大体家族のことに関して話しただろうか。
うん、これが俺の悩みの全部…………だったらどれだけ楽だろうか。
実はまだまだ、それこそ腐るほどにある。
その一部を今回語ることにしようか。
そうだな……では、伯母と叔母の二人とその友人について話そう。
まず、母さんは一人っ子だったので母方にはいないのだが、父さんには姉がと妹が一人ずついる。
俺にとって伯母と叔母に当たるその二人についてからいこうか。
父さんの姉さん、名前は『織斑 千冬』。
今でも有名な人で、ISの歴史に名を刻んだ人だ。今はIS学園の教頭をしている。
そして父さんの妹、名前は『織斑 マドカ』。
歳は父さんと一緒らしいことくらいにしか聞いていない。今も現役のIS操縦者でIS学園の教師をしている。
そしてその友人の一人、名前は『篠ノ之 束』。
未だにその名を轟かす世紀の大天才。ISを作り出した張本人。
最近は男でも乗れるISを開発して宇宙関連のことをしているらしい。
これだけ聞いていれば父さんほどでは無いにしても凄い人に聞こえるのだが………
まぁ、実際に家に遊びに来たときの話をしようか。
その日、俺と夏耶はいつもと同じように学校に行ってから下校した時の話である。
この後行う鍛錬に気を引き締めながら家の扉を開いた。
「「ただいま」」
いつもと変わらない帰りの挨拶。
そしてこの後は母さんの甘い声での『おかえりなさい』が聞こえてくるのがいつもなのだが……この日は違っていた。
「おっかえり~、か~ずくん!!」
そんな明るい声と共に、俺の視界は突如何も見えなくなった。
そしてもの凄く柔らかい感触が顔全体に押しつけられ顔がそれに埋もれる。
「なっ!? んく、ぷぁ!?」
「お兄ちゃん!?」
「あ~ん、やっぱりいっくんとそっくりだね~。可愛い~」
そのままもみくちゃにされた後、俺は何とかその拘束を逃れる。
「もういい加減にして下さいよ、束さん!」
「そうですよ~。お兄ちゃんに抱きつかないで下さい!」
「え~、もっと抱きしめたいのに~」
そんなふうにぶうぶう言って俺から離れたのは、ピンク色の長髪をした女性だった。
顔は端正でいつも笑顔を浮かべており、母さんほどではないにしてもかなり胸が大きい。何よりも目を惹くのは、その服装と見た目である。
服装は何だか仮装じみたエプロンドレスに機械で出来たウサミミという良く分からない服装。そして何より、見た感じは二十代後半にしか見えないその見た目である。
父さんや母さんがかなり若く見えるのでそこまで気にしていないが、さすがに千冬伯母さんと同い年と考えるそれはおかしく見える。本人曰く、『最先端の技術だよ』とのこと。
これが彼の大天才、篠ノ之 束だとは誰が思うだろうか?
さて、別にその天才が家に遊びに来るのはいい。伯母さんの友人だからおかしくはない。
だが、それがどうして悩みになるのか? それは………
「えぇ~、本当はかずくんだって嬉しいよね。だってこんなにおっぱい押しつけられて嬉しくない男の子はいないもの」
「だから押しつけるようにくっつかないで下さいって!」
「お兄ちゃん、そんなにむ、胸を触りたいんだったら、私の胸を!」
「お前は何を言ってるんだ?」
妹が何やらおかしなことを言い始めた。
それを取りあえず諫める。まったく何を言っているのやら。
「かずくんのいけず~。束さんはこんなにもかずくんのことが大好きなのに~。小さいころは『たばねおねえちゃんとけっこんする~』って言ってくれたのに。だからかずくんのために処〇もとってあるんだよ。バー〇ンだよ。嬉しくない」
「何言ってるんですか、束さん!」
「そうですよ! お兄ちゃん、わ、私だって大切に取ってあるんだからね」
「だから何を言っているんだ、お前は?」
そう、こうやって人をからかってくるのだ。
良い歳をした大人が若い人をこうからかうのはどうなんだろう。俺は会う度にこうして抱きしめられ、大きな胸を押しつけられてドキドキしてしまう。あまり思春期の男をからかわないでほしい。
