家族と親戚について話し終えたので、今度は新しく入学した学校について話そうと思う。
まず、四月になって俺と夏耶は新しい学校へ入学した。
夏耶は今でも女子の憧れであるIS学園へと行くことに。千冬伯母さんやマドカ叔母さんが働いている職場でもあり、母さんも働いていた学園だ。
寮生活になるからと寂しがっていたが、休日には家に戻れるのだからそこまで悲観しないで欲しい。
ここで一応言っておくが、夏耶のIS適正はSよりのAで代表候補生にならないかという誘いが来ている。国としても是非なって欲しいらしい。本人は少し自身が無いらしく悩んでいるようだが。
「お兄ちゃんがいなくて寂しいけど、私、頑張ってくるね」
「ああ、頑張ってこい。寂しくなったら呼べばすぐにでも行くからな」
「うん!」
こんな風にIS学園へ向かう夏耶を見送った。
と、ここでさわやかに終われば良かったのだが…その後に夏耶は俺に抱きつき、挙げ句の果てに頬にキスしていった。
兄離れが出来ない困った奴だと思うと同時に、何をマセたことをしてるんだと怒ろうとしたら逃げられてしまった。まぁ、これも寂しさを紛らわすためにやったことなのだろう。
そして次は俺なのだが、俺も家を出ることにした。
俺が行く高校……それはつい六年前ほどに出来た新しい高校である。
その名を『武帝高等学校』。別名『武帝校』。
日本ではただ一つ、世界でも両手で数えるくらいしかない『劔冑を纏う者の育成機関』である。
父さんが活躍した御蔭もあって、今ではそういう育成機関が作られたのだ。学園の生徒育成目的は国土防衛と自衛のためであり、そのため日本でも有数の劔冑を保有している。
ここまではいい。武者を目指す若者が多い昨今、この学校は憧れの的である。
だが、その割にこの学校を受験する生徒は多くない。
それは何故か……その理由は酷すぎると言ってもいい学校環境と授業内容だ。
実はIS学園と意外と近かったりするのだが、その中身は全くの別物。IS学園が最新のテクノロジーを詰め込んだ最適な学園とするなら、この武帝校は真逆の日本一過ごし辛らい学校だ。
何せIS学園は人工島の上あるのに対し、此方は山の中。しかも全部木造で冷房すら付いていないというとんでもない仕様である。今のご時世ではまず有り得ない生きた化石並みの建築物だ。
生徒はIS学園と一緒で全員寮で生活するのだが、部屋は全部和室で布団と卓袱台が置いてあるのみ。食事は食堂で朝食と夕食が出るが、昼は自炊。
一応は女子生徒もいて、当然寮生活だが、当然別の寮である。許可もなしに不埒な真似をしようものなら、武者直伝の体罰が待っている。そんな恐ろしいことをする馬鹿者はいないだろうが。
と、今ではすっかり忘れられている昔の学校をそのまま表したかのような環境だが、こと劔冑の施設に関しては最新の物を使用している。
この学校には武者になる者と『鍛冶師』になる者を育成するという目的もあるのだ。
ここで言う『鍛冶師』とは、劔冑の制作や整備をする技術者のことである。ただ、昔の鍛冶師とはまったく違うらしい。
おっと、少し話が逸れたようだ。でも説明しないと難しいので割愛していただきたい。
で、この学校とIS学園の最大の違いはその授業思想である。
IS学園は出来る限りISの操縦などに時間を割くため生徒に掃除とかをさせないとか。
しかし、この学校は逆であり、生徒は放課後に必ず掃除をさせられる。それも雑巾と箒でだ。
曰く、『文武両道は当たり前であり、高潔な精神は清掃から始まる』だそうだ。
今のご時世からは考えられない程に古い。
そしてそれは授業にも出ており、通常科目から武者の鍛錬などにも出ている。
黒板にチョーク、それに教科書は紙媒体。鍛錬は俺がこなしているメニューと変わりないが、一般人からすれば過剰に鍛えている。スポーツ力学的には有り得ない程の回数をこなしているのだ。
そして授業の中には学校の敷地内にある滝を使っての水行や座禅なんかも入っているという始末。
『心・技・体』
この三つを鍛えてこそ、真の武者になれる。
それが育成理念だ。
それ故の古い学校のようにしたらしい。
最先端を行く現代を真逆に行くような校風に現代の若者は怖じ気づいていたりする。
俺は武者になるために、こうしてこの高校に行くことにしたのだ。
「かずくん、体には気を付けてね」
「頑張ってきなさい。たまには帰ってくるんだよ」
俺が学校に行くときに母さんと父さんが心配してそう声をかけてきた。
それに笑顔で答える。
「うん、行ってきます……そ、その、父さんと母さんも元気で」
「うん」
「ああ、ありがとう」
そう言って俺は言えを出るのだが………言えない……
