織斑 一真の苦悩   作:nasigorenn

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今回は夏耶のISが出ますよ。


第40話 織斑 一真は助ける。 その2

朝に少しあったが、今日も普通に授業が始まる。

IS学園に来てからここ数日。それまで特に行われてはいなかったが、遂にISと戦う機会が巡ってきた。

 

「行くよ、お兄ちゃん!」

 

夏耶が意気揚々と俺に声をかける。

俺もそれに頷くと、互いの立ち位置に立った。

今現在、一組は実機操縦の授業であり、皆俺達武帝生が来たことでやっと間近で見れるIS対劔冑の試合を心待ちにしていたらしい。

試合のルールは昔と違いISは通常通りなのに対し、劔冑はその甲鉄強度を計算して数値化。それをISのシールドバリアと比較しての数値を算出してそれを仮のシールドバリアーとして確定させて、それの減り具合で勝敗を決めるという事になっている。

これは過去に父さんがISと戦った結果、ISの武装では劔冑の甲鉄を破ることが難しく、精神力が強い武者では気絶することが少ないということが判明したからだ。

その結果がこうして仮想シールドバリアーを作り出したというわけだ。

そうでないとISとの試合は難しいのである。

この学園に入った時に皆の劔冑を一端渡し、それらの計算を行って貰っているのですぐに試合を行えるようにしてもらっているので、こうして授業で戦うことが出来る。

今回戦うのは夏耶だ。

ISスーツは身体のラインがくっきりと出るため、低い身長に不釣り合いな大きな胸に我が妹ながら目を向け辛い。

だが……戦うからには、そういった物は気にしない。

そして互いの相棒を呼び出す。

 

「行くよ、『打鉄極式』」

 

夏耶が左手の薬指に付けた指輪に手を重ねながらそう言うと、一瞬強い光を発した。

そして光が止むと、そこには和の鎧を感じさせるISを装着した夏耶が浮かんでいた。

 

『打鉄極式(うちがねきわめしき)』

 

それが日本代表候補生になった夏耶に与えられた専用機。

日本で開発しているIS『打鉄』シリーズの集大成で、近接から遠距離全てをこなす万能な第四世代機。背中に大型のウィングスラスターを二基、そして二対の防御用の実体盾が装備され、何と盾の中にミサイルが搭載されている。高機動にして高火力、そしてインストールされている武装の多さから単機で様々な戦闘を行えるのが特徴らしい。

こうして見ると立派なISなのだが、初めて見た時はただの指輪にしか見えなかったなぁ。しかも何故かそれを見させられた時に夏耶は装着しておらず、ポケットから指輪を出すと俺に着けてくれとせがんで来た。それも何故か左手の薬指に。

それは普通結婚指輪の位置だろうと突っ込んだら、顔を赤くしながらこう答えられた。

 

「だって、お母さんが凄く幸せそうな顔で良く眺めていたから。だから私も」

 

だそうだ。

確かに母さんは良く薬指の結婚指輪を懐かしむように眺めていることがあったけど。

聞いた話では父さんとの特別な思い出の品らしい。それも学生時代の時の。

父さん、一体何をしたんだ?

目をキラキラと輝かせながらせがむ夏耶に折れ、仕方ないなぁと思いながら左手の薬指に指輪を通してやった。

夏耶はその左手を見て凄く幸せそうに笑うと、葵さん達がずるいと怒ってきた。

そんな怒らなくても……か、夏耶は妹なんだし。あれ、何でどもってるんだ、俺は?

まぁ、そんなわけであの指輪は立派なISだったというわけだ。

妹の立派な姿を嬉しく思うが、ISの所為でより強調された胸には何とも言えない複雑な気持ちになる。

そして今度は俺の番だ。

 

「来い、絶影!」

 

その呼びかけに応じて俺の相棒が飛び出して俺の前に着地する。

その姿を確認次第、誓約の口上を述べながら装甲の構えを取った。

 

『我が内なる正義を顕現し、全ての悪を滅ぼさん』

 

そして弾けた絶影は俺の身に装甲され、俺は武者となった。

双方準備が出来たことで互いに構えを取る。

そして……

 

「それでは……試合、始め!」

 

マドカ叔母さんの合図の下、俺と真耶は激突した。

 

 

 

 「やっぱりお兄ちゃんには適わないなぁ。格好良かったよ、お兄ちゃん!」

 

試合を終えて元の位置に戻ると夏耶が頬を上気させながら俺を讃えてきた。

 

