葵さんがやらかした事により、俺はこのクラス中の視線を一身に集めることになり、冷や汗やら何やらが全く止まらない。
その原因とも言える葵さんはというと………
「わ、わたくしったら何てことを………恥ずかしいです……」
見ていて可哀想になるくらい顔を真っ赤にして席で恥ずかしがっていた。
本人には内緒だが、とても可愛かった。
そしてクラスが落ち着いてくるのを見計らって改めて質問を受け付けることに。
「では、改めて。何か聞きたいことはあるか!」
マドカ叔母さんの仕切りの元、再び教室内は騒がしくなる。
みんな(女子)目を輝かせてとても期待しているようだ。何やらムズかゆくて仕方ない。男子からはお馴染みの羨望と嫉妬の視線が向けられている。これにはもう慣れたから問題はないけど。
そして手を挙げて質問をしたいと言う人が主張している中、何を考えたのか夏耶を当てるマドカ叔母さん。寧ろ何故手を挙げたのか不思議でしかたないんだが、夏耶。
「それじゃ織斑……だと判断し辛いから夏耶でいいか。んじゃ夏耶」
そういう叔母さんに突っ込みたい。
普通、そこは織斑妹とか、そんな言い方なんじゃないかなぁ。
それじゃあ身内びいきで怒られるんじゃ……
しかし、クラスの皆は何も言ってこないあたり、気にしていないということなんだろう。
夏耶は明るく返事を返すと、席を立った。
そして俺を見てニッコリと笑う。
だが、俺はその笑みを向けられて背筋がぞくりと来る感覚に襲われた。
そして何故そうなったのか? 夏耶の口から出てきたことが原因である。
「お兄ちゃんに質問です! 今現在、お付き合いしている人はいますか?」
「「「「「!?」」」」」
その質問にクラス中の女子が息を呑む。
俺も突然のことに驚愕の声が漏れかける。
そして葵さんから真剣な眼差しを向けられた。
夏耶はというと、変わらずに笑顔である。何で初っ端からこんなことを聞いてきたんだ、夏耶………正直怨むぞ。
皆の視線を一身に浴びながらも、俺は席を立って答える。
「今交際している女性はいません。ですが……気になっている人なら……」
「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」
返答を聞いて騒ぐ女子達。
俺は現在、二人の女性から告白されているとは、流石に言えない。それを分かった上で夏耶の奴は聞いてきたはずである。
困惑しつつも夏耶の方を見ると、夏耶は俺に微笑みかけてきた。
「そっか~、えへへへへ。ちなみに私も誰も付き合ってないよ。だって……お兄ちゃんが一番だもの」
幸せそうに笑う夏耶。
その微笑みがいつもの夏耶と違った感じで俺は少しドキッとした。
ってあれ? 妹に何で俺はドキッとしているんだ?
周りはそれを聞いて『禁断の愛』だの『ブラコン』だのと色々と言っているが、雰囲気から軽蔑しているようではないようなのでよかったが。下手をすれば異常者扱いされてしまうかもしれないというのに、なんということを……。
そして席に付いた夏耶は聞きたいことと言いたいことが言えたようで嬉しそうであった。
女子というのはテンションが上がれば何処までも上がり続けるという物のようで、夏耶の言葉を皮切りにさらに周りは騒がしく盛り上がる。
「んじゃ次は沢城」
マドカ叔母さんもどこか楽しんでいる様子で生徒を指す。
どうもどんな質問が出るか楽しんでいるようだ。
手を挙げた女子は立ち上がると、顔を少し赤らめながら聞いてきた。
「あの、武帝高校ってどんなところなんですか? あまり良く知らないんで教えてくれませんか? 結構近いって言うこと以外知りませんし」
その質問に皆が聞きたそうに目を俺に向けてきた。
そこまで知名度は低くはないはずなんだけどなぁ。
「ええっと……武帝校はこの学校とはまさに真逆ですね」
「と言うと?」
「山奥の旧世代の学校を模しているというか、そのままというか……。立地は山の中で、校舎は木造建築です。それに寮も木造で部屋は畳。テレビもなければこんな電子機器の組み込まれた机もない、エアコンなんて便利な者もなく、教室にあるのは黒板です。まさに田舎ですね。まぁ、劔冑に関してのみは最新技術の施設なんですけどね。それ以外は今の世の中の生活基準より低いです」
言っていて結構へこむ。
慣れてしまうとどうということはなくなるが、こうしてIS学園と比較すると如何に酷い環境なのかがわかる。
俺の答えを聞いてまわりの女の子が驚く。
口々に『ありえない』とか、『よく生活出来るね』とか。
慣れれば何のそのといった感じなので何とも言えない。
すると質問してきた女子は更に聞いてくる。
「何でそんな酷い環境なんですか? そんなんじゃ勉強出来ないんじゃ……」
それに関しては俺ではなく葵さんの方がわかりやすく説明してくれるだろう。
葵さんは俺に微笑みながらも立ち上がって質問に答えた。
「そこにあるのは思想の違いです」
「思想?」
「はい。武帝校は武者の教育機関。IS学園がIS操縦者を育成するように、武帝校は武者を育てます。武者を育てるというのは、劔冑を使う者を育てるというだけではありません。武者とはすなわち、高潔なる精神を持ち、弱きを助け守る者。心・技・体の三つを兼ねそろえた者のことです。それらを鍛える為には、清貧な生活をすることで物の大切さや食べ物を食べられる有りがたみを感じ、学校への清掃などで感謝する心を学び、限界以上の鍛錬により自らを追い詰め心を鋼のように鍛える。そのための環境が、先程一真様が仰った環境なのです。生活しやすいということは苦労が少なく、故に怠慢になりがちだからこその環境ですね」
丁寧に説明する葵さん。
その説明を受けて周りの生徒は感心したように声を上げた。
まぁ、そんな環境だけど慣れれば結構良い物だよ。川の幸食べ放題だしな。取りに行けば。
その後も質問は続いていき……
「織斑君の趣味はなんですか?」
「趣味………鍛錬かな?」
とか、
「徳臣さんのスリーサイズは?」
「い、いえません!」
男子生徒が巫山戯ながら聞いてきたりなど。
葵さんは顔を真っ赤にして恥ずかしがって言わなかったが。
危うく手が出そうになってしまった。武帝校なら、こんな質問した矢先に皆から襲われそうなものである。そんな風に考えてしまう俺はきっと毒されているに違いない。
そして一頻り質問を受け答えしてこの時間は終わった。
俺と葵さんは少し疲れたが、どうやらこのクラスに受け入れてもらえたようだ。
「それじゃあ次の授業は外で実習だ。一真と徳臣さんにはみんなに劔冑を見せてあげてくれ。生で見る劔冑はこれまた違うからな」
そうマドカ叔母さんに言われ、一時間目が終わった。
そして次の授業のために第三アリーナに向かうことになったのだが……
「それじゃ一緒に行こう、お兄ちゃん」
「か、一真様、わたくしもご一緒にいきます」
両側から腕を組まれ歩き出す俺達。
俺はアリーナまでの道のりを両側から感じる柔らかい双丘の感触に赤面しながら歩いて行った。