本当にこの二人、息子のこと考えているのでしょうかね~。
拝啓 父さんへ。
そろそろ梅雨もあけ、初夏の気配を感じ始める今日この頃、其方は如何お過ごしでしょうか。
このようなメールをお送りしましたのも、実は驚くべきことがいくつも起こったからです。人生経験が浅く若輩な自分には、これらの問題にどう向かって行けば良いのか分からず。こうして先達である父さんにお話を聞ければと思い、こうしてメールをお送りしました。
まず、自分でも何を言っているのかイマイチ分かりかねますが、それでも聞いて下さい。
なんと………
同居していたルームメイトが実は『女の子』だったのです。
嘘で冗談でもなく本当の話で。
それまで友人だと思っていた人がまさか女の子だなんて、誰が思うでしょうか? 前は徳臣 信吾と名乗っており、確かに女の子の様な顔立ちにエッチな話が苦手だったり、自室の簡易風呂しか使わない人でしたけど。
それだけでも驚きだというのに、なんと………
その女の子から『告白』されてしまいました!
そもそも、何で武帝校の男子寮に女の子が入っているのかと言えば、それも驚くことに俺が原因……というか、俺を追って入って来たそうで……。
普通ならどう考えても無理な話なのですが、どうも父さんの言っていた『童心』という人が手配したそうです。
武帝校は六波羅の人が結構関わっているからそういう無茶なことも出来るそうです。
この人、校長の教育係もしていたそうで、校長は頭が上がらないって言ってましたよ。
一体どんな人なんでしょうね。
おっと、少し話が脱線してしまいました。
それで俺を慕って追いかけてきてくれた子……名前は徳臣 葵という旧家のお嬢様なのですが、とてもお淑やかで料理上手な大和撫子と言った印象の子なんです。
そんな女の子に告白されて嬉しくないわけがないのですが、それとは別にもう一つ問題が……。
実は葵さんに告白される前に、皆の前で、
灯姉さんから『告白』されてしまいました。
姉さんが冗談を言ったりするような人でないことは、父さん達も御存知だと思います。
姉さんは本当に俺のことが好きだということが分かり、俺はこの何とも言えない感情に戸惑っております。今まで本当の姉のように思っていた人からの真逆の異性としての告白。いや、灯姉さんから告白されたことが嫌と言うわけではありません。
とても優しく、俺を見守ってくれる女性として、とても好感があります。
でも、それでも……俺はそれにどう答えて良いのか分からないんです。
俺は灯姉さんのことは好きだって言えますけど、それが恋心による物なのか、ただの家族愛なのか、その判断が付かないのです。故に告白の返事は返していません。
灯姉さんも『私がかずくんのことが好きだってことを分かってくれれば、それでいいから。頑張って振り向かせちゃうからね』と仰っています。
それで未だに答えられていないのに、さらに葵さんからも告白されてしまって……
未だに二人に返事を出せておりません。
姉同然だと思っていた人と、友人だと思っていた人からの告白。
それに心は動揺してしまい、どうしたら良いのか持て余しています。
一体俺はどうすればよいでしょうか?
何かご助言を頂ければ幸いです。
「ふふふふふ、かずくんったらモテモテね」
ベットの上でお互い寄りかかるように身を寄せ合っている一夏と真耶は最愛の息子から来たメールを見て楽しそうに笑う。
「一真は随分と女の子に好かれるみたいだね。これを親として喜ぶべきか、返事を返せていないことに注意するべきか……」
苦笑しながらそう言う一夏に真耶はイタズラをするかのように微笑みながらくっついた。
「それを旦那様が言っちゃ駄目、ですよ」
「というと?」
「だって旦那様もこの年頃の時、篠ノ之さんたち五人に言い寄られていたじゃないですか」
真耶は昔、一夏と出会った頃の話を懐かしむように話し始めた。
それを聞いた一夏は苦笑をさらに深めるしかない。
確かに彼は学生時代、五人……いや、六人の少女達から好意を向けられていた。だが、自分がそういった恋愛感情というものに鈍かった結果、それに中々気付くことが出来なかったのだ。
今では妻を愛している気持ちは誰にも負けないと胸を張って言えるが、当時の彼はそこまで機敏ではなかった。
欠落していると言っても良いくらい、本当に鈍感だったのだから。
「あの時の旦那様だって結構な物だと思いますよ。御蔭で私はやきもきしっぱなしでしたから」
「それを言われると痛いですね。でも、今はっ」
一夏はそこで言葉を切ると共に、隣にいた真耶を胸の内にしまい込むように抱きしめ、その瑞々しい唇にキスをした。
