遂に奴、凰 劉鳳との本気の戦いが火蓋を切った。
初撃から全力。
奴が方から高エネルギーを噴出させながら拳を突き出してきたのに対し、此方は最初の一刀から業を放つ。
合当理を噴かし、突進しながら斬り掛かり振るった二刀に奴の拳が当たった瞬間、辺りに衝撃が走り金属同士の激突音が轟いた。
互いの中央でぶつかり合う拳と刀。そのまま押し合いに発展するが、どちらも引かんとばかりに力を込める。
ゴリゴリと不吉な音が辺りに立ち籠める中、先にこの押し合いを制したのは、
「しゃぁああああああああああああああああああああああああ!!」
「ちっ、流石は武者ってか。半端な力じゃネェなぁ!」
俺だ。
向こうは片腕、此方は両腕。どちらが勝つのかは目に見えてわかる。
だが、それでも恐ろしいのは片腕で俺の力に拮抗した奴の腕力だろう。武者でもない者がどのように鍛えたらあのような力を得られるのだろうか。
奴の攻撃を受け止めた両手は未だに痺れている。それでけ奴の拳は重かった。
弾かれた奴は後ろにバックステップして少し離れると、好戦的な笑みを浮かべていた。
「まさか初っ端から弾かれるとは思わなかったぜぇ! 流石は武者って奴だ! いいねぇ、この感じ。他の奴等じゃまず味わえねぇ!」
上機嫌に笑う凰 劉鳳だが、その笑みは獣のそれだ。
野性的な破壊衝動。それを叩き付けられている気分になる。
それが……心地良く感じる。
試合という形だが、互いにそんなことは思っていないだろう。限りなく死合いに近い。
手加減など無い。相手を傷付けることに躊躇などしない。もし殺してしまっても、また殺されても文句は言わないし言えない。
今まで感じたことのない充実感を感じ満たされる。
今まさに、俺は………戦っていると。
「それは此方も同じだ。まさかこの業を拳一つで止めるとは思っていなかったぞ。だからからこそ、もっと力を出せると言うものだ!」
「いいぜぇぇえええええええええ! もっとヤろうじゃねぇかぁっ!!」
互いに歓喜の咆吼を上げつつ、更に仕掛ける。
「おぉおおおおらぁああああああああああぁぁぁあぁぁあぁぁああああああっっかぁぁあぁあああ!!」
「HITAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
右の伏竜を真上から振り下ろし、左の臥竜で左から横一閃に刀を振るう。
それに対し、奴は地面を殴り、その爆発的な威力の反動を使って俺へと飛びかかりながら拳を振るう。
再び激突し合う拳と刀。
右の攻撃を弾き飛ばし、奴はそのまま身体を回転させて俺に向かって殴りかかる。
それを左からの攻撃で防ぐ。
金属同士の軋む音が聞こえる中、更に俺達の攻防は続く。
「まだだっ! らぁっ!!」
「おぉおおおおおおおお!」
至近距離から更に仕掛ける。
奴が開いている左拳で殴りかかれば、此方も膝や肘、刀の柄を使って迎え撃ち、反撃に斬撃と武者式組打術を浴びせる。
互いに削れる装甲とシールド。
此方はISと違いシールドは本当にはないが、そんなことは関係無い。
この一撃一撃が致命傷。
喰らえばひとたまりもないかもしれない。
だが、それこそが……楽しい。
自分の全力を叩き付けられるのが嬉しくてたまらない。
競いたいのではない。全ての力をかけて、倒したい。
そう思えるからこそ、俺はこの『敵』に感謝をする。
再びお互いに距離を取る。
双方とも損傷は軽微。シールドは向こうが450、此方が470だ。
一撃の重さは奴の方が上だが、その分此方は手数が多い。直撃を避けて攻めてはいるが、それでも掠っただけでダメージを負う。
まさにギリギリの勝負。
奴は変わらずの痩せ的な笑みを浮かべている。
きっと俺も凄い表情になっているかも知れない。
最初は湧き上がっていたアリーナの観客も、今では静かに静まりかえっている。
それだけ夢中になっているのだろう。
奴と俺の戦いに。
「あぁ、良い感じに燃えてきたぇぜ! あんた、最高だよ! だからこそ、絶対に勝ちてぇ! こいつはどうだぁっ! 撃滅のぉぉぉぉおおおおおおおおおおお、セカンドブリッドォォォオオオオオォオオオォオォオオオオォオオォオオォオオオォオオ!!」
奴はそう叫ぶと肩からエネルギーを噴出させ、まるで駒のように回転しながら此方に向かって突っ込んで来た。
その奇怪な動きに一瞬だけ判断が送れた俺は咄嗟に防御の構えに入る。
結果、その拳を受けた俺は威力のあまりに吹っ飛ばされ、アリーナの壁に激突し壁を破壊し崩した。
「やっと入ったぁあああ! どうよ、俺の拳は!」
「ぐぅううううううぅうう! 何て威力だ。まさか吹き飛ばされるとは……だが、まだ甘い!」
衝撃と痛みに顔を顰めつつ、俺は土煙越しに奴を睨み付けながら叫ぶ。
「行け、絞竜!」
俺の命により首元の触手が高速で奴の方へと向かい、
「何っ!? こいつはあの時の!」
奴に巻き付き拘束した。
