「はぁ…………」
「大丈夫ですか、一真様?」
IS学園に短期留学して既に三日が経った。
いや、もう……とても大変な三日間だったとしか言い様が無い。
何せ、初日の夜に葵さんから……
「すみません、一真様。そ、その……あまり慣れない物ですから、寝付けなくて……。なので、眠くなるまで……そのっ…一緒にいてくれませんか!」
と泣きそうな程顔を真っ赤にして上目使いでお願いされ、何故か一緒のベットで横になることに。
その時、俺の小さい頃の話をすることになり、過去の思い出を恥ずかしいながらも語るはめにあった。ただでさえ気恥ずかしいというのに、さらには呼吸の音が間近に聞こえるくらいに近い距離にいる葵さんの存在が俺を全く寝付けさせなかった。
御蔭で寝付けず、精神的にきつい。
改めて思うが、葵さんは何気ない仕草が艶っぽいので意識してしまうと気になって仕方なくなる。
着ている薄ピンク色のパジャマの絹擦れの音や悩ましい吐息など、青少年を刺激して止まない。改めてどうして一緒の部屋にしたのかと千冬伯母さんを問い詰めたくなった。
そして二日目の朝。
慣れない環境だったので全く疲れが取れない。そしていつの間にいたのか、夏耶が俺の左腕を抱きしめて隣で眠っていた。
IS学園に来る前も何度かあったが、改めてされるとやはり驚いてしまう。
ワイシャツ一枚の姿で、大きな胸が俺の腕を挟み込む。
今まで意識していなかったが、こんなことをされて意識しない奴はいないだろう。
左腕全体を包み込むように抱きしめている所為で、女の子特有の柔らかさを直に感じてしまう。それに汗を掻いたようで、左手が湿っていた。
御蔭で妹相手だというのに、朝から色々と大変になりかけた。
何でいるのか聞いた所、
「だって……お兄ちゃんと一緒に寝たかったんだもん」
とおねだりされるように答えられた。
ちなみに鍵はマドカ叔母さんが貸したのだとか。
あの人は何をしているのやら。それよりもここ最近、妹が過剰にくっついてきて甘えてきているような気がする。甘くし過ぎただろうか?
その後起きた葵さんと口論になったのは言うまでも無く、結果さっさと起きることに。
疲れたまま再び学校へ。
初日同様に一般学科は普通に受け、ISの勉強は難しいながらも頑張って受ける。
そして昼休みになった所、灯姉さんと颯姉と一緒にお昼を食べることに。
その際に大胆に男らしく席に座る颯姉。
スカートの中が思いっきり見えてしまい、灯姉さんが注意すると何故か俺の方を見てニンマリと笑う。
「一真はあたいの下着、似合ってると思うか?」
「なっ、ちょっ!?」
何をするのかと思ったら、何と俺に見せつけるようにスカートをめくってきた。
その際に見えた下着は妙にセクシーな……正直エロい黒色の下着であり、俺はそれを見た途端に赤面してしまい鼻腔が熱くなって大変なことに。
その反応を見て調子にのってさらに俺に見せつけようとする颯姉。
健康的な肌色にそれを際立たせるような黒い下着が眩しく、エロい。
それを見た灯姉さんは、顔を真っ赤にしながら俺を自分の方に抱き寄せた。
「かずくん、見ちゃ駄目!」
その事にホッとしていると、今度は何を考えたのか灯姉さんが俺にだけ見えるようにスカートをめくってきた。
「わ、私の方が颯よりも似合ってるわよね……かずくん……」
「ぶっ!?」
灯姉さんは顔を真っ赤にして恥ずかしがりながらも俺に見せつけたのは、レースをふんだんにあしらった純白の下着。清楚でありながらも、艶めかしいその下着に俺は堪えていた物が崩壊してその場で鼻血をだすハメになった。
御蔭で昼御飯を食べそびれた。
そして今日の朝。
起きると共に、目の前に束さんがいた。
セクシーランジェリーを着て、恍惚の表情で息を切らせながら俺にくっついて匂いを嗅いだり舐めたりしていた。
豊満な胸があられもない姿で俺に押しつけられてむにゅりと潰れ、股間辺りに何やら柔らかい感触がうごめいている。
「はぁ、はぁ……かずくん、可愛い。食べちゃいたい……ん、んあぁ…束さん、もう……」
何かもう、貞操の危機にその場で力の限り叫んでしまった。
そして来てくれた千冬伯母さんによって連れて行ってもらったが、その後に聞こえた悲鳴は気にしないことにした。
御蔭で、もう………言いたくない。