「一真様は変わらずにお強いですね。わたくしも頑張りませんと」

 

俺達の試合を見て葵さんもそう褒めてくれた。何だかこそばゆくて仕方ない。

初めてのISとの戦いはかなり苦戦した。

何せ相手が速い。

此方もISの技術を取り入れられているので、より空中でアクロバティックに動くことが出来るようになっているのだが、それでもISの方が細かく繊細に高速で動く。

そして重火器には苦労させられた。

打鉄極式は打鉄の集大成。打鉄は近接戦闘が得意なISだと授業で習ったが、夏耶が操る極式はそれとは逸していた。

遠距離では二連装荷電粒子砲と小型ミサイルが襲い掛かり、中距離ではレールガンとアサルトライフルやショットガンが火を噴き、近距離では日本刀の様な近接ブレードや長刀など、多種多様な兵装で仕掛けてきた。

どの距離でも存分にその性能を発揮し、高速で襲い掛かってくるのだから近接戦しか出来ない此方は苦戦を強いられたというわけだ。

 

「そんなことはないよ。こっちだって全然夏耶に近づけなかったし、射撃武器には辛酸を舐めさせられた」

 

照れ隠しに笑いながらそう夏耶に答えると、夏耶は顔を赤くしながら興奮気味に俺に詰め寄る。

 

「そんなことないでしょ! だってお兄ちゃん、殆ど無力化してたし。あんなこと、IS学園で出来る人なんて見たことないよ!!」

「そ、そうか?」

 

詰め寄った際に胸が押しつけられてドギマギしてしまう俺。

香った甘い香りと汗を掻きしっとりとした感触を感じて赤面してしまう。何度も言うようだが、妹に何を感じているのやら。

試合では何とか勝った俺だが、それには此方に襲い掛かってくる射撃を全て防ぐことでなんとか押し切ったのだ。

絞竜(絶影の首元から出ている一対の触手)でミサイルを弾き、伏竜と臥竜で弾丸や荷電粒子砲を斬り飛ばすことで防ぎ距離を詰めて接近戦へ。

夏耶の腕も相当だが、近接戦の武で負けるのは武者の名折れだ。此方にもそれなりの意地がある。

そして勝利をもぎ取ったわけだ。

初めての異種との戦いは予想以上に疲労したようで少し汗を掻いてしまった。

だと言うのに……

 

「やっぱり私のお兄ちゃんは世界一格好いい!」

 

夏耶は俺に抱きついて来る。

甘えたがりで仕方ない妹だと笑う反面、発育の良すぎるその肢体は俺の男が刺激されそうになってしまう。

 

「夏耶、離れなさい」

「えぇ~、いいでしょ? すんすん……はぁ、お兄ちゃんの匂いがする」

 

周りの視線が集まる中、それを全く気にしない夏耶。

兄として正直タジタジになってしまう。

 

「あ、ずるいです、夏耶さん!」

「あ、あの~……葵さん?」

 

それに反応してか俺の腕を抱きしめる葵さん。

双方から伝わる柔らかい感触に頭が沸騰しかけるも、周りの視線で冷めて何とも言いがたい気持ちを味わうことに。

 こうしてこの授業は終わった。

そのまま次の授業のために教室へと向かっている最中、俺はそれを見つけた。

ISスーツなど着ない武者は着替える必要が無いのでそのまますぐに動ける。そのため皆よりも先に教室に向かうことが出来るだ。

なので夏耶達よりも先に教室へ向かっていたわけだが、その最中、空き教室でちらりと見知った人物を見かけた。

それは妹の友人であるアリシアさん。朝ぶりの再会だ。

ただ空き教室に用があると言うのなら、そんな気にするようなことではない。だが、その教室からは何やら剣呑な雰囲気を感じた。

だからこそ、教室へ近づいてみると……

 

「アンタ、代表候補生だからって生意気なのよ!」

「そうよそうよ!」

「いつもスカした顔して馬鹿にしてるんでしょ!」

「貴族様は下々の者の気持ちが分からないって奴?」

「最低~~~~~!!」

 

怒りと嘲りを含ませた声を発する女生徒五人がアリシアさんを囲っていた。

どうやら責められているらしい。

 

「貴方達が何を仰ってるのか全く分かりませんわ?」

 

対してアリシアさんは気丈に振る舞い、負けないと五人を睨み付けている。

それに少し戦くも、五人は更にアリシアさん責める。

会話の内容から判断するに。どうものこの五人は少し前に行われた模擬戦でアリシアさんにこてんぱんにやられ、

 

