上手く書けていれば良いのですが……。
アリシアさんがイジメに遭っていた所を助けてから二日が経ち、どういうわけか彼女から決闘を申し込まれた。
昼休みになっていつもと同じように教室に来たと思ったらいきなりそんなことを大声で宣言したものだから、あっという間に周りに伝わり気が付けば大事に。
皆短期留学生の試合が見られるということで学園全体にこの話は広まってしまっている。
彼女が何故、急に決闘を挑んできたのか?
俺は何か彼女を怒らせるようなことをしてしまったのだろうか?
それが気になって仕方ない。
確かにあの時から彼女の反応は前に比べると少し変わったし……具体的には、前より嫌われたような気がする。顔を合わせてくれないし、前のように良く話しかけてくれなくなったし。
もしかしたらとんでもない粗相をしたのかもしれない。
だからそれに怒って、こうして戦いを仕掛けてきたのだろう。
なら戦う必要など無く、素直に謝罪すべきなのだろうが………どうもそれだけではないらしい。
夏耶曰く、
「アーちゃんは怒ったりしてるからって決闘を挑んだりするような子じゃないよ。ノブリス・オブリージェなんだって。だからアーちゃんが決闘を申し込んだってことは、本当に戦う気だからだよ」
とのこと。
つまり彼女を怒らせたというわけではないらしい。
なら、この決闘は受けるしかない。それが挑んだ側への礼でもあるから。
そして翌日。
「来て下さり、ありがとうございますわ」
「真面目に決闘を挑んできたからね。それにはちゃんと誠意を持って答えないと」
第三アリーナで彼女は待っていた。
その身に第四世代型IS『アストレア』を纏って。
白と青のツートンカラーの機体で、特徴的なのは背中の非固定ユニットから見える独立兵装『シャスティフォン』、見た感じ天使の翼のように見える。手に持っているのは複合兵装狙撃ライフル『グングニール』。狙撃は勿論。大槍にも大剣にもなる便利な兵装らしい。それらを構えて悠然と佇む彼女はその神々しさも合わせて西洋の戦乙女に見える。
「とても綺麗ですね、アリシアさん」
「なっ!? た、戦う前に何を言ってるんですか、いきなり!!」
素直に感想を言うと、彼女は途端に顔を真っ赤にして慌て始める。
確かに戦う前に言うことじゃなかったかな。申し訳無いことをしたかも。
謝罪の意も込めて俺は相棒を喚んだ。
「来い、絶影」
その呼びかけに応じて上空から絶影が落下して俺の前に着地した。
毎回思うが、一体何処に隠れていたのか不思議だ。武帝校だとよく木の上とかで待機していることが多いけど。
そのまま装甲の構えを取り、誓約の口上を述べる。
『我が内なる正義を顕現し、全ての悪を滅ぼさん』
そして装甲し終えると共に、アリシアさんに向き合う。
二人の戦闘態勢が整うと、周りの観客席から大きな歓声が上がる。
どうやら殆どの生徒が見に来ているらしく、観客席は満員らしい。それだけ注目されていると思うと、少しばかり緊張してしまう。
そんな俺と対して、アリシアさんは慣れた様子で堂々としていた。
「では」
戦意が籠もった声でそう呼びかけられ、此方も金打声で応じる。
「ええ」
返事を返すと共に、試合開始のブザーが鳴り響いた。
「行きますっ!!」
「参るっ!!」
俺はまず、距離を詰めために合当理を噴かしながら突進する。
武者は接近戦こそが本領であり、そのためには多少の被弾は覚悟の上。
対してアリシアさんは上空の飛び上がると、グングニールを此方に向かって撃ってきた。
発射された蒼光のレーザーが俺に向かって襲い掛かる。
「っ!?」
それをバレルロールをすることで躱しつつ、速度を殺すことなく接近していく。
「まだですわ!」
更にアリシアさんがグングニールを発射する。今度は回避先も読んだ三連射であり、避けられそうにない。
「まだまだぁっ! HITAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
気合いの籠もった咆吼を上げつつ両腰に下げた伏竜・臥竜を引き抜いてそのまま向かってくるレーザーへと振るい、レーザーを切り裂いた。
「なっ!? レーザーを斬ったですって!」
その事に驚くアリシアさん。
この絶影はISの技術を取り入れて作られた劔冑。当然対ISのノウハウも含まれている。
だからこそ、出来るとは思っていた。見切れるかは分からなかったけど。
「DRYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
「くっ!」
そのまま斬り掛かかろうと近づくが、アリシアさんは咄嗟に真下へと移動。
俺の初撃は空振りに終わった。
「流石は武者と言うべきですわね。大した気迫ですわ」
「あはは、ありがとう」
褒められたことにそう返事を返す。
何だかな~………やり辛い。
灯姉さんの時も感じたが、それ以上に彼女は……可愛い感じがする。
気迫の籠もった声を上げ果敢に攻める彼女は美しいのだが、どうも俺には可愛く見えてしまう。それが何故なのか……どことなく分かってしまう。
そんな風に笑っていた事がばれたのか、アリシアさんは更に真剣な顔で俺を睨んできた。
「なら、これはどうですの!」
その声と共に非固定ユニットから『シャスティフォン』が発射される。
飛び出した合計8機のシャスティフォンは各自がまったく違う動きをしながら俺を撃ってきた。
「うおぉ!? 四方から攻撃がきつい!」
正面や横からの攻撃は弾けるのだが、後ろからや真上からの攻撃などは防げずに当たってしまう。
甲鉄が火花を散らしながら削れていく感触を感じながら何とかレーザーの雨から逃れようと藻掻く。
だが、中々に抜け出せない。
エネルギーゲージ(仮)に目を向ける限り、そこまで削られたわけではない。だからこそ、強引にアリシアさんに突っ込んだ。
「なっ、この射撃を無視して突っ込んで来るなんて!」
「しゃっ!!」
伏竜、臥竜を上段に双方構えて叩き付けるように斬り掛かると、アリシアさんはグングニールを大剣モードに変えて受け止めた。
「くぅぅぅぅぅ! 片手ずつですのに、重いですわ!」
「鍛えてるからね……おおぉっ!!」
「キャッ!!」
そのまま鍔迫り合いに持ち込み、一気に力を込めて地面へと叩き付けた。
土煙を上げながらもアリシアさんは咄嗟に起き上がるとすぐにその場を離脱。
そして俺と距離を取ると、俺に向かって宣言する。
「やはり武者との接近戦はこちらが不利。だから……ここから先はもう近づけませんわ!」
そう宣言すると、未だに俺を狙って攻撃を仕掛けてくるシャスティフォンが一旦停止する。そして彼女は新しい命令を下した。
「斬り貫け、シャスティフォン!」
その命を受け停止したシャスティフォンが銃口からレーザーを出すのではなく、レーザー刃を発した。
そしてそのまま四方八方から俺を串刺しにせんと襲いかかって来た。
「っ! だが、この程度! うぉっ!」
レーザー射撃からレーザー刃を纏った突撃にかわったことで、先程以上に素早くめまぐるしく動く。そのため避け辛く、掠る度にシールドゲージ(仮)が減っていく。
先程の射撃よりも減る数値が高い辺り、威力が高いのだろう。
俺がその突進攻撃に苦戦している間に、アリシアさんは更に攻撃を仕掛けてきた。
「このまま押し出しますわ! シャスティフォン、ブラスターモード!」
すると俺を襲っていた八機の内、四機が俺から少し離れると互いにくっつき合い、何やら菱形に形を変える。
そしてその中の空間からプラズマ光を発すると共に、太いビームによる砲撃が俺に向かって発射された。
「なっ! 何だ、あの砲撃! 不味い!!」
俺は急いで防御態勢を取るも、ビームに飲み込まれてしまった。
視界を染め上げる光に咄嗟に目を瞑って目を守るが、開いた瞬間にはまだチカチカとして見づらい。
そして何とか復活した視界で自身の状態を確認する。
『残りのシールドは約300。騎体表面の甲鉄の溶融を確認。損傷中破』
それだけ威力が高かったことが窺える。
未だに土煙は収まっておらず、辺りを曇らせていた。
それを利用してアリシアさんに一気に近づくと、力の限り刀を叩き付ける。
「まだだっ! まだ終わっていない!」
「くぅっ~! アレを受けてもまだ沈みませんの!」
斬り付けられたアリシアさんは吹き飛ばされながらも体勢を整える。
今までの攻防において、若干押されているところがあるがダメージではほぼ互角。
此方の攻撃は中々に当たらないが、当たればその分大きく削ることが出来る。対して向こうはかなりの数の攻撃を当ててくるが、劔冑の堅硬な甲鉄の御蔭でそこまでの削られることが出来ない(エネルギー計算上)。
一進一退の攻防。
互いに精神が摩耗していくのが感じられる。
アリシアさんの顔を見ると疲労が見えつつあるが、どこか楽しそうだ。
「まだ持つとは……やはりお強いのですね」
「いえいえ、まだまだ未熟ですから」
