あの友達面をしてよってくる欲の皮の突っ張った獣のような宮廷魔術師たちもいない』
ルイズは聞き取っていなかったが...サガは聞いていた。そう言うまでに、アンリエッタはルイズ以外を信じていなかったのだ。
そして、決定的な証拠をサガは確認していた。
それを、ワルドに言おうとした時...
「サガ、危ない!」
「!」
サガが避ける。攻撃してきたのは、フーケと共にいた男だった。
「くっ...あれが使い魔くんの言う主犯か」
ワルドがルイズを守るように前に出て言う。
男は、それに一瞥すると、サガだけを狙って攻撃を始めた。
「ぐっ...」
サガは困惑した。
(...違った?別の人間?まさか、そんな筈は...)
サガは男に押されている。その時、ワルドが叫んだ。
「使い魔くん!その男は任せた!ルイズは私に任せてくれ!」
「!?お、おいっ!」
「ワ、ワルド!?」
サガがワルドの方に行こうとするが、男にその道を阻まれる。そうしている内に、ワルドは困惑しているルイズと共に、船へと乗り込んだ。
そして、サガがデルフリンガーで男を倒したその時...
ゴォォォォォォォォ!
アルビオンへと行くための船が、出港してしまうのだった。
次回、10ターン目。