歳はともかく見た目は美人なのだから。
そして妹の奇行にどうすればいいか悩んでしまう。
「からかってなんかないよ~。束さん、本気だよ! かずくんを一目見た時からぞっこんなんだよ~。今だってきゅんきゅんして仕方ないんだから~。束さんはかずくんが大好きなのさ。そうだ、今すぐホテルいこう、それで既成事実をつくっちゃおう~」
「駄目です~!」
束さんはそう言いながら俺の頭を抱きしめて胸に埋める。
何度も言うが、止めて欲しい。さっきから巨大な二つの柔らかい物体が顔を覆い尽くし、何やら妖しい香りが鼻をくすぐる。それを夏耶が引きはがそうとするが、余計に揺さぶられるせいで顔に擦りつけられる。
ドキドキとして仕方ない。正直思春期には強すぎる刺激にタジタジである。
「いい加減にしろ、束」
「へぶっ!? いった~い! 何するのさ、ちーちゃん」
そんな声を上げて束さんは俺を解放した。
そして恨みがましい目で自分を叩いたであろう人物を見る。
その視線の先には、ジーンズにワイシャツを着た目つきの鋭い女性が立っていた。
長い黒髪をしていて、見た感じは三十代後半くらいに見える。だが、その鋭い美貌は歳以上にその女性を美しく輝かせていた。スタイルのかなり良い、まさに出来る大人の女性といった感じである。
「助かりました、千冬伯母さん」
「千冬伯母さん、ありがとう」
「悪かったな、束がいつもこうで」
そう、この人がISで最強と名高い俺の伯母、『織斑 千冬』さんだ。
父さんと違って厳しい人だけど、その分ぶっきらぼうに優しい。
「え~ん、ちーちゃんがぶった~! かずく~ん、慰めて~。そのまま勢いでかずくんの童〇ちょうだ~い! 束さん、大事~に大事~にしゃぶり尽くすように」
そう言って俺に飛びかかる束さん。
「だから止めろと言っている、馬鹿者」
「ぐぺっ!?」
そしてそんな束さんの足を掴んで床に叩き付ける千冬伯母さん。
「お前もお前だ。父親に似て優しいのは良いが、嫌ならはっきりと断われ。こいつは口で言ったところで通用せん」
「何、ちーちゃん焼き餅? ふふ~ん。かずくんは束さんのことが大好きだけど、シャイだから恥ずかしがってるだけだよ。いいでしょ、ちーちゃん」
「うるさい」
「ぷげっ!?」
ま、まぁ、こうして束さんは毎度の如く千冬叔母さんによって止められている。
毎回こうして止めて貰っている伯母さんには本当に感謝している。
と、話したところで疑問が残るだろう。何故、『伯母さん』に困っているのか?
それは………
「それで一真。今度出来れば私の部屋の掃除を手伝ってくれないか?あと出来れば夕飯も。教員寮に入れるよう手続きはしておくから」
束さんがピクピクとして動かなくなるまでしこたま叩いた後、千冬伯母さんは少し申し訳なさそうにしながら俺にお願いしてきた。
そう、これがこの人の欠点。
千冬伯母さんは家事炊事の一切が駄目なのだ。
そのため、こうして毎回お願いされたりする。父さんから聞いたが、昔から駄目で殆ど家事炊事は父さんがしていたらしい。
その出来無さは凄まじく、毎回部屋に行くたび汚部屋となっている。
掃除をするのは別に良いが、こう毎回床が見えるまで綺麗に掃除した部屋を汚部屋に変えられるのはちょっと如何なものだと思う。
それに場所が場所だけに入りづらい。
男性でもISに乗れるようになったとはいえ、それでもIS学園は女の園だった。
男は皆劔冑の方が好きで、其方に行ってしまうかららしい。
それに乗れると言っても、適正はCが殆どなんだとか。そのため適している女性の方がやはりIS学園に集まるとか。
そんな学園の教員寮に伯母さんの部屋があるわけで、そこに掃除しに行かなければならない。女性しかいないところに一人で行かなければならないのは気が重いものである。