軽くそう喋ると、彼女から満足そうな声が聞こえる。
本当に頑張っているんだろう。そうでなくては、ここまで凄まじい戦いを出来るわけがない。正直、少し侮っていた。
何せあの夏耶と同じ代表候補生だからと。
認めよう。彼女は……アリシア・オルコットは強い。
だからこそ……『全力』で相手しようと思う。
「アリシアさん……」
「何かしら?」
話しかけると、闘気に満ちた良い顔を向けてくれた。
その顔に見えないだろうけど微笑み返す。
「貴方はとても強いですね」
「あ、あたりまえですわ!」
言われた途端に顔を真っ赤にして狼狽えるアリシアさん。その顔が可愛らしくて笑ってしまった。
そんな可愛らしくも一生懸命な彼女に俺は……応えたい。
「だから……此方も全力でいかせてもらう!」
「来なさい!」
そして再びぶつかり合う。
アリシアさんは先程のシャスティフォン8機を用いて乱撃に加え、自身もグングニールによる狙撃で俺を追い詰め、隙あらば大槍モードのグングニールで突き刺しにきたり大剣モードで斬り掛かってきたりした。
基本は射撃だが、近接戦闘も難なくこなす。
これほどやりづらいのも久々だ。
対する此方も負ける気はなく、先程以上にこまめに動くことで射撃を躱し、邪魔するシャスティフォンを無理矢理散らして斬り掛かる。
力では此方が勝っているので、近接戦に持ち込めば此方が有利。
そして互いにシールドを削り合い、遂に二桁に突入した。
互いに向き合い、構える。
「はぁ、はぁ、……ここまで押されたのは夏耶以外は貴方が初めてですわ」
「それは光栄だね」
そんな軽口の後、彼女から闘気が噴き出す。
次の一撃で決める気だ。
「だからこそ……これで決めますわ! グングニール、バーストモード!!」
そう彼女が大きな声で言うと、背中にあるシャスティフォンがグングニールに合体しグングニールはその姿を変えた。
それは巨大な砲。その砲を俺に向けて真っ直ぐに構える。
それに対し、俺も必殺の業を放つ。
伏竜・臥竜を引き抜き、背に付くくらい双方とも後ろに回して身を逸らす。
そしてどちらも同時に動いた。
「これで終わりですわ!」
「あぁああああああああああああああああああああ!!」
発射されたのは今までで一番太く巨大なビーム。
轟音を上げながら迫り来るそれに向かって俺は真正面に突っ込み、業を放った。
『吉野御流合戦礼法 雪崩が崩し……二刀流、双崩!!』
本来は一度に二刀を振るうのだが、今回はさらにアレンジ。
先に左の臥竜を振り下ろし、ビームに斬り掛かる。
途端に左手にとてつもない重さが掛かり、手の中の筋がプチプチと切れていく感触がした。その痛みに叫ぶことで対抗し、そのまま振り抜いた。
「はぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
咆吼一閃。
ビームはその威力と共に左右に避けながら壁に激突する。
そしてその光景に驚愕しているアリシアさんに向かって突っ込むと、残っている右の伏竜で斬り付けた。
「っ!? きゃああああああああああああああああああ!!」
そのまま地面に叩き付けられるアリシアさん。
クレーターを作りながら地面に埋まってしまい、改めてやり過ぎたことに気付く。
「あ、不味い……」
そう呟くと共に試合終了のブザーが鳴り響いた。
『勝者、織斑 一真!!』
そのアナウンスにアリーナは歓声が湧いたが、俺はそれを気にせずに急いでアリシアさんの所へと下りる。
そして装甲を解除すると、そのままアリシアさんの元へと駆けつけた。
「大丈夫ですか、アリシアさん!」
「は、はい、何とか……」
アリシアさんはクレーターから何とか脱出し、ふらふらとしながらも歩いて来た。
その様子を見て急いで抱きかかえる。
「キャッ! な、何を…」
「大丈夫じゃないじゃないですか。今から一緒に保健室に行きますよ」
そうアリシアさんに伝えると、有無も言わせずに抱きかかえた。
怪我人を運ぶのにこのお姫様抱っこというのは最適だ。顔色が窺えるから怪我人の状態を把握しやすい。
すると抱きかかえられたアリシアさんは顔を真っ赤にしてしまっていた。
「顔が真っ赤ですよ。すぐに保健室に行きますから、頑張って下さい」
「っ~~~~~~~~~~~~~~~~!?」
こうしてアリシアさんとの決闘は勝負が付いた。
勝負の後、保健室に向かっている間、アリシアさんは俺の顔を見たままずっと真っ赤になっていた。