織斑 一真の苦悩   作:nasigorenn

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この親子、そとでも充分騒ぎを起こしていおります。


第4話 織斑 一真の家族の外出にて

さて、家族の皆を紹介したところで俺の悩みをもっと具体的に掘り下げていくことにしよう。

日本の英雄と言われていても家では場所をわきまえずにイチャつきまくる父。

そんな父にべた惚れで常に顔が恋する乙女な母。

自分には過ぎたくらい良く出来てはいるが、何かにつけて問題を持ってきてしまう妹。

そんな家族と一緒に遠出すると、どうなるのかを………。

 家の家族仲というのはかなり良いと思う。

家族みんなで買い物に行くことも良くあるし、一緒に遊びにいくことだって多々ある。

それによる弊害とでもいうものが、また俺の悩みである。

たとえば、この間一緒に買い物に行くために遠出したときの話をしようか。

 

 

 

「それじゃぁ旦那様! 先に行ってますね」

「ええ、行ってらっしゃい」

「はい、行ってきます」

「お父さん、お兄ちゃん、行ってきます」

 

母さんと夏耶がおめかしして一緒に外へと出かける。夏耶はチェックのミニスカートにサマーセーターで、母さんはかなり胸元が開いたブラウスにミニスカートに着ていた。

それを俺と父さんは一緒になって見送る。

別にこれが二人だけで出かけるだけなら普通なのだが、今から約五分後には俺と父さんも一緒に家を出て、母さん達と待ち合わせをした場所へと向かうのだ。

はっきり言って面倒だ。

何故一緒に行かないのか? 別に目的地が一緒で家に一緒にいるのだから、一緒に出た方が効率的に絶対に良いはずだ。

そのことで毎度の如く父さんに俺は聞くのだった。

 

「父さん、何で毎回こんな面倒なことをするんだ?」

 

父さんはそれを聞いて、さも当たり前のように笑顔で答える。

 

「待ち合わせしている方がデートっぽいじゃないか。待たしてしまっていることが申し訳無く思うけど、同時にその分待ち合わせ場所で合流したときの感動がいいんだよ。早く真耶さんと一緒に買い物に行きたいな~」

 

そんなふうに思いを馳せている父を見て、俺は複雑に思ってしまう。

皆さん、これがあの世界を震撼させた武者ですよ。どう見たって只の色惚けではないだろうか?

そう言いたくて仕方ない。

だが、父の言い分も少しは確かであり、待ち合わせをしたのなら待たせて良い訳では無い。できる限り早く合流しなければいけない。

俺は恐れていることもあって早々に身支度を調え、父と一緒に約五分後に一緒に家を出た。

 別に……これが身近なところならそこまで問題はないのだが、遠出となってくるとまったく状況が変わる。

待ち合わせ場所に着いたところで、やはりと言うべきか俺の懸念していた事態が起こっていた。

俺の目の前には、母さんと夏耶、そして二人組の男がいた。

 

「君達、可愛いね~。どう、俺達と遊ばない?」

「イイところ、知ってんだよね~」

「いや、私達はここで待ち合わせていて……」

「せっかくのお誘いですけど、私はこの子と一緒に待ち合わせがあるので」

「「えぇ~、いいじゃん。それよりも俺達と一緒の方が楽しいぜ~」」

 

どう見てもナンパである。

男達は金髪の少し浮いた、所謂チャラい男だった。

ピアスなどの装飾を多く付け、だらしなく着崩された衣服が目立つ。

そんな男達に言い寄られ夏耶は怖さから少し涙目になって怯え、母さんは笑顔ではあるが不機嫌な雰囲気を漂わせていた。

そんな雰囲気をまったく気にせずに尚も二人に言い寄る二人。

俺はそんな二人を見て、呆れ返るしかない。

昔はそこまで酷くなかったらしいが、男女平等になってからこういうのが増え始めたとか。

同じ男として嘆かわしい限りである。

父さんは冷笑を浮かべると、俺達がいる場所から母さん達がいる場所までの距離を縮地法を使って一気に詰めると男の一人の肩に手を当てる。

 

「あの~、その娘達の待ち合わせ相手なのですが。一体その娘たちに何用でしょうか」

「あぁ、なんだ!」

 