そのまま此方までたぐり寄せると、奴は咄嗟のことで判断し損ねたらしくそのまま俺の間合いまで飛び込んできた。
此方に向かって来る奴に向かって俺は二刀を共に上段に構えると身体を反らし、そして放つ。
「今度は此方の番だ! 喰らえっ! 『吉野御流合戦礼法 雪崩が崩し 二刀流、双崩!!』」
「がぁっ!? クソがぁああぁああああぁああああ!」
即座に激突する二撃の斬撃に奴は無理矢理拘束から外した左腕を使って防御するが、その威力に反対側のアリーナの壁に激突した。
粉砕される壁面、上がる土煙に観客席から悲鳴が上がる。
だが、まだだ。まだ此方は攻撃を終えていない。
「まだだっ! まだ終わっていない!」
「何っ! て、うぉっ!? いだだだだだ」
壁に叩き付けられた奴への拘束はまだ解いていない。
そのまま壁に押しつけ、削るかのように移動させる。それによりアリーナの壁面がガリガリと削れていった。
「いい加減にしろ、この野郎!」
奴はそう言い放つと、絞竜を掴み、何と引き千切った。
数打とはいえ、劔冑の甲鉄を握力と腕力で引き千切るとは。
明らかに異常とも言えるパワーだ。
御蔭で此方の損傷は悪化。向こうの同じように損傷しているはずである。
観客からは見えないが、顔の装甲が損傷して弾けた装甲の一部が額を傷付け血を流す。
それが顔を伝っていくのが分かり、ニヤリと笑みを深めてしまう。
「まさか手だけでこの絞竜を引き千切るとはな」
「はっ! こんな細いもんで俺を縛り付けられれるわけねぇだろ!」
互いに損傷はまちまち。彼方此方の装甲はひび割れ、疲労により息が上がる。
此方は砕けた装甲が肉体に刺さり血が出てきていた。
向こうは身体の各所から火花を散らし、絶対防御でも耐えられなかったらしく俺と似たように額から血を流していた。
シールドの残量は此方が320、奴が300。存外に硬い。普通のISだったら200以上は削れるのだが、あのISはまるで対劔冑のために作られたかのように硬い。防御力がISの比では無いと思う。
だからこそ………倒し概がある!
「行くぞ、凰 劉鳳!」
「来いよっ、織斑 一真!」
お互いに凄惨な笑みを浮かべながら拳と刀を構え、そして再びぶつかり合う。
「おぉおおおおおおおおおおぉおぉぉおおおおぉおおおおおぉおおおおおおおっ!!」
「らぁあぁあぁぁぁああああぁぁぁあぁあっぁああああああぁあぁああぁあああ!!」
奴に攻撃が入り、シールドと装甲を削れば今度は奴の拳が此方に入り装甲が砕かれる。
そのやり取りが何度も続き、気が付けば双方とも大破状態。此方は顔の装甲が砕かれ素顔を晒してしまっている。対して向こうは身体中に斬られた後が残り、所々血が流れていた。
ここまで行くと、もう普通の試合とは言いがたい。
その光景に皆言葉を飲み込んでいた。
俺と奴は互いに向き合い、殺気の籠もった視線を向け合いながら同時に動いた。
「コレで終わりだ! HITAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
「ああ、そうだな! 抹殺のぉおおおおおおおおお、ラストっ」
だが、最後の一撃を放つ前に試合は中断されてしまう。
突如としてアリーナの外から爆発の音が轟いた。
それにより、非常事態発生の放送とブザーが鳴り響く。
『非常事態発生! 非常事態発生! 学園内に侵入者が入りました。教員は至急対処を、生徒は批難して下さい。繰り返します………』
パニックになりかける生徒を押さえる教員達と、騒ぎを収めるべく外へ急いでいく教員達。
辺りの騒ぎの中情報を調べると、どうも学園に侵入したは十騎程の劔冑らしい。犯行声明らしきものを拾うと、どうも『男性利権団体』の過激派らしい。
どうも昔流行った女尊男卑で生まれた女性利権団体に虐げられた者達が仕返しをしたいらしく、こうして出張ってきたらしい。
いつもなら
正義感で戦いに行っていたかもしれない。
父さんはそんなことを望んで世界を変えた訳ではないと。
だが、今はそうではない。
俺は凰 劉鳳と視線を合わせる。
「どうもお流れのようだ」
「みたいだな」
互いに敵意を抱きながらも残念だと肩を落とす。
「どうするんだ?」
「おいおい、そいつを俺に聞くのか? そんなもん、アンタが一番わかってるんじゃないか」
「そうだな。貴様も分かっているんだろう」
そしてお互いに笑い合う。
怒りに満ちた笑いを。
「ぶっ潰すっ!!」「斬り捨てるっ!!」
互いの意見が一致したことでゆっくりと、しかし確実に前に進む歩みで互いに歩み始めた目指すはアリーナの外、暴れている『愚か者共』のところである。
きっと俺達の顔を見た者は顔を恐怖で青ざめるだろう。
それぐらい……壮絶な笑みを俺達は浮かべていた。
せっかくの戦いを邪魔されたのだ。この報いは……絶対に受けさせなくては。
そう思いながら、アリーナを出て行った。