『二人共、子供がいなくなったからってイチャつきまくらないでね。只でさえたまに夜、二人の部屋から何かしら聞こえてくるんだから。流石にこの年で弟とかが出来ても少し困る』
とは言えなかった。
こうして俺は家を出て改めて武帝校へと入学した。
ここまででも問題は多いが、さらなる問題を語ることにしよう。
この学校では入学式の時に主席と次席が皆の前で試合をすることになっている。
その査定は実技と面談によって決まっていて、どういうわけか俺が主席になってしまい入学式早々に戦うハメにあった。
「お前が主席か! 織斑 一夏の息子だってな……僕は絶対に認めないぞ!! そんな親の七光りで主席になった奴なんて!」
と敵意丸出しな次席(この後知ったが同じクラスだった)に睨まれながら、俺は持ってきて貰った九○式竜騎兵甲を装甲して戦うことになった。
まさかいきなり戦うことになるなんて思わなかった。
こんなことが学校として許されるのかと思ったら、意外にもみんなノリノリで盛り上がっていた。それに輪をかけて一部の先生がどっちが勝つかに賭け事を始める始末。
まさかこんなに血の気が多いのと祭り好きが多いとは思わなかったよ。
「やっちまえぇええええええええええええええええええええええええええ!」
「あの英雄の息子なんだろ! 力を見せてみろ!」
「お前に賭けたんだから絶対に勝てよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ぶっ殺せぇえええええええええええええええええええええええええ!!」
そんなちょっと口汚い歓声や罵声の中、俺は相手に挑んだ。
結果……俺が何とか勝った。
いやはや、結構ヒヤヒヤしたものだったがどうにかなったようだ。
「くっそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
倒された次席が床に倒れたまま悔しさに叫びを上げるが、それすら騒ぐスパイスになりさらに講堂が震え上がる。IS学園ではまず絶対にお目にかかれない光景だろう。まさに『漢』を感じさせるだろう。
やっと終わったことに安心していると、何故か校長から呼び出された。
「では勝った織斑君、こちらに」
「は、はい」
返事を返して壇上に上がると、校長は皆に聞こえるように大きな声で言う。
「ではここに、一学年最強の生徒が生まれました。この者に最大の賞賛とともに、この『試作数打劔冑』を与えたいと思います」
その声を共に、俺の目の前に現れたのは二メートルくらいの大きな『人型』だった。
白を基調とし、彼方此方の部位が紫色をしている。顔は少年を連想させる瞳をしており、首あたりにマフラーのような細いものが出ていた。腕は妙に鋭く、鉤爪が付いており、背中に何やら二振りの刃物のような物が装着されている。そして何故か白いトカゲのような尾が生えていた。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
そんな間の抜けた声が俺も含めて全員からあがった。
何故なら、通常の数打劔冑はモノバイクの形をしており、真打に至っては動物の形をしたものが多いい。なのに、この目の前の劔冑はそのどちらでも無い『人型』をしているのだ。
そんなもの、今まで見たこともない。
校長はそんなみんなの反応を見て笑う。
というか、校長って凄く若い。父さんと同じか少し上にしか見えない。
「織斑君、これはISの技術などを取り入れて新しく作られた新世代型の数打劔冑です。真打程ではないですが、それでも数打を凌駕する性能があります。それからもその武を高めるために頑張って下さい」
そう言われその場で帯刀の儀(生体認証)をすることになった。
それが終わると、その劔冑は俺の側で控えるように来た。
校長はそれを満足そうに見ながら俺に笑いかける。
「お父さんのように立派な武者になって下さい。あなたのお父さんは私の尊敬する人なんですよ。武も恋もね。家に連絡することがあったら『足利 邦氏』がよろしく言っていたと伝えて下さい。それで伝わると思うので」
校長は俺にそう親しそうに言うと、皆に聞こえるように言う。
「では、この者にこの劔冑『絶影』を与える。皆、この者に負けぬよう精進してほしい!」
その声と共に、また講堂は歓声に包まれた。
それを感じて、俺は………
何だか厄介事を押しつけられたような気がして仕方なかった。
こうして俺は自分の力、『絶影』を手に入れこの学校で共に戦っていく事になっていくのだった。
これもまた変な悩みだが、充分大変な悩みである。
御蔭で俺はこの日を境に学校中にその名が知れ渡ってしまい、苦労するハメにあうのだった。
ちなみにこの『絶影』は第一と第二を丁度足した感じですよ。