父さんは笑顔をしているが、その目は全く笑っていない。

肩に手を置かれた男は不機嫌に父さんの方を向き怒鳴る。

 

「何だ、テメェは! そんなこと知った事じゃねぇんだよ! 引っ込んでろ!!」

「そう言うわけにはいきません。彼女達は私達の連れです。お引き取りを」

「うるせぇって言ってんだよ、このガキ!」

 

尚も食い下がる父さんにキレる男。

そのまま父さんに殴りかかるが、次の瞬間には男の目から父さんはいなくなっていた。

理由は単純。男は父さんによって一瞬で真上へと投げられていたのだから。

その早業は何度見ても俺には見えない。投げていると知っているのは父さんから聞いていたからだ。

初見で見る人間には、まるで男が一人でに空高く飛んだようにしか見えないだろう。

そのまま男は自分に何が起こったのかわからないまま地面に落ち、その衝撃で意識を現実に戻す。

父さんは男が地面に落ちた瞬間を狙って男の喉を軽く踏みつけた。

 

「何度も言うが………彼女達は俺達の連れだ。ちょっかいをこれ以上かけると言うのなら、このまま貴様の喉を踏みつぶし殺す」

 

目が笑っていない笑顔を浮かべ、淡々と足蹴にした男にいう父さん。

その迫力に呑まれ、足蹴にされた男は言葉を失ってしまう。

 

「それと……俺はこう見えて貴様達より年上だ。年長者は敬えと学ばなかったのか?」

「ひぐっ!?」

 

さらにドスを効かせた声で男にそう言う父さんの殺気は凄まじい。先程から街路樹に留まっていた鳥達が皆殺気にあてられて失神して墜ちてきていた。

あぁ、可哀想に。とりわけ可哀想なのは、足蹴にされている男だろう。

あまりの恐怖に口から泡を吐き始めていた。あと少し脅せば失禁するんじゃないだろうか。

そんな事態になり、もう片方の男はやっと事態を理解し始めてきたようだ。

父さんに足蹴にされている男を助けようと動く。

だが、その前に俺は動こうとした男の前まで距離を詰めると、男の喉仏を高速で掴みいつでも潰せるようにする。

 

「そこまでだ。これ以上すると本当に怪我じゃすまなくなる」

「!?」

 

俺は面倒だと思いながらも男に告げてあげる。

男は今まさに、命を捕まれているかのような感じに顔を青くしていた。

 

「あぁ、それと……お前等が手を出そうとしたのは俺の妹と母親だ。お前等、人妻に手をだそうとしたんだ。それは流石にまずいだろう」

「なっ!? だって…えぇ!!」

 

男は喉をつかまれながらも真っ青な顔で驚く。

まぁ、無理も無い。

何せどう見たって母さんと夏耶は姉妹にしか見えないのだ。

母さんは見ようによっては高校生(高く見積もっても二十歳)くらいにしか見えない。

それが年頃の若い娘と一緒にいれば、どう見たって姉妹か友人にしか見えないだろうよ。

 

「この場は見逃してやるから、父さんの足の下で気絶してる奴を持ってささっとどこかに消えな。それはお前等のためでもあるんだ。急げ」

 

そう言って手を離すと、男は慌ててもう一人の男の方へ行き気絶した相方を回収して脱兎の如く逃げ出した。あ、どうやら回収させるのが少し遅かったようだ。アスファルトに水たまりが出来上がっていた。

父さんは男達が視界から消え去るのを待つと、母さん達の方へと振り向く。

 

「大丈夫でしたか、真耶さん、夏耶」

 

その様子はさっきまでの殺気を出していた姿からほど遠いい、いつもの父さんだった。

それを見た母さんはそのまま父さんに抱きつく。

 

「怖かったですよ~、旦那様~」

「すみません、こんな怖い目に遭わせてしまって」

 

父さんは母さんを抱きしめると、優しく頭を撫でる。

すると、母さんは目を潤ませながら頬を赤らめ父さんを見つめる。

 

「でも、旦那様が助けに来てくれるって信じてましたから。さっきの旦那様、格好良かったです……ポ」

 

