そして遂に主人公の意思なき悪意を捌こうという集団が牙を剝きました。
朝食を終えた俺達は少し休むために改めて部屋に戻ることにした。
「ここの食堂のご飯、美味しかったね~」
夏耶は満足したらしく、ご満悦のようだ。
ここの食堂の食事はとても美味しいから、喜んでもらえたのは俺も嬉しく思う。
まぁ、それには少し事情があったりする。
実は………この学校は前に言ったとおり、娯楽というものが殆どない。
だが、俺達は遊びたい盛りの10代後半。そこにこの環境は武者を育てるのは良いとしても、若い少年少女が生活するには少々所ではすまないくらいに楽しみがない。
なので必然的に食事にしか楽しみを見いだせなくなるため、ここの学食は美味しい物が出るようになったというわけだ。
御蔭で毎日美味しい食事を食べさせてもらえる此方としては感謝なのだが、如何せんその理由はどうかと思うが。
そのまま三人で少し休むついでに改めて信吾に夏耶のことを紹介することにした。
「腹も膨れたことで、改めて信吾に紹介するよ。夏耶は俺の双子の妹で、今はIS学園に通っているんだ。のんびりに見えるが、これでも日本の代表候補生なんだよ」
「えへへへ~、その通りです。今はIS学園に通っていて、代表候補生として頑張ってます!」
俺に改めて紹介された夏耶は実に嬉しそうに笑いながら信吾に紹介を行う。
それを聞いた信吾は少し驚きながら色々と聞き始めた。
「代表候補生なんてすごいじゃないか! 確か厳しいテストをクリアして実力がないとなれないんだろう、あれは?」
「ええ、そうなんですよ。勉強とかが大変で」
IS学園のことで盛り上がる二人。
ここからIS学園は近いが、出向くことはあまりないから物珍しいのかもしれない。
「信吾さん、随分とISについて詳しいんですね」
「ええ、『わたくし』は本当はIS学園に行かされるところでしたから」
「わたくし?」
あれ? 何やら知らないような声が聞こえたような………
そう思った途端に信吾がコホンと軽く咳払いをした。
「い、いや、僕の親戚もIS学園に憧れてたから、それで調べるのを手伝った際に詳しくなったんだよ、うん!」
信吾が何故か慌てているように見えるが、慌てるようなことでもあったのだろうか?
それを聞いた夏耶は意味深な笑みを浮かべていた。
「へぇ~、それで詳しいんですか。なら、そのご親戚とも会えるかもしれませんね」
「そ、そうだね。来年くらいに入ると思うよ」
そんな笑みを浮かべる夏耶に何故か冷や汗を掻く信吾。
この二人の間に一体何があったんだ?
そして今度は信吾のことを改めて紹介する。
「親交が深まったところで改めて信吾のことを紹介するな。信吾はこの学校に来てから知り合って、何と一学年次席という凄い優秀な奴なんだ。それに旧家の出で、礼儀正しく自分に厳しい尊敬出来る奴だよ」
「褒めてもらえるのは嬉しいが、お前にそう言われるのは何だか少し癪だな」
信吾は俺をジト目で見ながらそう答えてきた。
俺は何か変なことを言っただろうか? そんな目で見られる覚えはないのだが。
「何かあったんですか?」
夏耶が甘い声でそう聞くと、信吾はまるで愚痴を言うかのように夏耶に答えた。
「聞いて下さいよ、夏耶さん。こいつはさっき自分のことを次席って言いましたけど、それを言ったらこいつは主席ですよ。その上、先生方からの期待されてるしみんなに優しいし、こんな僕にも常に気を使ってくれるし……僕の憧れだし……」
「信吾さん、途中から褒めてますよ」
「え? ………あっ!?」
何やら信吾の顔が真っ赤になっていく。
それを見て微笑ましく笑う夏耶。
というか、俺はそんな風に思われてのか? 先生に期待されていると言うよりも毎回毎回父さんの息子ということでいじり回されているだけだし、寧ろクラスのみんなからは殺気を込められた目で見られてばかりだぞ。信吾には寧ろ世話になっているのだから、感謝するのは当たり前のことだろうに。
義理堅いのはこいつの良いところだよ、本当に。
「そう思ってくれてるのは嬉しいが、改めて言われると少し恥ずかしいな」
「っ~~~~~! べ、別に褒めたわけじゃないからな」
信吾は顔を赤くしたまま俺に言ってきた。
そこまで怒らなくてもいいだろうに。
こうしてお互いの紹介を終えた所で、突如部屋がノックされた。
それに応じて出てみると………
「や、ひっさしぶり~。来たって聞いたから遊びにきたぜ、夏耶ちゃん」
「やぁ、少し見ない間にまた胸が育ったんじゃないのかい。う~む……90センチくらいかな。凄いな、前よりも3センチもまた大きくなってるじゃないか」
そこには雄飛と忠保の二人組だった。
二人とも夏耶とは同じ中学で俺共々付き合いがあったため親しい。
「雄飛君、忠保君、久しぶりだね。元気だった」
夏耶は二人との再開を喜びつつも、胸を二人から隠すように抱いて身を逸らした。
「忠保君、いきなり胸のサイズを調べないで……エッチ」
「いや、これはもう僕の癖だからね」
そんな風に笑って誤魔化す忠保に俺即座に近づき、アイアンクローをかます。
そしてそのままキリキリと締め付けながら問いかける。
「なら、もう計れないようにその目を潰せば癖も直るんじゃないか」
「いやぁ~、一真、冗談だよ、冗談。まったく一真はすぐ真に受けるんだから」
顔を青くしながらも笑う忠保から手を放して取りあえず二人を室内に入れる。
急に人数が増えたせいで部屋が狭苦しくなった。
そのためか、夏耶は俺の隣にぴったりと身体をくっつけて座ろうとする。
「夏耶、もうちょっと離れなさい」
「だって詰めないとみんな座れないから、ね」
言っていることは確かにそうなのだが、だからといってくっつきすぎじゃないのか?
