やっぱり彼は一夏の息子ですね。
自分にとって初めてのデート。
それが真逆こんなに綺麗で可愛い娘だなんて思わなかった。
会った直後はあまりの綺麗な姿に見惚れてしまったくらいだ。美しく綺麗な長い黒髪、まるで白磁の様な肌、着ている着物は藤の花の模様をあしらった物でとてもその少女には似合っていた。
灯姉さんも凄い美人だが、それとはまったく方向性の違う美人。
まさに大和撫子と言って良いその姿は、見る者全てを魅了すると言って良い。
少ししか話していないが、その上品な雰囲気と話し方はまさに令嬢を彷彿とさせる。
こんな凄い娘があの信吾の妹とは………寧ろ納得出来る。
信吾も礼儀正しく、上品だからなぁ。
兄妹揃ってこうも凄いということは、きっと凄い家柄なのかもしれない。
そう思うと緊張してくるが、それを見抜かれて笑われてしまうあたり、俺はまだまだ甘いということだ。もっと父さんみたいに頑張らないとな。
そんな訳で、俺は現在信吾の妹さん、『徳臣 葵』さんの手を引いて道を歩いていた。
「そ、それでは、どこに行きましょうか?」
葵さんが顔を少し赤くしつつそわそわと聞いてきた。
その様子に見とれそうになりつつも、俺はこの日のために考えてきたプランを披露する。
「ではまず、定番のウィンドウショッピングといきましょうか。ここからですと、『レゾナンス』ですね」
「レゾナンス? ……あぁ、あの大きな建物ですね」
少しきょろきょろと辺りを見回し、すぐ近くにある大きな建物を見つけて葵さんは顔を綻ばせた。
この町にずっとある大きなショッピングモール『レゾナンス』。
若者が遊ぶとしたら、大体この辺りが定番だろう。中には様々な店があるので飽きるということはない。
そのままレゾナンスに向かって歩いて行く俺達だが、休日ということもあって人通りが多い。そのため、歩いているとどんどん人混みに飲まれそうになってしまう。
それに葵さんは着物だ。あまり歩くのには向いていないこともあって、速く動けないでいた。
俺はそれを見て、少し恥ずかしいけどそれを堪えて葵さんを手元に引っ張る。
「キャッ!? か、一真様!」
顔を赤らめながら驚く葵さんを可愛いと重いながらも俺は安心刺せるように微笑む。
「すみません、このままだとはぐれてしまいそうだったから。こうすればはぐれないですよ」
そして抱きしめるかのように身体を密着させた。
葵さんは途端に顔を真っ赤にして恥じらう。俺だって本当は恥ずかしいし、こんなことを俺なんかにされて嫌かも知れないけど我慢して欲しい。
(か、一真様とこんなに密着してしまうなんて……ど、ドキドキしてしまいます……。こ、このままじゃこの心臓の音を聞かれちゃいます!)
もしかして相当嫌だったのかな? 顔がみるみる内に真っ赤になってる。
でも、それも後少しだから我慢してもらいたい。
そう思っている俺だが、葵さんから香る良い香りにクラクラしていた。たぶん、着物に合わせて藤の香りだろうか。何やら甘い香りが胸を満たし、それがさらに鼓動に拍車をかける。
そのままドキドキしつつも繋いでいる手を離さぬよう、俺達はレゾナンスへと入って行った。
レゾナンスについて、取りあえず何処を回ろうかと考える俺と葵さん。
ウィンドウショッピングに計画性はないので、何処に行こうかと悩む。
ちなみに……このプランの元となっているのは父さん達のデートである。
自分でしたことはないが、父さんは凄くしているので資料にはことかかないのだ。
その資料を思い出しながら、俺はまず最初に行く店を決めた。
「そうだ! まずは服屋に行ってみてはどうでしょう」
「服屋さん……ですか?」
「はい、その着物姿は凄く似合っていますけど、少し歩き辛そうですから」
「そ、そうですか。似合ってますか……」
葵さんは頬を赤く染めながらも喜んでいるようだ。
決まったならさっそく最寄りの服屋へと向かった。
「いらっしゃいませ~」
店員の挨拶を聞きながら二人で店に入り、衣服を見ていく。
葵さんは楽しんでくれているようで、少し声がのボリュームが上がっている。
やはりこういう服屋に行くと、女性というのは楽しいらしい。
男はイマイチそういうのは分からないが、父さん曰く……
「だって大好きな人のいろいろな姿を見られるんだよ。夫として嬉しいに決まってるじゃないか。一真もその内わかる時がくるよ」
とのこと。
父さん……その気持ち、少しだけ分かったような気がする。
葵さんがどんな服を選ぶのか、少し楽しみにしている自分が確かにいた。
「そ、それでは、一真様。少し待っていて下さい。すぐに着替え終わりますので」