『このような志が低い者なんて五人で束になったってわたくしに勝てるわけがありませんわ。何せわたくしとは力の差が違うのですから』

 

と皆の前でそう言われたらしい。

御蔭で今まであったプライドはへし折られ、それに逆上してこうしてアリシアさんを責めているようだ。

さらには靴をゴミ箱に入れる、ISスーツに細工をするなど所謂イジメを行っているらしい。アリシアさんはそれを知った上で気丈に振る舞っているが、それでもその声が震えていることが俺には分かった。

しかし、イジメとは……武帝校では考えられないことだ。

やろうものなら武者として失格、ばれれば即退学だろうし、ずっと卑怯者の汚名を被ったままになる。それに教師がそれこそ死合並の折檻で黙っていないだろう。

あれ? 俺が毎日受けてた襲撃はイジメじゃないのか? いや、これはまぁいいか。

いくらアリシアさんが誇り高い人でも、まだ十五歳の少女。五人から悪意を向けられ責められるのはきつ過ぎるだろう。(いつも五十人近くに殺意を向けられている一真)

そしてついにアリシアさんの目尻に涙が浮かび始めたのが見えた。

それに遂に我慢出来なくなる俺。あくまでも本人達の問題だし、部外者の俺が口を出して良いことではない。だが、それでも……

俺は父さんのような、正義の人になりたいから。

目の前で苦しみ悲しんでいる人を見捨てるようなクズにはなりたくないから。

だからこそ、

 

「もうそれぐらいにしたらどうだ」

 

俺はその喧嘩を止めに入った。

 

「あ、貴方は!?」

 

俺の登場に驚き目を見開くアリシアさん。

 

「誰よアンタ!」

「関係無いでしょ」

「とっとと出て行きなさいよ!」

「何、もしかして正義の味方のつもり?」

「笑える~!」

 

俺の声を受けて五人が俺を睨み付ける。

その視線に負けじ……正直可愛く見える程度だが、笑うのを堪えて睨み付ける。

 

「俺の名は織斑 一真と言う。君達は今まで何をしていた? そこの子を責めていなかったかな」

「それが何だって言うのよ!」

「何、もしかしてこの子に惚れちゃったとか? 笑えるんですけど」

 

俺を見て嘲り笑う五人。

困っている人を助けようとしたらこの言われよう。

精神が未熟な俺は少しばかりカチンと来る。

これが武帝校なら容赦無き一撃で沈黙させる所だが、相手は女の子。もっと丁寧に扱わねば。故に……

俺は今持ちうる限りの殺気を五人に向けた。

その異様な雰囲気にさっきまで嘲り渡っていた五人が黙る。

父さんのように気絶させたりは出来ない。殺気と言っても、本当に殺した事は無い。だが、『殺意』は充分にある。それを全開にしてぶつけた。

 

「だまれ」

 

「「「「「!?!?」」」」」

 

その言葉一つで五人の呼吸が正常ではなくなる。

カヒュ、カヒュ、と喉から空気が漏れる音が教室内に僅かに聞こえた。

 

「話は大体聞いていたが、負けた腹いせにイジメを行い責めるなど、ただの卑怯者の言い訳だ! 悔しいと感じたのなら、それ以上に鍛錬すれば良い話! 人に当たるなどお門違いだ、この愚か者共がっ!!」

 

その言葉と共に肩をガタガタと振るわせ顔を真っ青にする五人。

これ以上はやり過ぎだと思い、五人を無視してアリシアさんの前まで行く。

 

「あ、あの……」

 

アリシアさんは目の前で起こったことに驚いているようだ。

そんなアリシアさんにさっきまでしていた顔を解して笑顔を向ける。

 

「行きましょうか、アリシアさん」

 

そして未だ呆然としているアリシアさんの手を繋いで引っ張っていき、廊下に出た。

するとアリシアさんは顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。余程怖かったんだろうなぁ、さっきのイジメが。

 

「あ、ありがとうございますわ………」

「いえいえ、どういたしまして」

 

たどたどしくお礼を言うアリシアさんに笑顔でそう答えると、俺はアリシアさんのクラスまで連れて行くことにした。

 その間、ずっとアリシアさんの顔は赤かった。

 

 

 ちなみに、この後あの空き教室で失禁して気絶した女生徒五人が発見され騒ぎになり、俺はやり過ぎた自分に反省することになった。

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