織斑 一真の苦悩   作:nasigorenn

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今回は再びあのキャラが………


第10話 織斑 一真への客人 その1

 この学校に入って早約一ヶ月が経った。

今ではすっかりと馴染み、日常で苦労することは無くなっていった。

まぁ、強いて悩みがあるとするのなら真田先生が度々父さんに死合を頼みに来たり、模擬戦で滅多打ちにされたり。

そこは此方の鍛錬になっているので有り難いから良いのだが。

ただその際に灯姉さんのことを話に出すのは止めて貰いたい。

俺はただの幼馴染みの弟分に過ぎないというのに……。

それに灯姉さんも度々俺に構ってくるのもどうかと思う。

いや、小さいころから世話になっているので何を今更と言ったところなのだが。

俺だってこんな歳になっても昔と変わらずに接してくれる灯姉さんには感謝している。しかし、灯姉さんは凄い美人なのだから、男共が黙っていないはずである。恋人の一人もいたっておかしくない。

なのに未だに浮いた話の一つも出てこないのだから、弟分としては少し心配だ。正直、こうは言いたくないが俺に構ってる場合じゃないんじゃないだろうか?

そうは思っていても言うことは出来ず、俺は度々灯姉さんに抱きしめられたり頭を撫でられたりしてしまい、結果周りの男子達から凄い殺気だった目で睨まれてばかりだ。

こんな事ばかりしているから恋人が出来ないんじゃないだろうか。それにその所為で俺は睨まれてばかりだ。武者足る者、精神も鍛えなければならないとは言え、これは結構きつい。

コレも一種の悩みだ。御蔭で毎日嫉妬と憎しみの籠もった視線を浴びている。

また、何故か信吾が灯姉さんと仲が悪いのも悩みと言えよう。

別に表立って悪いと言う訳じゃないんだが、どうも二人で顔を合わせると妙に張り合うんだよなぁ。

たぶん灯姉さんが二年主席だからだと思う。ただ、灯姉さんもやけに相手にするので、その所為でさらに白熱してしまったりしてしまう。

この所為で灯姉さんのスキンシップは過激になってくるし、信吾は信吾で機嫌が悪くなったりするので色々と困る。その所為で一部ではホモじゃないのか何て噂まで流される始末である。

一応言っておくが、俺はホモじゃない! 自分では普通だと思う。

 と、まぁ、こんな悩みは寧ろ増えてばかりなのだが。

だが、俺はこの日になるまで気付かなかった。

まさかこれ以上に悩みが増えるなんて…………。

 

 

 

「絶影っ!!」

 

俺の呼びかけに応じて目の前の白い人型……俺の相棒たる劔冑が俺に向かって突進し、拳を振ってきた。それを受け流し、此方も迎撃に掌底を放つ。

絶影はそれを開いている左手で受け止め、そのまま組み合った状態から俺に向かって膝蹴りを放った。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

それに応じ此方も反対の膝を放って激突させる。

その場に金属に何かをぶつけたような打撃音が鳴りそのまま互いに後ろへと跳ぶ。

絶影はそのまま体勢を整えると、首元から流れるように出ているマフラーのような触手を此方に向かって飛ばしてきた。

その鋭い一撃はそのまま受ければ此方の骨肉を断つだろう。

 

「ふんっ!!」

 

俺はそれを紙一重で避けると、その触手を掴みそのまま背負い投げの要領で自分の後ろにあった木へと絶影を投げ込んだ。

そのまま行けば木へと激突する絶影は投げられている空中で身体を回転させ、木へと難なく足を付けて着陸した。

そしてその場で互いに向き合う。

 

「………………ふぅ。今日はここまでにしておくか」

 

そう息を吐くと共に構えを解くと、絶影が戦闘態勢を解いたらしく、そのまま此方へと歩いてきた。

 

「しかし……いつ見てもその劔冑は変わっているな。まさか独立形態で単独戦闘が出来るっていうんだから」

 