その目は白馬の王子様を見るような目と言うべきか、先程の恐怖は何処に行ったんだと言わんばかりの変わりようである。

そのまま母さんは顔を赤らめながら父さんの腕にぎゅっと抱きつく。

 

「でも、まだ怖いので……しばらくこのままでいいですか?」

「はい。でも、こっちの方が落ち着くんじゃないですか」

 

父さんはそう言うと、母さん体を包み込むように優しく抱きしめ頬に軽くキスをした。

 

「ぁ、ぁぅ~~……旦那様……だぁいすきです……」

 

もう母さんの顔はとろけているかのようになって父さんにメロメロになっていた。

見てて恥ずかしいったらありゃしない。周りにいた人達も顔を真っ赤にしてるし、父さん達にあてられてか、近くにいたカップル達も心なしかイチャつき度合いが濃くなっているような気がする。

そんな光景を白い目で見ていると、俺の左腕の裾がちょんちょんと引っ張られた。

それに気づき、引っ張られているほうを見ると、夏耶が俺の服の裾を遠慮がちに引っ張っていた。

 

「どうしたんだ、夏耶?」

「お兄ちゃん、怖かったよぉ~……だ、だからお父さん見たいにぎゅっとして欲しいかな」

 

目を潤ませながらジッと俺を見つめてそう言う夏耶。

まぁ、確かに怖いのかも知れないが、だからといって流石に父さんみたいな『アレ』はないだろう。

 

「いや、流石にあれはちょっと………」

「駄目?」

 

今にも泣きそうな雰囲気を出しながら俺を上目使いで見つめてくる夏耶に、俺はタジタジとしてしまう。この顔に俺は昔から弱いのだ。されると何だかんだと言いつつやらないと泣きそうで。

なので俺は妥協案替わりに夏耶の頭を優しく撫でてあげる。

 

「これでどうだ」

「えへへへへ~」

 

撫でられた夏耶は気持ちよさそうに顔を緩める。

だが、そのままさらに上目使いでお願いしてきた。

 

「ぎゅって抱きしめてくれないの?」

「いや、だからそれは……」

「駄目?」

 

だから何度も言っているが、その顔は駄目なんだって!

このせいで昔からシスコンだの何だのと言われているんだから。

だが、言いよどんでいる家に夏耶の目が潤み始めてきた。

それを見て内心でかなり葛藤しつつも仕方なく抱きしめることに。

 

「はぁ…仕方ないなぁ」

「きゃっ! うふふふ。お兄ちゃんの体、大きい~」

 

母に負けないほどの甘い声で甘えるように抱きついてくる夏耶。

大きな柔らかい二つの膨らみが胸に押しつけられて、何とも言えない気持ちになる。

何かまたこいつは胸が大きくなったとしか考えないようにした。

すると夏耶はおねだりするような甘い声で俺に聞いてきた。

 

「お兄ちゃん、大好き! だから……キスもして欲しいかな……」

 

きっと普通の男が聞いたらコロっと落とされてしまう程の可愛い顔をしていたが、俺はそれを若干呆れながら軽く夏耶の頭にチョップを入れて離れる。そしてそのまま父さん達の所へと歩き出した。

 

「何阿呆なことを言ってるんだ、お前は。ほら、こんなことしてると時間が勿体ないだろ。はやく行くぞ」

「いた~い……あ、お兄ちゃんまってよ~」

 

そんなふうに追いかけてくる妹を尻目に俺は歩き出す。

父さんは母さんの腰を優しく抱きかかえ、母さんは父さんに体を預けるように抱きついていた。

遠目で見てもわかるくらいのイチャつきっぷり。

きっと甘い言葉でも囁き合っているのかもしれない。

 これが俺の悩みの一つ………

遠出でをすると必ず妹と母がナンパされ、父さんと一緒に暴れることになること。

そしてその後、父さんと母さんがかなりイチャつき人目も気にせずにキスしたり、それにあてられてか妹にねだられることが多いことである。

まぁ、父さん達は誰が見ても分かるくらいの見事なバカップルであり、色恋に興味がある妹はそういうのが気になるのだろう。身近にいる男が俺しかいないから、必然的に俺が実験台になるといった所だろうか。

 本当に……我が家は問題だらけであり、問題が尽きない。

それが俺の悩みの一つだ。

 

 

 

 

 

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