俺は試着した服を葵さんにプレゼントしようとしたのだが、やんわりと断られてしまった。
葵さんは持ってきていた巾着袋から一枚のカードを取り出して店員に渡すと、店員は目を驚愕で見開いて低身で慌てて会計を行っていた。一体何のカードだったんだろうか……。
それも気にはなるが、それ以上に……まさか人生初めてのデートでいきなりやらかすなんて誰が思うだろうか。
いつもからは考えられないミス。それによってどういうわけか俺は葵さんの下着姿を見てしまった。
目を瞑っていても鮮明に目に焼き付いている真っ白な肢体。
そのせいで俺は彼女の事を真っ正面から見づらくなってしまっていた。
それは彼女も同じらしく、顔を真っ赤にして気まずそうにしていた。
だが、俺達は今デートをしているのだ。気まずいままでいるのは辛い。
だから俺は気を取り直そうと軽く咳払いをして葵さんを見ると、潤んだ瞳の葵さんと目が合ってしまった。そして再びお互いに顔を伏せてしまう。
((は、恥ずかしい………))
恥ずかしさで顔が熱くなっていく。
そのまま二人で静かに歩いていると、突然葵さんがクスクスと笑い出した。
「葵さん?」
「す、すみません。何だか一真様が可愛らしくて」
コロコロと笑う葵さんの方が余程可愛らしいと思う。
そう思っていたら、少しばかり気が紛れた。御蔭で葵さんのことをもうちょっと見れるようになっていた。
「すみません、気を遣わせて」
「いいえ、別にそんなことないですよ。あ、でも……」
葵さんはそう言った後、頬を赤らめながら俺にだけ聞こえるように囁いた。
「さっきの事を忘れて下さいとは言いませんが、せめてこの時だけは忘れて下さい。その代わり………帰った後はいくらでも思い出して良いので……」
「そ、そうですか……気を付けます」
恥じらいながらそう言われ、俺はその様子が可愛いと思うと共に、ドキドキして目が離せない。
それを相手に知られるのが何故か恥ずかしくて、誤魔化すためにも他の話題を振ることにした。
「そ、そういえば、さっき服を着るのに随分と時間が掛かっていたみたいですけど、何かあったんですか?」
すると葵さんは顔を更に赤く染めると、もじもじとしつつ答えた。
「その……わたくし、こう言ったお洋服を着るのは初めてなんです。特にこんな短いスカートなんて初めてで。まさかこんなに素足が出てるなんて……恥ずかしいです」
「っ!? そ、そうなんですか」
恥ずかしがる葵さんが余りにも可愛くてときめいてしまった。
何だ、この可愛い人は。今まで見たことのないタイプだ。
俺が赤面していると不安に思ったのか、葵さんは俺の手をきゅっと握ってきた。
行動の一つ一つが可愛らしいこの人に俺はドキドキとしながらエスコートしようと心に決めて歩き出した。
そしてその後も一緒に彼方此方の店に出向いた。
年頃の女の子が好きそうなアクセサリーショップや、可愛いぬいぐるみなど取り扱っているファンシーショップなど。
アクセサリーショップでは色々と商品を取り扱っているようだが、その中で葵さんが選んだのは桜のデザインが施されたリボンだった。
てっきり女の子はペンダントとか指輪とかを欲しがると思っていたけど、そうじゃないんだなぁ。
そのリボンは値段が安いということもあったので、俺がプレゼントすることにした。
そう言ったら戸惑っていたが、せっかくのデートなんだからこれぐらいさせて欲しいとお願いしたら申し訳無く頷いてくれた。
そして店を出ると、早速買ったリボンを髪に縛ってみる葵さん。
「一真様、どうですか。似合ってますか?」
「ええ、とっても」
それは即座に返事を返した。
それだけそのリボンは葵さんに似合っていたんだ。和装の似合う彼女に桜のデザインはとても良く似合う。
葵さんもプレゼントされたことが嬉しいようで、とても喜んでくれた。
その可憐な姿は俺だけに限らず、周りにいた男達の視線を独り占めにしていた。
彼女はそれだけ可愛く、そんな彼女とデートしている俺はとても幸せ者なんだろう。
「うわぁっ……!? 見て下さい、一真様! ふわふわでもこもこしていて可愛らしいですよ!」
ファンシーショップでは猫のぬいぐるみを抱きしめていた葵さん。
その年相応の姿に俺はさらに胸をドキドキとさせてしまうのだった。
そしてまだまだデートは続いていく。
買い物もそこそこに今度はゲームセンターに行ってみることにする。
俺自身、あまり友人に誘われない限り行かないので詳しくはしらないのだが、忠保曰く
『デートでは良く行く場所だよ』
とのこと。
俺はそういったことに詳しくはないので、ここはその助言に素直に従おう。
父さん達のデート? あれは何処でも楽しんでいるから余り当てにはならないかな、今回は。
「次はゲームセンターに行ってみようと思うのですが、葵さんは行ったことは?」
その言葉に葵さんは少し悲しそうな顔をした。
「すみません。家が厳しかったものですから、そういった場所には行ったことがなくて……」
「そ、そうですか…」
しまった! 何やら気まずくしてしまった!