なら夏耶に行ってもらえばよいものだが初めて掃除しに行った時、部屋にあった腐海的な何かや、そこからわき出た黒い小判や白い豆のようなもの、そしてぶんぶんと辺りを飛び回っているおびただしい量の地獄の王様を見て卒倒してしまったのだ。それ以降、夏耶の深いトラウマとなって心に刻み込まれてしまい、行くのを嫌がるようになった。
よって俺が一人で行くようになったというわけだ。
「はぁ……またですか。まぁ、いいですけど」
「すまん、助かる。後で小遣いも出してやるから」
千冬伯母さんは俺にそう感謝すると、俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。
何というか、ほっとけないんだよなぁ~。
そんなふうに撫でられていると、横から大きな声が聞こえてきた。
「あぁ!? 姉さんずるいぞ! 私も一真を撫でる!!」
そんな声と共に、俺の体は引っ張られ後ろから抱きしめられた。
背中に柔らかい大きな二つの何かの感触を感じ、そのまま頭を優しく撫でられた。
「ふふふ~、一真は相変わらず可愛いなぁ~。なでなで~」
「マドカ叔母さん、くすぐったいですよ」
そう答えながら振り抜くと、そこには千冬伯母さんに似ている黒髪の女性が俺を抱きしめていた。
此方は黒い長髪を一つにまとめ上げ、Tシャツにジーンズ生地のミニスカートを穿いている。見た目は若く見え、三十代に入ったばかりといった感じだが、その声と千冬伯母さんと違った笑みでもっと若く見える。
「ほら、夏耶も」
「キャッ!? マドカ叔母さんったら~」
そして今度は夏耶も一緒に抱きしめるのだ。
マドカ叔母さんはよく俺達のことを可愛がってくれる。
少し子供っぽいが、それでも仕事はキチンとするし千冬伯母さんと違って掃除は出来る。
ただ、俺達のことを良く猫可愛がるのが偶に傷かなっと思う。
あの父さんにさえ、『あまり甘やかさないでくれ』と言われるくらいに凄いのだ。
確かに束さんも俺を良く抱きしめるが、マドカ叔母さんだと落ち着いてドキドキしない。きっとマドカ叔母さんはからかわないからだろう。
でも、こんな叔母さんでもやっぱり問題があるわけで………
俺を一通り可愛がってお菓子を渡したマドカ叔母さんは夏耶を連れて部屋の隅でひそひそ話を始める。
「いいか、夏耶。こういう時に兄に甘えるにはな…………」
「……うん、わかった! マドカ叔母さん、ありがとう。参考にするね」
「ああ、精一杯甘えてこい」
こうして妹によく分からない何かを吹き込むことである。
これを聞いて夏耶はさっそく試したりするのだから手に負えない。
前にそれでワイシャツに下着だけの姿で俺の部屋に来たり、水着姿で俺の背中を流しに来たりしたことがある。
頼むからそういうことを教えないで貰いたい。
それを止めさせようとするのだが、
「かずく~ん、結婚して~!」
と復活した束さんに飛びかかられる。
そのせいでマドカ叔母さんを止めることが出来ない。
「もう、父さん、母さんもどうにかして………」
と我等が両親に助けを呼ぶわけだが、
「真耶、もう一杯頼む」
「はい、お義姉さん」
千冬伯母さんにお茶を淹れる母。
「真耶さん、俺にもお願いします」
父さんは母さんにお願いするが、お茶は父さんに渡されない。
「旦那様はこっちです」
母さんは恥じらいながらお茶を口に含むと、父さんにキスして口移しで飲ませていた。
「どうですか?」
「その…あまりに美味しくて凄かったです」
「わ、私も旦那様の味がして、その…美味しかったです……」
そして始まる激甘にイチャつく二人。
それを穏やかに笑いながらお茶を飲む千冬伯母さん。
尚も俺を抱きしめ体に胸を押しつける束さん。
そんな俺達を尻目に余計なことを夏耶に吹き込むマドカ叔母さん。
そんな収拾が付かなそうなことが、この三人が来る度繰り広げられている。
これがまた悩みであり、俺の悩みは尽きることを全く知らない。取りあえずもっとも言えることは、束さんの目が何やら怖いということだけだろう。
この話を書いて思ったのですが、一真のイメージってどっちかって言うと劉 鳳みたいです。