「時間はありますから、ゆっくりでも大丈夫ですよ」
「は、はい…」
少し興奮していて頬を赤くしながらも葵さんは俺に申し訳なさそうにする。
その様子にクスッと笑う。
綺麗で美しい人だけど、こういう所は年相応なんだと思うと余計に可愛らしく見える。
葵さんはそう俺に言った後、持っていたいくつかの服を更衣室へと持って行った。
着替えるまでの間、俺は更衣室の前で周りの服を見ていた。
あまりこう言ったおしゃれな服屋には個人で来たことがないので、どういうものがあるのか気になった。
父さん達や夏耶と一緒に行ったことはあるが、そういう時は気まずさもあってゆっくりと見ている余裕がなかった。
改めてみると、やっぱり凄いな。
特にここは女性用の服が多いので、スカートやワンピースなど色々とある。
その中には明らかに露出の多い物もあって、けしからんなぁ、などと思ってしまう。
そして待っている間にも、更衣室からはしゅるしゅると絹擦れの音が聞こえてくる。
それが妙に艶めかしくて、余計に意識してしまっていた。
そんなとき、近くで子供の声が聞こえてきた。
「きゃ、きゃ! ぶ~~~~ん!!」
かなり興奮した様子で、たぶん車か何かの玩具を持って遊んでいるのだろう。
そのため、周りが良く見えていない。
その子供はその興奮に身を任せたまま店内を走り回り、そして俺の背中に激突した。
別の事に意識を持ってかれていたため、俺はその体当たりに備えることが出来ず、前に倒れ込んでしまった。
いつもならこんな事は絶対にない。
仮にも武者として鍛えている身、幼子の体当たりなどで動じるはずもない。
だが、この時ばかりは平常ではなかった。意識をまったく向けていなかったせいで物の見事に俺の身体は動いてしまったというわけだ。
寧ろ今思えば、幼子の力も以外と強かった。将来、立派な男になるかも知れない。
と、そんなことを考えて現実逃避をしている俺だが、目の前に広がる光景に目が離せない。
「なっ、なっ、なっ、か、一真様、何でっ!?」
「あ…………」
俺の目の前……倒れた際にどういうわけか顔の部分だけ更衣室のカーテンに突っ込んでしまったのだ。
結果、俺の目の前には肌を晒している葵さんがいた。
真っ白な白磁のような肌に、着物を着ていた時は分かりづらかったが女性らしい胸の膨らみ、お腹はきゅっとくびれており、線の細さが窺える。その身体の大切な部分を包むのは純白の少しセクシーな下着。全体的に細いが出るところはしっかりと出ていて、胸はたぶんCくらいだろうか?身体が細い分、普通より大きく見える。きっと着やせするタイプなんだろうな。
儚げで美しく、それでいて年相応のみずみずしさを感じさせる肢体に俺は見入ってしまう。
そして見られた葵さんはまるで紅葉が紅葉していくかのように顔を真っ赤に染めていき…………羞恥の限界を突破した。
「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
声にならない悲鳴を上げてしまう葵さん。
このまま行けば俺はのぞきで捕まってしまうだろう。
しかし、ここで天の助けがあった。
「う゛ぇえええええええええええええええええええええええええええんんんんん!!」
先程体当たりを嚙ました幼子が今更泣き始めた。
その御蔭で葵さんの悲鳴が聞かれることはなかった。
その泣き声に気を取り戻し、俺は葵さんに短く謝罪をすると大慌てで顔をカーテンから引き抜いた。
そして約十分後、カーテンが開いた。
「あ……」
そこから出てきた葵さんの姿を見て言葉を失う。
葵さんは真っ白なブラウスに赤いチェック柄のミニスカート、それに黒いハイニーソックスを穿いていた。
まるでアイドルのような……その辺のアイドルなんかより余程美しい女の子がそこにいた。
「ど、どうですか……」
恥ずかしさに顔を赤く染めつつ、上目使いに俺に窺う葵さん。
その犯罪級に可愛い素振りに俺は遅れて返答した。
「と、とても似合ってます! その辺のアイドルなんかよりよっぽど可愛いです」
「そ、そうですか。そう言ってもらえると……嬉しいです」
俺の言葉に喜び安心したように葵さんは笑った。
(うわぁ……何て笑顔をするんだ、この子。今まで見たことない笑顔だ。何て言うのか………綺麗で可愛いな……)
そう思い見惚れていたら、葵さんは俺の耳元に顔を近づけて囁いた。
「褒めてもらえたのは嬉しいですけど……さっきのは、その……恥ずかしかったんですからね……」
恥じらいつつも何故かどこか嬉しそうなその声に、俺は惹きつけられてしまった。
こうして、俺はこの少女とのデートで早速やらかしたというわけだ。