織斑 一真の苦悩   作:nasigorenn

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今回もまた妙に甘いことに。
感想、じゃんじゃん待ってます。気軽に書いてくれるとうれしいです。


第32話 教室に行く前に織斑 一真は赤面する。

 寮の部屋に自分の荷物を置くことになったわけだが、ここで更に俺は災難に見舞われた。

IS学園は元々女性しかISが使えなかったということで女子寮しかなかった。

だが、十年くらい前に束さんが新たに『男性でも動かせるIS』を作ったことで男子もISを使えるようになり、結果IS学園にも男子が入って来るようになった。

と言っても元々が凄い倍率の学校なだけあり、余程優秀か特殊な技能が無ければ入学や編入は難しく、また劔冑の存在もあってか男子生徒はそこまで多くない。

なので必然的に男子寮も小さな物になってしまうため………

 

「だからって………何で女子寮の部屋かなぁ……」

 

俺は部屋に入って荷物を降ろしながらそう愚痴る。

男子寮は小さいために部屋数が少なく満員。

なので空きのある女子寮の部屋になったと言う訳らしい。

女子寮に着いた途端に千冬伯母さんが俺を見てニヤリと笑いながらそう説明された時には本当にどうしたものかと思ったくらいだ。

しかもこの部屋決めにも校長が関与しているらしく、その言い分を聞かされては俺は文句も言えなくなってしまう。

 

『現在において三指の実力者にして英雄である君のお父さんが過ごした環境を感じて貰いたくてね』

 

だそうだ。

要はそれほどの実力者を鍛え上げるためには環境から、と言うことらしい。

校長はどうも昔から父さんの知り合いらしいから、結構期待されているんだよなぁ。

そう期待されては応えるために頑張らなくては男ではない。故に環境がどうあれ頑張るしかない。とは言えなぁ……はぁ……。

そんな憂鬱な気分の俺とは違い、葵さんは凄い上機嫌だ。

 

「そう言わないで下さい、一真様。わ、わたくしは寧ろ嬉しいですよ。だって……一真様と同じ御部屋ですから……」

 

顔を真っ赤にして恥じらいながら俺を見つめてそう言う葵さん。

その潤んだ瞳にドキッとしてしまった。

 

「そ、そうですか……」

「はい! だってお慕いしている殿方と一緒の御部屋だなんて……まるで夫婦のようではありませんか」

「うぅ…」

 

そんな正面から言われると改めて照れてしまう。

そして『そんな』想像が頭を少し過ぎった。葵さんと新婚生活………はっ!? 駄目だ、これ以上意識すると顔が見れなくなりそうな気がする!

俺は慌てて顔を逸らして葵さんに見られないようにする。熱くて仕方ない頬を何となく見られたくなかった。

葵さんはそんな俺を見てどこか嬉しそうに微笑んでいた。

 

(うふふふ、一真様ったらあんなにお顔を真っ赤にして。意識してもらえているようで何よりです!)

 

何やら見られていて気恥ずかしさを感じ、俺は慌てて荷物を降ろすと葵さんと一緒に部屋を出た。

 

 

 

 寮から出て、教室までマドカ叔母さんに連れて行って貰い俺と葵さんは教室の前で待つことになった。

寮に着いた時に夏耶と別れたのだが、

 

「お兄ちゃん、待ってるからね!」

 

と嬉しそうに言われて抱きつかれた。

その頭を撫でつつもそう言う辺り、俺と葵さんは夏耶と同じクラスなのだろう。

 

「またすぐ甘えるんだから」

「いいの。だってこうやってお兄ちゃんに甘えられるのは妹の特権だもん。ぎゅ~~~~~~~~」

「はぁ…もう、仕方ないなぁ」

「うん! おにいちゃ~ん!」

 

甘えたがりの妹を優しく撫でながらそう考えていると、何やら葵さんと灯姉さんから羨ましそうな目で見られたたが。

正直、少し会わないだけでとても成長した妹にドキドキしてしまっている身としては、あまりこういう風にくっつかれるのは何とも言えない気分になる。

そして校舎で灯姉さんと別れる。

灯姉さんは二年生なので二年の教室へ行くことになっているからだ。まぁ、当たり前の事なんだが。

 

「かずくん、寂しいけどお姉さんはここでお別れね」

 

寂しそうに笑顔を俺に向ける灯姉さんに俺は苦笑しつつも笑顔を向ける。

 

「そうだね。でも、昼休みや放課後に会えるんだからそんな顔しないで。それに俺から遊びに行ってもいいし」

「そうだね。でも、やっぱり寂しい物は寂しいの。だから……」

 

そこで言葉を切ると俺にゆっくりと近づいてきた。

何だろうと不思議に思っていた途端、俺は気がつけば目の前を柔らかい感触で覆われていた。

 

「あぁっ!? 何をなさっているんですか、真田先輩!! そんな羨ましっ……不健全なこと!」

 

すぐ側から葵さんの驚いた声が聞こえた。

それでやっと自分がどうなっているのか気付いた。

現在状況……俺は灯姉さんに顔を抱きしめられているようだ。

あの夏耶よりも大きな胸が俺の顔面を包み込んでおり、女の子特有の甘い匂いが鼻腔に満たされる。

 

「んぷっ!? ね、姉さん! 何やってるの!!」

 

俺はその事実に驚愕して声を出す。

自分の声よりも灯姉さんの心臓の鼓動の方が大きく聞こえてきて、それが更に此方の鼓動に拍車をかけていた。

今日で一体こうされるのは何度目だろうか? 

