拝啓 父さんへ。
最近は如何お過ごしでしょうか?
母さんと毎日お幸せに暮らしているであろうことは予想が付くので深く聞く気はありません。
この学園に入ってからしばらく時間が経ち、すっかり俺も馴染みました。
今では、毎日クラスメイトや他の生徒達から襲われてばかりの日々です。
御蔭で修行に事欠きません。
ところで父さんに聞きたい事があるのですが、よろしいでしょうか?
実は襲いに来る人達は皆口々に俺のことを『リア充』だの『モテる奴』などと良く言ってきます。俺もその言葉の意味は分かりますが、決してそんなことはないと思うのですが、父さんから見て俺はどうなのでしょうか?
襲ってくる彼等が言うには、夏耶や灯姉さんのこと、そして何故か同性のクラスメイトである徳臣 信吾という少年の事ばかりです。
夏耶には確かに甘くしてしまいますが、妹ですので当たり前のような気がします。灯姉さんは俺に取って本当に姉のような人なので、あの人が良く可愛がってくれるのが原因だとは思いますが、それだけだと思います。そして信吾とはルームメイトですが、そもそも男ですので、そんな事はないと思うのです。
皆は俺が凄くモテているなどと言いますが、そんなことは全くなく、はっきり言って言いがかりとしか言いようがない。
なのでそんな理由で襲われて困っています。
父さん、俺はどうすれば良いのでしょうか………
「旦那様、何を見ているんですか?」
現在、織斑家のリビングのソファでは二人の人物が身を寄せ合うように座っていた。
一人はメガネをかけた優しそうな笑顔の女性。
この家の主である人物の妻である織斑 真耶である。
そして真耶が身を預けているのが、この家の主である青年。
真耶の旦那である織斑 一夏である。
どこからどう見ても二十代に見えるか見えないかの二人であるが、こう見えて高校生になる二児の親だ。
今は子供達が二人とも寮のある学校に通っているため、家にはいつも二人っきりである。そのため、とても夫婦仲の良い二人はいつもこうしてくっついている。
そして今二人でソファに座っている一夏の手には携帯があった。
それを見て苦笑を浮かべる一夏に、真耶は不思議に思いながら見つめる。
その質問を受けた一夏は自分の胸の頭を寄せて甘えてくる真耶に笑顔で答えた。
「いや、何だか一真は何やら青春しているようですよ」
それを聞いた真耶は何やら少し考えてから面白そうに一夏へと笑いかけた。
「もしかして羨ましいんですか?」
「そういうわけじゃないのですけど、もう俺も歳ですからね。あまりハシャグこともないですから」
一夏は昔を懐かしむようにそう言うと、真耶は一夏に笑顔を向けながら一夏に抱きついてきた。
「そんなことないですよ。旦那様は今でもとても元気ですから。それに……」
一端そこで切ると、真耶は顔を赤らめて恥ずかしがりつつも艶やかな顔をした。
「昨日もその…凄く激しかったですから」
「そ、それは……」
一夏は妻のそんな表情を向けられて顔を赤くしてしまう。
そんな一夏が愛おしくて仕方ない真耶は一夏の足の上にゆっくりと座った。
「それで実は……今もその…したくてこんなことに……」
真耶はそう言って一夏に見せつけるようにスカートの裾を上げる。
その先にある光景を見た一夏は心臓の鼓動が高まっていくのを感じながら生唾を飲み込む。
そしてその様子を見た真耶は妖艶に、しかし羞恥で恥ずかしがりながらも潤んだ瞳で一夏にお願いする。
「旦那様ぁ、昨日の続きを…お願いします」
お願いされた一夏は完璧に自分の中の何かがキレたのを感じながら真耶をその場で優しく押し倒しながら返事を返す。
そして二人とも同時に動き、唇を合わせ始めた。
そんな風に二人で重なり合いながら一夏は最愛の息子への返答を答えた。
(一真………今しかない青春、精一杯楽しみなさい)
そう返す言葉を決めた後、一夏は真耶とイチャつき始めた。
まったく息子が求めている答えとは見当違いなことを残して………
さて、毎日が襲われる日々に辟易しつつも気がつけば集団戦の心得を学んでしまっているわけだが、それが今回行われることには役立ちそうにない。
そろそろこの学校ではある行事が行われる。
その名も通称『武芸大会』。
IS学園の行事を真似て作られた物で、クラス代表戦とトーナメント戦の二つがある。
クラス代表は文字通りクラスの代表を差し、クラスのまとめ役の事。当然ながら強い者がなるため、ウチのクラスでは俺と言うことになってしまっている。
そしてトーナメントだが、これはIS学園と少し違う。
クラス代表は参加出来ないのである。
理由としては他の者達の武を高めるため、強すぎる者が出るのは流石に駄目だということだが、実際は代表同士の戦いは接戦になりすぎて消耗が激しくなり連戦などまず出来ないかららしい。
まずルールとしては、こんな感じだろうか?