「こうして一番愛している人と一緒にいて、愛し合うことが出来ます」
「もう、旦那様ったら……」
最愛の夫からキスされ、真耶は顔を赤らめ喜ぶ。
そしてその喜びをもっと伝えたくて、真耶は一夏のに向き合って密着する。
セクシーなランジェリーに包まれたとてつもない質量を誇る胸が一夏の胸でむにゅりと押し潰される。その感触に顔を少し赤面しつつも、一夏は真耶に微笑んだ。
「だから一真にも、こういう風に愛せる女性と一緒になって貰いたいんですよ、俺は」
「それじゃ答えになってないじゃないですか。でも、それは私も一緒です。かずくんには幸せになってもらいたいから」
そしてお互いに抱きしめ合いながら二人は笑う。
幸せを感じながら。
そして息子へと返事を送った後、二人でベットに倒れ込んだ。
「旦那さまぁ……きょ、今日は激しくお願いします……」
顔を真っ赤にさせ、潤んだ瞳で最愛の夫にお願いする真耶。
それに一夏は笑顔で答える。
「それは、『今日も』じゃありませんでしたっけ? 昨日もとても良く啼いて……」
言われたことに顔をさらに真っ赤にして恥じらう真耶。
そんな反応をする最愛の妻を一夏は可愛くて仕方ないのだ。
「い、イジワルなこと、言わないで下さい。だ、だって……気持ちよかったんですもの……」
「すみません、あまりにも真耶さんが可愛いものですから、ついついイジワルをしてみたくなってしまって。では、ご要望に応じて、今日も精一杯頑張ります」
そして二人の影は重なり合い、その部屋は嬌声で満たされた。
最愛の息子に送った返事は、
『すぐに答えが出せないのなら、もっと時間をおいて見極め答えなさい。お父さんなんて、学生の時は六人もの女性から言い寄られていたんだから』
である。
息子は父の知りたくない過去をまた一つしってしまい。何とも言えない気分になった。
父さんにメールを送り、余り当てにならないアドバイスを貰った翌日。
俺が未だに布団で横になっている時にそれは起きた。
最近、葵さんと同室と言うこともあってか緊張して眠りが浅くて仕方ない。
告白される前はまったく意識しなかったが、今では彼女から香る女の子の甘い匂いなどが俺の心臓をドキドキとさせっぱなしだ。
御蔭で彼女の身じろぎ一つ意識してしまう始末。布のこすれる音など、もう気が気では無い。
そんな環境でも、何とか寝ようと必死な今日この頃。
俺は寝ぼけた頭で側に人がいる気配に気が付いた。それも二人。
「うふふふ……一真様の寝顔……可愛いです……」
「そうよね~。かずくんったら、こんな無邪気な顔をして。お姉さんをきゅんきゅんさせちゃうんだから」
見られている!
それも間近で。耳を澄ませば二人の呼吸音が聞こえ、鼻で息をすれば女性特有の甘い香りが鼻腔を満たす。
「ずっと見ていたいですけど、そろそろ一真様の鍛錬の時間になってしまいますから、起こさないと」
「そうね。それじゃあ……」
「「じゃんけん、ポン」」
二人でじゃんけんを始める声に、俺の意識は覚醒し始める。
どうやら葵さんと灯姉さんらしい。
ここ数日争うように競っていたのだが、葵さん曰く、
『一真様に言い争っている醜い姿を見られたくないので、もっと穏やかに競います』
とのこと。
基本はこういったじゃんけんなどで競うことが多くなり、そうでないときは二人一緒だったり。恋敵だが同時に友人と言った関係になりつつある。
そしてじゃんけんは五回ほど進み、未だにあいこのまま。
「これじゃあいつまで続くか分からないから、今日は引き分けね」
「そうですね。このままじゃあ一真様が遅刻してしまいますから」
そう言うと、二人は俺から少し離れるとコソコソと小声で話し始めた。
「それじゃあ、こういう起こし方は……」
「そ、そんなっ大胆なっ!? で、でも、それで一真様が喜んでくれるなら……」
一体何の話をしているのやら。
疲れもあって再び意識が沈みそうになっていた時、灯姉さんと葵さんは俺の顔を挟んだ両側で俺に声をかけた。
「か~ず~くん! 朝だよ~!」
「一真様、朝ですよ。起きて下さい」
鈴のような軽やかで聞き心地のよい声に起こされ、俺は何とか起きると、二人は両側から顔を近づけ、そして……
「「ちゅっ」」
俺の両頬に柔らかい感触が二つ当たった。
「ほら、おはようのキスだよ、かずくん」
「は、恥ずかしいですけど、一真様になら……」
恥じらう二人を見て、何をされたのかを気付き、俺は顔が一気に真っ赤になって意識が完全に覚醒した。
「っ~~~~~~~~~!?!?」
こうして、刺激的な起こされかたをした俺は、再び眠気とは別で意識が薄れていった。
(父さん、母さん……俺は今、とても大変です………)