羨ましい? 慣れないのか?

冗談ではない! こんなこと、慣れるわけがないし、毎回こんなドキドキしてたら生活んい支障がでる。

 

「か~ずくん! さっき篠ノ之博士に抱きしめられてた時、嬉しそうだったし私も羨ましかったから。こうして『かずくん成分』を補給するの。だからかずくん……もっと抱きしめさせて。ぎゅ~~~」

「むがぷぷっ………」

 

柔らかい感触のい顔全体を覆われ呼吸が難しくなっていく。

甘い香りと暖かい体温を感じ、俺はドキドキして仕方なく更に頭が混乱する。

しかも周りは気付かなかったようだが、何と灯姉さんは抱きしめながら俺のおでこに顔を近づけて………キスをした。

胸とはまた違った瑞々しい柔らかさを額の肌越しに感じてさらに顔が真っ赤になっていくのを感じてしまう。それがばれたのか、灯姉さんは俺にだけ分かるように微笑んだ。

 

「大好きな人が他の女性に抱きしめられてるっていうのはやっぱり気持ち良くはないから。だからこれでかずくんに上書き」

「ぁ、ぁぅ……」

 

その可愛らしくも優しい笑みに俺は言葉を失ってしまう。

そして灯姉さんは静かになった俺を思うさま抱きしめ、三分程したらやっと解放した。

 

「うふふふ。これでかずくん成分補充完了、今日も頑張れるわ」

 

ホクホクとした笑顔で満足そうにそう離れると、灯姉さんは校舎へと入って行った。

そして現在に戻り、こうして教室の前で立っているわけだが……

 

「あ、あの……葵さん?」

「何でしょうか、一真様?」

 

何やら葵さんの機嫌が悪いようで。

きっと原因は……灯姉さんとかなんだろうなぁ。

 

「その~……何でそんなに機嫌が悪いんでしょうか? たぶんさっきのやり取りが原因だとは思うんですが……」

 

何故か浮気がばれた夫のような感じに気まずくそう聞くと、葵さんは小さな溜息を一回吐いてから俺の顔を見つめてきた。

 

「少しは自覚があったんですね」

「うぅ……まぁ…」

 

何だろう? 凄く責められている。

いや、アレは俺が悪いわけではない。だけどなぁ……気まずい。

 

「……ずるいです……」

「え?」

 

葵さんから聞こえた小さな呟きに俺は聞き返してしまう。

さっき……ずるいって。ずるい?

すると葵さんは俺に何かを求めるような目を向ける。

 

「だって、夏耶さんは抱きしめられて頭を撫でてもらって、真田先輩は一真様を思うさま抱きしめて。わたくしだけは何もないのに……」

「いや、それは……」

 

いつものことのような気がするのに、そう答えられない。

何となくだけど、葵さんが言いたいことも分かるから。

だから俺は葵さんに笑顔を向けてこう答える。

 

「自分からするのは恥ずかしいですけど、公平にするならこれが俺には限界です」

「あっ……」

 

答えると共に、葵さんの身体を壊れ物を扱うように慎重に抱きしめた。

細いながらに柔らかい身体。そして身体から香る桜の花の香りに俺は胸がときめくのを感じた。

抱きしめられた葵さんは顔を真っ赤にして俯いてしまったが、どこか幸せそうに身体を任せているようだ。

そしてほんの少しだけ抱きしめた後に離れようとしたのだが…

 

「ま、まだ足りません。だからこれで……」

 

そう言うとつま先で立ち上がり、俺の頬に顔を近づけた。

次の瞬間、俺の頬に柔らかい感触が触れた。

それが何なのかを問われて答えられない唐変木はいないだろう。

俺は更に赤面してしまい、少し急いで離れた。

葵さんはと言うと、今までで一番顔を真っ赤にしながら俺を見詰めていた。

 

「これで……おあいこです……」

 

そして恥じらいもじもじしてしまう葵さん。

俺も気恥ずかしさから無言になる。

 

(わ、わたくしったら、なんてはしたない真似を……。で、でも、一真様に抱きしめてもらっちゃいましたし……えへへへ…)

(今日は一体何なんだ!? 何で今日に限ってそんな………」

 

そのまま気まずくなり、互いに赤面して困っていた所で教室の扉が開いた。

 

「二人とも、お待たせ」

 

中から出てきたのはマドカ叔母さん。

この一年一組の担任をしているので、先に入って俺達の事を生徒に説明していた。

マドカ叔母さんは俺と葵さんを見ると何やら心配そうな顔になった。

 

「二人とも顔が真っ赤だけど大丈夫か? 一真、熱はないか?」

 

そう言いながら俺の額に手を当てるマドカ叔母さん。

その反応に俺達はほぼ同時に返した。

 

「「い、いえ、何でも無いです」」

 

「そうか? ならいいんだけど。風邪とかは気を付けないと駄目だからな」

 

マドカ叔母さんはそう言うと俺から手を退け、そして改めて俺達を見た。

 

「さぁ、入ってくれ。ここが一ヶ月間一真達が学ぶクラスだ」

「「はい」」

 

そう返事を返し、俺と葵さんは一組の教室へと入っていった。

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