そして現在。
俺は溜まりに溜まった疲労で机に突き伏せていた。
俺の様子を見て心配してくれる葵さん。
その心遣いを有り難く思う。
「お兄ちゃん、疲れてるね。だったら私が看病してあげる」
そう言って俺に抱きつく夏耶はどこか嬉しそうだ。
たまには甘えてみるのも悪くない。そう思わせる笑顔だ。
「二人とも、ありがとう」
「そ、そんな! だって一真様が心配ですから」
「そうだよ。お兄ちゃんのためだったら私、どんなことでも頑張るよ」
返事を返す二人の顔は赤い。
そんな二人は健気に可愛くて、俺は頬を緩める。
最近何かと振り回されてばかりだけど、やっぱりこうして一緒にいてくれることが嬉しい。でも、やっぱり少しは控えて貰いたいのが本音。青少年には刺激が強すぎる。
そんなやり取りをしていたら、突如として扉が開いた。
そこにいたのは、美しい金髪をした少女である。
腰まで届く長い金髪に青い瞳、服の上からでも分かるモデルのような体型。その身体を包むのは改造された制服で、長いスカートが静粛さを感じさせる。誰もが羨むような視線を彼女に向けていた。
その少女は綺麗な足運びと此方に向かって歩いてくる。
そしてそれを見た夏耶は途端に顔を輝かせた。
「あ、アーちゃん!」
そのままその少女の方に行くと、少女も笑顔になって互いに手を軽く合わせて握り合う。
「遊びに来ましたわ、夏耶!」
「いらっしゃ~い」
どうやら夏耶の友人らしく、とても親しそうだ。
「風邪はもう大丈夫なの?」
「ええ、夏耶にもらったお薬がとてもよく効きましたわ。御蔭でもう万全です」
二人でハシャぎながら少し話すと、夏耶が嬉しそうに笑いながらその少女を連れてきた。
「お兄ちゃん、紹介するね。この子は私の大親友のアーちゃん」
その紹介に苦笑する少女は俺の方を向くと、先程まで夏耶に向けていた笑顔からは考え付かない程に敵意を持った眼差しを向けてきた。
「お初にお目にかかります。わたくし、イギリス代表候補生の『アリシア・オルコット』と申しますわ。あなたが夏耶のお兄さんですわよね。お噂はかねがね」
「ど、どうも、織斑 一真です。いつも妹がお世話になっているようで」
その敵意に身を固めながら答える。
何故そんな敵意を向けられるのか、まったく分からない。
葵さんもその敵意に警戒していた。
依然その少女、アリシアは敵意を緩めない。そのことに向けられていない夏耶は不思議そうな顔をしていた。
「ええ、夏耶には本当に良くしてもらっていますわ。何せ私達、『一番の親友』ですから。それこそ兄妹の絆なんかよりも、よほどに!」
胸を張ってそう言い切るアリシアさん。
そこまで妹と仲が良いのだろう。
俺はそれを笑顔で返す。
「そうですか。それはそれは、本当にありがとうございます。夏耶は結構人見知りなところがありますから、こんなに仲良くしてくれる友人が出来て嬉しいですよ。家族を代表してお礼を言わせていただきます。結構抜けている奴なんで、こんなしっかりした友人がいて下されば少しは安心出来ます」
「っ………や、やりづらいですわね。何でこう明らかな宣戦布告をしているのに気付かないのやら……」
何やら気難しい顔になるアリシアさん。
何か失礼でもしてしまったかな?
するとアリシアさんは俺に指を差して言い放つ。
「と、とにかく、わたくしの方が貴方よりも夏耶と仲が良いのですからね! これで勝ったなんて思わないで下さいまし!!」
そう言うと共に教室から凄い勢いで出て行った。
「一体……何だったんだ、あの子?」
嵐のように去って行ったアリシアさんに俺は首を傾げる。何で敵意なんて向けられているのかまったく分からない。夏耶がとても仲が良い様だし、悪い子ではないと思うのだが。
そんなことを考えていると、夏耶は俺に笑顔で彼女のフォローを入れる。
「きっとお兄ちゃんに会って緊張したんだよ。私、よくアーちゃんにお兄ちゃんの事、言ってたから」
「………そうだと良いんだけどね」
その答えの苦笑をする俺と朗らかに笑う夏耶。
そんな俺達に葵さんは何とも言えない顔を向けていた。
(真逆……これが噂の『百合』! でも、それに気付かない一真様って……いや、変なことを知らない純真な心だから格好いいし……)
そんな出来事があり、次の授業のチャイムが鳴った。