俺はそれで冷や汗を掻いてしまう。何より、彼女に悲しそうな顔をさせてしまったことが申し訳無くて仕方ない。
それを見抜かれてしまったのか、葵さんは俺を見て優しく微笑む。
「でも……だからこそ、今、一真様に誘っていただいてとても嬉しいです! 初めてのゲームセンターが一真様と一緒なんて……幸せです」
「っ!? そ、そう言ってもらえるなら有り難いです」
この人はもう、何て言うか一つ一つのことが本当に可愛らしい!
見ていて心臓の鼓動が収まらない。綺麗な部分しかないのだ、本当に。その純粋さが凄い。
俺は毎回赤面しているような気がして仕方ない。
そして俺達は手を繋いだままゲームセンターへ。
手を離そうとしたのだが、葵さんがきゅっと握っているので離せない。
それが恥ずかしいのだが、そのスベスベとした感触に俺自身ずっと触っていたく思ってしまう。
故に離せないのだった。
そんな気恥ずかしさを感じつつ入ったゲームセンターで早速何をやろうかと悩む。
あまりやったことがないのでアーケードゲームとかは選べない。葵さんも初めてというから、難しいのは止めるべきだろう。
「一真様、あれを見て下さい! 凄いですよ、キラキラ光ってます!」
葵さんはというと、とても無邪気に興奮しているようだ。
その様子がまた可愛らしいものだから、俺はクスクスと笑ってしまった。
「どうかしたんですか?」
「すみません、何やら葵さんが無邪気に喜んでいて可愛かったのでつい」
「ぁぅ……は、恥ずかしいです……」
葵さんはそれを聞いて顔を真っ赤にして恥じらった。
その顔もまた可愛らしくて、俺は微笑んでしまう。
そのまま簡単なエアホッケーやクイズゲームなど、素人でも楽しめるゲームを選んでプレイしていった。
葵さんは実に楽しそうに遊び、俺も楽しい。
見た目とは裏腹に葵さんの運動神経は凄いようで、ホッケーでは接戦となった。
そしてクイズでは見た目通りとても頭が良いのですらすらと問題をといていた。
それを凄いと思いつつも、狭い席に一緒に座ったので身体が密着してしまい、気が気でなかった。女の子特有の柔らかさと甘い香りに集中力が四散してしまう。葵さんも問題をよく見ようと、身体を押しつけるように画面を覗き込むので、さらに感じてしまい大変だった。
そして次に何処に行こうかと相談したら、何やら顔を赤らめて俺を見つめる。
「か、一真様……出来れば、あれを一緒に撮ってもらえませんか…」
指した先にあるのは、プリクラの筐体である。
そういえば女の子はこういうのが好きだった気がするな。
「ええ、いいですよ」
「ありがとうございます!」
返事にとても感謝する葵さん。
そこまで一緒に撮りたかったのかと、思うと嬉しいような恥ずかしいような……。
二人でその筐体に入り、お金を入れて取る写真のフレームを選んでいく。
そしてメッセージが書けるというので、葵さんが恥じらいながらメッセージを書く。
『一真様と初めてのデート』
見た途端に赤面してしまう俺。
葵さんも顔を真っ赤にして恥じらっていた。可愛い…。
そして写真撮影になった時……
葵さんはシャッターが下りる瞬間に俺に身体を預けるように密着して抱きついてきた。
そしてシャッターが下り、出てきた写真には密着する赤面した二人の写真が出てきた。
「あ、葵さん!?」
「す、すみません…せっかくの記念だったので」
恥じらい真っ赤になっている葵さん。
以外と大胆な所もあるようだ。
出てきた写真を取ると、葵さんはまるで宝物のように大事に胸に抱きしめた。
「これは絶対に大事にします! だから一真様も、出来れば……」
「はい、俺も大事にしますよ」
そう言って半分を切って俺に渡してきた。
何やら本当に……恋人っぽい感じで照れてしまう。
そのまま気恥ずかしくもプリクラの筐体を後にしてゲームセンターを後にしようとしたのだが、葵さんが何やら見つけたようで足が止まった。
「一真様。あれはなんですか?」
それは所謂、『パンチ力測定ゲーム』と呼ばれるものだった。
一応知識として知っていたのでそのことを伝えると楽しそうにはしゃぐ。
そしてやりたがったのだが、流石に女の子にこれをさせるのは良くないと思い止めて貰うことに。
そうしたら……
「では、一真様がやってみて下さい。わたくし、一真様の雄姿をみたいです」
と上目使いにお願いされてしまった。
ここでやらねば男が廃る。
だからこそ、俺はこの筐体の前に立ち、グローブを付けて構える。
そしてガイドに従って殴る対象が出るまでを操作した。
対象が出た後に開始の合図が鳴った瞬間、俺は全力……武者として鍛えた金剛力を発揮して対象を殴った。
その瞬間………
筐体そのものが吹っ飛んで壁に激突し、火花を散らしてぶっ壊れた。
「「あ…」」
間の抜けた声を上げてしまう俺達。
筐体は崩壊しつつも最高得点を出したときの音を流していた。
この後、係員に呼び出されてしまったが、寧ろ凄いと褒められてしまった。
そのため、修理のお金とかは取られずに済んだが……
俺はこのゲームセンターの身体を使ったゲームを全て禁止されてしまった。
その事に葵さんは悲しそうにしたが、俺はただ苦笑するしかなかった。