クラス代表は学年に別れて同じ代表と戦う。
これもトーナメントなので一学年六クラスあるので戦う回数は約二回。シードはくじ引きだとか。
対してトーナメント戦は学年別とは言え、数多いので大変だ。
そんなわけで俺はクラス代表として大会に向けて鍛錬を積んでいるわけなのだが……
「一真、もう一本頼む!」
「ああ、分かった」
大会に向けて信吾と打ち合いをしているのだが、妙に落ち着かない。
別に信吾が妙に艶めかしい吐息を吐いたり、紅潮した顔がやけに可愛いからとかではない。
何というか、虫の知らせとでも言うべきなのだろうか?
嫌な予感とまでは言い過ぎなのかもしれないが、妙な感じがするのだ。
それを信吾に話したら緊張しているからじゃないのか、と言われてしまった。
なら良いのだが………。
少し前に父さんに送ったメールの返事が遅れてきたからだろうか?
どうせ母さんとイチャついているのは目に見えているのだし、そこまで気にするようなことじゃない。期待していた答えは得られなかったし。
では何だろう? そう考えていたが、結局その日は何も分からなかった。
しかし、次の日にはそれが判明した。
翌日の早朝、HRにて真田先生から連絡事項が伝えられた。
「武芸大会の連絡なのだが、一真君」
「はい?」
いきなり名指しで呼ばれたことに疑問を抱きながら返すと、真田先生は面白そうに笑っていた。そして過ぎるあの予感に俺は身を凍り付かせた。
「一真君は一学年の代表戦は参加出来ないから」
「え……えぇえええええええええええ!!」
俺の驚きの声に皆も総じて大声で騒ぎ始めた。
理由は単純であり、こいつ等は代表戦で賭けをしているからである。
この学校は武者の教育機関という割にはそういうことには緩く、教員もこぞって賭をしたりするのだ。ちなみに俺に賭けられているのは膨大な量の食券らしい。
いきなりの参加不可に嘆き騒ぐ生徒を見て真田先生は苦笑を浮かべる。
「いやいや、参加不可じゃないから。一真君の強さは一学年から飛び抜けすぎて他のクラス代表じゃ話にならないんだよ。現に僕と打ち合えるんだからね。それでは面白くないから、急遽、一真君は二学年の代表戦に参加して貰うことになったんだ」
「え……」
突然の事に思考が停止してしまう俺。
皆も何故そうなったのかまったくわからないと騒ぐのを止めていた。
そんなみんなを見ながら真田先生は廊下の方を向いて声をかける。
「というわけで君達、入って来なさい」
その声と共に扉が開き、廊下から五人の生徒が入って来た。
皆屈強な肉体を持った男子達だが、その中に一人見知った女生徒がいた。
というか灯姉さんだった。灯姉さんは俺を見るなり嬉しそうに手を振ってきた。
それを返さないと後で拗ねるので軽く返すと、更に嬉しそうに笑う。
周りの奴等はその光景を羨ましそうに見ていたが、同時に四人の男達から殺気が向けられた。
その殺気に息を呑む。それほどにこの四人から強さを感じる。
「と、いうわけで二学年から挨拶があるから聞きなさい」
真田先生がそう言うと、端にいた男が前に出て自己紹介を始める。
「俺の名は斉藤 恭司。織斑……貴様には絶対に負けん!!」
そう斉藤先輩(2年なので)が言うと、他の三人の先輩方も同時に前に出て名乗りと共に俺への敵意を見せる。
そして四人全てが終わると、何故か集まり変なポーズを取った。
「「「「我等、真田さん大好きクラブ四天王っ!! 貴様のような存在は絶対に許せん!!」」」」
怒気に孕んだその叫びに、クラスメイト…主に男子から拍手が送られていた。
皆感動したのか、その拍手は実に大きい。
それを見て確信する。
(はぁ………またこの手合いか……)
最早言うまい。
最近こういう僻みなんかに晒されているのでもう呆れるしかない。
まったくもってそんなことはないというのに。灯姉さんはただの姉のようなだけだというのに。
そう思いながら見ていたら、最後に灯姉さんが一歩前に出た。
そして俺に向かって少し顔を赤らめつつ笑顔を向ける。
とても優しい笑顔だが、次に言われたことで俺の表情は驚愕に固まってしまった。
「かずくん、この代表戦でお姉ちゃんが勝ったら、付き合って下さい。勿論、お買い物とかじゃなくて男女交際のことだからね」
それを聞いた瞬間、このクラスの時間が止まった。
あまりの驚愕の事態に皆固まっている。さっきまで怒気に孕んでいた先輩四人もだ。
そして少ししてから灯姉さんが止めを指した。
「お姉ちゃん、かずくんのこと昔から大好きだったんだから。異性としてね。でもかずくんったら全然気付いてくれないんだもの。そこが可愛いところでもあるんだけど。だからこれを機に勝負をかけました」
そう潤んだ瞳で俺を見つめながら言う灯姉さん。
そして………
「「「「「「「「「「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」」」」」」」」」」
クラスの時間は動き出した。
それに一番動揺していたのは、告白された俺でなく、何故か信吾だということに俺は気付かなかった。