その所為で雄飛達から面白そうな目で見られるし、信吾から何やら怖い視線を向けられるし。
そうして五人になったところで何を話しているのかというと………
「今日の昼飯をどうするかだな」
と、そんなことを話し合ったりするのだった。
さっき朝食を食べたばかりだというのに、もう昼とは食い意地が張っているようにしか聞こえない。
しかし、実際の所は違う。
何故にそんなことを話し合うのかと言えば、この学園は朝と夜の食事は出るが昼食は自分で用意することになっているからである。
別に俺はそこまで困ってはいない。
理由は主に信吾が昼食を作ってくれるからであり、この部屋に備えられている冷蔵庫内には適度に材料をしまってあって信吾が管理しているからである。
だが、雄飛達は二人とも料理が下手なためこうして良く相談、もといたかりにくるのだ。
「なんだ、またなのか。まったくお前達ときたら……」
「そう言うな。俺も信吾がいなかったら同じようになっていたかも知れないんだから」
「そ、そうか! なら、僕がいたことに感謝するといいさ」
「ああ、いつも美味い昼食を作って貰って感謝してるよ」
「っ~~~~~~~~~」
二人に呆れて小言を始めた信吾を押さえるために助け船を出してやると、何故か信吾の顔が赤くなっていた。
どうやら俺も呆れられたようだな。もうちょっと父さんを見習って料理の勉強もした方がいいか。
そんなやり取りをしていたら夏耶が不思議そうに首を傾げてきた。
なので理由を説明したら少し驚かれた。
「だったら、今日は私がお兄ちゃん達にお昼ご飯を作る!」
そう夏耶が言いだし、夏耶の料理の腕を知っている二人が騒ぎ出した。
それを聞いて信吾が申し訳無く思ったらしく、お客様にはそんなことをさせるわけにはいかないと断ろうとするのだが、いつも俺が信吾の料理を食べていることを知って是非やらして欲しいと頼み倒した。
これにより、本日の昼食は夏耶が作ることになったのだが、まだ時間が早いのでまた外に出て鍛錬することに。
そこで初めて夏耶に絶影を見せたら、すごいすごいと喜んでいた。
「これはマサムネみたいに喋らないの?」
と聞かれたが、真打ではないので喋らないと説明した。
その後は絶影を用いてまた全力での稽古を行い、それは昼近くまで続いた。
それをキラキラした目で夏耶は見ていたが、俺が殴られると慌てる。
そんな様子を見て楽しそうに笑う雄飛達と、真面目に鍛錬を見ている信吾と言った感じでこの時間は過ぎていった。
そして昼食間近になった所で部屋に戻ると、
「あ、かずくん。お昼ご飯はまだ? まだだったらお姉さんがつくってあげる」
と灯姉さんが材料を片手に部屋に来た。
それを見て気まずそうにする信吾と、久々の姉貴分に会えた夏耶が灯姉さんに抱きついた。
「あ、灯おねえちゃん! 久しぶり~」
「まぁ、夏耶ちゃん、元気だった。久しぶりね~。大きくなったわね~」
二人で再会を喜び抱き合うところは絵になるのだが、忠保が
『美少女同士が抱きしめ合い潰れる巨乳というのは、やはり思春期も僕達には刺激的だね』
と言ったせいで空気が台無しになった。
何故かそれを聞いた後、信吾が自分の胸をぺたぺたと触っていたような気が……
その後二人は仲良く……何故か張り合うように昼食を作り、俺達の舌を唸らせた。
こうして昼食も賑やかに終わり、午後も鍛錬や勉強をして過ごしていく。
終始夏耶が抱きついてきたり、灯姉さんに抱きしめられたりして色々と大変な目にあったが、やはり賑やかなのは楽しかった。
信吾に何度も怒られたが………
そして夕方になり、皆自分の部屋へ。夏耶はIS学園へ帰ることになった。
その際、何故か灯姉さんと信吾も一緒に見送りにいくことに。
「お兄ちゃん! たまにはIS学園にも遊びに来てね」
「ああ」
そう答えると、夏耶は信吾と灯姉さんの所へと向かった。
「信吾さん、灯お姉ちゃん………負けないからね」
「ええ、私だって負けないわよ」
「いや、その………ま、負けないから……」
何やら三人で話した後に、また俺の方に来た。
「それじゃお兄ちゃん。じゃあね」
そう言って夏耶は俺に近づくと……
「ちゅ」
そんな音と共に俺の頬に柔らかい感触が当たってきた。
そしてその方を見ると、顔を赤くした夏耶がイタズラが成功したかのように笑っていた。
「あぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「あらあらあらあらあらあらあらあら……」
そして自分が何をされたかを理解すると共に、信吾と灯姉さんの大きな声が聞こえた。
その後、夏耶は笑いながら外へと走って行った。
まったく、またそんなイタズラをするのだから困った物だ。
そう思っていたら、二人に凄く問い詰められて怖い目にあった…………。
ちなみにその後、俺の部屋から俺のYシャツが一枚なくなるということがあったが、信吾が何か知ってそうだったが何も答えてはくれなかった。
そして翌日の月曜日の早朝、教室にて、
「諸君、ここはどこだ?」
「最後の審判を下す法廷だ!」
「異端者には?」
「死の鉄槌を!」
「男とは?」
「愛を捨て、哀に生きる者!」
「宜しい。これより……異端審問会を始める!!」
俺は何故か他クラスの男子も合わせて大人数から縛り上げられ、理不尽な裁判を受けるはめにあった。