それまでの組み手を見ていた信吾が感心した様子でそう感想を言う。

俺の絶影は人型の独立形態故に乗ることは出来ないが、こうして単独である程度戦闘を行うことが出来る。これは真打でも中々出来ないことなので、ある意味凄いことだ。

まぁ、真打のように言葉を話したりすることはないのだけど。そして独自に動くだけでなく、此方の命を受けて仕手と別に動くことも可能だ。つまり遠隔操作が可能ということ。

それもISの技術を取り入れたからなんだとか。改めてその技術の凄さに驚かされる。

 

「確かにそうだな。でも、竜騎兵と違ってバイクにはならないから移動では不便だけどな」

「それは言っちゃ駄目だろ。あんまりそんなことを言うな。嫌みにしか聞こえないぞ」

 

少しイジワルな顔でそう突っ込みを入れる信吾に苦笑で返しながら俺はタオルで汗を拭いていく。

そしてそろそろ朝食なので汗を流しに自分達の部屋へと信吾と一緒に戻ることにした。

 その日は日曜日ということもあって、早朝からいつも以上に熱を入れて鍛錬をしていた。そのため、絶影を用いて組み手をしていたというわけだ。平日にコレをやるのは流石に疲れるので、休みだけにしている。

 そして男子寮に戻った所で、庭を掃除していた男性に呼び止められた。

 

「あ、お~い、織斑」

「はい、なんですか?」

 

俺に話しかけてきたのは、この男子寮の寮長である。

三年生なのだが、何故だかみんな名前をしらない。そのため、呼び名も寮長になってしまったという少し可哀想な人だ。本人はあまり気にしていないようだが。

寮長は俺の顔を見ると、にっこりと笑かける。基本、いつもニコニコと笑っている人なのでこれが標準である。変な意味はない。

 

「君にお客さんが来てるよ。たぶん鍛錬してると思ったから君の部屋で待って貰ってる」

「お客ですか? はい、わかりました。応対、ありがとうございます」

「これも寮長の仕事だからね。それよりも待たせちゃいけないから早く行きなさい」

「はい」

 

 お礼を言って俺達は自分の部屋へと早足で移動する。

 

「お客って誰だろう?」

 

不思議そうに聞く信吾に俺の分からないと行った感じに答えた。

 

「分からない。中学の友達は俺がここに来たってことはみんな知っているから、誰が来てもおかしくない」

「まぁ、そうだろうな。一真は人付き合いとか多そうだし」

 

そんなふうに会話しながら自室の前に着くと、俺は早速扉を開けたのだが………

 

「あれ? 誰もいないぞ」

 

信吾がそう零したように、部屋には誰もいなかった。

そう俺もそう思いながら辺りを探すが、やはり姿が見当たらない。

そのまま部屋に上がると、少し信吾が怒った様子で此方を見てきた。

 

「あ、一真。布団を干していないじゃないか」

 

どうやら鍛錬に行く前に布団を干していなかった事に対して怒っているらしい。

別にサボったわけではなく、鍛錬が終わった後に部屋に戻るのだからその時に干そうと思っていただけだ。

とは言え、言われても仕方ないので俺は謝りながら布団を干そうと思い見たすると………

 

「…………ん………んぅ………あっ………」

 

何やら布団の中から聞こえてきた。

よく見ると少し膨らんでおり、僅かだがもぞもぞと何か動く。

信吾が何か分からないものに恐怖を感じたのか、若干引いていた。しかし、少し興味があるのかマジマジと見つめる。

俺も気になりながら少し見ていることにした。

すると段々動きが大きくなっていく。

 

「………ん、ん……お兄ちゃんの匂い……もっと…」

 

布団の所為でくぐもっている所為でイマイチ聞きづらい。

しかし、さっきから段々と水音がしてきているような……水道の閉め忘れでもしたのだろうか?

