織斑 一真の苦悩   作:nasigorenn

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今回は何と、新しい劔冑が登場しますよ。


第30話 留学は突然に

 段々と近づいて行く夏への気配を感じ、ジリジリとする暑い日光を感じる今日この頃。

今日も今日とて、俺は………

 

「死ねやぁ、一真ぁ!!」

「この二股野郎ぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「リア充、殺っ!!」

「羨ましい! 妬ましいぃいいいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」

 

襲われていた。

もう毎日の恒例行事の様になっているのでそこまで驚くこともなくなったが、だからといってやはり勘弁願いたい。

もう灯姉さんと葵さんの二人の御蔭で、たぶんこの学校の半分以上の男子から襲われているんじゃないだろうか。

御蔭で本当に気が休まるところがない。

何せ休み時間になれば示し合わせたかのように教室に揃って飛び出し、さらにクラスの奴等も一緒になって襲ってくるというのだから手に負えない。

唯一まともとも言い切れないがあることと言えば、俺を集団で押さえ込んだ後に行う裁判もどきくらいなものだろうか。何故かこれだけは絶対に行うんだよなぁ。

それで毎回罪状……というか殆ど言いがかりだが、それを言われてほぼ無罪が有り得ない判決を下されて、それで襲われるわけだ。

そんな茶番めいた裁判に黙って参加する俺も俺だと思うけど。

今もこうして朝に教室に来て裁判をされてこうなのだから、もう何とも言えない。

 

「毎回毎回しつこい! 来い、絶影! こいつらを叩き伏せる!」

 

もうこの襲撃で当たり前のように絶影を呼び、俺は襲撃してくる奴等を絶影と一緒に片っ端から叩き潰していく。

 

「うっせぇ、この果報者がぁ!」

「良くも俺達の天使、信吾もとい葵さんをぉおおおおおおおおおおお!!」

「俺達の憧れのお姉様、真田先輩をぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「「「「「絶対に許さん!!」」」」」

 

まさに憎悪に身を焦がした悪鬼の如く、皆凄い形相で襲い掛かってくる。

そいつ等を叩きのめしている間、葵さんが俺を心配そうな目で見つめていたりする。

 

「一真様…………」

 

そんな葵さんを雄飛達は笑って話しかけていた。

 

「大丈夫大丈夫。いつものことだって」

「そうそう。一真がこんな目に遭うのは中学時代から当たり前のことだよ。今更心配しても無駄無駄。だって『一真』だからね」

 

聞いていて突っ込みたくなるようなことを言う二人。

しかし、言っていることは本当なんだよなぁ……中学の時もこれほどじゃなかったけど結構やっかまれてたし。

 

「そんなこと仰らないで下さい。一真様はとてもお優しいお方なのですから、こんな無情な目に遭って良いわけがありません! あぁ、一真様…」

 

やっぱり人に心配してもらえるのは少し嬉しい。

雄飛達はもうそれが当たり前になっているからって心配なんてしないし。

本当は心配などさせてはならないのだが。

迫り来る奴の顎を掌底で打ち抜きながらそう思う。

 

「信吾の時から分かってたけど、葵ちゃんって一真のこと、本当に好きだよねぇ」

「そうそう、本当に羨ましくなるくらいな」

 

二人して葵さんにそうからかうと、葵さんの顔はリンゴのように真っ赤になってしまった。

 

「そ、そんな……ぁぅぁぅ…」

 

恥ずかしがってもじもじし始める葵さん。

信吾の時でも結構なものだったが、今は女子の制服であるセーラー服。

凄い美少女の葵さんがそんな反応をするのだから、それを見た周りの奴等は……

 

「「「「「「か、可愛いぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」」」」」

 

ズキュンッ、なんて効果音が聞こえたような気がした。

葵さんを見た奴等は胸を押さえて倒れていたが、目は何やら幸せそうだった。

確かに可愛いと思うけど、そこまで反応するほどなのか? まぁ、御蔭で襲ってくる奴の殆どが倒れたけど。

そして鳴る始業のチャイム。

それと共に鷺沢先生と幸長おじさんが入って来た。

 

「は~い、みんな~! 席について~!」

「ほら、もう授業が始めるぞ。倒された人達も早く自分の教室に戻りなさい。駄目そうな人は悪いけど保健委員の人が保健室に持って行ってくれ」

 

二人がそう言うと共に、ふらふらした足取りで自分のクラスや学年に戻って行く人達。ダメージが大きすぎて動けない者は保健員によって保健室に連行されていった。

そして教室はいつもと変わらない様子になると、鷺沢先生が連絡事項を伝え始める。

 

「今日はこれから全校集会がありますので、みんな並んで体育館に移動です」

 

「「「「「ええぇえええええええええええええええええええええええ!!」」」」」

 

いきなりの集会に不満を漏らすクラスの皆。

といってもこれも結構あることなので驚く程でもない。要はノリだったりする。

そこで俺は妙な視線を感じ、その視線が来ている方向を見ると幸長おじさんがやけにニコニコ笑っていた。

最近おじさんがそんな反応をする時は大体碌な事がない。

故に俺は嫌な予感を感じ始めていた。

出来れば思い過ごし出会って欲しいと願いたいけど。

 そう思いながら俺達は体育館へと向かっていった。

 

 

 

 体育館では既に全校生徒が集まりつつあり、ざわざわと騒がしくなっていた。

皆これから何があるのか、それに妙に期待があるからである。この学校は大体全校集会がある度に何かあるので、自然と期待してしまうようになってしまう。もともと娯楽が少ないので尚のこと。

だが、今回は妙に上級生の所が静かになっていた。何か知っているのかもしれない。

そして壇上に校長が上がると皆静かになった。

 

「皆さん、朝早くにご苦労様です」

 

にこやかに笑みを浮かべる校長。

見た感じは二十代の青年にしか見えない。父さんといい校長といい、何でこんな若々しい人ばかり何だろうか?

校長は皆に挨拶を終えると、少し真面目な顔になって話し始める。

 

「まず、皆先日の武芸大会ではご苦労様でした。皆の成長している武が見られるのは喜ばしいことです。それで今回頑張った人にある物を贈呈したいと思います」

 

「「「「「えぇええええええええええええええええええ!!」」」」」

 

その途端、体育館内に響き渡るくらいの声が上がった。

どうやら去年はそんなことはなかったらしく、不満の声が出ているようだ。

だが、それを周りの武者の教員が殺気を持って鎮める。

皆本物の殺気の前にはやはり怖じ気づいてしまうのだ。

校長はそのことに苦笑しつつも笑いながら話を進める。

 

「まぁ、そう言わないで下さい。本当ならなかったのですが、今回は特別です。何せ、今回はとてつもない逆境だったのにとても頑張った生徒がいたものですから」

 

そう言うと共に、優しい笑顔を生徒に向けると校長はある生徒の名を呼んだ。

 

「『徳臣 葵』さん、壇上に上がって下さい」

「わ、わたくしですか!?」

 

いきなり名前を呼ばれたことで驚く葵さん。

少し怖じ気づいていたが、呼ばれたからにはちゃんと向かわなくてはと気を取り直し、淑女のようにお淑やかに壇上へと上がっていく。その姿に見ていた男子生徒が息を呑んでいた。

壇上に上がった葵さんに校長は微笑ながら話す。

 

「この度、学校側からの無茶な要求に応え、さらにそんな状態にあるにも関わらず一学年代表戦で性別の壁を打ち破って優勝した彼女の功績は素晴らしい。なので急遽、そんな立派な武者たる彼女にはより高みをめざして欲しいので此方で『こんなもの』を用意しました」

 

校長が言い終えると共に、他の先生が二人がかりで何かが乗っているカートを押し教壇の前に持ってきた。そして校長が上に掛かっていた真っ白いシートを勢いよく剥がすと、そこには………

 

「………箱……ですか?」

 

仰々しい台に置かれた小さな小箱が置いてあった。

その様子に皆肩透かしを食らう。てっきり新しい劔冑だと思っていたのだが、出てきたのは小さな小箱なのだから。

葵さんは不思議そうに小首を傾げていると、校長は笑いながら小箱を手に取り葵さんに見えるように開けて見せた。

すると中からは一つの光り輝くものが出てきた。

 

「これは……指輪ですか?」

 

箱の中から出てきたのは指輪である。

白銀に輝く指輪で、表面には何やら意匠のある模様が見えている。

 

「これをはめてこう言って下さい。『白菊、抜刀』と」

 

校長にそう言われ葵さんは指輪をはめると、その言葉を口にした。

 

『白菊、抜刀』

 

その途端に指輪が強い光を放ち、辺りが見えなくなるほど眩しくなった。

そして光が収まると共に、葵さんが立っていた所には……

 

武者が立っていた。

 

白銀の装甲をしていて、細身の体躯。

それでいて背中には小型だが四基もの合当理が付けられており、相当に速いことが予想される。そして顔の部分だけ装甲がなくなっており、灯姉さんと同じように素顔が出ていた。

 

「え、あの、これは!?」

 

いきなり自分が装甲していることに驚く葵さん。

そんな葵さんに校長は少し面白い物を見たかのように笑いながら答えた。

 

「これは最近できた『試作数打劔冑』で、銘を『白菊』と言います。ISの量子変換機能を組み込み、ISのように展開できる劔冑ですよ」

 

「「「「「「えぇええええええええええええええええええええええええええ!!」」」」」

 

突然の新しい試作数打劔冑に驚く皆。無理も無い話であり、俺も驚いている。

 

「ですが、まだまだで装甲強度が弱いんです。なので彼女のような回避能力に長けた人でないと使いこなせないんです」

 

補足を入れる校長にどこか納得がいく。

葵さんは正面から打ち合うよりも躱したり逸らしたり受け流すのが上手いからだ。

未だに戸惑う葵さんに校長は笑いかける。

 

「この新しい刃を持って、より武に励んで下さい」

「は、はい!」

 

葵さんは何とか返事を返すと、行き同様にゆっくりと壇上を降り、此方へと戻ってきた。

その顔は驚きながらも喜んでいるようだ。

 

「あ、後もう一つ連絡があります」

 

これで終わりかと思っていたけど、どうやらまだあるようで校長が皆に話しかける。

そしてとんでもないことを次に言い出した。

 

「織斑 一真君、徳臣 葵さん、真田 灯さんの三人は明後日からIS学園に一ヶ月間留学です。先方にはもう連絡は行っているので、今日の授業が終わった後に準備をして下さい」

 

「……………え?………えぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?」

 

 たぶん……今日一番に俺の驚愕の叫びが体育館に轟いた。

 

こうして俺と葵さん、灯姉さんの三人は急遽IS学園に短期留学することになってしまった。

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