 

「信吾、何か水音がするから水道見てくる」

「………あ、ああ!」

 

何やら顔が赤くなってきている信吾だが、気にせずに水道の蛇口が緩んでいないかを確認しに行った。

そして少し緩んでいたらしく、ポタポタと水滴を落とす水道の蛇口を閉めて布団の方に戻ると信吾が風邪でも引いてるんじゃ無いかと思うぐらい顔を真っ赤にしていた。

 

「どうかしたのか? 顔、真っ赤だぞ」

「っ!? な、何でもない!」

 

何やら挙動不審になっている信吾。

流石にこのままこの良く分からない布団を見ているわけにはいかないので、俺は布団に近づく。

 

「……ん……も、もうっ……あ…イッ…」

 

何やら布団から聞こえた気がするが、気のせいだろう。

信吾が段々目を回しはじめてきていた。そんなに怖いのか、これが。

俺は気にせずに布団を掴むと、一気に剥いだ。

 

「っっっっっっっっっっ……………………!?」

 

俺が布団を剥いだ先にあったのは黒い髪。

メガネをかけた幼い顔をしていて、その顔からは考えられないほどにグラマラスな身体をした少女がそこにはいた。

一瞬だけ手足をピンとはってから脱力するところを見ると、びっくりしたのだろう。

そして少女は脱力すると、俺の方にとろけるような笑顔を向けてきた。

 

「あ、お兄ちゃん……」

 

俺の目の前にいたのは、妹の夏耶であった。

夏耶は少しポーっとした感じで俺を見た後、はっとして慌てて布団で身体を包んだ。

 

「え、あれっ!? どうしてお兄ちゃんが!」

 

何やら焦っているようだったから、落ち着けるようにゆっくり話しかける。

 

「どうしたも何も、ここは俺の部屋だろう。お前こそどうして俺の布団にいるんだ?」

「そ、その………」

 

言い継ぐんでしまっている夏耶に俺は予測を立てて答えてやることにした。

 

「どうせ休みになったんで遊びに来たが俺がいなかったので待ってたんだろうけど、お前は朝そこまで早起きじゃないから眠くて俺の布団に入ったんだろ」

「そ、そうなんだよ。ちょっと早起きしたら眠くなっちゃって。えへへへ、遊びにきちゃった」

 

夏耶はそう言いながら頭を縦にぶんぶんと振っていた。

やはりそうだったか。兄は妹のことをよく見ているものなのだ。

そのことに納得していると、信吾が俺の顔を見るながら聞いてきた。

 

「か、一真……その子は?」

「ああ、こいつは俺の妹だよ。と言っても双子だけどな」

「い、妹………」

 

信吾がそう言い零すと、夏耶は少し慌てながらも信吾に自己紹介した。

 

「お兄ちゃんの同室の人ですね! 私はお兄ちゃんの妹の織斑 夏耶って言います。いつもお兄ちゃんがお世話になってます。これからもお兄ちゃんをよろしくお願いします!」

「あ、ああ。僕は徳臣 信吾と言う。こちらこそ、よろしく」

 

信吾も戸惑いながら夏耶に応じて握手する。

しかし、その瞬間夏耶が何かしら気付いたのか、いぶかしげな顔で信吾に聞いてきた。

 

「あれ? 徳臣さん……もしかして………」

 

そう聞かれた瞬間、信吾は慌てた様子でいきなり会話を切って俺の方を向いた。

 

「か、一真、色々と妹さんと積もる話もあるだろ! 僕が布団を干してやるから、お前は妹さんと一緒に話してたらどうだ」

「そ、そうか。ありがとう、そうさせて貰うよ」

 

きっと気を遣ってくれたのだろう。

そう思い、信吾の提案に従って、俺は夏耶を違う部屋へと連れて話すことにした。

 

 

 

 ちなみに、信吾が干した一真の布団は……一部がぐっしょりと濡れていたとか。

 

 

 

 

 

 

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